マンション管理は、居住者の快適な生活とマンションの資産価値維持に不可欠です。しかし、その内容は多岐にわたります。そこで、マンション管理士の視点から、2025年の最新情報も考慮し、おすすめのマンション管理本を12冊厳選しました。
基礎知識から実務、最新の課題まで、マンションに関わる全ての方に役立つ書籍をご紹介します。
前回紹介したお勧め書籍
同様に、以下の内容で研究室の独自視点で★を付けています。
✅おすすめ度:★(確認しておきたい)~★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)~★★★(難しい)
各書籍には、当コラムで関連する記事も紹介しています。
コラムを読みつつ、書籍でも確認することによって、管理組合や役員における課題対策としても充実すると考えられますので、是非双方ご活用ください。
マンション管理の基礎を固める
管理組合の実例が数多く紹介されている『だまされない マンション管理』
まず最初に紹介するのは、写真付きで実例が多く紹介されているこの書籍です。
著者であるしぶたに修氏は、衆議院議員を2期務めた元政治家の方であり、都市・土地問題に専門的に取り組んでおられる方です。
この『だまされない マンション管理』は、管理会社の思惑通りに値上げが行われ、住民負担が増えていく、そのようにならないようにするためにはどうすればよいのかという点がテーマとなっています。
中でも特筆すべきは、管理組合の収支の改善前と改善後の比較がなされており、具体的に担当している管理会社名(当研究室もお付き合いがある一社)についても紹介されていました。
修繕についても、非常に細かく実例に基づいた注意点等が紹介されており、管理組合においても見ておいた方が良いと思う一冊です。Kindle Unlimitedでも読むことが可能です。
✅おすすめ度:★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)
初心者から専門家まで『入門図解 最新 マンション管理の法律と実務 (すぐに役立つ)』
マンション管理に関する法律と実務の基本を、図解を用いて分かりやすく解説した入門書です。
マンション管理組合の組織と運営方法から総会の準備・進行、管理規約の変更、修繕、建替え、管理費の徴収まで、管理組合の仕事の基本をQ&Aを豊富に盛り込み、実践的に解説しています 。
標準管理規約と標準管理委託契約書の読み方や滞納管理費を回収するための法的手段、書式なども掲載されており、管理業務の要点をQ&A形式で80問を超える事例が掲載されており、効率的に把握できます。
民法債権法改正や令和2年のマンション管理適正化法、マンション建替え等円滑化法改正にも対応しています。法律の知識だけでなく、実務の流れも理解したい方におすすめです。
✅おすすめ度:★★(購入を検討したい)~★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★★(普通)
管理組合運営と理事会活動を円滑に
理事必携の運営実務書『管理組合・理事のためのマンション管理実務必携〔第2版〕』
マンション管理組合の運営、会計・税務、建物・設備の維持管理、トラブル対応など、理事や管理会社担当者が知っておくべき知識を網羅しています。
第2版では、2017年の民法(債権関係)改正、2020年のマンション管理適正化法・マンション建替え等円滑化法改正や最新裁判例を織り込み解説しています。
マンションに関する法律等の基礎知識はもちろん、会計・税務や長期修繕計画、新型コロナウイルス感染症対応など管理組合運営で気になる点をわかりやすく解説しており、実務に即した内容です。マンション維持管理支援専門家ネットワークという、弁護士やマンション管理士、建築士、税理士等が集まる専門家集団によって執筆されています。
理事になったばかりの方から、運営に課題を感じている方まで、幅広く役立つ一冊です。
✅おすすめ度:★★(購入を検討したい)~★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★★(普通)
資産価値向上を目指す『資産価値向上と円滑な運営を両立するマンション管理の成功法則』
マンションの資産価値を維持・向上させるための具体的な管理方法を解説しています。 大規模修繕や理事会役員の不足といった現代のマンションが抱える問題点に焦点を当て、管理会社との付き合い方、大規模修繕の進め方、管理組合の運営方法など、実践的なノウハウを学ぶことができます。
2022年4月から始まった「管理計画認定制度」についても触れており、適切に管理されたマンションの市場評価や資産価値向上への期待について解説しています。全3章構成で、なぜマンション管理がうまくいかないのか、頻出するトラブル事例、そして管理会社を「最強のパートナー」にするための付き合い方の成功法則が語られています。
