「狙われたマンション修繕積立金、管理委託に潜むリスク(日経)」から見た管理組合対策は?

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今朝の日経の記事

狙われたマンション修繕積立金、管理委託に潜むリスク

狙われたマンション修繕積立金、管理委託に潜むリスク - 日本経済新聞
マンション修繕積立金の横領事件が後を絶たない。共働き家庭の増加や入居住民の高齢化に伴い、管理組合業務を外部委託する需要が高まっているが、不正リスクを排除するためにも住民自身による監視機能をどう維持できるかが課題だ。資金の出入りを透明化しチェ...

から記事の要約とともに、筆者なりに考察してみたことを紹介します。

マンション修繕積立金の横領事件と管理委託のリスク

修繕積立金の横領が相次ぐ背景

マンションの修繕積立金を巡る横領事件が後を絶ちません。共働き世帯の増加や住民の高齢化により、管理業務を外部委託するケースが増える一方で、住民の監視機能が低下し、不正が発生しやすい環境が生まれています。資産を守るためには、資金の透明性を高め、チェック体制を強化することが求められます。

実際に発生した横領事件の概要

大阪府内のあるマンション管理組合では、修繕積立金を管理する口座の残高がゼロになっていることが発覚。管理会社ビケンテクノの担当者が通帳を不正に操作し、9年間で14の管理組合から9億円以上を着服していたことが判明しました。

また、埼玉県では2023年6月に管理費1,200万円を着服した事件も発生しており、全国的に同様の問題が起きています。マンション管理適正化法では、管理会社が通帳と印鑑を同時に保管することを禁止していますが、違反が見過ごされていたことが不正を招く原因となりました。

住民ができる対策

不正を防ぐために、管理組合が実施すべき対策は以下の通りです。

  1. 通帳・印鑑の分離管理:理事長や住民代表が銀行印を管理し、管理会社だけで出金できない体制を作る。
  2. 定期的な通帳確認:理事会で定期的に通帳の記帳内容を確認し、預金残高証明書の真偽をチェック。
  3. オンライン化の活用:総会資料や決議のオンライン化を進め、住民が気軽に確認できる仕組みを構築。
  4. 管理会社任せにしない意識改革:管理業務を外部委託する場合も、最終的な責任は住民自身にあるという認識を持つ。

修繕積立金不足の問題

国土交通省の調査によると、築40年以上のマンションは約136万戸に達し、全体の36%で修繕積立金が不足しています。徴収方法には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」がありますが、後者では増額負担が想定以上に膨らむことが課題となっています。

2024年6月には「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が改定され、段階的な徴収額の最終値を均等方式の1.1倍以内に抑えることが推奨される予定です。これにより、計画的な積み立てが促され、修繕資金の不足リスクが軽減されることが期待されます。

マンション市場の拡大と区分所有者の意識

マンション市場は拡大を続けており、矢野経済研究所によると2022年のマンション管理市場は約8,200億円規模で、2013年比で27%増加。2030年には9,700億円(2022年比18%、2013年比で50%増加)を超えると予測されています。国土交通省の推計では、2023年末時点の分譲マンション総数は約704万戸に達し、居住者数は約1,500万人に上ります。

しかし、マンションの区分所有者の中には管理に無関心な人も多く、総会への参加率は低迷。管理を管理会社に一任する傾向が強まる中で、住民自身の監視機能が弱まり、横領などの不正を見過ごすリスクが高まっています。

管理組合として取り組みたい課題は?

拡大するマンション管理を含めたマンション市場ですが、上記の内容から、筆者も比較的紹介しているマンションの基本的対策が必要なことが読み取れます。

管理組合として取り組みたい対応策を、関連記事も参考にしながら整理します。

通帳と印鑑の分別管理

今回の横領は「区分所有者の無関心」から管理会社担当者に不正をつかれた形です。

しかしながら、区分所有者はマンション管理に関心をもって取り組む必要があるといえます。

結果的に自らの資産を守ることとなります。

そのためにも、自らのマンションが当然行われるべき「通帳と印鑑の分別管理」が出来ているか、基本的な所も確認したい所です。

よく言われれる、「イロハ」の方法です。

積極的に理事会や総会に参加する

この記事でも、横浜市立大学の斉藤教授が理事会や総会のオンライン化の有効性を言っています。

管理組合としても多くがマンション管理に興味を持って貰うべく、気軽に参加できる環境を準備していきたいところです。

管理会社任せにしない管理組合の意識

区分所有者自らが考えていく意識が重要であると考えられます。

この辺りは専門的な知識を持つ管理会社に任せがちですが、管理組合全体としても、自ら学ぶ姿勢を持ちつつ、言いなりにならないことも重要な論点と考えられます。

修繕積立金は適正かどうか

今回のメインとなる横領の件とは少し離れますが、マンション管理組合として、修繕積立金が適正に積み立てられているかどうかも確認が必要でしょう。

本来この観点が管理組合として非常に重要といえると思います。

日経記事の最後にあった、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の解説について、以下

で紹介しています。

まとめ:マンション管理に対する管理組合の主体性も問われる

マンションの管理は資産価値に直結する重要な要素です。不正を防ぐには、住民が管理会社に依存しすぎず、適切な監視体制を維持することが不可欠です。修繕積立金の適切な運用と透明性の確保に向けて、管理組合が主体的に取り組むことが求められます。

【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
yokohama-mankan

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の事前審査、修繕積立金の見直し、マンション関連コラムの執筆など幅広く活動。
また、企業経営、とりわけ財務・経理分野にも精通し、上場企業やベンチャー企業でCFOや管理部長を歴任。経営視点を活かし、マンション管理の実践的なサポートを提供している。

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