マンションの規約や総会決議、きちんと守っていますか?
マンションの円滑な運営を維持するためには、区分所有者と同居人、賃借人含めて全てのマンション居住者が規約や総会決議を誠実に遵守することが求められます。
しかし、実際には規約を知らずに違反してしまったり、総会決議を守らないことによるトラブルが少なくありません。
今回は、マンション標準管理規約第3条「規約及び総会の決議の遵守義務」を、マンション管理士である筆者が徹底解説し、区分所有者として守るべき重要なルールを整理します。
【規約解説】規約と総会決議は守らないと?マンション標準管理規約第3条を徹底解説
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・「規約及び総会の決議の遵守義務」に対して管理組合や組合員が気を付けておくべき事項は?
まず、最初の章では標準管理規約第3条の条文から「規約及び総会の決議の遵守義務」についてそのままの文面を紹介します。
一方で、今回の第3条は補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されていません。
そのため、最後の章では第3条「規約及び総会の決議の遵守義務」の条文や一般事例を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第3条とは?区分所有者の義務を解説
マンション標準管理規約第3条は、管理規約で記載されていることや管理組合総会で決まったことについて、区分所有者は守らなければならないと定めています。
また、区分所有者だけではなく、同居する家族にも守らせる必要があるとしています。
条文は以下の通りです。
第3条 区分所有者は、円滑な共同生活を維持するため、この規約及び総会の決議を誠実に遵守しなければならない。
2 区分所有者は、同居する者に対してこの規約及び総会の決議を遵守させなければならない。
それぞれの項目について、解説します。
第1項 区分所有者の遵守義務とは?
第1項では、「区分所有者(組合員・マンションの各住戸の所有者)」が 規約や総会の決議を誠実に遵守する義務を負うことが明記されています。
規約や総会決議との関係
これは、マンションの円滑な共同生活を維持するために不可欠なルールです。
また、マンションは多数の人が共同で生活する場であり、 個々の所有者の判断だけで自由に振る舞うとトラブルが生じる可能性があります。
そのため、管理組合の共通ルールとして「管理規約」を定め、さらに必要に応じて「総会の決議」で細かいルールを決めます。
違反時のリスク
第1項では、区分所有者がこうしたルールを誠実に守る義務があることを規約内で改めて強調しています。
守るべきルールの例としては、
・管理組合総会で駐車場の利用方法の変更が決議された場合、それに従う必要がある
などが挙げられます。
第2項 同居者にも管理規約を守らせる義務とは?
そして、第2項では、区分所有者が 「同居する者」に対しても規約や総会の決議を守らせる義務を負うことが明記されています。
なぜ同居者も守る必要があるのか?
マンションには区分所有者本人だけでなく、その家族・親族・賃借人(賃貸で住んでいる人)・友人等の同居人などが住むこともあります。
また、専有部分を共有(共同所有)している他の区分所有者にも守ってもらう必要があります。
もし区分所有者だけがルールを守っても、同居者が勝手な行動をすれば、マンション全体の秩序が保たれません。
そのため、区分所有者には「同居する者にもルールを守らせる責任」があるとされています。
具体例としては、
・専有部分だけでなく、廊下やエレベーター等共用部分での決まり事も同様である
などが挙げられます。
賃貸に出している場合の注意点
賃貸に出している場合も、借主(賃借人)にも管理規約を守らせる義務があります。
次章で詳細は解説しますが、
・入居時に管理規約や使用細則のコピーを渡す
などは必要となるでしょう。
「規約及び総会の決議の遵守義務」で管理組合や組合員が注意すべき点
この章では、マンション標準管理規約第3条の「規約及び総会の決議の遵守義務」条文に対して、筆者が管理組合や区分所有者において気を付けておくべき事項を紹介します。
区分所有者は賃借人に対しても管理規約や使用細則を共有し、遵守させる
区分所有者が自らの物件を賃貸に出す場合、賃借人に対しても、管理規約や使用細則の記載事項について、遵守させる必要があります。
多くの場合は、賃借人の入居時にそれらを共有することで、マンション内のルールを守ることを義務付けることも多いでしょう。
