マンションの共用部分や敷地を、管理会社や外部業者に使用させるケースは珍しくありません。例えば、管理人室や電気室、ガス供給設備などは、管理業務やインフラ維持のために外部の事業者が利用することが一般的です。
しかし、管理組合が第三者に敷地や共用部分を貸し出す場合、どこまで認められるのか?有償・無償の基準は?総会の決議は必要なのか?といった疑問を抱える方も多いでしょう。
本記事では、マンション標準管理規約第16条の条文をもとに、その基本的な考え方や国土交通省の補足説明、マンション管理士から見た管理組合として必ず押さえておきたい注意点を詳しく解説します。
マンション標準管理規約第16条とは?共用部分の第三者使用のルールを解説
今回紹介する内容は、以下の通りです。
✅国土交通省の見解|マンション標準管理規約第16条の補足説明
✅「敷地及び共用部分等の第三者の使用」に関する管理組合・区分所有者の注意点
まず、最初の章では標準管理規約第16条の条文から「敷地及び共用部分等の第三者の使用」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第16条「敷地及び共用部分等の第三者の使用」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第16条の基本ルールと適用範囲
マンションの管理組合が、敷地や共用部分を第三者に使用させる場合、どのようなルールがあるのかを定めたのが標準管理規約第16条です。
以下、その条文となります。
一 管理事務室、管理用倉庫、機械室その他対象物件の管理の執行上必要な施設 管理事務(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下「適正化法」という。)第2条第六号の「管理事務」をいう。)を受託し、又は請け負った者
二 電気室 対象物件に電気を供給する設備を維持し、及び運用する事業者
三 ガスガバナー 当該設備を維持し、及び運用する事業者
2 前項に掲げるもののほか、管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部について、第三者に使用させることができる。
条文の内容を分かりやすく解説し、管理組合役員や居住者が理解しやすいように説明します。
共用部分の使用に関する基本的な考え方
マンションの敷地や共用部分は、基本的には区分所有者全員の共有財産です。しかし、管理業務のために特定の施設を外部の事業者が使用することもあります。また、場合によっては総会の決議を経て第三者に使用させることも可能です。
第16条第1項|第三者が使用できる共用施設とは?
管理組合は、以下のような共用施設を第三者に使用させることができます。
管理事務室・管理用倉庫・機械室|管理会社が使用する施設
使用者:管理業務を受託・請け負った業者(管理会社など)
管理事務室や管理用倉庫、機械室などは、マンションの適切な運営を行うために管理会社が使用します。例えば、管理人が常駐する場合には管理事務室が必要ですし、清掃用具や備品、修繕資材を保管するための倉庫も必要になります。
電気室|電力会社が維持・運営する設備
使用者:マンションに電気を供給する電力会社
マンションに電力を安定的に供給するための設備が設置されている電気室は、電力会社が管理し、維持・運用を行います。
ガスガバナー|ガス会社が管理する設備
使用者:ガスの供給を行う事業者
ガスの供給設備である「ガスガバナー」も、ガス会社が維持・運用を行うため、管理組合がその使用を認める必要があります。
第16条第2項|総会決議が必要な第三者の使用とは?
上記の例以外にも、管理組合の総会の決議を経ることで、敷地や共用部分の一部を第三者に使用させることができます。ただし、以下の点に注意が必要です。
✅第三者への使用が管理組合の利益につながるか慎重に判断する必要がある
例えば、敷地内をカーシェアステーションやLUUPのポートとして貸し出すケースや、屋上の一部を通信事業者にアンテナ設置用として貸すケースなどが考えられます。このような場合は、住民の利便性や収益性、生活への影響などを考慮し、総会での決議を経て使用を許可することが重要です。
国土交通省の補足説明|共用部分の使用に関する重要ポイント
次に、第16条において、国土交通省は次の2点について補足しています。
それぞれ筆者の解説も交えながら紹介します。
有償か無償か?使用条件を明確にする必要性
共用部分を第三者に使用させる場合は、有償か無償かを明確にし、有償の場合は適正な使用料を設定することが求められます。特に、管理組合が収益を得る形で共用部分を貸し出す場合は、使用料の算定基準を明確にし、不公平が生じないようにすることが重要です。
第16条第2項の具体例|広告塔や看板の設置ルール
総会決議を経て第三者に共用部分を使用させるケースの代表例として、広告塔や看板の設置が挙げられます。例えば、マンションの外壁や敷地の一部に広告スペースを設けることで、管理組合の収益源とすることが可能です。ただし、景観や住民の意見を考慮し、総会決議を通じた慎重な判断が求められます。
管理組合・区分所有者が知っておくべき注意点と実務対応
最後の章では、第16条条文ならびに、国土交通省の補足を踏まえて、筆者独自の視点から管理組合や区分所有者にとって注意すべき事項を紹介します。
管理業務に必要な施設は無償で貸与される理由
管理員が使用する管理事務室や、清掃用具が入っている倉庫などは、無償で使用させる必要があります。
仕事で必要な施設であるためです。
普段サラリーマンで会社で働いている人なら、会社の業務のために貸与されるパソコンや机、さらにはオフィスなど、就業のために賃料を払うということはないでしょう。
同様の考え方で、マンション管理に関する業務においては、無償で貸与するのが一般的です。
共用部分の貸与は収益事業になり得る?税務リスクも解説
マンション管理とは直接関係ない第三者への貸与は、それに対する対価を受領することが多いでしょう。
屋上の看板であったり、敷地内のカーシェアやシェアサイクル、さらには電話会社のアンテナ基地局などもそれに該当します。
対価を徴収する場合は管理組合の収益化事業になることから、納税義務が発生する可能性もあります。
第三者への貸与は総会決議が必要?住民合意の重要性
管理組合としては、新たに収益化するものや、そうでないものを含めて、管理組合やマンション管理に関わる以外の第三者の使用を許可することも考えられます。
その場合には、第三者が敷地や共用部分に出入りすることも考えられます。
そのため、区分所有者の合意を取ることが望ましいと言えます。
第2項の解説でも説明しましたが、第三者への貸与は「その他管理組合の業務に関する重要事項」として、総会の普通決議で議案を承認するのが良いでしょう。
無償と有償の判断基準|管理組合が知っておくべき重要ポイント
今回はマンション標準管理規約第16条「敷地及び共用部分等の第三者の使用」について解説しました。
マンション管理に関する業務等であれば、無償で貸与する一方で、第三者に貸与するものであれば有償化することも考えられます。
とりわけ、後者の場合は、区分所有者の間での合意形成を取りつつ、収益化事業として納税等一定の手続きを取る必要がある点にも注意が必要です。
コメント