急遽今期をもって管理会社から契約を終了すると言われた…
または、
来年以降は管理組合と契約しない旨、管理会社の担当者から通知された…
このような管理組合も非常に多くなっているようです。
筆者のところにも、同様の問い合わせが比較的来るようになっています。
まだ管理会社から値上げを通知されたという段階であれば、管理組合として、
値上げを受け入れるか、または、管理会社の変更を検討するか
という二択であるため、まだましだといえます。
とりわけ前者における
急遽管理会社から契約終了を言われた
場合は管理組合としてあとがないため、非常に困りますよね…。
今回はこの対応策について、これまでこのような課題に対応してきているマンション管理士である筆者が解説します。
急に管理会社から契約終了を言われた…管理組合が取るべき対処方法は
今回紹介する内容は以下になります。
・管理組合が取るべき対応方法は?
・マンション管理組合にとって管理会社を変更するメリットは?
・逆に管理会社を変更するデメリットは?
マンション管理組合役員をやっている間に、急遽管理会社から契約終了を言われると焦ります。
契約が終了すると、自分たちで管理をしなければならないのか…
そんな不安もよぎってしまいます。
一方の管理組合としては、次に管理してもらう管理会社を探さなければなりません。
また、管理会社に継続するための条件を聞き出すことも考えられますが、管理組合として到底飲めない条件を提示される可能性もあります。
そのような管理組合の急な課題に対応するための対策を、具体的な例を挙げながら紹介します。
令和5年度マンション総合調査から見る管理会社変更の傾向は?
まず現状把握として、管理会社変更の傾向をデータから確認します。
具体的には、国土交通省が発表した令和5年度マンション総合調査に、管理組合における管理会社変更の傾向が紹介されています。
令和5年度マンション総合調査の傾向は?
総合調査では、「マンション管理業者の決定方法」という項目に、
・分譲時に分譲業者が提示したマンション管理業者に委託していたが、その後現在の管理業者に変更
という項目があります。
引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より
全体の傾向として、
・分譲後から変更した管理業者:24.5%
という割合です。
その他、不明を除くと、4分の1以上が管理会社を変更しているというデータになります。
データには、最近完成したマンションも含まれているので、次項で完成年次別を確認します。
完成年次別の傾向は?
完成年次別の傾向を見ると、古いほど管理会社を変更している傾向が見られます。
例えば、築50年を超える昭和49年以前に完成したマンションは、
・分譲後から変更した管理業者:53.5%
という割合であり、その他、不明を除くと8割以上のマンションが管理会社を変更しています。
その他が27.9%と多いのは、自主管理を行っているマンションも含まれると考えられます。
また、築30年程度の平成6年頃に建ったマンションでは、
・分譲後から変更した管理業者:36.4%
という割合であり、その他、不明を除くと4割弱のマンションが管理会社を変更しています。
さらに、令和2年以降に建ったマンションでも、
・分譲後から変更した管理業者:3.3%
と、すでに管理会社を変更しているという驚きの実態がデータとして出ています。
管理組合が取るべき対応方法は?
