2026年最新ランキングから読み解く、マンション改修市場の現在地─数字は“安心材料”ではなく“確認材料”

マンション管理

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導入:2026年、数字が示す「変わらない風景」

2026年1月25日発行の『マンション管理新聞』にて、一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)による第10回「マンション改修元請け工事高調査」の結果が公表されました。本調査は2016年に開始され、今回で10回目を迎える継続的なデータです。

今回の調査結果を俯瞰して、まず浮かび上がるのは「極めて強固な固定化」という事実です。首位の大京穴吹建設と2位の建装工業の差は約95億4,000万円に拡大し、上位陣の顔ぶれは、この10年間ほとんど変化していません。順位の入れ替わりはあっても、トップ層そのものが入れ替わらないという点は、単なる偶然とは言い切れない状況です。

建設資材の高騰、人手不足の深刻化、修繕費総額の上昇、そして管理組合側のチェック意識の高まり――。大規模修繕を取り巻く環境が大きく変化する中で、なぜこの市場のトップ層だけは「変わらない風景」を維持し続けているのでしょうか。

私たち管理組合にとって重要なのは、この数字を「実績の証」や「安心材料」として消費することではありません。むしろ、なぜ変わらないのか、何が数字に表れているのかを確認するための出発点として捉え、2026年の今だからこそ、一歩踏み込んだ「問い」を立てるための指標として活用することです。

精査:上位25社の詳細データが物語る「市場の真実」

管理組合が最も注目すべき、上位25社の具体的な数値を整理しました。

ここで重要なのは、「どの会社が何位か」そのものではなく、各社の売上構造がどうなっているかです。

下表では、「年間完成工事高(その会社の全売上)」と「マンション改修工事高(マンションに特化した売上)」を並べ、その会社がどの程度マンション改修に依存しているのかを可視化しています。

■ 2026年度版:マンション改修元請け工事高ランキング(上位25社)

順位 社名 年間完成工事高(A) マンション改修工事高(B) 改修比率(B/A)
1大京穴吹建設647.1億円497.7億円76.9%
2建装工業623.4億円432.6億円69.4%
3カシワバラ・コーポレーション717.1億円308.3億円43.0%
4富士防114.2億円114.2億円100.0%
5日装・ツツミワークス127.6億円92.1億円72.1%
6大和110.6億円109.5億円99.0%
7ヤシマ工業100.4億円97.5億円97.1%
8シンヨー159.9億円130.4億円81.6%
9伊藤95.8億円91.3億円95.3%
10ヨコソー127.6億円109.7億円86.0%
11小野工建89.1億円82.8億円93.0%
12三和建装84.4億円77.6億円92.0%
13ヤマギシリフォーム工業94.8億円94.8億円100.0%
14ティーエスケー86.2億円65.2億円75.7%
15リノ・ハピア96.3億円67.9億円70.5%
16YKK APラクシー89.1億円81.9億円92.0%
17セラフ榎本59.4億円59.4億円100.0%
18京浜管鉄工業77.9億円51.0億円65.6%
19明和美装50.5億円45.9億円90.9%
20太陽43.8億円43.8億円100.0%
21呉光塗装44.8億円40.3億円90.0%
22乃一69.1億円56.6億円82.0%
23アール・エヌ・ゴトー42.1億円39.0億円92.5%
24日塗84.4億円51.1億円60.6%
25協立技研41.3億円39.0億円94.4%

※本表は、マンション管理新聞(2026年1月25日号)掲載データを基に整理しています。
※各数値は、同紙記載の調査基準日(2026年1月21日現在)時点のものです。

この一覧を見ると、売上規模の大小だけでなく、マンション改修工事が事業の中で占める比率に大きな差があることが分かります。

この表は「売上の大きさ」を競うためのものではありません。注目すべきは、各社の売上のうち、どれだけがマンション改修に依存しているかという構造です。とくに「改修比率(B/A)」は、施工会社の経営特性を読み解く重要な指標になります。

次章では、この「改修比率」に着目し、専業モデルと多角化モデルの違いが、管理組合にとって何を意味するのかを整理していきます。

深掘り:数字の背後に潜む「3つの視点」

ここまで見てきたランキング表は、単なる「売上規模の一覧」ではありません。重要なのは、各社がどのような事業構造でこの数字を作っているのかという点です。

以下では、管理組合が施工会社を比較する際に押さえておきたい3つの視点を整理します。

「改修比率100%」という専業モデルの特性

今回のランキングでは、富士防、ヤマギシリフォーム工業、セラフ榎本、太陽の4社が、改修比率100%という専業モデルを示しています。これは、マンション改修に関する実務経験やノウハウが社内に蓄積されている可能性を示す一方、経営のすべてをマンション市場に依存している構造でもあります。

管理組合としては、専業か否かを評価軸とするのではなく、この事業構造を前提にどのような施工体制を維持しているのかを確認する視点が重要です。

急成長企業への「現場管理」の問いかけ

今回のランキングでは、20位に初ランクインした「太陽」のように、比較的短期間で工事高を伸ばしている企業も確認できます。企業の成長そのものは否定されるべきものではありません。

