最近、マンションの駐車場でEVを見かけることが増えていませんか?電気自動車(EV)の普及が進む中、充電設備の設置を検討する管理組合も増えています。
2011年度末で全国に約2万台あったEVは、政府の「次世代自動車戦略2010」時点では、2020年までに15~20%の普及を目指すとされました。残念ながら、実際はそこまでは普及していないものの、今も増え続けています。
では、なぜマンション管理組合が今、充電設備を考えるべきなのでしょうか。
まず、EVはCO2を出さず、空気をきれいに保ち、地球温暖化対策に貢献します。
次に、電気代がガソリン代の1/3~1/8と経済的で、住民の生活コストを抑えられます。
さらに、充電設備があればマンションの価値が上がる可能性も。EVユーザーが増える中、「充電できるマンション」は入居希望者や売却時の強みになります。
「うちにはまだEVユーザーが少ないし…」と思うかもしれませんが、将来を見据えた準備が大事。今なら補助金も使えてお得です。
今回は、やや古いですが国土交通省も各種参考データとして引用している「既存の分譲マンションへの電気自動車充電設備導入マニュアル(急速充電器特別措置改正版)」というマニュアルを引用しながら、電気自動車充電設備について、分かりやすく解説します。
マンション向けEV充電設備の種類と特徴
EV充電設備には普通充電器と急速充電器があります。
マンションに合うものを選ぶために、それぞれの特徴を押さえる必要があります。普通充電器は家庭用の電源(200Vが一般的)で充電するタイプで、三菱の「i-MiEV」なら約7時間で満充電。夜間にじっくり充電するのに向いていて、マンションの駐車場で使うのに現実的です。一方、急速充電器は高出力(20~50kW)で、同じ車を30分で80%まで充電可能。短時間で済ませたいときや共用でシェアしたい場合に便利です。
項目
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普通充電器(200V)
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急速充電器(50kW)
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充電時間
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約7時間(i-MiEV満充電)
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約30分(80%充電)
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費用目安
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50万円~(3台)
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291万円~(1台)
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電力容量
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4kW/台
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20~50kW
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※引用 既存の分譲マンションへの電気自動車充電設備導入マニュアル(急速充電器特別措置改正版)より、筆者が加筆修正
普通充電器には壁付けとスタンド型があり、壁付けは費用が安く(1台約5万円程度)、外壁があれば設置も簡単。ただし、壁がない場所では使えません。
スタンド型はどこでも置けるものの、少し高めです(1台約7万円程度)。
急速充電器はスペースと大きな電力が必要ですが、2021年4月からの特例で1つの建物(マンション等)に複数の需要場所があった場合、特例需要場所として認められれば、電柱から新たに引き込むことができるようになっています。
したがって、大規模工事なしで充電スペースが導入しやすくなっています。選ぶときは住民ニーズや予算を考慮する必要があります。普通充電器は手軽で、急速充電器には将来性があります。業者に「うちの電気容量で何が設置できる?」と聞くと具体的なイメージが湧くでしょう。
- 選び方のポイント
✅ 住民のEV利用状況をアンケートで確認
✅ 管理組合の電力容量と設置可能な充電器を業者に相談
✅ 将来のEV利用増加を見越した拡張性を考慮
導入費用と負担方法
充電設備を入れるとなると、お金の問題が気になります。工事費や負担方法を具体的に見てみましょう。
