2025年7月1日に横浜市がマンション管理組合向けに「役員のなりすましにご注意ください!!」という注意喚起を出しています。
今回はこの注意喚起について、マンション管理士の立場から解説したいと思います。
※当コラムならびにYouTube解説、そして制作元の横浜マンション管理・FP研究室は、横浜市とは無関係であり、研究室が管理組合啓蒙のために自主的に紹介しているものです
横浜市の注意喚起の内容
まず、横浜市の注意喚起の内容について、ポイントを中心に確認していきます。上記のURLを確認頂ければわかりますが、ホームページに掲載された内容は以下の内容です。
修繕工事の契約にあたって管理組合役員へのなりすまし事件が発生した
✅大規模修繕のための修繕委員会に、区分所有者と偽り工事施工会社の従業員が出席
✅自社の工事に誘導するといった事件が発生
✅大規模修繕工事は費用が高額ながら、管理組合には専門知識がない
✅そのため、大規模修繕工事に素人の管理組合が狙われた
顔見知りの関係を築きつつ、本人確認も
✅なりすまして複数回、大規模修繕委員会に出席した人物について、他の委員会メンバーはなりすましに気付けず
✅マンションには多くの区分所有者がおり、すべての住民と面識を持つことは困難
✅このような事件を防ぐには、日々の住民間コミュニケーションが重要かつ効果的
✅管理組合の役員等になった際は、本人確認を実施することも要検討
マンション管理士等の専門家の活用も
✅なりすましだけでなく工事会社の談合など、大規模修繕工事を取りまく事件が多い
✅身を守るためには、第三者の専門家活用も要検討
✅マンション管理には、マンション管理士という国家資格がある
✅そのマンション管理士に依頼し、中立な専門家の目を通してチェックしてもらうことも可能
マンション管理士へのお試し相談の紹介
横浜市では、マンション管理士など専門家への相談に対する支援制度もあります。
筆者から見ても、確かにそれぞれ大切な論点だと思って確認しました。以下、補足説明をいたします。
大規模修繕工事において管理組合として考えておきたいことは?
上記のような横浜市からの注意喚起はあるものの、実際に管理組合としてはどのようなことを考えておけばよいのでしょうか。
筆者が考える点について、具体的に紹介します。
役員なりすまし事件の現状確認
まず、そもそもなりすまし事件というのは、どういったことが起こったのでしょうか?横浜市はもちろん具体的に紹介していませんが、以下の記事に詳しく紹介されています。
また、朝日新聞の記事には一部生々しい動画も掲載されていました。
現代ビジネスの記事には、ミステリーショッパーのような形で住民に近づき、アンケートを回答させることで、マンションの情報を入手していたようです。
また、「グッド!モーニング」2025年7月5日放送分でも動画が共有されています。
管理組合として参加者が誰だかわかる状態になっているか?
そのようなことは当然…と思われる管理組合も多いかもしれませんが、現状事件が発生したということは、区分所有者間でその方が誰だか、はっきりわかっていなかったという事です。
大規模修繕工事のタイミングを想定しながら、急遽引っ越してきたりする場合もあるかもしれません。また、横浜市の説明のように、区分所有者を装って、修繕委員会に参加することも想定されます。
そのため、委員会等を作ってプロジェクト形式で行う場合には、管理組合内において、
✅お互いに何号室に住む誰なのか、自己紹介が不可欠
✅できれば、居住が浅い区分所有者ではなく、比較的マンションの事を知っている数年は居住している区分所有者を選ぶ
✅大規模修繕工事において、参加者が利益相反行為に及ばないかの誓約書を提出する
などの取り決めは必要になってくるかもしれません。
信頼できる専門家の活用が重要
横浜市でも「マンション管理士など専門家相談に対する支援制度」という紹介がありましたが、まずは相談窓口から入って行くことが重要です。
特に横浜市はマンションが非常に多い地域でもあるので、支援施策が充実していますが、他の多くの自治体でもマンション支援施策を行っています。不安ならばまずは相談してみることが重要でしょう。
そして、マンション管理士会や建築士会など、公的な機関に所属する専門家への相談も有効的です。
企業やマンション管理士・建築士事務所などがダメという訳ではないですが、不安である場合は公的機関から入っていくことがお勧めです。
ただし、公的機関を活用することや、企業・士業事務所を使うことについては、双方メリット、デメリットも考えられます。
公的機関活用のメリット・デメリット
自治体やマンション管理士会、建築士会等を活用するメリットやデメリットは、以下の通りです。
【メリット】
✅初回相談は無料で対応して貰える
✅相談料が掛かったとしても比較的安い
✅複数人で相談に乗ってくれる可能性がある
対するデメリットとしては、以下の様な点が考えられます。
【デメリット】
✅担当者のスキルに左右される
✅相談員の中には、専門外や業務経験が浅い人もいる
✅プロジェクトによっては担当者個人では手に負えない場合もある
企業やマンション管理士・建築士事務所活用のメリット・デメリット
また、企業や士業事務所を活用するメリットやデメリットは以下の通りです。
【メリット】
✅開業している方が中心のため自治体の相談員よりもスキルやノウハウがある
✅実業でやっているため、スケジュール遵守やスピード感等ビジネス感覚がある
✅資格や実績等が紹介されていることが一般的で、比較検討しやすい
対するデメリットとしては、以下の様な点が考えられます。
【デメリット】
✅初回相談は無料の場合もあるものの、それ以降は費用がかかることが一般的
✅自治体相談員等よりもスキルを持っていることから、費用がより掛かる
✅不適切コンサルタントの存在が懸念される
昨今話題になっているマンション修繕工事の問題は、設計監理を行う不適切コンサルタントの影響も少なからずあります。
これは企業や士業事務所以外でも、相談員の中にも含まれるかもしれないですが、改めて回避する方法をとる必要があると考えられます。
具体的には、以下の人気コラム
で管理組合としての自己防衛策についても紹介していますので、合わせて確認してみて下さい。
談合問題に役員のなりすまし事件…難題も多い大規模修繕工事は慎重に検討したい
今回は横浜市の注意喚起から、現状課題を洗い出しながら紹介しました。
ご承知の通り、大規模修繕工事は億単位の金額が動きます。加えて、職人をはじめとする人件費や材料費の高騰など、工事代金も年々高騰する傾向にあります。そのため、管理組合に関与する工事関係者は、ビジネスの絶好の機会という事で非常に注目します。
そして、最近大きな問題となっている修繕工事の談合問題や、今回紹介した役員のなりすまし事件なども、素人集団である管理組合を相手に発生しています。
大規模修繕工事の際には、管理組合としては上がってきた情報に対して、多面的なチェックしながら、合理的な判断が求められます。自己防衛を行うためにも、日ごろからアンテナを張りながら最新情報をチェックして臨む必要がありそうです。
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