「マンション管理適正評価制度、うちは★3つ(60点以上)だったから、まあ及第点だろう」
もし、あなたの管理組合の理事会がそのような空気になっているとしたら、私は「今すぐその認識を改めてください」と申し上げます。
「★3」は、もはや「普通」ではありません。 先日発行された業界紙のデータを当事務所ですべて洗い出し、独自に集計し直した結果、業界の真の平均点は「4.06点(★4)」であることが判明しました。
さらに、この「★4の壁」を超えられない場合、来年から始まる公的金利優遇制度の対象外になってしまうという、金銭的な実害も確定しています。
今回は、業界の生データと最新の国の施策から読み解く、マンション管理の「新しい合格ライン」について解説します。
【独自検証】業界平均は「4.06点」だった
「平均が4点越えなんて本当か?」と思われるかもしれません。 論より証拠です。先日、マンション管理新聞にて発表された「マンション管理適正評価制度 登録マンション管理受託ランキング」の全データを基に、当研究室にて「加重平均(登録件数を加味した実質的な平均点)」を算出した一覧表を公開します。
単純に各社の平均点を足して割ったものではなく、マンション1件ごとの重みを反映させた、業界の実力値を示す数値です。
▼【独自集計】管理適正評価制度 登録データ加重平均算出表 ※『マンション管理新聞(2025年12月5日号)』掲載データを基に当事務所が独自集計・作成
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| 順位 | 管理会社名 | 登録件数(C) | 平均評価点(D) | 評価点積(C×D) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 大京アステージ | 1,403 | 3.6272 | 5088.96 |
| 2 | 日本ハウズイング | 1,079 | 3.5394 | 3819.01 |
| 3 | 三菱地所コミュニティ | 944 | 4.2225 | 3986.04 |
| 4 | 東急コミュニティー | 857 | 3.8401 | 3290.97 |
| 5 | 三井不動産レジデンシャルサービス | 827 | 4.6614 | 3854.98 |
| 6 | 大和ライフネクスト | 670 | 4.7000 | 3149.00 |
| 7 | 穴吹コミュニティ | 570 | 3.6421 | 2076.00 |
| 8 | 長谷工コミュニティ | 553 | 4.3816 | 2423.02 |
| 9 | 野村不動産パートナーズ | 540 | 4.6741 | 2524.01 |
| 10 | 伊藤忠アーバンコミュニティ | 279 | 4.1649 | 1162.01 |
| 11 | 近鉄住宅管理 | 206 | 3.8981 | 803.01 |
| 12 | 東京建物アメニティサポート | 167 | 4.3892 | 733.00 |
| 13 | 三井不動産レジデンシャルサービス関西 | 147 | 3.9048 | 574.01 |
| 14 | 大成有楽不動産 | 109 | 3.4679 | 378.00 |
| 15 | 日鉄コミュニティ | 85 | 4.2824 | 364.00 |
| 16 | ライフポート西洋 | 76 | 4.3289 | 329.00 |
| 17 | グローバルコミュニティ(大阪) | 71 | 3.7183 | 264.00 |
| 18 | 阪急阪神ハウジングサポート | 66 | 4.8182 | 318.00 |
| 19 | 朝日管理(東京) | 55 | 3.5091 | 193.00 |
| 20 | 浪速管理 | 50 | 4.0600 | 203.00 |
| 21 | 住商建物 | 46 | 4.0000 | 184.00 |
| 22 | 長谷工コミュニティ沖縄 | 42 | 4.0476 | 170.00 |
| 23 | 大和ライフリンク | 37 | 3.9459 | 146.00 |
| 24 | モリモトクオリティ | 28 | 4.0000 | 112.00 |
| 25 | 双日ライフワン | 28 | 4.1786 | 117.00 |
| 26 | グローブシップ | 25 | 3.9600 | 99.00 |
| 27 | スカイサービス | 22 | 3.3182 | 73.00 |
| 28 | 住友不動産建物サービス | 21 | 4.9048 | 103.00 |
| 29 | 三井不動産レジデンシャルサービス中国 | 21 | 4.3810 | 92.00 |
| 30 | 長谷工コミュニティ九州 | 18 | 3.7778 | 68.00 |
| 31 | 遠鉄アシスト | 16 | 5.0000 | 80.00 |
| 32 | エム・エフ・リビングサポート | 16 | 4.6250 | 74.00 |
| 33 | イノーヴ | 15 | 4.6000 | 69.00 |
| 34 | 三井不動産レジデンシャルサービス北海道 | 11 | 4.8182 | 53.00 |
| 35 | TC神鋼不動産サービス | 8 | 5.0000 | 40.00 |
