マンションで制定されている使用細則にはどのようなものがあるのだろうか?
また、
うちのマンションで足りていない使用細則はあるのだろうか?
このような疑問を持っている管理組合や役員も多いと思います。
今回は数多くの管理組合の規約や使用細則を見てきている筆者が、マンションにあるおもな使用細則や、比較的珍しい使用細則についても、詳しく紹介します。
マンション管理組合にある使用細則の種類を一挙紹介【是非参考に】
今回紹介する内容は以下の通りです。
・設備系の使用細則は?
・中にはこんな使用細則も
設備が比較的多いタワーマンションや団地などの大規模マンションは、比較的多くの使用細則が存在し、住民にとっても様々なルールに対応しなければなりません。
一方で、小規模マンションは、設備も小規模であったり多くないことから、守るべきルールなどを中心とした使用細則が多くなると考えられます。
使用細則は、管理規約では定めきれないものを別途文書化して細かく定めたマンションのルールです。
これら細則に記載されたルールとしては、管理規約同様に守っていく必要があります。
このような使用細則について、どのようなものが存在するか、今回は具体的に紹介します。
守るべきルールを定めた使用細則は?
まず、マンションのルールとして、守らなければならないルールを定めた使用細則について紹介します。
該当する場合は、区分所有者ではなく賃貸物件として借りている方(占有者)も対象となるので、注意が必要です。
マンション使用細則
全般的な使用のルールを定めた使用細則です。具体的には、各細則にて決められることが一般的ですが、マンションという共同生活上守らなければならないルールを定めています。
一般的に、以下のような内容が盛り込まれていることが多いでしょう。
用途外の使用、音量を著しく上げる、専用使用部分の外見や形状変更
・入居の際の届出
入居、売却、転居、占有者(賃借人等)の退去、長期不在など
・敷地や共用部分での禁止行為
共用部分の切削や改造、広告、自転車の放置、タバコの吸い殻等の投棄
・バルコニー等専用使用部分の適切な管理や使用禁止行為
家屋、倉庫の設置や緊急避難の妨げとなる物品の設置や放置等
全般的な使用細則に収まらない場合で、これらをさらに細かく定める場合は、各使用細則を定めることによって、ルール化することが考えられます。
理事会運営細則
規約のひな型である標準管理規約にも、理事会に関する取り決めや各役員の業務が定められています。しかしながら、そこで不十分な場合や、マンション独自の取り決めを行う場合には、理事会運営細則にて定めることもあります。
具体的には、以下のような内容です。
・理事会の運営
理事会の構成、開催日、招集の取り決め、議案書の配布など
・理事会の決議事項
・議事録の作成や保管、閲覧の取り決め
・専門家の活用や専門委員会
・新旧役員の引き継ぎ事項
・役員報酬等の取り決め
報酬額や役員活動時の経費精算など
ちなみに、監事については、管理規約には、「理事会に出席し必要がある場合は意見を述べなければならない」「理事会での議決権はない」と定められていることが一般的です。
そのため、細かな監事の業務については、理事会細則には掲載されないでしょう。また、管理組合における監事独自の会合は通常のマンションであると一般的にはあまりないかもしれません。
細則を定めるのは管理組合で任意なので、企業の規程にあるような「監査役会規程」に似た形として、例えば「監事業務細則」など、監事の取り決めを別途行うことも一つの考え方としてあるでしょう。
ペット飼育細則
ペットを飼ってよいとする管理組合においては、ほとんどの管理組合においてペット飼育細則が定められていることが一般的です。逆にペット飼育不可のマンションは、全体の使用細則で禁止事項として「ペット飼育禁止」を定めて、それ以外のことを定めません。
犬猫は禁止で、小鳥や金魚など小ペットは可の場合は、その旨が記載されることがあります。
また、一般的にペット可の管理組合では、以下のような内容が織り込まれます。
