マンション管理のカスハラ問題とは?
2025年2月25日発行の「マンション管理新聞第1295号」に掲載された『「カスハラ方針」でガイドライン』は、マンション管理の現場で深刻化するカスタマーハラスメント(カスハラ)問題に焦点を当てた重要な記事です。管理会社への過剰な要求、管理員への暴言、管理組合役員への嫌がらせなど、カスハラはマンションコミュニティの信頼関係を崩壊させるリスクを孕んでいます。「マンション管理新聞」の調査によると、過去3年間で51.4%の従業員がカスハラを経験しており、これは管理組合においても決して他人事ではありません。
この記事においては、マンション管理新聞の内容を基に、マンション管理におけるカスハラを深掘りしてみます。特に管理組合においては、今後、管理会社と連携したカスハラへの対応方法を考える必要がありそうです。
マンション管理のカスハラ実態:データでわかる深刻さ
「マンション管理新聞」の調査データを基に、カスハラの実態を詳しく見ていきましょう。
カスハラの発生率と被害者
- 過去3年間で51.4%(2,287人)の従業員がカスハラを経験。残りの48.6%(2,166人)は未経験ですが、半数以上が何らかのハラスメントに直面。
- 被害者の内訳(合計2,287人):
・フロントまたはその管理職: 64.69%(1700人)
・事務またはその管理職: 28.61%(295人)
・営繕またはその管理職: 35.73%(204人)
・営業またはその管理職: 37.04%(40人)
・その他: 41.74%(48人) - 被害回数
・1~5回:48.8%
・16~20回:3.3%
・21回以上:5.9%
・上記回数のレベルではない(数えきれない):13.8%
※特定の担当者が多数回の被害を受けている可能性
カスハラの具体例:どんな行為が問題?
- 調査対象(n=3001)に対し、「印象に残っているカスハラの内容」を複数回答で尋ねた結果:
- 暴言・威嚇・脅迫: 1,756人
- 過剰・不合理な要求: 1,643人
- 過剰な電話(長時間・回数・時間帯): 1,193人
- 人格否定・自身への侮辱発言: 1,027人
- 合理的理由のない謝罪要求: 638人
- 合理的範囲を超える長時間の拘束: 630人
- 社員に関する解雇等の社内処罰の要求: 337人
- プライバシーの侵害: 94人
- 金品や接待の要求: 78人
- セクハラ行為: 47人
- 暴力行為: 44人
- SNS・インターネット上での誹謗中傷:26人
- 無回答: 56人
- 解説: 暴言・威嚇・脅迫(1,756人)と過剰・不合理な要求(1,643人)が上位を占め、精神的な攻撃が深刻です。過剰な電話(1,193人)や人格否定(1,027人)が続きます。
これらに対しては、居住者の誤解が背景にあると答えた件数が1,473件と多いようです。
マンション管理におけるカスタマーハラスメント対策について
管理会社としては、これら受けてきたカスハラに対して、対策を講じる必要があるのは当然のこととなります。
そして、新聞記事では、カスタマーハラスメントに対する基本方針策定として、以下のような要素を踏まえることが重要と紹介されています。
この方針についての見出し
まずは、なぜ方針を提示するかということの内容が紹介されています。
「マンション管理会社では、お客様に満足いただけるサービスを提供するため、従業員が安心して働ける環境づくりが大切だと考えています。しかし、近年、一部のお客様からの心ない言動によって従業員の働く環境が悪化するケースが増えています。このような状況を改善するため、会社は「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を定めました。」
といったような内容で、目的を明確にすることから入っています。
カスタマーハラスメントの解説
続いて、カスタマーハラスメントの定義について解説しています。以下その内容となります。
会社では、お客様からのクレームや言動のうち、要求内容と手段・態様のバランスが取れておらず、従業員の働く環境を悪くするものをカスタマーハラスメントと定義しています。
対象となるお客様は、管理組合、区分所有者、その家族や関係者、マンションの利用者、近隣住民、取引先など、業務に関わる全ての人を含みます。
具体的には、以下のような行為が考えられます。
- 土下座の要求
- 過剰なサービスや対応の要求
- 正当な理由のない謝罪や賠償
- 暴言や脅迫
- 差別的な言動
- セクハラ
- SNSでの誹謗中傷
- プライバシー侵害
- 長時間の電話や拘束
- 時間外の業務対応要求
カスタマーハラスメントへの対応
そして、管理会社としては、カスタマーハラスメントに対し、以下の対応を行うこととなります。
- 社内対応:
- 従業員向けの研修
- 相談窓口の設置
- 被害者への支援
- 社外対応:
- 対象者に対するハラスメント行為の中止要求
- 管理組合役員やその他関係者との連携
- 悪質な場合は警察・弁護士への相談
管理組合が管理会社と協力:カスハラ防止のコツ
最初の章で紹介した通り、マンション管理新聞からも、明らかにカスタマーハラスメントと考えられるデータが明らかになっています。
このような方針が策定された場合、加害者となった組合員や居住者等がいる場合に、管理組合としての方針を考えていく必要があるでしょう。
場合によっては、加害者本人はもちろんのこと、管理組合全体に影響を与える可能性があります。
マンション管理がよりよい状態になるためには、管理組合と管理会社における良好な関係は不可欠であると考えられます。
カスタマーハラスメントの事案がないように、管理組合や理事会、さらには管理組合役員においても十分注意する必要がありそうです。
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