マンション管理組合と株式会社の共通点や相違点は?【似て非なる?】

マンション管理

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マンションの管理組合って、会社の組織に似ている感じがする

また、

理事や監事は、取締役や監査役に似ていない?

さらには、

株主総会と管理組合総会って言い方も似ているけど、どのような違いがあるのかな…?

このような疑問を持っている区分所有者や管理組合役員もいるかもしれません。

確かに、双方似たような言い方もありますね。

今回はこのような疑問に答えるべく、マンション管理組合と、おもに株式会社組織をイメージして、それぞれの共通点や相違点を考えてみたいと思います。

筆者は双方の分野に精通しているマンション管理士兼企業のCFO経験者の立場であり、その観点も踏まえて具体的に解説します。

マンション管理組合と株式会社の共通点や相違点は?【似て非なる?】

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・マンション管理組合の組織やルールは?
・株式会社の組織やルールは?
・各組織の共通点と相違点は?
・管理組合と株式会社の比較まとめ

まず、これまでにも何度か紹介したことがありますが、管理組合の組織やルールについて基本的なところを紹介します。

次に、会社としておもに株式会社の一般的な組織やルールはどのようになっているのか、確認します。

そして、管理組合、株式会社各組織やルールにおいて共通する点、相違点を紹介します。

最後に全体のまとめとして、管理組合、株式会社の各組織の比較をしてみました。

中でも、管理組合の役員や、区分所有者は会社組織に属している人が大半であると考えられます。

そのため、管理組合組織と会社組織を対比することによって、ある程度イメージしやすくなります。

次章より各内容について、事例や筆者がイメージする内容をもとに具体的に紹介していきます。

マンション管理組合の組織やルールは?

まずはじめに、マンション管理組合の組織やルールについて紹介します。

管理組合

管理組合は、マンションの区分所有者が強制的に加入する団体です。

これは、マンションの法律である区分所有法第3条に

区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

とあります。

「区分所有者は…団体を構成し」とあるので、区分所有者が加入する団体として管理組合があります。

また、「集会(総会)を開き、規約を定め、及び管理者(≒理事長)を置くことができる」とあり、こちらは法律上は任意ですが、ほとんどの管理組合は設置しています。

管理組合総会

マンション管理組合では、年に1度管理組合総会を開催する必要があります。

事業年度終了後定期的に開催するのが定時総会であり、その間に管理組合として決めるべきことがある場合には臨時総会が開催されます。

また、総会はマンションの持ち主である区分所有者全員に出席の権利があります。

一方で、区分所有者から借りて賃貸住んでいたり、ルールによっては区分所有者以外は出席できない等のケースもあります。

ちなみに、管理組合総会は、国土交通省が定めている「マンション標準管理規約」には2か月以内との定めています。

区分所有者と管理組合役員

前述の通り管理組合には、マンションの持ち主である区分所有者が必ず加入することとなります。

その中で、輪番制等のルールに則って、理事や監事といった役員を決定します。

役員の種類には、

・理事長
・役付理事(副理事長や会計担当理事など)
・平理事(ひらりじ。担当役職がない理事)
・監事

といった役職があります。

それぞれの役割は後述する管理規約や役員細則等によって定められています。

理事会

構成される役員の会合として理事会があります。

また、理事会は理事の半数以上の出席によって成立し、過半数の決議で議案が可決されます。

理事会は「理事」とついているため、理事のための会合ですが、監事も出席することができます。

ちなみに、監事は出席メンバーではなく、「出席し、必要があると認める時には意見を述べなければならない」と、管理規約のひな型である標準管理規約には記載されています。

専門委員会

役員の負担や時間を加味して、理事会では裁き切れない案件については、理事会の諮問機関としての専門委員会を設置し、個別の議題について議論することができます。

具体的な専門委員会としては、大規模修繕工事委員会や長期修繕計画委員会、防災委員会など、管理組合の課題に応じて設置されます。

そして、専門委員会は意思決定はできず、あくまでも理事会の諮問機関として議論の結果を理事会に上程し、意思決定を仰ぐ形です。

管理規約

マンション管理組合の決まり事は管理規約に集約されます。

一般的には、国土交通省がマンション管理組合に使用して欲しいとして定めている「マンション標準管理規約」という書面に従って定めていることがほとんどです。

また、時代背景や法改正により、随時標準管理規約も改正されます。

その改正タイミングに応じて、管理組合としても管理規約を改正すべきかどうか、随時検討することとなります。

使用細則ほか各種細則

管理規約に記載された内容で、さらに具体的にルールを決める必要がある際には、各種細則が制定されます。

具体的には、理事会運委細則やペット飼育細則、駐車場使用細則など、マンションの管理運営や設備使用ルールに応じて、細かく書面化されます。

株式会社の組織やルールは?

次に、株式会社の組織やルールについても簡単に確認していきます。

株式会社

株式会社の形態は、株主がお金を出資して設立し、経営者が会社を経営する形態です。

必ずしも株主=経営者である必要はありませんが、オーナー企業や小さな会社は株主=経営者、すなわち所有と経営が分離していない形態もあります。

上場企業や大企業等、多方面からの出資が必要な場合は、株主構成も変わり、経営者の持ち分も変動することとなります。

また、時には経営者が交代することによって、所有者と経営者が完全に分離することもあります。

株主総会

出資者である株主が集まって、会社の業績や経営方針等を議論する重要事項を決定するための会議として位置づけられます。

株式会社について規定されている法律として会社法がありますが、そこには、株主総会に関する規定があります。

会社の事業年度終了後の3か月以内を目途として、この株主総会を開催する必要があります。

また、管理組合同様に、臨時に株主総会を開催することもできます。

役員と社員

株式会社の役員と社員について、取締役と監査役といった役員は、株主総会の決議により決定します。

そして、役員は社員・従業員ではなく、株式会社と委任契約を結ぶ形になります。

一方で、社員は会社と雇用契約を結ぶ形で就業することとなります。

社員の中には、執行役員と言われる、取締役ではない形態の役員も存在する場合むあるでしょう。

また、監査役は定款により設置すると定めた場合には設置することができます。

そのため、株式会社によっても監査役がいない場合も考えられます。

取締役会(設置会社の場合)