区分所有者や占有者であり、管理組合の承認を得た者など
・飼育者が守るべき義務
鳴き声、悪臭で近隣に迷惑をかけない、バルコニーで飼わないこと、疾病がないように清潔に保つ、飼育ペットに対する予防注射の接種など
・共用部分での配慮
エレベーターや廊下では抱えるかケージに入れて持ち運ぶ、共用部分内で遊ばせない、共用部分につながないなど
・飼ってい良いペットの種類や数、体長の制限
・管理組合への定期的な報告
・盲導犬等に対する管理組合や居住者における配慮
ペットは家族の一員という認識も広まりつつあり、ペット飼育可のマンションも増えてきています。一方で、そのようなマンションでもペットが苦手な方もいると考えられるため、細則を守って飼育することが求められます。
専有部分の修繕等に関する細則
専有部分、すなわち普段生活する各住戸をリフォームしたり、水回りを修繕することも一般的です。
その場合は、以下のようなルールを細則で定めていることが多いでしょう。
申請書とともに工事を行う際の設計図や仕様書、工程表
・承認、非承認について
・所定の掲示場所への書面の掲示
工事を実施する場合には、対象住戸、工事期間や工事内容、工事業者、問い合わせ先などが記載された書面の掲示
・紛争が起きた場合の責任や解決方法
自己の責任で解決に当たるなど
とくに、住居内部の専用使用部分には、窓ガラスや窓サッシ、玄関ドアなどがありますが、これらは共用部分です。そのため、専有部分の修繕等には該当しません。
そのため、マンション独自のルールに従って工事を行う点に注意が必要です。
会計処理細則
会計の区分や、処理に使用する帳簿、処理の原則などを定めた細則です。企業では会計原則等に従って処理することが多く、一般的な取り決めですが、マンションでも定めている場合があります。
具体的には、次のような内容です。
一般(管理費)会計、修繕積立金会計、駐車場会計、自転車置場会計、集会所会計など
・会計処理の原則
公平妥当な会計処理の基準に従って処理することなど
・会計上の職務分担
予算案、予算執行状況、収支に関する契約や発注、支払確認、余剰金の運用や決算報告等
・会計帳簿の種類
現金・預金出納帳、収入支出基本台帳、備品台帳、固定資産台帳、積立金台帳等
・預金口座の設定、保管方法
・預金の出納
決済権限や出納業務、仮払いについてなど
・予算や決算、監査の取り決めなど
管理組合でも企業さながらの取り決めがなされることがあります。とりわけ、管理組合法人であれば、法人として申告する必要があるため、各種ルールに従って会計処理を行っていく必要があるといえるでしょう。
設備系の使用細則は?
次に、マンション内にある設備を使用する際に守るべきルールを定めた使用細則について紹介します。
駐車場使用細則/来客用駐車場使用細則
機械式、平置問わず駐車場がある場合には、必ず駐車場の使用上のルールを取り決めた使用細則があります。
これらの駐車場に関する細則は、以下のような内容です。
・申し込み方法や契約方法、承認、順番待ちについて
・自らが使用する使用区画について
・使用料について
・駐車場利用者の管理義務について
指定外場所の駐車禁止、サイドブレーキをかけアンテナを下げる、ライトを消灯するなど
・禁止事項
駐車場内での速度超過、区画に契約外車両やバイク、タイヤなどを置く、空ふかし等騒音を出すことなど
また、別途来客専用の駐車場を持っている管理組合もあります。
来客用の駐車場では、以下のような内容です。
・申し込み開始や申し込み期限
・平日や土日祝日予約の上限時間
・予約の取り消しの定め
一定の未使用時間が経過しても連絡がない場合の予約取り消しなど
・利用可能区画
・利用料
・駐車場利用者の管理義務や禁止事項
機械式駐車場の場合は、平置きに比べて機械動作に関する細かなルールが定められていることもあり、各管理組合における独自性が考えられます。
駐輪場使用細則
設備としては駐車場とともに一般的に存在する駐輪場ですが、こちらについても細則が必要になることが一般的です。
