マンションの給排水管、交換すべき?更生で延命?工事の選び方を徹底解説

マンション管理

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マンションの管理組合にとって、建物の維持管理は重要な課題です。特に、給排水管の老朽化は日常生活に直結する問題であり、適切な対応が必要です。

この記事では、給排水管の更新工事と更生工事の必要性や内容、注意点を実務に精通しているマンション管理士が分かりやすく解説します。マンションを長く使い続けるための知識を、管理組合員の皆さんにぜひ知っていただきたいと思います。

なぜ給排水管の更新や更生工事が必要なのか?

マンションの給排水管は、建物内部の水道や排水を支える重要な設備です。しかし、長年使用していると劣化が進み、トラブルが発生しやすくなります。ここでは、給排水管の更新や更生工事が必要な理由を詳しく見ていきましょう。

高経年マンションが増えている現状

近年、築30年以上の高経年マンションが増加しています。国土交通省の2023年のデータによると、2022年時点で694万戸ある分譲マンションストック戸数のうち、2042年には6割強の445万戸(2043年には464万戸の予測)が築40年以上になると予測されています。特に1970年代から1980年代に建設されたマンションは、給排水管の老朽化が顕著になっており、漏水や詰まりなどの問題が頻発しています。

こうした背景から、給排水管のメンテナンスが管理組合にとって喫緊の課題となっています。

建て替えが難しい現実:マンションを長く使い続けるしかない

マンションの老朽化が進むと、「建て替え」という選択肢が浮上します。しかし、建て替えには多くのハードルがあります。まず、多数の区分所有者との合意形成が必要です。区分所有法では、今後法改正によって、4分の3以上への変更がが予定されているものの、現時点では建て替え決議には5分の4以上の賛成が必要とされており、この合意を得るのは非常に困難です。

また、建て替えには莫大な費用がかかり、新たな住戸の供給が難しい場合もあります。さらに、仮住まいへの引っ越しや生活の不便さも考慮しなければなりません。

これらの理由から、建て替えを断念し、既存のマンションを長く使い続けるケースがほとんどです。そのため、給排水管の更新や更生工事を通じて、建物の寿命を延ばすことが現実的な選択肢となります。

工法の進歩:住みながらでも工事が可能に

かつては、給排水管の更新工事といえば専有部分にも影響する大規模な作業が必要で、住民が一時的に工事対象箇所となる部屋が使えなかったり、引っ越す必要がある場合もあったようです。しかし、近年では工法の進歩により、住みながらでも工事が可能なケースが増えています。

例えば、更生工事では既存の配管を内部から補修する技術が開発されており、工期の短縮や費用の削減が期待できます。また、更新工事においても、部分的な交換や効率的な施工方法が採用されるようになり、住民への負担が軽減されています。これらの進歩により、給排水管のメンテナンスがより身近なものになっています。

給排水管の更新工事と更生工事の内容を理解しよう

給排水管のメンテナンスには、主に「更新工事」と「更生工事」の2つの方法があります。それぞれの特徴や違いを理解することで、管理組合として適切な選択ができるようになります。

更新工事の内容を詳しく解説

更新工事とは、老朽化した給排水管を新しい配管に交換する大規模な工事です。この工法は、配管の劣化が深刻で、単なる補修では対応できない場合に選択されます。以下に、更新工事の特徴や具体的な内容を詳しく解説します。

背景と必要性

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年9月更新版)によると、給排水管の取替までの年数は一般的に30~40年とされています(P84他)。特に鉄製の配管では、錆による腐食や穴あきが問題となり、漏水事故のリスクが高まります。

✅鉄製配管:錆びやすく、耐用年数が短い。
✅ステンレス鋼管:耐食性が高く、50年以上の寿命も期待可能。
✅樹脂製配管(例:ポリエチレン管、塩ビ管):軽量で施工が容易、コストを抑えたい場合に適している。