令和5年度のマンション総合調査から、年数が経ったマンションは、新たな管理会社に変更していく傾向にあるということが分かりました。
そして、急遽「契約終了」を言われた管理組合も焦る気持ちもありますが、新たに引き受けてくれる管理会社も必ずあるということです。
具体的に、管理組合として取るべき対応方法を紹介します。
新たな管理会社が見つかるまでの引き継ぎの確約を取り付ける
管理会社の側から、契約終了を申し出たのであれば、管理会社の都合で管理組合との契約を終わらせたいと考えているのでしょう。
事情は管理会社の人員不足であったり、人件費高騰の折、管理組合に対する管理委託費が安いからビジネスとして成り立たないなど、さまざまです。
理由はどうであれ、管理会社からの申し出であれば、より立場の弱い管理組合としては、まずはわがままを聞いてもらうように交渉すべきでしょう。
具体的には、
・新たな管理会社選定のために理事会や総会の協力を惜しまず実施して欲しい
という具合です。
管理組合としては、管理会社不在となり、マンション管理運営が停滞することは何としてでも避けなければなりません。
そのための暫定措置がとれるよう、管理会社に働きかけることが重要です。
そして、役員を中心として管理組合内でも、緊急事態として協力体制を敷く必要があります。
管理組合として受け入れられるなら値上げ交渉を行う
契約終了を言われた場合で多いケースとして、管理会社として金額が見合わない場合です。
この場合は、もし管理組合として可能なら、
いくらなら引き受けてくれるか
を確認することも一つの手としてあります。サービス業である管理会社は
いくらでも引き受けない
ということはよほどでない限りないでしょう。
ここは管理組合にとっては金額の限度はあるものの、
もし許容範囲なら継続して契約更新できる道も探る選択肢
は残されているといえます。
後述しますが、管理会社変更には管理組合として一定の負担を伴うものとなるためです。
新たな管理会社候補を探す
やはり契約継続は難しい…
となった場合、管理組合としては、当然次の管理会社を探さなければなりません。
おもな探し方としては、
・サイト検索により管理会社を見積もる
・マンション管理士等の管理会社変更コンサルティングサービスを活用する
・管理会社マッチングサービスを活用する
などが考えられます。
以下、筆者が実際に対応した例を含めて、具体的に紹介します。
近隣のマンションがどのような管理会社を使っているか確認する
近隣のマンションがどのような管理会社を使っているか調べることは新たな管理会社を見つけるうえでの一つの目安となります。
マンションの入り口や掲示板に管理会社名が記載されている場合があるので、事情を話して確認をさせていただくことも一つでしょう。
さらに、同規模のマンションであれば、金額にもよりますが引き受けてくれる可能性も高まります。
一例として、メリット、デメリットを紹介します。
・管理会社が近隣マンションの巡回で効率的に対応できる
・清掃業務を行う際に管理会社や清掃会社は同日に行うことで効率的に回れる可能性がある
・場合によってはそのマンションにヒアリングに行き管理会社の評判を確認できる
など、管理会社側にもメリットが考えられます。反面、
・マンションのタイプによっては管理委託費用が合わない可能性がある
・管理会社のリソース不足の場合はお断りの可能性がある
・ヒアリング結果でよく言われない場合は、管理会社に対するネガティブなバイアスが掛かってしまう
などが考えられるでしょう。
サイト検索により管理会社を見積もる
自らのマンションと近い地域で同規模のマンションが、どのような管理組合に委託しているのか、ネット検索で見つけることも可能です。
ただし、情報公開していない場合もあるので、その場合は前述の情報により、訪問して入手することになるでしょう。
また、「管理会社 変更」などと検索すると、管理会社候補が出てきます。
これらの管理会社が必ずしも自らの管理組合との相性がよいかどうかは分かりませんが、まずは話を聞いてみることも大切です。
マンション管理士等の管理会社変更コンサルティングサービスを活用する
マンション管理士事務所では、管理会社変更コンサルティングを実施している所もあります。
そのような所で、管理会社変更をお願いすることも可能です。
また、
・実績と信頼ある管理会社を提案してくれる可能性が高い
・マンション管理の専門家であるマンション管理士が決定までフォローしてくれる
・管理会社変更のための管理組合業務を支援してくれる
が考えられます。反面、
・定額費用や成功報酬等の一定の追加コストが掛かる
・最適な管理会社に巡り合えるかはコンサルタント次第となる
・これまでの管理会社よりも管理委託費が割高な提案となる可能性がある
などが考えられます。
デメリットに記載の「割高になる可能性」については、よい管理会社候補を紹介してくれる反面、管理委託費が高くなってしまうことも想定しておく必要があります。
管理会社マッチングサービスを活用する
最後に紹介するのが、筆者も関わっている管理会社マッチングサービス「管理会社マッチ」です。
こちらについても、メリットとデメリットを紹介します。
・管理会社マッチは管理組合には費用が一切掛からず無料で複数の管理会社候補を紹介してもらえる可能性がある
・一般的に相談から紹介まで1~2週間と非常に対応が早い
・管理組合として合わない場合はお断りも可能である
・マンション管理士による簡易コンサルティングが無料で受けられる
というメリットがある反面、
・管理会社紹介が中心となるため、管理会社との交渉や書類の準備等は管理組合で実施する
・原則、管理会社変更を行うための理事会の承認や合意形成があってからの紹介となる
・地域や戸数によってはマッチしない可能性がある
という点が挙げられます。
管理組合として管理会社変更のための一定の手続きを経る
この件については、具体的に以下
にて紹介しているので、詳細は割愛します。
管理組合として、理事長や理事会独自で決めたりはせず、管理規約に従って総会の決議をもって区分所有者から合意を取り付けることが重要です。
契約終了を通知された場合は、当然次を早く決めなければならないですが、必ず一定の手続きを経るようにする必要があります。
マンション管理組合にとって管理会社を変更するメリットは?
