管理費・修繕積立金の滞納対策!法的手続きと回収方法【筆者実践済】

マンション管理

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うちの管理組合はもしかしたら未払の管理費や修繕積立金が多いのではないか?

また、

理事会で管理会社より毎月の滞納状況を確認しているがなかなか減らない…

このような疑問を持っている管理組合の理事や、マンション管理に意識が高い区分所有者は多いかもしれませんね。

どのマンション管理組合においても管理費・修繕積立金(以下、管理費等)の滞納問題は避けて通れない課題です。そして、管理費等の滞納が続くと、管理組合の運営に支障をきたし、マンション全体の維持管理にも悪影響を与えます。

今回の本記事では、筆者も経験していますが、管理費等の滞納問題に対処するための法的手続きと回収方法を解説します。具体的には、少額訴訟の手続き、催告書の作成方法、専門家との連携などについても詳しく説明します。

※今回は一般的な内容を紹介しているため、管理組合個別具体的な事象は弁護士等の専門家にご相談ください

管理費・修繕積立金の滞納対策!法的手続きと回収方法【実践済】

今回紹介する内容は以下の通りです。

・管理費等の滞納問題の現状と課題
・管理費等の滞納に対する初期対応やその後の対応方法は?
・法的手続きやそれ以降の対応策

まずはじめに、現状把握として令和5年度マンション総合調査より、管理費等の滞納状況を確認します。

その後、滞納のための初期対応や、初期対応で終息しない場合の対応方法を紹介します。

さらに、それでも収まらない場合の法的手続きや滞納金の回収方法、さらには滞納が起こらないための未然に防ぐ予防策等を紹介します。

管理費等の滞納問題の現状と課題

管理費等の滞納問題は、マンション管理組合にとって大きな負担となります。まずは、滞納の現状とともに、考えられる課題について確認していきます。

滞納の現状は?

国土交通省が実施した令和5年度マンション総合調査によると、管理費等の滞納状況は次の通りです。

・管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%
・完成年次別では、築年数が古いマンションの方が割合は高くなる傾向


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より

また、滞納者に対して行ったことがある措置としては、次のようなものが挙げられます。

・文書等による催促が一番多く65.2%
・それ以外の訴訟や強制執行、競売等の法的措置に至る割合も13.9%
・措置を行っていない割合も6.4%あり

引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より

また、このデータも、完成年次が築年数が古いマンションの方が文書等による催促、法的措置ともに高くなっています。

滞納の課題は?

滞納が発生する原因は、区分所有者の経済的困難によるものや、うっかり払い忘れていたなどが考えられます。後者の場合は、まだ取り返しがつく可能性がありますが、前者の経済的困難である場合は、大きな問題となる可能性もあります。

そして、滞納が続きその額が膨らんでくると、管理組合の財政が悪化し必要な修繕やサービスの提供が困難になるとともに、他の区分所有者にとっても不安を抱えることとなります。

また、管理組合内におけるトラブルの発生状況としては、「生活音」の43.6%に続き、「管理費等の滞納」が20.2%と多くなっています。


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より

それだけ管理組合として、管理費等の滞納は大きな問題であると考えられます。

そして、滞納が長期化するほど回収が難しくなるため、滞納早期に手を打つことが求められます。一方で、管理組合が法的手続きを進めるには専門知識が必要です。

専門家との連携とともに、理事会や管理組合内でも慎重な対応が求められます。

管理費等の滞納に対する初期対応やその後の対応方法は?

管理費等の滞納が発生した場合、管理組合として初期対応としてどのように動けばよいのか、解説します。

初期対応方法は?

滞納が発生した場合、まずは区分所有者とのコミュニケーションを図り、早期解決を目指すことが重要でしょう。最初のステップとして、電話や書面で滞納の事実を伝えつつ、管理組合全体に影響を及ぼすことを説明し、本人からの支払いを促すことが大切です。

この際、滞納が発生した原因を確認し、区分所有者が支払いに困難を感じている場合には、理事会等で役員や管理会社とも相談しながら、分割払いの提案や支払い期限の延長など柔軟な対応を検討します。

催告書の作成と送付

初期対応として手を打ったにもかかわらず、なかなか支払いが行われない場合、次のステップとして催告書の送付を検討します。催告書は、滞納金の支払いを正式に要求する文書であり、法的手続きの前段階として重要です。

催告書には、滞納金の金額、支払い期限、支払いが行われない場合の対応(例:法的手続きへの移行)などを明記します。また、催告書を送付する際には、書留郵便や内容証明郵便を利用することで、送付した事実を証明できるようにします。

催告書を送付することで、多くの場合、区分所有者は支払いを行うか、支払いに関する相談を管理組合に持ちかけてきます。催告書の送付後も、相談がなく数カ月経っても支払いが行われない場合には、支払う意思がない可能性もあります。その場合、法的手続きを検討することになるでしょう。

法的手続きやそれ以降の対応策

少額訴訟は、比較的小額の金銭トラブルを迅速かつ簡便に解決するための手続きです。滞納金が60万円以下の場合、少額訴訟を利用することで、管理組合は迅速に支払いを求めることができます。

少額訴訟の手続きは?

