前回に引き続き、ChatGPT5と対談した内容をご紹介します。今回は役員のなり手不足にフォーカスを当てて、ChatGPTの音声機能を用いて対談してみました。
筆者が契約しているChatGPT Plusであっても時間の制約もあり、20分弱の対談です。
そのような中で、役員のなり手不足については、令和5年度の国土交通省「マンション総合調査」でも、居住者の高齢化進行や運営リスクがデータで示されました。特に高経年マンションでは、区分所有者の高齢化により役員の担い手不足や総会運営の困難化が懸念されています。
会話で読み解く:課題の正体と打ち手
今回は9つの切り口について、対話してみました。AIでもある程度の回答は導き出せるようですが、正直、もう少し深堀もして欲しい所ではありました。
ただ、モードがDeep Researchやエージェントモードと違って、こちらから投げかけた質問に対して、即回答する形なので、まだマンション管理を熟知しているという点ではまだまだこれからという印象もあります。
高齢化の影響はどれほど深刻か?
(横浜マンション管理FP研究室、以下YMK) とあるマンション管理組合の理事会で、高齢の理事さんが「夜の会議は体力的にもう無理」と。ここ数年で同様の声が増えました。
(GPT‑5) 令和5年度調査では世帯主70歳以上の比率が上昇。築年が古いほど高齢化率は顕著で、築40年以上では5割超という結果も示されています。体力や夜間外出の負担から、就任・継続のハードルが上がるのは自然です。
補足解説: 高齢化がもたらすのは、単なる“出席可否”だけではありません。議事録作成・会計チェック・業者調整など細かいタスクが多く、視覚・手先・集中力に持続的負荷がかかります。加えて「永住意識が高い=責任感が強い」ゆえに断りづらいという心理的圧も発生します(令和5年度調査では“永住するつもり”60.4%)。負担の見直しと分担設計は、まず高齢層の継続可能性を高める観点からも不可欠です。
現役世代はなぜ手を挙げないのか?
(YMK) 現役世代は体力はあるのに“時間がない”。特に子育て世帯は土日を会議で固められないんですよね。
(GPT‑5) 最大のボトルネックは「時間」と「不透明さ」。拘束時間が読めない・何をどこまでやるか不明——これが心理的ハードルになります。そこで効いてくるのが「役割の明確化」と「参加形式の柔軟化」です。
補足解説: 調査の“管理組合運営”章は、外部専門家活用や出席の方法、意思決定の実態を扱っています。役員なり手不足は単独原因ではなく、「多忙」×「不明確な負担」×「引継ぎ不全」が重なる構造問題。まずは“何を・どれだけ・いつまで”の可視化が土台になります。
役割の細分化:まず“全部やらない仕組み”を作る
(YMK) 理事長や会計に仕事が集中しがちです。
(GPT‑5) 「会計=出納/記録/年次報告」「修繕=小口修繕/見積比較/工事連絡」「周知=掲示板/回覧/サイト更新」など、小さく切るが基本です。「自分の守備範囲だけ」という安心感が最初の一歩を後押しします。
補足解説: 役割を分割して責任範囲を限定すると、初任者の心理的負担が減り、属人化リスクも低下。東京都の「マンション管理ガイドブック」は管理組合編として運営の基本手順と役割整理の考え方を提供しており、分業設計のベースに使えます。ただ、実際にはこの辺りの業務は管理会社が実施することが多く、組合員がここまで負担が大きいということは余りありません。
テンプレ化とマニュアル化:毎年ゼロから考えない
(YMK) 役割を細かくしても、毎年の割り当てや書類作成が手間です。
(GPT‑5) 初年度に「分担表(役職・担当・頻度)」と「書類テンプレ」を整備しましょう。翌年度以降は“名前を入れ替えるだけ”。議事録・議案書・工事のお知らせ・回覧・掲示、すべて雛形化できます。
補足解説: 横浜市「マンション管理の基礎知識」や「管理・再生の手引き」には役員の主な役割や理事会運営の手順がまとまっています。自組合版の手順書・チェックリスト・期日管理表(カレンダー)を作り、Word/Excel雛形とセットでデータ(クラウドファイル等)保存。引継ぎの“迷い”をなくすことが、担い手不足の根治策です。
理事会参加形式の柔軟化:オンライン/部分参加/非同時参加
(YMK) 通暁業務を兼務している現影世代にとって、平日の夜2時間は、重いのでは…。
(GPT‑5) 「ハイブリッド会議(会場+オンライン)」と「部分参加(担当議題の時間だけ)」、さらに「事前に理事会に対する意見書や議題の議決権行使書を提出(メール/フォーム)」を制度化しましょう。移動ゼロ・待ち時間ゼロは大きい。
