マンションのバルコニーや専用庭は、各住戸についているものの、実は「共用部分」に分類されることをご存知でしょうか?
しかし、多くの場合「専用使用権」が認められ、特定の区分所有者が使える仕組みになっています。
この専用使用権にはどのようなルールがあるのか、標準管理規約第14条をもとに詳しく解説します
また、管理組合や区分所有者が知っておくべき注意点についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
【規約解説】マンションのバルコニー・専用庭は誰のもの?標準管理規約第14条を徹底解説!
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・ 国土交通省の解釈|マンション標準管理規約第14条に関する公式見解
・管理組合・区分所有者が知っておくべき「バルコニー等の専用使用権」の注意点
まず、最初の章では標準管理規約第14条の条文から「バルコニー等の専用使用権」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第14条「バルコニー等の専用使用権」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第14条のポイントと専用使用権の基本ルール
マンション標準管理規約第14条では、専有部分に紐づいている共有部分でもあるバルコニー等の専用使用権についての条文です。
第14条 区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。
2 一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。
3 区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。
マンションのバルコニーや専用庭は、各住戸に付属しているように見えますが、実際には共用部分です。しかし、特定の住戸の区分所有者だけが使用できる「専用使用権」が認められています。標準管理規約第14条では、この専用使用権についてルールを定めています。
それでは、各項目ごとに詳しく解説します。
第1項|バルコニーや専用庭の専用使用権とは?
バルコニーや専用庭は共用部分ですが、区分所有者が個別に使える「専用使用権」が認められます。この専用使用権は、区分所有者に「所有権」があるわけではなく、あくまで使用を認める権利です。そのため、管理規約で定められた使い方を守る必要があります。
✅しかし、規約で定めることで特定の区分所有者が使用できる。
✅使い方には管理規約や管理組合のルールが適用される。
例えば、バルコニーに物置を置いたり、喫煙をしたりする場合、管理規約で制限がある場合があります。トラブルを避けるためにも、「共用部分だけど専用使用権がある」という特性を理解し、管理規約を確認することが重要です。
マンション管理規約「別表第4」とは?バルコニー等の専用使用権を解説
マンション標準管理規約の巻末についている別表第4とは、以下のような表となります。
専用使用できる部分の種類一覧|バルコニー・専用庭・ルーフバルコニーなど
専用使用部分の種類として、以下のものが挙げられます。
✅玄関扉:玄関の扉も専用使用部分として位置づけられます。
✅窓枠・窓ガラス:窓枠、窓ガラス一体が専用使用部分です。
✅1階に面する庭:いわゆる専用庭と言われる部分です。1階の住戸には敷地内に設置されているマンションもあります。
✅屋上テラス:いわゆるルーフバルコニーと言われる部分です。その下には住戸があることがあります。
専用使用権を持つのは誰?
専用使用部分は誰が使用できるのかが明確に示されています。
バルコニー、玄関扉、窓枠・窓ガラスは各部屋にあるため、「当該専有部分の区分所有者」と表記されることが一般的です。
一方で、1階の専用庭や屋上テラスは、特定の住戸に紐づけられた形で専用使用が認められます。
ただし、これらはあくまで「専用使用権」であり、「所有権」ではないため、管理組合のルールを遵守する必要があります。
第2項|専用庭の使用料は誰が払う?
次に、第2項について解説します。
1階住戸にある「専用庭」は、他の共用部分とは異なり、使用料を支払う義務が発生することがあります。これは、庭の維持管理に関する費用をカバーするためです。
✅使用料の金額や支払い方法は、管理規約や使用細則、総会決議で定める。
✅専用庭の維持管理(草刈り・清掃など)も区分所有者が行うことが多い。
例えば、あるマンションでは「専用庭の使用料は月額1,000円」と定めているケースもあります。専用庭の管理費用を負担する形となるため、購入前や引っ越し前に、管理規約や使用細則を通じて、使用料の有無を確認しておく必要があるでしょう。
第3項|マンションを貸すとき、専用使用権はどうなる?