著者の藤原正明氏は、三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発業務に携わった経験を持ち、現在は大和財託株式会社を設立し、不動産・建築領域等を活用した資産価値共創事業を展開しています。そのため、実務に即した経験を活かした、分かりやすい内容となっています。
✅おすすめ度:★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)
トラブル解決のヒント『マンション管理 知識の窓』
マンション管理士として年間250回もの理事会や総会に出席する著者が、実際の相談事例や経験に基づいて、マンションで起こりうる様々なトラブルの解決策を分かりやすく解説しています。
日常的なトラブルへの対処法はもちろん、大規模修繕工事の流れについても分かりやすいフローチャートが付録として収録されており、現場の知恵を学ぶことができます。管理組合、管理業者、区分所有者など、マンション管理組合運営に関わる全ての人に役立つ一冊です。
Amazonのレビューでは、「購入前に知っておきたかった」「自分事として捉えられた」「実践的で役に立つ」といった声があり、管理組合として手に取っておきたい本と言えるかもしれません。
✅おすすめ度:★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)
マンションの「老い」と向き合う
高経年マンションの現実『朽ちるマンション 老いる住民 (朝日新書)』
建物と住民の「老い」という二つの側面から、高経年マンションが直面する問題点を提起します。管理会社の契約打ち切り、修繕費用の問題、もてあます機械式駐車場、なり手がいない管理組合の理事など、リアルな事例を通して、将来に向けて管理組合が取り組むべき課題を考えさせられます。
マンションの高齢化が日本中で問題となっている現状を、模索する人々の姿を通して描いています。Amazonのレビューでは、「面白い内容」「思い当たる点は多い」「マンションに住んでる方は必読」といった感想があり、築年数が経過したマンションに住む人々にとって共感できる内容であることが伺えます。
朝日新聞の連載が書籍化されたもので、マンション管理ではおなじみの大学教授や専門家も登場します。
✅おすすめ度:★(確認しておきたい)~★★(購入を検討したい)
✅難易度:★(易しい)
多角的な視点で「老い」を考察『マンションの「老い」 (KINZAIバリュー叢書L)』
作者の弁護士によって「建物」「人」「ルール」という三つの視点からマンションの「老い」がもたらす問題を分析し、解決方法を検討しています。
マンション標準管理規約の2016年の改正の内容を踏まえ、これら三つの老いに対応する部分を検討し、現在進められている区分所有法の改正議論について検討を加えています。建物の老朽化、住む人の高齢化、管理に関するルールの時代や環境への不適合といった問題について、原因の分析や解決方法を整理しています。
具体的には、マンションの「老い」がもたらす問題、マンション標準管理規約の改正、区分所有法の改正案などが含まれています。2025年1月9日に金融財政事情研究会から発売された比較的新しい書籍です。
✅おすすめ度:★(確認しておきたい)~★★(購入を検討したい)
✅難易度:★★(普通)~★★★(難しい)
法的根拠と規約の理解を深める
標準管理規約のバイブル『マンション標準管理規約の解説 4訂版 (最新不動産の法律)』
国土交通省が示すマンション標準管理規約の意義や具体的な条文の解釈を詳細に解説しています。区分所有法との関連性も踏まえ、管理規約がマンション管理において果たす役割や、規約を適切に運用するためのポイントを学ぶことができます。
不動産取引に関する法務に携わる方やマンション管理の実務者、マンションの法律問題に関わる専門家にとって必携の一冊とされています。
著者の渡辺晋氏は弁護士であり、元最高裁判所司法研修所民事弁護教官、現マンション管理士試験委員を務めています。同じく著者の久保田理広氏も弁護士であり、賃貸不動産経営管理士試験委員などを務めています。
Amazonのレビューでは、「マンション理事長、役員の必携の本」「解説がわかりやすく専門的」といった評価があります。400ページを超える内容が非常に充実した書籍であるため、マンション管理や不動産実務のための実践的書籍であると言えるかもしれません。
✅おすすめ度:★(確認しておきたい)
✅難易度:★★★(難しい)
研究室で実務の視点から独自に分析している、最新版の標準管理規約(単棟型)の全文解説(全文無料開放中)
とも合わせてご確認ください。
法律専門家による実践的Q&A『マンション管理法律相談201問 弁護士が答えるマンション管理会社・管理組合からの質問』