以下のような内容が定められていることが多いでしょう。
・駐輪の際に遵守すべき義務
・使用できる自転車の種類(原付含めバイクも可とする場合あり)
・登録手続き
申し込み方法や、ステッカーの添付など
・事故や保管の責任
・駐輪場使用料
・届出の義務
・放置の場合の処分
バイク置場使用細則
駐輪場と同様に、バイク置き場が別になっている場合も考えられ、別途バイク置き場使用細則を定める場合も考えられます。
その場合、駐車場と同様に、以下のような内容が定められていることが多いでしょう。
・申し込み方法や契約方法、承認、順番待ちについて
・自らが使用する使用区画について
・使用料について
・利用者の管理義務について
バイク以外の置場にしない、発進時や入庫時の安全性確保、バイクの転倒防止対策など
・禁止事項
駐車場内での速度超過、区画に契約外車両や自転車、タイヤなどを置く、空ふかし等騒音を出すことなど
集会室使用細則
マンションによっては敷地内に集会室やコミュニティルームなどが設置されていることも多いでしょう。
理事会や総会に使用する際にも使うことが多いですが、マンション内や近隣の自治会、さらにはプライベートでの使用も考えられます。
そのような想定をされた集会室ですが、以下のような内容が定められていることが多いでしょう。
・集会室のおもな用途
冠婚葬祭、理事会や総会、説明会等の管理組合運営に必要な会議、区分所有者間の親睦など
・使用制限
政治的や宗教的な集会、公の秩序や風紀を乱す恐れのある集会、管理組合運営上支障をきたす集会など
・使用時間
・集会室の申し込み方法
・利用料
・集会室のの鍵の貸与や返却方法
・原状回復義務
コロナ禍以降、リモートワークが一般的になってきたことから、住民による業務上の会議や業務での利用も増えています。そのため、おもな用途にも定められていない場合は、理事会の許可の上、使用できることも考えられます。
防犯カメラ運用細則
どのマンションにも設置が一般的になってきた防犯カメラですが、マンションのセキュリティ確保のために、設置や運用について定めた細則が考えられます。
具体的には、以下のような内容です。
・設置における取り決め
増設や撤去、位置の変更等の決議、カメラの角度の変更など
・録画や記録映像の保存の取り決め
保存期間や保存方法など
・記録された映像の閲覧や申請
犯罪行為や毀損行為等の確認など閲覧可能な場合の取り決めや、閲覧申請など
ゴミ置き場使用細則
出し方や出す場所、ゴミとして出せないものをなどを定めた細則です。ゴミは住民全員の問題であるため、ゴミ出しルールを徹底するためにも必要で、細則として検討してもよいルールともいえるでしょう。
具体的には、以下のような内容が考えられます。
自治体によって異なる場合もあることから、マンション独自で検討する
・粗大ごみやパソコンなど家電製品廃棄の場合
住民が自ら自治体や業者に連絡して対応するなど
・禁止事項
粗大ごみや自治体がごみとして持って行けないものなど等、ゴミ置き場に搬出してはならないものを定める
・ゴミ出しの時間
ゴミ出しの時間を決めたり、年末年始のゴミ出しルールを定める
宅配ボックス使用細則
留守時の利便性や宅配業者の手間の観点から、宅配ボックスを設置するマンションも多くなっています。具体的に利用上のルールを定めたものとして制定されることも多くなっています。
具体的には、以下のような内容が考えられます。
規定寸法や重量以上のもの、動植物、発火性のあるものや貴金属、生鮮食品など
・保管期間と経過後の対応
保管期間を過ぎてもなお宅配ボックスに入っているものは、管理員さんが開扉して適切な処置を行うことなど
・清掃時の開扉
・宅配ボックス破損時やボックス内保管品の事故の取り決め
中にはこんな使用細則も
マンション独自の施設や取り組みで、次のような細則を定めることも考えられます。タワーマンションや団地、単棟型などの施設の違いによって、またマンションの長年の歴史の中で制定されたものもあるでしょう。
どの管理組合にもあるわけではないですが、考えられる細則について紹介します。