| 36 | 陽光ビルサービス | 8 | 3.8750 | 31.00 |
| 37 | クラシテ | 8 | 3.2500 | 26.00 |
| 38 | 三井不動産レジデンシャルサービス東北 | 7 | 4.8571 | 34.00 |
| 39 | 明和地所コミュニティ | 7 | 3.8571 | 27.00 |
| 40 | サンヨーホームズコミュニティ | 6 | 5.0000 | 30.00 |
| 41 | 東武ビルマネジメント | 5 | 4.4000 | 22.00 |
| 42 | 名鉄コミュニティライフ | 5 | 4.6000 | 23.00 |
| 43 | 新日本コミュニティー | 5 | 4.4000 | 22.00 |
| 44 | MMSマンションマネージメントサービス | 5 | 4.0000 | 20.00 |
| 45 | 三井不動産レジデンシャルサービス九州 | 4 | 3.7500 | 15.00 |
| 46 | 日本総合住生活 | 4 | 4.2500 | 17.00 |
| 47 | 旭化成不動産コミュニティ | 3 | 4.6667 | 14.00 |
| 47 | 三重交通コミュニティ | 3 | 4.3333 | 13.00 |
| 47 | エム・シー・サービス | 3 | 4.0000 | 12.00 |
| 47 | クリーンリバー | 3 | 3.6667 | 11.00 |
| 合計・全47社データ集計 | 9,184 | 平均 4.06 | 37,330.01 | |
ご覧の通りです。 登録数の多い大手管理会社(三菱地所、三井不動産、大和ライフネクストなど)が4.2点~4.7点という高スコアを記録し、業界全体の水準を強力に引き上げています。
この全47社のデータをすべて合算し、加重平均を弾き出した結果、平均点は「4.06点」となりました。
四捨五入すれば「4.1点」です。 つまり、今のマンション管理業界におけるスタンダードは、まぎれもなく「★4(70点以上)」なのです。「★3」という評価は、決して「悪い」わけではありませんが、統計的に見れば「平均よりやや劣る」という現実を直視しなければなりません。
「★3」だと金利優遇が受けられない? 国が示した新基準
「平均以下でも、今の生活に支障がないから問題ない」 そう考える理事長もいるかもしれません。しかし、これからは明確な「金銭的な損(機会損失)」が発生します。
住宅金融支援機構は令和7年11月11日、修繕積立金を積み立てる債券「マンションすまい・る債」の利率上乗せ制度の拡充を発表しました。
この制度変更のポイントは、「誰を優遇するか」という線引きです。 これまで対象外だったマンション管理適正評価制度の認定マンションも対象に追加されますが、その適用条件は以下のように明記されました。
「★4つ以上の評価を取得した管理組合」 ※出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債 利率上乗せに関する制度改正について」(令和7年11月11日)
この新制度は令和8年度(2026年度)募集分から適用されます。 つまり、公的機関(機構)は市場の実態(平均4.06点)を正確に把握した上で、「★3には優遇を出さない(=★4以上を適正管理の基準とする)」という明確なメッセージを発したと言えます。
★3のままでいることは、将来的に管理組合の虎の子である修繕積立金の運用益を、みすみす逃すことと同義なのです。
★4への壁は「設備」ではなく「運営」にある
では、どうすれば平均点である「4.06点(★4)」に届くのでしょうか? 多くの理事会が誤解していますが、★4の壁を阻んでいるのは「建物の古さ(ハード面)」だけではありません。
上位ランクを連発している管理会社の物件がなぜ点数が高いのか。それは、ハード面ではなく「ソフト面(運営・書類整備)」での加点を徹底しているからです。
- 防災マニュアルは整備されているか?
- 長期修繕計画は定期的に見直されているか?
- 総会議事録は適切に保管・公開されているか?
これらは、築年数や設備に関係なく、理事会の「やる気」と「正しい知識」さえあれば、今すぐにでも点数を上げられる項目です。 平均点に届かないマンションの多くは、こうした「やるべき運営努力」を加点に変えられていないケースがほとんどです。
まとめ:数字は嘘をつきません。動くかどうかを決めるのは、理事会です。
今回、業界紙のデータを独自に集計し、あえて厳しい現実(平均4.06点)を提示しました。
それは、あなた方の大切な資産が「知らなかった」という理由だけで損なわれていくのを、ただ見過ごすわけにはいかないからです。
「★3のままで良い」と受け止めるのか、優遇対象となる「★4」を目指して一歩踏み出すのか。これは管理会社ではなく、区分所有者の代表である理事会が判断すべきテーマです。
来年度の「すまい・る債」募集開始までに、何を優先し、どこから着手するのか。
次回の理事会で、このデータを一度テーブルに広げてみてください。 この情報が、あなた方のマンション管理を見直す小さなきっかけになれば幸いです。
最終的に舵を切るのは、理事会そのものです。




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