マンションの区分所有者が部屋を賃貸に出した場合、借主(賃借人)もバルコニーや専用庭などを使用できる、という規定です。
✅ただし、専用使用権のルールは管理規約に基づくため、借主も従う必要がある。
✅区分所有者が賃貸する際には、借主に管理規約や使用細則、さらには総会決議事項を説明しておくことが重要。
例えば、マンションによっては「バルコニーでの喫煙は禁止」「エアコンの室外機は指定の位置に設置」などのルールがあります。借主が知らずに違反してしまうと、管理組合とのトラブルにつながるため、貸主(区分所有者)は事前にルールを説明することが望ましいです。
国土交通省の解釈|マンション標準管理規約第14条に関する公式見解
次に、第14条の条文に対して、国土交通省が補足している事項が3点あります。
それぞれについて、筆者の解説付きで紹介します。
バルコニーや専用庭は「共用部分」?管理規約上の位置づけ
まず、国土交通省が挙げる最初の補足説明です。
マンションのバルコニーや玄関扉、窓枠、専用庭、屋上テラスは、構造上は建物全体の一部であり「共用部分」です。しかし、それぞれの住戸に直結しているため、事実上、特定の区分所有者しか使えない部分になっています。
そこで、専有部分(自分の部屋)と一体として使うことを前提に「専用使用権」を認めるルールが定められています。つまり、「自分専用のものではないが、実際には自分だけが使える」という位置づけになっています。
✅専有部分と一体で使えるため、特定の住戸に専用使用権が割り当てられている
✅管理組合がルールを定め、専用使用権の範囲を明確にすることが重要
この考え方を理解しておくと、バルコニーの清掃・修繕の負担や、火気使用の禁止などのルールの根拠が分かりやすくなります。
専用使用権は「完全な権利」ではない?管理のために立ち入り可能なケース
次に、バルコニー等は管理のために立ち入ることがあるという国土交通省の補足事項です。
✅バルコニー内で避難経路をふさがない
✅玄関扉・窓の外観を変更しない
✅専用庭を物置や駐車スペースにしない
✅大規模修繕の際には、バルコニーの足場設置や塗装作業のために一時的に使われる
✅玄関扉や窓の修理で、管理組合がチェックを行うことがある
✅「工作物設置の禁止」(サンルームの設置、物置の設置など)
✅「外観変更の禁止」(派手なシールを窓に貼る、玄関扉を好きな色に塗るなど)
専用使用部分は共用部分であり、管理組合の許可なしに勝手に改造できないことを理解しておくことが大切です。
バルコニーや屋上テラスの専用使用料|徴収基準と負担者のルール
3つ目は、専用使用料徴収についての国土交通省の補足事項です。
マンションによっては、すべての住戸にバルコニーや専用庭、屋上テラスがあるわけではないことがあります。例えば…
✅ 1階住戸だけに専用庭がある
✅ 最上階住戸だけに屋上テラスがある
このような場合、専用部分がある住戸とない住戸で公平性の問題が出てきます。そこで、管理組合は「専用使用料」を設定して、専用使用できる区分所有者に負担を求めることができます。
✅専用庭のある住戸だけが庭を利用できる→公平性を考え、利用者が管理組合に費用を払う仕組みにする
✅屋上テラスが最上階の住戸のみ使える→特別な権利なので、使用料を設定する
実際には、専用使用料の有無や金額は管理規約や使用細則で定めるため、マンションごとに異なります。 また、専用使用料は修繕費用や共用部分の維持管理に充てられるため、管理組合の運営上も重要なポイントとなります。
管理組合・区分所有者が知っておくべき「バルコニー等の専用使用権」の注意点
最後の章では、第14条の条文並びに、国土交通省の補足事項を踏まえて、マンション管理士である筆者独自の視点から、管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良い点を紹介します。
バルコニーや専用庭は自由に使えない?専用使用権の制約
バルコニーや専用庭等、自分専用で使用できることから、使いやすいように使うことも多いでしょう。
しかしながら、管理規約や使用細則にしたがって、使用上の注意を守りながら使う必要があります。
とくに広いルーフバルコニーなどは、使用できる範囲が多くなります。
こちらもルールに従って使用する必要があります。
広いからと言って、倉庫を設置したり専用庭を掘って畑を作るなど、禁止されている事項については慎む必要があります。
パイプスペースも専用使用権の対象?管理規約での取り扱い
自らの住戸のそばにある、配管を通す場所として、パイプスペースという空間があります。
こちらもちょっとした倉庫代わりに使用することも考えられます。
しかしながら、管理組合ではパイプスペースの扱いも決められています。
何か物を置いたことによって、配管が劣化するなどが無いように、管理規約や使用細則を確認することが必要です。
理事長や修繕委員が立ち入り可能?専用使用部分への管理組合の関与
階下に対する漏水等が発生した場合、その調査が必要になることもあります。
そのため、バルコニーやルーフバルコニーの確認のために、理事長や修繕委員、さらには理事長が委任した工事業者や管理会社が立ち入ることがあります。
実際に大規模修繕工事においては、ベランダに足場を組んだり、塗装を行うことがあり、工事中に工事業者や職人、またチェックする修繕委員が立ち入ります。
そのようなことも想定して、普段からバルコニー等は整理整頓しておくとともに、室内に対するセキュリティやプライバシーの確保のための対策もしておく必要があるでしょう。
バルコニーの故障・劣化時、修繕費は誰が負担する?
通常バルコニーや窓ガラス等の専用使用部分は、計画修繕にて管理組合が工事を行うこととなります。
その場合は、おもに修繕積立金から取り崩すことによって工事代金とするため、管理組合持ちです。
ただし、ドアの故障や窓ガラスのひび割れ、さらにはサッシの劣化等で居住環境に大きな影響を及ぼすこともあります。
その場合は、区分所有者の責任と費用負担で実施することができるという定めがマンション標準管理規約第22条にあります。
ちなみに、この件についてはマンション標準管理規約第22条の解説
で細かく紹介していますので、合わせてご参照ください。
バルコニーの改修・変更は可能?管理組合のルールを確認
やむを得ず、窓ガラスや窓サッシ、玄関ドアの交換については、注意が必要です。
他の住戸と統一性を持たせるためにも、同様の仕様や規格にあったもので交換することが重要です。
同一メーカーの同一型番のものであれば尚良いですが、時代とともにメーカーも新製品を発売します。
そのため、なかなか他の住戸と合うものが無いかもしれません。
とりわけ、これまでドアや窓サッシ等、交換をしたことがない高経年マンションにおいては、メーカーも在庫を持ち合わせていないのが一般的です。
そのような場合は、管理組合と十分整合をとり、交換しても問題ない、あるべき製品であることが求められます。
専用使用権は所有権ではなく、管理組合のルールに従う必要がある
標準管理規約第14条では、バルコニーや専用庭が共用部分であるものの、特定の区分所有者が使用できる「専用使用権」が認められていることがわかりました。
しかし、専用使用権は所有権ではなく、管理組合のルールに従う必要があります。
特に、
✅ 使用方法の制限(物置の設置・喫煙・外観変更など)
✅ 管理組合によるメンテナンス時の立ち入り
✅ 専用庭や屋上テラスの使用料の発生
などは注意が必要です。
専用使用権を正しく理解し、ルールを守ることで、快適なマンション生活を維持していきましょう!
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