国交省 マンション標準管理規約の見直しの方向性(マン管通信より)

マンション管理

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2024年6月号のマンション管理センター通信(マン管通信)に、表題のような内容の記事がありました。

時代の移り変わりとともに、マンションとして定めるべき管理規約も変えていく必要があります。

今回はその記事の内容を少し紹介するとともに、筆者の見解も添えて記載します。

管理組合を取り巻く2つの背景から

まず、管理組合を取り巻く2つの背景として以下のものが挙げられています。

背景① マンションを巡る”2つの老い”

マンション管理において常に言われてきていますが、「建物の高経年化」と「居住者の高齢化」という、”2つの老い”は避けては通れない状況となってきています。

その背景から、以下のような様々な課題が顕在化してきています。

・マンション内の非居住化
・所在等不明区分所有者の発生
・設備等メンテナンスのための専有部分への立ち入りの必要性

これらにおいて、標準管理規約でも定めることで、今後のマンションでの各規約への更新を促していくものと考えられます。

背景② 社会情勢の変化

次に、社会情勢の変化については、管理組合においても順応に対応していく必要があると考えられます。

・EV(Electric Vehicle/電気自動車)
・宅配ボックス、置き配

電気自動車の稼働も増えてきており、マンション住民においても所有が多くなってきています。

また、現役世代は家を空けることが多い中で、配送業者における人材不足もあり、効率の観点から一度配達に来たら持ち帰るということも避ける必要がでてきています。

その場合、宅配ボックスや配達物を自宅前に置いておく置き配が一般化してきています。

区分所有者名簿の更新、居住者名簿の作成・更新

まず、区分所有者や居住者名簿の作成の重要性についてです。

背景①についてさらに具体的な背景を確認

前章の背景①について、もう少し具体的に確認すると

・マンションストック数は2022年末で694万戸
・このうち築40年以上は120万戸
・さらに20年後は3.5倍の445万戸の見通し
・令和5年度のマンション総合調査では築40年以上のマンションにおいて世帯主が70歳以上の割合が55.9%
※紙面では平成30年度のマンション総合調査で同様の割合が48%と記載

とのことです。

そして、建物の高経年化、住民の高齢化マンションでは、賃貸化や空室化による区分所有者の非居住化も進行する傾向にあります。

また、これらによって、区分所有者の所在不明が多くなり、総会決議や管理費・修繕積立金の徴収面で課題となってきています。

標準管理規約への反映について

管理組合が適切な管理組合運営を行っていくためには、区分所有者の所在を的確に把握しておく必要があります。

現行の標準管理規約では、組合員名簿の作成は規定があるものの、更新は明文化がなく、当初の組合員名簿のままとなっているケースもあるようです。

また、設備点検時や漏水時において、専有部分への立ち入りの必要性から、賃貸居住者を含む居住者名簿の作成が有効であるとの指摘もあるようです。

現在の管理計画認定制度の評価において、区分所有者と居住者の名簿があり、かつ1年に1回以上の更新を表明する必要がでていますので、今後名簿の充実は必要不可欠になってくると考えられます。

所在等不明区分所有者の探索と費用負担

前章のように、連絡先が分からず区分所有者が不明となっている場合の対応が、標準管理規約には定められていません。

そのため、今後は次のような検討がなされているとのことです。

・区分所有者が住所や連絡先の変更があって届け出をせず住所不明となり、管理費や修繕積立金の請求ができなくなった場合に、管理組合に影響を及ぼす場合には、理事長は理事会の決議で探索することができるようにする
・探索に要した費用を当該区分所有者に請求できる

現時点では、管理組合が探索費用を負担せざるを得ない状況にあります。

届け出を怠ることで、管理組合全体に影響を与えることになることから、規約に適切に定め、移転等の時には管理組合に漏れなく伝えてもらうことが重要といえるでしょう。

マンション管理情報の見える化

さらに、マンションの管理の情報が明らかになっている必要があるとして、次のような対策が検討されています。

修繕積立金の現状と変更予定等の見える化

令和5年度のマンション総合調査でも、修繕積立金の過不足について不明と答えている割合は23.5%というデータがありました。
※紙面上の平成30年度のマンション総合調査では3割と記載

このような状況を回避するために、区分所有者に対して修繕積立金の見える化をするとともに、管理組合の意思決定を適切に行う必要があると考えています。

そのため、以下のような対応を検討しているようです。

・毎年の総会で、長期修繕計画上の積立予定額と現時点の修繕積立金の積立額の差を明示
・段階増額積立方式を採用するマンションは修繕積立金の変更時期・変更予定額等を説明
・マンション購入予定者に対する管理情報提供項目例に、長期修繕計画上の修繕積立金の変更予定時期や変更予定額を織り込むこと

