【規約解説】マンション標準管理規約第71条とは?規約外事項の対応方法を分かりやすく解説

管理規約解説

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マンション管理組合の運営では、管理規約や使用細則にすべてのルールが明記されているわけではありません。もし、規約にも法律にも明確なルールがない場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

マンション標準管理規約第71条は、このような「規約外事項」に関する基本的な対応ルールを定めています。本記事では、第71条のポイントと、管理組合や区分所有者が押さえておくべき注意点を、実務に精通しているマンション管理士が分かりやすく解説します。

【規約解説】マンション標準管理規約第71条とは?規約外事項の対応方法を分かりやすく解説

今回紹介する内容は、以下の通りです。

✅マンション標準管理規約第71条のポイント
✅「規約外事項」に関する管理組合・区分所有者の注意点

まず、最初の章では標準管理規約第71条の条文から「規約外事項」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、第71条「規約外事項」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意すべき点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第71条のポイント

第71条の条文とともに、おもなポイントについて紹介します。

この条文は、管理組合の運営ルールが規約にない場合の対応方法を定めています。主に次の2つのルールがあります。

(規約外事項)
第71条 規約及び使用細則等に定めのない事項については、区分所有法その他の法令の定めるところによる。
2 規約、使用細則等又は法令のいずれにも定めのない事項については、総会の決議により定める。

マンション管理組合の運営では、規約や使用細則にすべてのルールが書かれているとは限りません。もし規約にない問題が発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

以下、具体的に解説します。

規約や使用細則にない場合は法律に従う(第1項)

マンションのルールは「管理規約」や「使用細則」によって決められています。しかし、すべての事例を事前に想定するのは難しく、規約に書かれていないこともあります。その場合、どうするか?

「区分所有法」や「民法」などの法律を優先するというのが第1項のルールです。

例えば、管理規約に「管理費滞納者への対応」が具体的に書かれていなくても、区分所有法では「管理費の支払い義務」が定められているため、それに従う必要があります。

法律にもルールがない場合は総会で決める(第2項)

「規約にもない、法律にも明確な規定がない」場合はどうするのでしょうか?

管理組合の総会で決めることになります。総会はマンションの最高意思決定機関であり、区分所有者(住民)の多数決によって、新たなルールを決めることができます。

例えば、「マンションの敷地内にシェアサイクルを設置したい」という問題が発生したとします。管理規約にも使用細則にもルールがない場合、法律上も特に禁止されていなければ、総会で決議してルールを作ることができます。

「規約外事項」に関する管理組合・区分所有者の注意点

次に、条文ならびに、その補足事項から、管理組合や区分所有者が注意すべき点を、筆者独自の視点から紹介します。

ルールがない場合は、まず現行法に照らして考える

マンション管理では、すべてのケースに対応できる規約や細則があらかじめ用意されているわけではありません。管理組合の運営において、規約や細則に明確な定めがない事例に直面することは珍しくありません。そのような場合は、まず関連する法律を基準に判断することが重要です。

具体的には、次のような法律が関係することが多くあります。

区分所有法(マンションの所有者の権利や義務を定める基本法)
民法(管理組合と組合員の契約関係や責任など)
マンション管理適正化法(管理組合の適正な運営基準)
建築基準法・都市計画法(建物の構造や用途変更に関するルール)
消防法(防火設備や避難経路の管理)
各種税法(管理費の課税関係 など)

このように、適用される法律は多岐にわたります。法律の解釈を誤ると、後々トラブルにつながる可能性があるため、管理会社やマンション管理士、弁護士などの専門家に相談することも有効な手段です。管理組合独自の判断だけでなく、専門家の意見を取り入れることで、より適切な運営が可能になります。

「判例」を参考にすることも有効

法律に明確な規定がない場合や、規約の解釈が曖昧な場合は、過去の裁判例(判例)を参考にすることが有効です。判例は、実際に裁判で争われた事例をもとに、司法がどのように判断したかを示したものです。同じような状況での判例があれば、それを根拠に適切なルールを定めることができます。

特に、以下のようなテーマでは判例が参考になることがあります。

ペットの飼育問題(規約に明確な禁止規定がない場合の判断)
✅専有部分のリフォーム制限(どこまで管理組合が関与できるか)
✅バルコニー・専用庭の利用ルール(専有部分・共用部分の使用上の区分の問題)
✅管理費や修繕積立金の滞納処分(回収の適法性や手続き)

裁判例をもとに判断することで、管理組合が適正に運営できるだけでなく、住民間の不要な対立を避けることにもつながります。判例に基づいた対応をすることで、管理組合の決定が住民にとって納得しやすいものになるでしょう。

総会の決議によって規約の変更や細則の制定を行うのが望ましい

マンション管理のルールを明確にし、適正な運営を行うためには、総会での決議を通じて正式に規約や細則を整備することが重要です。第71条の規定にもある通り、規約や法令に定めがない事項については、総会の決議によって新たなルールを制定することが可能です。

しかし、新たに決めたルールが曖昧なままでは、将来的な運用時にトラブルの原因になりかねません。そのため、ルールは必ず明文化し、住民全員が認識できる形にすることが重要です。具体的な方法として、以下のような手段が考えられます。

管理規約の該当条文を修正する(正式な規約の改定として組み込む)
✅細則を新たに制定する(より詳細なルールを定める場合)
✅規約または細則の添付資料として追加する(特定の事項に関する補足文書を作成)

これらの方法を適切に活用することで、新しいルールを住民に分かりやすく伝え、統一的な運用を可能にすることができます。総会の決議によるルール整備は、管理組合のガバナンスを強化し、不要なトラブルを未然に防ぐためにも非常に有効な手段です。

トラブルを防ぐために「事前の合意形成」と柔軟な運用が重要

新しいルールを決める際には、総会での決議だけでなく、事前に住民同士で合意形成を進めることが重要です。十分な議論を経ずに決めてしまうと、「知らなかった」「納得できない」といった不満が生じ、トラブルの原因になることがあります。そこで、アンケート調査や説明会の開催、理事会での意見交換を行い、住民の意向をできるだけ反映させることが望ましいでしょう。

また、一度決めたルールが将来的にマンションの実情に合わなくなる可能性もあるため、柔軟な見直しの仕組みを設けることも大切です。例えば、「標準管理規約改正時には必ず見直しを行う」「5年ごとに規約の全面的見直しを行う」などのルールを設定しておくと、時代に合わせた適切な管理が可能になります。

このように、住民の合意を得ながら、必要に応じてルールを調整できる仕組みを整えることが、円滑なマンション管理の鍵となります。規約の変更は区分所有者ならびに議決権の3/4以上の特別決議による賛成が必要なため、事前に合意形成を進めることが円滑な運営の鍵となります。

まとめ|マンション標準管理規約第71条の理解と実践

マンション標準管理規約第71条は、「規約や使用細則に定めのない事項は法律に従う」「法律にもルールがない場合は総会で決める」という、管理組合の意思決定の基本を示しています。

規約外事項の対応にあたっては、以下の点に注意しましょう。

✅ ルールがない場合は、まず法律を基準に判断する(区分所有法、民法、建築基準法など)
✅ 法律にも規定がない場合は、総会の決議でルールを決める
✅ 過去の判例を参考にすることで、適切な判断ができる場合がある
✅ 新たなルールは、規約や細則を変更・制定して明文化するのが望ましい
✅ 住民間の合意形成を重視し、柔軟な運用を心がける

ルールが曖昧なままでは、将来的なトラブルにつながる可能性があります。管理組合の役員や区分所有者は、第71条の内容を理解し、適切に活用することが大切です。

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