マンション管理規約や使用細則は、一度作れば終わりではありません。
近年は、
・区分所有者の高齢化
・役員のなり手不足
・置き配の普及
・WEB会議の一般化
・管理会社の人手不足
・管理計画認定制度の拡大
など、マンションを取り巻く環境が大きく変化しています。
そのため、新築時に作成した管理規約や使用細則のままでは、現在の管理実務に対応できないケースも増えています。
本記事では、マンション管理士の立場から、2026年時点で優先的に見直しを検討したい管理規約・使用細則の論点について解説します。
マンション管理で重要なのは、「昔のルールを固定化すること」ではなく、「時代変化に合わせて更新し続けること」です。
特に近年は、
・高齢化
・物流変化
・管理会社撤退
・人手不足
・物価高騰
など、マンション管理を取り巻く環境が大きく変化しています。
なぜ今「管理規約・使用細則」の見直しが必要なのか
区分所有法改正もあり、管理組合が管理規約や使用細則を実態と合わせるために見直すケースが増えています。背景には、
・高齢化による役員不足
・WEB理事会や電子投票の普及
・置き配需要の増加
・管理会社の人材不足
・管理計画認定制度への対応
などがあります。
管理規約はマンションの憲法とも呼ばれますが、実際の運用を補う使用細則も含めて定期的な見直しが必要です。時代に合わないルールを放置(思考停止)するのではなく、環境に合わせてルールを最適化(運用)していくことこそが、真の「資産防衛」なのです。
今回は、現役のマンション管理士である私が、「実務へのインパクトが大きく」かつ「今、優先的に着手すべき」規約・細則の改正ポイントをランキング形式でTOP5に厳選しました。
見直しを検討したい管理規約・使用細則の論点
それでは、具体的に変えるべきポイントを見ていきましょう。
【災害】専有部分への立ち入り細則(緊急時)
この項目は、命と財産、そしてマンションの評価を守るための「切り札」です。特に近年は、「管理計画認定制度」を意識して整備を進める管理組合も増えています。
つまり、この規定は単なる災害対応ではなく、
・管理不全予防
・認定制度対応
・資産価値維持
にも直結する論点になりつつあります。
【理由(定性)】 上階からの漏水事故や、単身高齢者の孤独死(異臭)など、緊急時に「鍵を開けて入っていいか?」で躊躇し、被害が拡大するケースが増えています。
【理由(制度)】 さらに重要なのが、国が推進する「管理計画認定制度」です。 この認定基準の中に、「緊急時における専有部分への立ち入りに関する定めがあること」が必須項目として明記されています。 この規定を整備することは、固定資産税の減税措置や、マンションの市場評価向上(認定取得)に直結します。
【アクションプラン】 標準管理規約第23条(必要箇所への立ち入り)をさらに強化した細則を定めます。
- 緊急時の定義: 漏水、火災、生命の危険などを具体的に定義。
- 立会い: 第三者の立会いを必須とする。
- 免責と補償: 正当な理由に基づく立ち入りでの損害(鍵の破壊等)の費用負担を明確化。
【IT化】WEB総会・理事会細則
さらに、現役世代の参加を促す「デジタル化」も重要です。特に都市部では、「忙しくて理事を引き受けられない」という理由で、役員のなり手不足が深刻化しています。
WEB参加を認めることは、単なるIT化ではなく、「理事会機能を維持するための制度整備」という側面もあります。
【理由(定性)】 「平日の夜や休日に、集会室まで行かなければならない」という物理的な制約が、現役世代を理事会から遠ざけています。 Zoom等での参加が可能になれば、移動時間がなくなるため、忙しいビジネスマンでも参加しやすくなります。「会場に行かなくて良いなら」と、理事を引き受ける心理的なハードルが下がる効果も期待できます。
【アクションプラン】 標準管理規約でもWEB会議は認められましたが、運用ルール(細則)が必要です。
- 出席の扱い: WEB参加も「出席」とみなし、議決権を行使できることを明記。
- 通信トラブル: 切断時の扱いなどを規定。
- 招集通知の電子化: ペーパーレス化によるコスト削減も同時に進めます。
【物流】置き配利用に関する細則
さらに、生活の利便性に直結する「置き配」に関する対応です。実際には、「本当は禁止だが、現場では黙認されている」というマンションも少なくありません。
しかし、ルール未整備のまま放置すると、
・事故
・盗難
・避難障害
・住民間トラブル
が発生した際に、管理組合の説明責任が問題になる可能性があります。
【理由(定量)】 2024年問題により、宅配業界の人手不足は限界を迎えています。政府も再配達削減を強力に推進しており、置き配はもはや「インフラ」です。
【理由(定性)】 オートロック付きマンションの共用廊下に荷物を置くことは、原則として管理規約や使用細則違反(共用部分の私的使用)にあたります。 これをルールなしに黙認すると、「避難の妨げ」「美観の悪化」「盗難リスク」といったトラブルに発展します。