更新工事では、これらの耐久性の高い素材に交換し、将来的なトラブルを防ぎます。

施工手順

更新工事は計画的な準備と専門的な作業が必要です。以下は主な手順です。

✅修繕委員会の発足:理事会に負担が掛かるうえ、居住者への影響も大きいため、委員会方式が望ましい。
✅給排水管工事のための総会決議:普通決議で可能(標準管理規約第47条と国土交通省の補足コメントより)
事前調査:内視鏡カメラや超音波検査を用いて、配管内部の劣化状態を詳細に把握。
交換範囲の決定:調査結果をもとに、どの部分を交換するかを決定。
✅既存配管の撤去:壁や床を一部解体し、古い配管を取り外す。この際、騒音や振動が発生する可能性あり。
✅新配管の設置:ステンレスや樹脂製の新しい配管を設置。
✅責任範囲の明確化:配管が共用部と専有部にまたがる場合、管理組合と区分所有者の負担範囲を明確化。共用部分は管理組合、専有部は各区分所有者が負担するケースが一般的。

標準管理規約第47条ならびに、国土交通省の補足コメント詳細については、以下の記事

も合わせて参照ください。

メリットとデメリット

更新工事には多くのメリットがありますが、デメリットも理解しておく必要があります。

メリット

✅耐久性の向上:新しい配管に交換することで、長期的な安心感が得られる。
✅トラブルリスクの低減:過去に経年により漏水事故が発生したマンションでは、更新工事後に再発リスクが大幅に減少した事例も。

デメリット

✅高額な費用:共用部分の給排水管を全面更新する場合、1戸当たり50~70万円程度の費用がかかる(筆者担当マンションの長期修繕計画複数棟の比較により算出)。
✅生活への影響:専有部分に影響する工事の場合は生活への影響が懸念される。

更生工事の内容を詳しく解説

更生工事とは、既存の給排水管を交換せずに内部から補修し、延命を図る工法です。この方法は、配管の劣化が軽度で、更新工事ほどの費用や工期をかけたくない場合に適しています。以下に、更生工事の特徴や具体的な内容を詳しく解説します。

背景と普及状況

更新工事に比べて、更生工事はコスト面でのメリットがあることから、一定数のマンションでは採用されています。

また、最近では樹脂の開発等によって工法も進化してきており、給排水管の延命手段として比較検討されることも多いようです。

主な手法

✅ライニング工法:配管内面に樹脂コーティングを施す(マンションで多いのはこちら)
✅インナーパイプ工法:専用の樹脂チューブを挿入し、圧力や熱で密着させる

これらの工法は、既存の配管を有効活用することで、コストと工期を抑えることができます。

具体的な施工方法

更生工事は、専門的な技術を要する作業です。以下は代表的な工法の詳細です。

ライニング工法

手順:高圧洗浄で配管内部を清掃し、錆や汚れを除去。エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂を吹き付けてコーティング層を形成。
✅効果:コーティングにより、配管の内面が保護され、漏水や腐食の進行を抑える。

インナーパイプ工法

手順:既存の配管内に柔軟な樹脂チューブを挿入し、圧力や熱で密着。
✅特徴:配管の内径が若干狭くなるものの、施工が迅速で費用対効果が高い。

メリットとデメリット

更生工事にも多くのメリットがありますが、限界も理解しておく必要があります。

メリット

✅費用対効果:ライニング工法の費用は更新工事の3分の1程度に抑えられる場合が多く、工期も数日から1週間程度で済む。
✅住民への負担軽減:住みながら工事が可能なため、生活への影響が少ない。

デメリット

✅延命手段に過ぎない:ライニング工法で補修した配管でも、10~20年後に再び劣化が進む可能性。
✅将来的な更新工事の必要性:管理組合としては、更生工事の効果と限界を理解し、長期的な計画を立てる必要がある。

施工後の管理と注意点

更生工事の成功には、施工業者の選定と事後の管理が重要です。

業者選定:複数の業者の比較によって、工法の特徴や施工実績や技術力、事後の保証内容を確認することを推奨。
✅定期点検:工事後の配管状態を内視鏡検査で確認し、コーティングの剥がれや亀裂がないかをチェック。早期に問題を発見することで、住民の安心感を高め、マンションの資産価値を維持。

給排水管の更新・更生工事で注意すべきポイント

給排水管のメンテナンスを進める際には、いくつかの注意点があります。管理組合として、これらのポイントを押さえておくことで、スムーズな工事計画や住民の理解を得やすくなります。