大規模修繕工事専門委員会運営細則
まず、どこの管理組合でも必ず実施することとなる大規模修繕工事ですが、その工事について集中して検討することが必要です。その場合、理事会から切り離して大規模修繕委員会として発足することも想定されます。
そのような場合の委員会運営について取り決めた細則が考えられます。具体的には以下のような内容が考えられます。
理事会の諮問委員会として理事会に答申する位置づけなど
・委員会の構成
人数や現職役員との兼務について
・役員の構成
委員長や副委員長、書記、その他役割など
・各委員の任期
・委員に対する報酬の定め
・委員長や副委員長、書記、その他委員の具体的な業務内容
・決議や議事録
議事の決議方法や議事録の署名方法など
・委員会における議案内容
建物の調査診断、工事範囲や工事の仕様、工法、工事発注方式や施工業者の選定方法、打合せなど
理事会の分科会的な位置づけの諮問委員会であるにしても、委員会の中では議論すべき事項や決議事項も存在します。そのため、議題や決議内容を定めたり、議事録を取ったりすることに対する取り決めが細則として必要になってくるでしょう。
専用庭使用細則
おもにマンションの1Fの敷地内には、専用で使える庭がついている住戸も存在します。専用で使用できるもののマンションの共用部分であるため、独自にルールを定めルールに則って使用することが求められます。
具体的には、以下のような内容が考えられます。
区分所有者や占有者(賃借人)などの取り決め
・専用庭での禁止行為
部屋の増築や物置、サンルーム等の工作物の設置、高い樹木、池の築造、コンクリートの打設など
・使用権者による適切な管理
・利用料
・原状回復義務
マンションの中には、専用庭と駐車場が一体化しているところもあります。その場合は、新たに駐車に関する定めも考えられます。
レンタルルーム/ゲストルーム運営細則
マンション管理組合でレンタルルームやゲストルームを所有しているところもあるでしょう。親戚や友人が遊びに来た際に、宿泊するためのルールが必要となります。
具体的には、以下のような内容が考えられます。
顧客である宿泊者を優先するのか、または住民利用ができるのかなど
・禁止事項
・使用時間や連泊数
・使用料
・備品の貸し出し方法
・鍵の貸与方法
・原状回復義務
その他考えられる使用細則をまとめて紹介
その他、マンション独自で考えられる使用細則として、次のようなものが考えられます。
・ルーフバルコニー/庭園利用細則
階段状になっているルーフバルコニーの使用や、敷地内に住民のみが使える屋上庭園がある場合などの取り決め
・ 管理組合業務委託細則
外部に対して管理組合業務を委託する場合の取り決めを定めたもの
・ディスポーザー運用細則
ディスポーザーに処理してよいゴミや責任などを定めたもの
・フィットネスジム利用細則
マンション内にフィットネスジムがある場合の利用の際の取り決めを定めたもの
・個人情報取扱細則
・AED使用細則
・災害対策細則
マンションによってはマニュアルで代替される場合が多いが、その上位概念として細則で定めておくことも考えられる
マンション管理組合にあった使用細則を取り決めることが重要
管理組合においては、設備や立地等の周辺環境、また長年の管理組合運営上の経験値から、様々な細則の制定が考えられます。
使用細則は独自のものであり、各管理組合に必ずしも共通して必要という訳ではありません。
理事会等で議論しながら、管理規約の定めだけでは足らない場合に、新たに制定することも考えられるでしょう。
一方で、細かく取り決めをし過ぎると、手間がかかる割には管理組合として把握できなかったり、住民に周知徹底できない可能性もあります。
また、制定には総会における過半数の承認という普通決議が必要となります。
その場合には、ルールとしての掲示や管理組合内のマニュアルにとどめておくことも一つでしょう。
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