管理組合総会の招集通知とともに議案書が送られてきたが、どのように確認したらよいのか知りたい…
また、
議案書の内容で特に重要な点はどこだろう?
さらには、
議案書の内容が総会までに判断できない場合はどうすればよいのだろうか…?
これらの疑問を持つ、マンション管理組合の区分所有者も多いと思います。
確かに、議案書が急遽ポストに入っていても、何をどのように考えればよいか分からない点も多いですよね。
今回は、管理組合の区分所有者はもちろん、逆に作成側である理事会や役員側双方が抑えておきたい点を中心に、これまで数多くの招集通知や議案書を確認してきているマンション管理士の筆者が紹介します。
管理組合の総会招集通知に添付の議案書を詳しく確認するポイント4選
今回紹介する内容は以下の通りです。
・総会議案書を確認する際の注意点は?
・議案書を詳しく確認するポイント4選
まず、総会における議案書とはどのような書類なのか、基本的な所を紹介します。
さらに、議案書のひな型として、企業や団体が出しているものを中心に、どのような議案が提示されるのか、一般的な例を確認します。
そして、区分所有者が総会議案書を確認する際の注意点を紹介します。
この注意点は、逆に作成側である理事会や管理組合役員が、区分所有者に対してどのような点に気を付けて作成すればよいのかという論点も含まれます。
さらに、議案書が配布され、区分所有者が内容について確認しておきたい点を紹介します。
管理組合総会の議案書とは?
まず初めに、管理組合における定期総会や臨時総会の議案書とはどのようなものを指すのか、詳細を紹介します。
議案書は特に定まった書式はありません。
したがって、管理組合や担当している管理会社独自が持っているものでも問題ないでしょう。
具体的にどのようなものが考えられるのか、紹介します。
そもそも総会の開催タイミングは?
通常総会は、年間の管理組合や理事会活動の中で必ず報告すべき事項があります。
臨時総会は、討議する議題がある場合に臨時に開催することができます。
具体的には、標準管理規約第42条に以下のような記載があります。
第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。
4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。(以下、省略)
通常総会は、新年度開始後2か月以内に招集され、開催される必要があります。
管理規約によっては、3か月以内となっている管理組合も多いでしょう。
総会議案書とは?
総会議案書とは、総会の進行台本のようなもので、全区分所有者に共有されるものとなります。
具体的には、以下のような内容が踏まえられています。
・開催日時や場所
・議案の件名(どのようなことを決めるのか)
・議案の説明(議案内容について詳細の説明)
・根拠(議案の法令や管理規約との整合など)
・普通決議か特別決議か
・議案の詳細を説明するための添付資料
議案の数によっては、添付資料を含めると膨大な資料となり、区分所有者にとっても理解するのが大変でしょう。
そのため、添付資料含め、極力分かりやすく準備する必要があるものの、管理組合としては区分所有者に対する説明責任もあることから、なかなか減らすことも難しいのが現状です。
議案書のサンプルを確認
企業や団体から、管理組合でも使用できるような、一般的な議案書のサンプルが公開されています。
特に分かりやすく紹介されていたのが、大和ライフネクスト社の総会議案書サンプルです。
同社のマンション理事便利ツール(サンプル集)
として、各種ひな形の紹介があります。
議案書の構成は?
通常総会、臨時総会とそれぞれ議案書の内容が異なることが一般的です。
それぞれの構成について紹介します。
通常総会議案の構成は?
一般的には、以下のような構成が多いでしょう。
・事業報告・会計報告及び収支決算承認
・管理委託契約の更新
・標準管理規約第48条にある事項でこちらに紹介していない内容
・事業計画及び収支予算案承認
・役員選任
当該総会においては、必ず総会の承認を得る事項があります。
具体的には、標準管理規約第58条と59条にありますので、紹介します。
第58条 理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。(以下、省略)(会計報告)
第59条 理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない。
臨時総会は?
次に、臨時総会ですが、特に取り決めがある訳ではありません。
臨時総会はその名の通り、急遽区分所有者を招集して開催するものであることから、急遽決議する必要がある議題について諮られることとなります。
・標準管理規約第48条にある事項で臨時総会を開催することによって定時総会を待たずに決議したい内容
・予算の変更
・新たな管理組合としての対応事項
・欠員役員の補充など
総会議案書を確認する際の注意点は?