長期修繕計画に織り込み、修繕積立金を確保する

給排水管の更新工事や更生工事は、計画的に進める必要があります。そのためには、マンションの長期修繕計画にこれらの工事を織り込むことが重要です。

長期修繕計画とは、マンションの修繕や設備更新を計画的に行うためのスケジュールであり、修繕積立金の適切な設定にも関わります。例えば、更新工事には戸数や規模によっては数千万円以上の費用がかかる場合もあるため、事前に十分な資金を積み立てておく必要があります。修繕積立金が不足していると、工事の実施が遅れたり、住民に追加負担が発生したりするリスクがあります。

管理組合としては、専門家の意見を取り入れながら、適切な計画と資金管理を行うことが求められます。

工事期間中は水道や排水が使えない時間帯がある

給排水管の工事では、作業の性質上、水道や排水が一時的に使用できない時間帯が発生することがあります。特に更新工事の場合は、配管の交換作業中に特定の住戸やフロアで水が使えなくなるケースが考えられます。こうした不便を最小限に抑えるため、管理組合としては以下の対策を検討しましょう。

✅工事スケジュールを事前に住民に周知する。
✅使用できない時間帯を明確にし、代替案(例:共用部の水道利用)を案内する。
✅日中は仮設トイレの設置を検討する。
✅工事会社と連携し、作業の効率化を図る。

住民の理解と協力を得るためにも、丁寧な説明と情報提供が欠かせません。

共有部分とともに専有部分の給排水管取替えを行う際には費用負担の問題も

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインには、以下の注意点を挙げています。

✅共用部分の給排水管の取替えと専有部分の給排水管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の給排水管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる
✅その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の給排水管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて管理規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要
✅修繕積立金から専有部分の工事費用として拠出する場合には、その対象を共用部分と構造上一体となった部分及び共用部分の管理上影響を及ぼす部分(いわゆる横引き配管など)に留め、これに連結された室内設備類は区分所有者の負担とすることが相当

とりわけ、一体化工事を行う場合においては、管理組合において費用負担が異なる場合があります。

共用縦管などの共用部分の給排水管は、修繕積立金によって管理組合負担、また専有部分に該当する横引管は、専有部分であっても室内までの区間は管理規約の定めで修繕積立金からの拠出も可能としています。

ただし、室内の給排水管については、区分所有者の負担となる事が一般的です。

ちなみに、共用部分と専有部分の境目については、以下

で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

工事が専有部分に及び普段の生活に影響する場合も

マンションの構造によっては、共用部分の排水管の取替えを行うために、パイプシャフトに面した専有部分の壁を一旦撤去した後に修復することがあります(国土交通省長期修繕計画作成ガイドラインP48)。

そのため、生活に大きく支障をきたす可能性があります。

ただし、このような共用部分の修繕工事及び改修工事に伴う専有部分の修繕工事は、管理組合が費用を負担して行う必要があると、上記のガイドラインには紹介されています。

更生工事は延命手段:将来的に更新工事が必要になる場合も

更生工事は、既存の配管を補修して延命する工法ですが、永久的な解決策ではありません。例えば、樹脂コーティングを施した配管でも、10~20年後に再び劣化が進む可能性があります。そのため、更生工事を行った場合でも、将来的には更新工事が必要になる可能性もあることを認識しておく必要があります。

管理組合としては、更生工事を選択する際には、その効果と限界を十分に理解し、長期的な視点で計画を立てることが重要です。また、更生工事の結果を定期的に点検し、配管の状態を把握することも忘れないようにしましょう。

まとめ:給排水管のメンテナンスでマンションの未来を守る

給排水管の更新工事や更生工事は、マンションを長く安全に使い続けるために欠かせないメンテナンスです。高経年マンションが増える中、建て替えが難しい現状では、既存の建物を維持するための対策が求められます。工法の進歩により、住みながらでも工事が可能になった今、管理組合として積極的に取り組む価値があります。

更新工事と更生工事にはそれぞれメリットとデメリットがあり、マンションの状況や資金面に応じて適切な選択をすることが重要です。また、長期修繕計画への織り込みや住民への丁寧な説明など、計画的な進め方も成功の鍵となります。

給排水管のメンテナンスを通じて、マンションの価値を守り、住民の快適な生活を支えるために、管理組合員の皆さんが一丸となって取り組んでいただければ幸いです。

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