【アクションプラン】 「使用細則」を改正し、ルール付きで置き配を解禁します。
- 専用使用権の解釈拡大: アルコーブ等を「置き配のために一時的に使用できる」と明記。
- 免責事項: 「盗難・紛失について管理組合は一切責任を負わない」と明記。
こうしたルール整備によって、「法的に筋を通したうえで便利さを享受できる」環境を整えていきましょう。
【防衛】カスタマーハラスメント防止規定
この内容は、管理会社や現場スタッフを守るために管理組合側としても対応すべき「盾」ともいえます。近年では、「担当者が嫌がるマンション」が社内共有されるケースも珍しくありません。
結果として、
・担当変更が頻発する
・契約更新を断られる
・委託費が大幅上昇する
など、管理組合全体へ跳ね返る時代になっています。
【理由(定量)】 近年、管理会社からの「契約更新の辞退(解約通知)」が急増しています。その大きな理由の一つが、一部の住民による管理員やフロントマンへのカスタマーハラスメント(カスハラ)です。 次の管理会社がなかなか見つからず、見つかったとしても、昨今の賃上げやリスク対応費により、管理委託費が数割〜場合によっては倍近くに跳ね上がるケースもあります。
【理由(定性)】 理不尽な要求や暴言によって優秀な担当者が潰れれば、巡り巡って損をするのは管理組合自身です。「管理員さんを守ることは、自分たちのマンションの管理品質を守ること」と同義なのです。
【アクションプラン】 マンションの細則として、カスハラ防止を明確化します。
- ハラスメントの定義: 暴言、威圧的な態度などを具体的に禁止事項として列挙。
- 対応措置: 「理不尽な要求には対応しない」「悪質な場合は警察へ通報する」といった条文を盛り込む。
これにより、管理会社側も「組合が守ってくれている」と安心して業務に取り組めるようになり、良好なパートナーシップが築けます。
【ガバナンス】役員選任細則(定年制・外部専門家活用)
そして、最も重要と考えられるのが、マンション管理の根幹である「人」に関するルールです。特に近年は、
・理事長が固定化している
・総会出席者が減少している
・理事会そのものが開催できない
といった「ガバナンス不全」が、高経年マンションを中心に現実化しています。
つまり、「誰が役員をやるか」は単なる人事問題ではなく、マンションの将来を左右する管理問題になっています。
【理由(定量)】 築30年を超える高経年マンションでは、区分所有者の高齢化が深刻です。私の肌感覚でも、相談を受ける管理組合の約8割で、役員の高齢化や固定化が問題になっています。
【理由(定性)】 「いつも同じ人が理事長をやっている」「高齢で体調が優れず、理事会が開催できない」。 このような状態(理事会の形骸化)になると、重要な意思決定がすべて先送りになります。マンション管理において「決断できないこと」は最大のリスクです。
【アクションプラン】 「役員選任細則」を策定し、以下のルールを導入することをお勧めします。
- 定年制の導入: 例えば「選任時に75歳以下とする」といった年齢制限を設けることで、強制的に新陳代謝を促します。
- 外部専門家の活用: 内部でなり手がいない場合、マンション管理士などのプロを理事や監事として迎え入れる道筋を作ります。
「冷たい」と感じるかもしれませんが、管理不全に陥る前に「誰が舵を取るのか」というルールを明確にすることが、結果として資産価値を守ります。
まとめ|管理規約は「作るもの」ではなく「更新するもの」
今回は、2026年に向けて優先すべき規約・細則の改正ポイントをご紹介しました。
- 役員選任(高齢化対策・ガバナンス)
- カスハラ防止(管理品質維持)
- 置き配(利便性と物流対応)
- WEB総会・理事会(参加率向上)
- 緊急立ち入り(リスク管理・認定制度対応)
これらは単なる「ルールの変更」ではありません。 「私たちのマンションは、時代の変化に対応し、居住者と資産を守る意思がある」という、管理組合からの強力なメッセージになります。
もちろん、一度にすべての細則を改正する必要はありません。しかし、「昔からこうだった」でルールを放置し続けること自体が、管理不全リスクになり始めています。
管理規約や使用細則は、一度整備したら終わりではありません。特に近年は、
・高齢化
・IT化
・物流環境の変化
・管理会社を取り巻く環境変化
などにより、新築時のルールと実際の運用がズレ始めているマンションも少なくありません。
管理不全に陥るマンションの多くは、建物そのものよりも意思決定の仕組みや運営ルールに課題を抱えています。
まずは、自分たちのマンションで「現実には運用しているが、規約や細則に書かれていないことはないか」という視点から確認してみてはいかがでしょうか。







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