次に、区分所有者宛に届いた総会の議決権行使書を確認する際の注意点を紹介します。
もし、理事会や管理組合役員として、議決権行使書を作成・事前チェックする立場であれば、「確認」を「作成」「事前チェック」と読み替えて見て頂ければと考えています。
管理規約における総会決議事項が諮られているか
総会決議事項として記載されていることは必ず総会に諮る必要があります。
具体的には、標準管理規約48条に以下の通り記載があります。
対して、17号には「その他管理組合の業務に関する重要事項」と記載があります。
すなわち、1~16号に記載されていない事項でも、重要事項と管理組合(理事会)が判断した場合には、議案として諮ることも可能です。
逆に、理事会や役員が議案書を作成・チェックする場合は、1~16号の内容を決めたいにも関わらず、総会に諮られていないことがないようにしなければなりません。
すなわち、理事会決議では進められないということになります。
※管理規約で決議事項を変更している場合はその限りではない
普通決議か特別決議を要するものなのか確認する
普通決議なら、区分所有者の半数以上が出席して、出席者の過半数で可決されます。
一方で、特別決議は、区分所有者数及び議決権総数の4分の3以上の賛成で可決されることとなります。
したがって、特別決議なら、多くの区分所有者の総会参加や議決権行使が必要となるため、協力することが望まれます。
特別決議議案がある場合は区分所有者としても、当日参加するか事前に議決権を行使するかのどちらかで、この決議案に賛否を投じる必要があります。
また、当日参加する場合は、事前に参加する旨、必ず意思表示をして協力することが望まれます。
役員や管理会社が、事前の定足数(最低限決議が成立する数)を満たすかどうかも把握する必要があるためです。
特に、マンションに住んでおらず、賃貸に出していたり、空室である外部所有者においては、総会等の管理組合活動への関心が低下しがちです。
本人自身は参加意識を持つことが求められるとともに、理事会や管理会社等関係者においても、議決権行使をしてもらえるような働きかけが、住んでいる区分所有者以上に必要と言えるでしょう。
不明点があれば事前の質問書に記載して提出する
議案書には、なにかしらの質問ができる余白が付いていることが多いでしょう。
そのため、事前に議案に対する質問を行い、総会時や終了後などに回答して貰うことも考えられます。
理事会役員が、総会前に回答をしてくれれば、総会前に議案に対する賛否を投じることも可能でしょう。
一方で、議決に関する質疑応答は、当日議場で確認する必要があるかもしれません。
この場合、事前質問をしながらも総会当日に出席できない場合は、事前に議案に対する賛否を投じる必要があることとなります。
従って、管理組合の対応によっては、事前質問と議案の賛否が整合できない可能性がある点に注意が必要です。
十分な説明を聞くことができれば、納得して賛成票を入れたのに
となる可能性があるということです。
議案書を詳しく確認するポイント4選
最後の章では、議案書をより詳しく確認するためのポイントを紹介します。
こちらも理事会や役員視点では前章同様に、「確認」を「作成」「事前チェック」と読み替えて見て頂ければと考えています。
該当箇所の管理規約条項と照合する
総会議案書を作成する際には、総会決議事項を諮ることがほとんどでしょう。
そのため、前述で紹介した通り、標準管理規約でいえば第48条に該当する事項であるか、照合する必要があります。
また、その他の該当箇所、例えば役員選任議案であれば、第3節の役員の条項との整合がされているか、確認が必要と言えるでしょう。
一例として、第35条(役員)を挙げてみます。以下、標準管理規約からです。
ここでのポイントとしては、
・理事と監事のそれぞれの選任議案となっているか
・理事の役職は理事会の決議(いわゆる互選)でよいが、総会では理事として選任されている議案となっているか
などが読み取れます。
上記で定められているにもかかわらずありがちなパターンとして
・役員の中から互選で役職を決める
という点です。
2項で理事及び監事を総会決議で行わなければならないという規約である場合は、
・監事の選任(各監事候補の名前付き)
をそれぞれ議案とする必要があるということで、理事と監事を互選で選んではいけないということになります。
過去の議案書と比較して確認してみる
もし、前回、1年前の定時総会の議案書があれば、どのような議案が諮られていたか、確認してみるのも良いでしょう。
細かく見れるのであれば、例えば、管理会社に支払う管理費についてです。
こちらの議案は、前章の標準管理規約第48条第16号に「組合管理部分に関する管理委託契約の締結」という条項があります。
したがって、毎年総会に上がってくるものであり、前年度比較が可能です。
費用が上がっているのか、同じなのかも確認ができます。
仮に、上がっている場合は、管理組合として不利な契約を締結することから、管理会社による重要事項説明会が必ず開催されることとなります。
管理組合予算も同様です。
前年度比何が上がっているのか、また下がったのかなども比較検討できます。
また、理事会では議論していることが一般的ですが、逆に前年比費用が上がる計画となる場合は、なぜ上がるのか、総会に諮る前に必ずクリアにしておくことが求められます。
管理委託契約更新議案は重要事項説明書とも必ず照合する
前項でも紹介しましたが、標準管理規約第48条第16号「組合管理部分に関する管理委託契約の締結」であれば、重要事項説明書を確認することも必要です。
総会の議案書には、まとまった形として、管理会社との契約締結期間や金額等、シンプルになっていると考えられます。
具体的には、区分所有者に配布される重要事項説明書に記載されています。
そのため、そこに記載の内容を良く確認することが求められます。
ちなみに、前年と同様の契約または、管理組合に有利な契約(金額的に安い、または、契約期間が短いなど)がある場合は、区分所有者に対する重要事項説明会は行われないのが一般的です。
そのため、重要事項説明書に記載の点で気になる点は確認しておくことが必要です。
管理組合の事業計画案について自分自身の生活環境と比較してみる
翌期の事業計画案には、管理組合としてどのような活動を考えているのか、定量的な数値とともに提示されることが一般的です。
その中で、一年間振り返ってどうだったか、また、生活に影響を与える内容はないのかなど、比較しながら考えてみることも一つです。
例えば、敷地内の樹木の剪定であれば、落ち葉が多くなる季節に排水溝に貯まってしまったりなど、季節性や回数なども考えられるでしょう。
そして、雑草が敷地内にすぐに生い茂るようであれば、草木の刈込作業について適切なのかなどもあります。
また、清掃についても、綺麗なのに回数が多くなっていないか、逆に回数が少なくて汚れが目立つなど、日々の生活の視点からも検討できる内容です。
議案書は区分所有者として重要な賛否決定材料
今回は議案書の確認ポイントについて紹介しました。
区分所有者は、自分たちのマンションの意思決定をする重要な資料であるため、よく考えて賛否を投じたいところです。
また、理事会や管理組合役員にとっては、区分所有者にうまく伝わるように工夫することも必要です。
双方の立場にとって、よりよい議案書が仕上がるように、少しでも参考になれば幸いです。
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