補足解説: オンライン/ハイブリッドの導入はコロナ禍以降に広がり、参加しやすくなるという期待が広く共有されています(全国統計としての“出席率向上”の定量データは研究室では未確認のため、期待値として記載)。会議URLと議題時間を事前周知し、「担当議題の時間だけ入室OK」を明文化すると参加心理が一段下がります。
高齢層へのリアル支援:会場を近く・資料は紙で・人でサポート
(YMK) 高齢の方はITリテラシーの観点からもオンラインに抵抗もあります。
(GPT‑5) 集会室での開催、紙資料の事前配布、当日のITサポート役(接続・音量・画面共有補助)を用意。会場は明るさ・音響・椅子の座り心地まで配慮すると参加持続率が変わります。
補足解説: リアルとオンラインの併用(ハイブリッド)で“誰も排除しない”運営を。前述で紹介した自治体の管理ガイド(東京・横浜)は理事会運営の手順・留意点を整理しており、実務の下敷きにできます。議事は30分単位でタイムボックス化し、長時間化を防ぐのがコツです。
任期は1年でも“運用で軽く”:補欠理事・代理・ローテーション
(YMK) 転勤による引越しや、病気などで途中で家族の事情が変わることも。
(GPT‑5) 標準管理規約に沿って、補欠理事や代理運用を規約に明記しておくと安心です。繁忙期は役割を一時交代するローテも有効です。
補足解説: 国交省「マンション標準管理規約(単棟型)」では、任期途中で役員が欠けた場合に補欠役員を選任できる旨を規定可能(コメント)としています。規約改正や総会時の決議で事前準備することによって実装できる実務的な選択肢です。
報酬制度:時間の対価を明示し、主体性を引き出す
(YMK) 管理組合業務において、「ボランティアでは限界」という声、よく聞きます。なり手不足解消に向けて、ある程度の報酬は必要ではないでしょうか?
(GPT‑5) 役員報酬は“時間の対価”を可視化する仕組み。月額・年額・役職限定など、総会決議で透明に導入を。金額は管理費への影響を踏まえ、段階導入が現実的です。
補足解説: 報酬制度の是非は合意形成の要。導入時は「対象(理事長・会計など)」「額(相場感)」「財源(管理費/雑収入)」「公開(年次報告)」を明文化します。役割の“重さ”に応じた差をつける場合は、職務記述書(JD/ジョブディスクリプション)を添えて説明合理性を確保しましょう。根拠設計には国交省の総合調査・ガイド群が参照ベースになります。
第三者管理者方式:部分委託から段階導入を
(YMK) 万が一管理組合内の担い手がゼロの時、現実的な打ち手は?
(GPT‑5) 外部専門家(マンション管理士・弁護士等)に管理者(理事長)就任や理事会運営支援を委託する方法です。費用はかかりますが、機能停止を防ぐ“最後の安全弁”。まずは会議運営・修繕助言など部分委託から始めるのが費用対効果的です。
補足解説: 冒頭に紹介したマンション総合調査の「外部専門家の活用状況」では、活用実態の把握と施策検討の必要性が示されています。導入の可否はコスト・利益相反・ノウハウ継承を総合評価し、定期レビューと出口(内部化)設計を併走させるのが実務ポイントです。
制度・資料リンク(一次資料)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」トップ・関連資料(結果概要・スライド・データ編)
- 同 「結果からみたマンションの居住と管理の現状」(永住意識60.4% 等)(完成年次別:築40年以上で5割超)
- 東京都「マンション管理ガイドブック(管理組合編)」
- 横浜市「マンション管理の基礎知識」「マンション管理・再生の手引き」
- 横浜マンション管理・FP研究室「標準管理規約 全文解説」(補欠理事に関する規約検討の参考)
- 同 国交省 令和5年度マンション総合調査 マンション管理士による解説
まとめ:7つの柱を“併せ技”で
役員のなり手不足は「高齢化」「時間制約」「不透明な負担」「引継ぎ不全」が絡む複合課題です。
(1)役割細分化(2)テンプレ・マニュアル化(3)柔軟な参加形式(4)高齢層のリアル支援(5)補欠理事・代理制(6)報酬制度(7)第三者管理者方式——。
この7本柱を、各組合の実情に合わせて組み合わせることが肝要です。まずは「見える化(役割・時間・期日)」「短時間化(議題タイムボックス)」「非同時化(事前意見)」の3点から着手する必要がありそうです。これで“やらされる役員”から“やってもいい役員”へ、空気が変わっていけば管理組合としても成功でしょう。
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