令和5年度のマンション総合調査でも、管理組合の一定数が管理会社変更を実施していることから、そのメリットがあることが考えられます。
具体的にどのようなメリットがあるのか、確認してみます。
管理会社に支払う管理委託費が下がる可能性がある
管理会社との管理委託費においては、人件費負担が高騰する中で値上げの話が多く出がちです。
しかしながら、新たな管理会社の体制やサービス内容等を見直すことによって、これまでの管理会社に比べて、月額の管理委託費が減少する可能性も考えられます。
また、管理委託費が下がれば、資金的な余剰ができる可能性があります。
それによって、将来の大規模修繕工事のために修繕積立金に振り替えることも可能となるでしょう。
マンション管理の質が上がる可能性がある
これまでの管理会社と比べて、新たな管理会社とすることにより、サービスの質が高まる可能性もあります。
管理組合に対する支援体制や、サービス内容等によっては、従前の管理委託費と比べてさほど高くはない、または削減できた場合であっても、質の向上の可能性があるかもしれません。
変更手続きを通じて理事会や管理組合全体の管理体制が構築される
管理組合として重要な論点ですが、管理組合やその代表である理事会は一種の組織です。
その組織が、苦難に対応することにより、管理体制がより強固なものになることが期待できます。
なかなか目に見えづらいメリットですが、その経験を積んだ役員は今後の管理組合運営により貢献できるでしょう。
管理会社を変更するデメリットは?
対して、管理会社を変更することによるデメリットも考えられます。
管理会社を変更せざるをえない状況の場合は、もし該当する場合は受け入れざるを得ない状況も想定されます。
それを回避することができればよいと考えられますので、あらかじめ紹介します。
サービス形態が変わるためこれまでとは違ったサービス内容になる可能性がある
管理会社変更によって、これまでの管理会社とそっくりそのままの管理サービスを受けることはできないでしょう。
各管理会社のサービス内容は異なり、受ける側の管理組合においても、「以前とは違う」ということも発生する可能性があります。
これまでの管理会社のサービス内容と対比しつつ、費用対効果も考えながら、新たなサービスを受け入れていくことが重要と言えるでしょう。
管理組合として一定の業務負担を伴う
管理会社変更においては、管理組合として新たに
・区分所有者に対する説明や合意形成
・管理会社プレゼンテーションの開催
・新たな管理会社による区分所有者に対する重要事項説明会の開催
・管理会社変更のための総会決議
・新旧管理会社の引継ぎ業務の立ち会い
など、多くの手間もかかることとなります。
これらは基本的に理事長をはじめとした役員が中心となって推進することとなります。
また、管理会社変更委員会等、委員会形式で理事会としての負担を軽減することもあるでしょう。
区分所有者としても新たな手続きが必要な場合がある
管理会社変更は、理事会や役員だけではなく、個々の区分所有者にも影響します。
例えば、
・区分所有者、居住者の連絡先の提出
・管理会社と区分所有者、居住者が個別にサービスを契約する場合の手続き
など、新たな手続きが必要となる場合も想定されます。
管理会社から契約終了を言われても対応策はあります
冒頭のデータで確認した通り、管理会社を変更している管理組合が多い状況です。
そのため、管理会社から契約終了を通知されてもあきらめずに切り替えて、すぐに準備に取り掛かることが重要です。
「捨てる神あれば拾う神あり」
ではないですが、その可能性は十分あると考えています。
繰り返しですが、管理組合としてはあきらめずに取り組むことをお勧めします。
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