管理に関する図書の保管の推進

現状の標準管理規約では、総会議事録の保管規定はあるものの、議案書等の総会書類の保管規定はありませんでした。

そのため、

・総会で使用した資料についても保管に関する規定を設ける
・理事会で使用した資料についても、総会資料に準じて規定を設ける

とのことです。

確かに、これについては筆者も感じるところがあります。

管理計画認定制度の審査資料等をチェックしていると、議事録のみで、議案書がないことから、例えば「長期修繕計画案が可決されました」と記載があっても、複数計画案がある中でどの計画案が可決されたのか、議案書がないことからわからない場合もあります。

また議事録にも「どの計画案が可決されたか」なども具体的に書く必要があると感じます。

管理規約を変更した際の取扱い

マンションで管理規約改正を行った際の書面の作成、保管方法について具体的に示されていなかったとのことで、次の2通りの方法を提示するとのことです。

①規約原本とは別に、変更内容を反映した冊子を作成し、理事長が署名
②規約原本に、変更内容および理事長の署名を記載した書面を添付

最新の規約を確認しやすくする観点から①を推奨するとのことです。

確かに、②は通常の原本のあとの方に変更対比表や規約変更が行われた総会議事録を添付する形ですが、どこがどう変わったか、普段からよく管理規約をチェックしているマンション管理士でさえも分かりづらく、見過ごしてしまうこともあります。

従って、規約原本とは別で、複製で最新版の規約冊子を再配布することによって、

「これが最新版の管理規約です」

と提示したほうが、既存の区分所有者や、新たに購入した区分所有者にとっても分かりやすい規約になるのではと感じます。

ただ、変更後の規約冊子を作成するのは、正誤チェック含め比較的労力がいるので、管理組合内で運営方法を検討する必要がありそうです。

社会情勢・ライフスタイルの変化に応じた対応

最後の章では、冒頭の背景②についての、標準管理規約上での対策となります。

EV用充電設備の設置推進

令和5年6月の閣議決定により、既存のマンションへのEV用充電設備の設置を推進するために、標準管理規約のコメントにおいてEV用充電設備の設置に関する記載の充実化が定められています。

それによって、以下のような内容を織り込むことが検討されています。

・EV用充電設備を設置する際に使用上のルールや費用負担の考え方を予め定める
・設置工事を行う際の決議要件の考え方
・マンション購入予定者に対する、管理情報提供項目例にEV用充電設備の情報を記載

規約に定めることにより、今後ますます増えていくEV用設備の充実を図っていく必要があると思います。

特に築年数が古いマンションにおいては設置が少ないですが、今後標準化されていくと考えられます。

宅配ボックスの設置に係る決議要件の明確化

政府としても、宅配便の再配達を削減するため、宅配ボックスの設置を推進することを定めています。

また、近年普及しつある置き配についても、一定のルールが必要であると考えているようです。

そのため、標準管理規約や細則でも、以下のような内容を織り込むことが検討されています。

・宅配ボックスの設置工事を行う際の決議要件の考え方
・新たに置き配に関する使用細則を定める際のポイントを紹介

ITを活用した監査

コロナ禍によるライフスタイルの変化として、前回の令和3年6月に改正された標準管理規約では、総会や理事会をWEB会議システムを用いて実施可能であることが明文化されています。

さらに、今後の標準管理規約改正では、監事が業務執行状況や財産状況の監査を行う際に、遠隔地からでもWEBを活用した形で実施可能な点も、コメントに入れるとしています。

監査においては、WEB会議システムを通じた理事へのヒアリングや書面の投影、電子的媒体を通じた書面のやり取り等、必ずしも現場にいなくても監査ができる環境が十分構築できると考えられます。

したがって、特に監査においても必ずしも実地でやる必要はないといえるでしょう。

まとめ

国土交通省として、今回の標準管理規約改定において、管理組やいや管理業者、マンション管理士等、マンションに関わる関係者からのアンケートやパブリックコメントを通じて検討してきているとのことです。

時代の流れとともに、管理のしやすさを考えていく必要があり、管理組合としても柔軟に対応していく必要があります。

逆に、時代の流れに柔軟に対応できない場合は、若い区分所有者が入ってこないような旧態依然の管理組合となり、ますます”2つの老い”が促進すると感じます。

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