ただし、大規模修繕工事の実務において重要なのは、売上の伸びと現場管理体制が連動しているかという点です。

「勢いがある会社だから安心」と捉えるのではなく、その勢いをどう支えているのかを説明してもらう姿勢が重要です。

上位3社の固定化と「選択」の質

大京穴吹建設、建装工業、カシワバラ・コーポレーションの3社は、長期間にわたり上位を維持しています。ただし、相見積もりの候補が常に同じ顔ぶれになっている場合、比較そのものが形骸化していないかを確認する視点も必要です。

上位社を含めつつ、なぜその会社が選ばれるのかを説明できる状態を作ることが、選択の質を高めます。

接続:構造的課題への再確認(既存記事の活用)

ここからは、今回のランキングデータを業界構造という視点から捉え直します。
数字そのものを評価するのではなく、なぜ似た傾向が繰り返されやすいのかという点に注目してください。

なぜこの市場では「顔ぶれ」が変わりにくいのか

マンション改修工事は、1件あたりの金額が大きい一方で、発注頻度は決して高くありません。
そのため、一度関係性が築かれると、同じ顔ぶれで案件が回りやすいという特徴があります。

今回のランキングで見られた上位社の固定化は、技術力や実績といった正当な評価の結果である可能性がある一方、「前例を踏襲する方が無難」という判断が積み重なりやすい市場構造を反映しているとも考えられます。

この「変わりにくさ」そのものが、マンション改修市場の重要な特性の一つです。

管理組合に求められるのは「疑念」ではなく「説明」

こうした市場構造を前提にしたとき、管理組合に求められるのは「疑う姿勢」ではありません。
必要なのは、数字や選定経緯について説明を求められる立場にあるという自覚です。

「なぜこの会社なのか」「なぜ毎回同じ候補なのか」と問いを立てることは、不信感の表明ではなく、選定プロセスを健全に保つための行為です。

今回のランキングデータは、その説明を求める際の客観的な根拠として活用できます。

なぜこのような構造が生まれやすいのか。制度・慣行・関係性の観点から整理したものが、以下の記事です。

【関連記事①】
マンション工事の談合はなぜ起きる?|構造・理論編

実務論:ランキングを「説明を求めるための武器」にする

ここまで見てきたランキングや構造分析は、管理組合が「施工会社を疑うため」の材料ではありません。

むしろ実務において重要なのは、選定プロセスについて合理的な説明を引き出すための材料として使うことです。以下では、理事会や修繕委員会の現場で、そのまま使える実務視点を整理します。

「ランキング上位=安心」という思考停止を捨てる

管理組合がまず手放すべきなのは、「ランキング上位に載っている会社なら安心だろう」という発想です。ランキングはあくまで工事高という一つの指標を示したものであり、個別のマンションに対する適合性や、今回の工事における体制の充実度を保証するものではありません。

重要なのは、

✅なぜこの会社が候補に挙がっているのか
✅なぜこの規模・順位の会社が選ばれているのか

を、管理組合自身が説明できる状態を作ることです。そのための材料として、今回のランキングデータは活用されるべきです。

候補企業の幅を広げるという「実務的な一言」

新聞の資本金分布を見れば、MKS会員企業の約半数は資本金5,000万円以下の中堅企業で構成されています。この事実は、マンション改修市場が一部の大手企業だけで成立しているわけではないことを示しています。

実務上、管理組合が取れる最も効果的なアクションの一つは、コンサルタントや管理会社に対し、次のように伝えることです。

「ランキング常連社だけでなく、地域で実績のある中堅社も1社、候補に加えてください」

この一言だけで、

✅候補選定の前提条件が変わり
✅比較プロセスの透明性が高まり
✅特定企業への偏りが生じにくくなります

これは対立を生まない、極めて現実的な実務対応です。

見積書は「最終チェックポイント」である

候補企業がどのように選ばれたとしても、最終的に管理組合が向き合うのは提出された見積書そのものです。

ここで重要なのは、

✅価格の高低だけを見ること
✅社名や知名度で判断すること

ではありません。

✅数量や仕様に不自然な偏りがないか
✅他社と比較して説明がつきにくい差がないか

といった点を、冷静に確認することです。

実際に、こうした「不自然なサイン」をどのように見抜くかについては、以下の記事で具体的に整理しています。

【関連記事②】
マンション修繕「談合30社リスト」を恐れる前に|実務編

まとめ:2026年、主体性ある管理組合の「羅針盤」として

大規模修繕工事において、ランキングの数字は「答え」ではありません。本稿で見てきた通り、それらは管理組合が判断するための材料であり、説明を引き出すための指標にすぎません。

重要なのは、「なぜこの会社なのか」を管理会社やコンサルタント任せにせず、理事会自身の言葉で整理できる選定プロセスを持つことです。その積み重ねが、結果として工事内容やコストへの納得感につながります。

2026年以降、主体性ある管理組合に求められる視点は、次の3点に集約されます。

1.数字の「背景」に説明を求める
受注の増減や工事高の推移に対し、それを支える施工体制や管理体制について確認する。
2.比率から「経営特性」を読み取る
改修比率を手がかりに、専門性と経営のバランスを冷静に比較する。
3.比較の「幅」を自ら広げる
大手・中堅を区別なく俯瞰し、自分たちのマンションに適した候補を主体的に選ぶ。

これらの数字は、特定の企業を評価・否定するためのものではありません。管理組合が適切な説明を求め、納得して判断するための羅針盤です。

本稿で示したデータと視点を活用し、委ねきりではない、納得感のある大規模修繕を実現してください。

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