マンション管理の第一人者的存在である香川弁護士編著によって、マンション管理に関する様々な法律問題をQ&A形式で解説しています。
管理組合や管理会社が直面する具体的な疑問やトラブルに対して、法律の専門的な視点からのアドバイスを得ることができます。日常管理に関する事項が多く、実用的な内容で、著者が実際に受けた相談事例を基にした設問は現場感覚が反映されています。また、第三者管理など現代的な課題も多く取り上げられています。
Q&Aが具体的で非常に分かりやすい事から、Amazonのレビューでは、「役に立つ」「他書にはない新鮮な知見を得られた」「実務に役立つことが意識された良書」といった声が挙がっています。管理組合でも是非1冊置いておきたい、そして役員間で回しながら読んでおきたい書籍と言えるでしょう。
✅おすすめ度:★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)~★★(普通)
変化する管理のあり方を学ぶ
マンション管理センターによる専門的書籍『令和7年度版 マンション管理の知識 【マンション管理士】』
マンション管理に関する法令及び実務、管理組合の運営、建物の構造・設備など、マンション管理に必要な知識を体系的に解説しています。
マンション管理士試験の参考書としても活用できるほど専門的であることから、特に専門知識を深めたい方におすすめです。マンション管理士試験や管理計画認定制度等を担うマンション管理に関する公的団体である、マンション管理センターから毎年発売される定番書籍です。
✅おすすめ度:★(確認しておきたい)~★★(購入を検討したい)
✅難易度:★★★(難しい)
理事会不要の時代へ?『マンション管理新時代『理事会』が無くなる日(Laule’a出版)』
従来の理事会方式の限界と、新たな管理方式である「外部管理者方式」の普及について、マンション管理士が実務に裏付けされた形で解説しています。マンションの大規模化や権利関係の複雑化といった現代の課題に対応するため、これからのマンション管理のあり方を考える上で参考になる一冊です。
平成時代の理事会方式によるマンション管理の限界と、令和のマンション管理として「外部管理者方式」が提唱されています。管理会社による外部管理者方式の問題点や、マンション管理士の存在意義についても言及されています。Amazonのレビューでは、「管理業者外部管理者方式の考え方がよく分かる」という声が挙がっています。Kindle Unlimitedで読むこともできますので、対象の方はダウンロードして是非読んでみてください。
✅おすすめ度:★★(購入を検討したい)~★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)
危機管理の視点『マンション管理組合の危機 あなたのマンションは大丈夫?』
修繕積立金不足や管理費滞納、管理組合の無関心など、マンション管理組合が抱える危機的な状況とその見分け方を解説します。
自身のマンションの現状をチェックし、資産価値を守るための意識を高めることができます。危ない管理組合とは、修繕積立金が不足している金欠管理組合であるとし、国土交通省の調査データに基づき、積立金不足や管理費滞納の現状を示しています。管理組合の無関心と無責任も重大な問題として指摘し、日ごろからの関心の重要性を説いています。
Amazonのレビューでは、「マンション無関心で居られない」「悪徳管理会社の実態がよく分かった」「危ない管理組合の見極め方が具体的」といった感想があり、マンション管理の裏事情を知りたい方にとって役立つ内容であることが伺えます。著者の平田勝彦氏は、企業信用調査会社での営業経験を持つ人物でもあります。
たまたまこの書籍の巻末を確認したら、当研究室が監修しているマンション管理会社変更サイトLinksのコラム「マンションの管理会社について知っておくべき基礎知識」
からも引用・参考資料として紹介されていました。
書籍に対して自らの管理組合と照らして、まずは危険度をチェックすることも非常に有効でしょう。Kindle Unlimitedでも読むことができるので、是非手に取って読んで欲しい1冊です。
✅おすすめ度:★★★(是非1冊置いておきたい)
✅難易度:★(易しい)
充実したマンション管理のために当コラムと併用して書籍活用を
今回は新たに12冊の書籍を研究室独自視点で紹介しました。
これらの情報が、管理組合役員や組合員の皆様のマンション管理に関する理解を深める一助となれば幸いです。
前回のお勧め書籍
も合わせてご参照いただき、コラムと書籍を併用することで、マンション管理の充実にお役立てください。
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