また、共有されておらず、ルールを知らなかった等が無いように、区分所有者の責任で対応することが望まれます。
具体的な対応策としては、以下のようなものが考えられます。
賃貸借契約書に「管理規約を守る義務」を明記する
管理規約の遵守を徹底するために、賃貸借契約書に「賃借人は管理規約を遵守すること」を盛り込むことが重要です。
契約書に明記しないと、賃借人が「規約を知らなかった」「守る義務はない」と主張する可能性があるため、特約条項として明記しておきましょう。
入居時に管理規約や使用細則のコピーを渡す
賃借人が管理規約や使用細則の内容を把握していないと、ルール違反が発生する可能性があります。
そのため、契約締結時に管理規約と使用細則のコピーを渡し、重要なルール(ゴミ出し・騒音・ペット飼育など)を説明するのが望ましいです。
区分所有者又は、媒介する不動産会社が説明する必要があるでしょう。
管理規約や使用細則違反があった場合の対応
もし賃借人が管理規約に違反した場合、管理組合から貸主(区分所有者)に対して注意や指導が入ることがあります。
その際、貸主は賃借人に対し、速やかに是正を求める義務があります。
場合によっては、契約違反として賃貸契約の解除要件になることもあるため、事前に管理規約を遵守するよう徹底することが大切です。
そして、管理規約を賃借人に周知せず、違反を放置すると、管理組合とのトラブルにつながる可能性があります。
さらに、貸主自身が管理組合から責任を問われることもあるため、しっかりと管理することが求められます。
一方で、賃借人の程度が過ぎると義務違反行為となる場合があるため、注意が必要です。
管理組合は総会決議の内容を区分所有者に確実に伝達する
総会については、議決権行使のみで当日出席していなかったり、さらには議決権行使もしていない、そして議案書も読んでいないという区分所有者もいるかもしれません。
どのマンションにおいても、マンション管理に無関心である区分所有者も一定数はいることが想定されます。
そのため、管理組合として総会でどのようなことが決議され、新たなルールとして何が加わったのか、区分所有者にも知らせていくことが求められます。
具体的には、議事録の共有や、議案書に対する決議事項の共有などが当てはまるでしょう。
そして、特に重要なルールは、新たなルールを掲示することも必要かもしれません。
総会に出席していない区分所有者が知らなかったということにならないような配慮も必要と考えられます。
区分所有者は議案書・議事録を確認し、総会決議を遵守する
対する、区分所有者は総会で何が決議されて、新たにどのようなルールが採用されることとなったのか、議案書や議事録を確認する必要があります。
管理組合から配布されているにも関わらず、知らなかった…ということが無いようにしたいものです。
本来なら、疑問があれば事前に質問状を出したり、総会に出て質疑を行うことが求められます。
しかしながら、当日の都合により、やむを得ず欠席となる場合もあるでしょう。
後日、決議されたことについて分からない場合は、具体的に管理組合や役員、または管理会社等に質問することも必要です。
区分所有者は同居人にも総会決議の内容を共有する
第2項にあるとおり、決議事項を遵守するのは、同居人も含まれることとなります。
そのため、区分所有者は新たに総会で決議され、採用されたルールを、家族や親族等の同居人にもm共有する必要があります。
区分所有者は賃借人に変更されたルールを適切に伝える
さらに、区分所有者は、賃借人等の占有者にも新たなルールを共有する必要があります。
賃借人は、区分所有者から直接情報が入らず、ルールが徹底されないことも考えられます。
その場合は、管理組合として、全住戸に対して新たな総会決議ルールを共有することや、新ルールを掲示するなどの対策も考えられます。
総会や管理規約・使用細則のルールは全員が遵守する
今回は、マンション標準管理規約第3条から「規約及び総会の決議の遵守義務」をピックアップして、その条文とともに、筆者が注意しておくべき事項を紹介しました。
管理組合で新たに決まったルールは、区分所有者だけではなく、同居している家族や親族、友人、さらには賃借人を含めた、居住者全員が遵守する必要があります。
そのため、総会や管理規約・使用細則等の変更時には速やかに、居住者全員に共有することが求められます。
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