壁付けの普通充電器3台なら約50万円、1台あたり約17万円と手軽に始められます。建物から離れたスタンド型だと配線を地中に埋める分、3台で約340万円と高額になります。急速充電器1台は特例を使って約291万円ですが、共用電力を使わないので改修費が抑えられることもあります。
ケース | 内容 | 費用 |
壁付け3台 | 普通充電器、露出配線25m | 約50万円 |
スタンド3台 | 普通充電器、埋設配線60m | 約340万円 |
急速1台 | 特例使用、三相200V | 約291万円 |
費用をどう負担するかは管理組合の合意形成が大事といえます。
方法としては、修繕積立金で管理組合負担で払うやり方で、初期負担が平等で合意しやすいですが、「EV持ってないのに…」という声も出る可能性もあります。
使う人だけが負担する方法も考えられますが、公平感はあるけど使用者への負担が大きく、調整が面倒です。
考えられるのは、管理組合で修繕積立金を使って設置して利用者から回収するモデルでしょう。
例えば、50万円の工事費を12年で回収すると、3台で割って1台あたり月1,158円。電気代(月約2,500円)を足して月3,650円に。急速充電器だと電気代が高く(月12,250円程度)、3人でシェアすれば1人6,333円程度になります。
また、補助金を使えば設置のための負担も大幅に軽減できます。経産省や自治体の支援が受けられます。

横浜市の例ではすでに終わってしまっていますが、最新情報は市のHPを確認するのがよいでしょう。
運用方法とルール作り
設備を入れたらどう使うかを決める必要があります。運用方法とルールは使用細則で定めることが重要です。
まず、専用設備はEVオーナーの駐車場に充電器を付ける方法で、いつでも充電できて便利というメリットがあります。一方で、新しくEVを買う人が出てきたらどのようにするかの課題はあります。
次に、共用設備は空きスペースに置いてシェアするやり方です。普通充電器だと1日に2人くらいしか使えないので、急速充電器が向いているかもしれません。
カーシェアリングはマンションでEVを共同購入するアイデアで、環境に優しいけどルールが複雑です。
充電設備を専用と する方法 |
充電設備を共用と する方法 |
カーシェアリング | |
主なメリット | 利用者は、好きな時にいつでも充電できる。 | ・空き駐車場を活用できる。 ・急速充電器の場合、新たに利用希望者が現れた場合でも対応が可能。 |
・空き駐車場を活用できる。 ・居住者の自動車保有コストを軽減できる。 |
主なデメリット | 後日、新たに利用希望者が現れた場合、設備を追加しなければならない。 | ・急速充電器の場合、設置費用が高額。 ・普通充電器の場合、2人での共用が限界であるため、後日、新たに利用希望者が現れた場合、設備を追加しなければならない可能性がある。 ・普通充電器では、共用する利用者間での使用時間等のルールが必要。 |
・運用するために予約システム等が必要となるため、費用負担が大きくなる。 ・既に自動車を所有している居住者は賛成しない可能性がある。 ・自由に電気自動車を利用できない。 |
※引用 既存の分譲マンションへの電気自動車充電設備導入マニュアル(急速充電器特別措置改正版)より、筆者が加筆修正
料金は駐車場料金に定額を上乗せするのがおすすめ。壁付けなら月3,650円を足して、1万円が1万3,650円に。管理が楽で合意しやすい方法です。専用なら「EVオーナーに優先割り当て」、共用なら「1回8時間まで」「予約制」と決めておくとスムーズ。生活リズムに合わせれば納得されやすいでしょう。
合意形成と進め方
電気自動車の充電設備の設置は、住民の合意形成が不可欠です。
充電設備の設置は通常普通決議であり、過半数が賛成すれば通ります。
こちらは、標準管理規約第47条に普通決議と特別決議の例があります。
充電設備設置についても、細かく紹介しています。
また、設置に関して、共用部分の大規模な改修を伴うこととなれば、特別決議(議決権及び区分所有者数の4分の3以上の賛成)が必要な場合も管理組合によっては考えられます。
そして、総会で合意を取るにはメリットを充分説明するとともに、業者も参加して直接説明して貰う設置のための説明会を開催することも一つの考え方です。
「CO2削減で環境にいい」「マンション全体の価値が上がる」「補助金で安くできる」と伝えつつ、コストメリットを数字を出すことが現実的でしょう。
EV充電設備は未来への投資
EV充電設備は未来への投資です。
補助金を加味しなくても普通充電器なら50万円から始められ、月数千円で運用可能です。補助金を活用すれば負担も軽く、住民と話し合えば実現できます。
今後「充電できるマンション」が不可欠になり、マンションの資産価値向上に寄与する可能性があります。
まずは理事会で「考えてみませんか?」と話題に出してみることが重要です。一歩踏み出すだけで、環境に優しい暮らしに繋がります。
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