後述する定款により、取締役会を設置していると定めた場合には、取締役会が開催されます。

取締役会の構成メンバーとしては、取締役と監査役になり、オブザーバーとして事務局や関係者等、社員が出席することもあります。

また、取締役会は3名以上の取締役で構成される意思決定機関であり、過半数の出席で過半数の決議で可決します。

経営会議等の会議体

取締役会に上程する会議体として、経営会議や戦略会議、役付き取締役の会合(常務会など)が存在する場合もあります。

管理組合における諮問委員会の位置づけと似ているかもしれませんが、取締役会で議論しきれない内容を、個別の会議体を定めて議論する会社もあります。

定款

会社のルールや指針を定めるのが定款です。

定款には、会社名、会社の目的、登記上の住所、決算の公告方法、株式の定め、株主総会の招集ルールや議長、取締役の選任方法や任期、事業年度など会社の基本的なことが掲載されています。

これらのルールに則って、会社の運営を行っていく必要があるといえます。

各種社内規程

会社組織が大きくなると、定款だけでは定めきれないこともあります。

そのため、新たに規程や規則を作成して、組織に参加する人たちに通知することとなります。

具体的には、取締役会規程や就業規則、旅費規程、給与規程など、企業によっては多岐に渡ることとなります。

各組織の共通点と相違点は?

それぞれの組織の特徴を見てきましたが、各組織やルールについて、どのような共通点と相違点があるのでしょうか?

それぞれ確認していきましょう。

おもな共通点

まずは、共通点からです。

最高意思決定機関の存在

管理組合には、管理組合総会が、株式会社には株主総会があります。

双方とも最高意思決定機関という位置づけで、決められた参加者が参加することができます。

また、議決権も持分によって定められていますが、管理規約で決められた議決権数や持ち株数によって権利行使することができます。

各役員の存在と役割の明確化

双方とも、組織を代表する役員という存在があります。

理事長や代表取締役は組織を代表することに対する役割や使命を担い、各理事や取締役は与えられた役割や使命を担うこととなります。

また、各役員は役割が明確化されている点も共通していると言えるでしょう。

組織ルールの明文化

管理組合には管理規約や各種細則が、株式会社には定款や各種規程・規則が定められます。

これらに従って、組織を運営していくことになる点は共有しています。

また、代表的な法律としては管理組合に関連するものは区分所有法が、株式会社には会社法があります。

その他関連する法律を含めて、コンプライアンス遵守を行っていく必要があります。

売却や譲渡

区分所有者が物件を売却した場合は、管理組合員ではなくなります。

一方で、株式会社の場合は、株式を売却したり、他の方に譲渡すると株主ではなくなります。

ただし、株式会社の場合は株主ではないことが会社に関与できないということではなく、役員や社員として継続的に関与も可能です。

その点は相違があるものの、所有の観点からは、物件や株式を譲渡した場合には、当然ながら各組織上の所有者ではなくなります。

おもな相違点

次に、おもな相違点について紹介します。

組織の法的な違い

管理組合は、法人化していない場合は権利能力なき社団という形態で、法人格を有しない団体です。

また、営利や公益を目的としない、区分所有者のための団体となります。

法人化しているいわゆる管理組合法人は、法的な地位と責任があり、法人としての適切な会計処理やコンプライアンス遵守が求められます。

一方の株式会社は、法人格を有する形態であり、会社法等の法令に則って会社運営が義務付けられている団体と言えるでしょう。

全員加入と株主の存在

管理組合は、マンションの所有者である区分所有者が全員参加する形態です。

マンション内の自分の住戸を購入している、マンション全体に対する一部出資をしているという考え方に近くなるのでしょうか。

対する株式会社は出資している人が所有者であり、取締役や社員等、必ずしも会社の中の人でなくても良いこととなります。

役員の流動性

管理組合役員は、輪番制を敷いていることが多く、2年程度の期間で順番に役員が変わっていくことが多いでしょう。

中には役員が固定化されている所もありますが、固定化は一部役員に権限が集中する等で避けられる傾向があります。

一方の株式会社は、株主総会で選ばれるものの、2年程度の期間で退任することが頻繁にある訳ではありません。

オーナー企業であれば長期的に会社のトップになっていることも考えられますし、そうでない他の取締役も長年就任しているケースもあります。

管理組合と株式会社の比較まとめ

今回は管理組合と株式会社の特徴や共通点、相違点について紹介しました。

最後に各特徴をまとめておきます。

管理組合 株式会社
各組織への参加要件 区分所有者は加入義務 株主
おもな法律 区分所有法、都市計画法、建築基準法など 会社法、労働基準法、独占禁止法など
組織形態 管理組合総会、理事会 株主総会、取締役会、監査役会
役員 理事長、理事、監事 代表取締役、取締役、監査役など
会議体 各諮問委員会(大規模修繕委員会、防災委員会など) 経営会議、常務会など
ルール ・管理規約
・使用細則等の細則
・定款
・取締役会規程や就業規則等の各規程・規則

 

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