少額訴訟の手続きは、以下の通りです。

1.訴状の作成: 訴状には、滞納金の額、滞納が発生した経緯、これまでの対応状況などを詳細に記載します。
2.訴状の提出: 訴状を管轄の簡易裁判所に提出します。提出後、裁判所から訴訟に関する通知が相手方に送付されます。
3.裁判の日程調整: 訴状が受理されると、裁判の日程が決定されます。少額訴訟は原則として1回の審理で結論が出されるため、迅速な解決が期待できます。
4.判決の執行: 裁判所が管理組合側に有利な判決を下した場合、相手方が支払いを拒否する場合には強制執行を行うことができます。

少額訴訟は迅速に解決を図るための手段ですが、相手方が異議を申し立てた場合には、通常の訴訟に移行することもあります。一方で裁判所の意向により、穏便に解決するために、お互いの妥協点としての和解の方向性に持って行くことも考えられます。

また、少額訴訟を行う際には、専門家のアドバイスを受けることで手続きがスムーズに進むことがあります。

強制執行による回収

少額訴訟や通常訴訟で管理組合が勝訴した場合でも、相手方が支払わない場合があります。その際には強制執行手続きを行い、滞納金を回収することが必要です。

具体的には、以下の方法があります。

1.動産差押:換金可能な動産を差押える方法で、現金や換金できる商品や高級時計、バック、車などを差し押さえることによって回収します。
2.給与差押
: 相手方の勤務先から直接給与の一部を差押える方法で、滞納金が大きい場合、複数回に分けて回収します。
3.預金差押: 相手方の銀行口座から滞納金を差押える方法で、預金が確認できた場合には、一度に回収できます。
4.不動産差押: 相手方が所有する不動産を差押える方法で、手続きが複雑で費用もかかりますが、高額な滞納金の場合には有効です。

区分所有法には、第57条から60条で義務違反者に対する措置として、管理組合側からの請求ができます。他の回収方法がない場合は第59条では上記の4.に該当する競売も行えます。

ただ、軽度でおさえることが望ましく、できれば1や分割回収が滞納者、管理組合双方によってよいと考えられます。

また、強制執行には裁判所の許可が必要であり、手続きに一定の時間がかかります。さらに、相手方が自己破産を申請した場合には、強制執行が困難になる可能性もあります。

これらの手続きについては、管理組合で行うことも可能ですが、後述する弁護士等の専門家に相談し、対応するのがよいでしょう。

専門家との連携

管理費等の滞納問題を解決するためには、専門家との連携が不可欠です。管理組合の理事だけで対応しきれない場合には、弁護士や司法書士、マンション管理士などの専門家に相談することが有効でしょう。

1.弁護士: 訴訟手続きや強制執行の手続きを進める際に、法的なアドバイスを受けることができます。また、相手方との交渉を代理で行うことも可能です。
2.司法書士: 少額訴訟や催告書の作成を依頼でき、手続きがスムーズに進むようサポートします
3.マンション管理士: 管理組合運営に関する全般的なアドバイスを受けることができ、滞納問題の解決に向けた助言を得ることができます。

これらの専門家との連携を通じて、管理費等の滞納問題に対する対応がより的確かつ迅速に進むことが期待されます。

予防策としてのルール設定

そもそも滞納問題を未然に防ぐためには、管理組合内でのルール設定が重要です。具体的には、以下のような対策が考えられます。

1.支払い期限の厳守: 管理費等の支払い期限を明確に定め、遅延が発生した場合のペナルティ(例:延滞金の請求)を導入します。
2.定期的な滞納者リストの作成: 定期的に滞納者のリストを作成し、理事会で共有することで、早期の対応が可能になります。
3.柔軟な支払い方法の導入: 経済的な理由で支払いが困難な場合には、分割払いの導入や支払い計画の見直しを行い、住民の負担を軽減することができます。
4.「管理費等の滞納は管理組合全体への悪影響を与える」という印象を持って貰う:管理費等の滞納の有無に限らず区分所有者全員に対して、「管理費等の滞納は管理組合全体への悪影響を与え、良くない事である」ということを総会や書面等で繰り返し伝える

これらの対策を普段から講じておくことによって、未然に滞納を防ぐとともに、法的手続きに進まないようにすることも非常に大切です。

まとめ

管理費等の滞納問題は、マンション管理組合にとって将来に影響する深刻な課題です。滞納が続くと、管理組合の財政に悪影響を与え、マンション全体の維持管理にも支障をきたすことになります。そのため、早期の対応が求められます。

本記事で解説した法的手続きや回収方法、専門家との連携を通じて、滞納問題を的確に解決し、管理組合の健全な運営を維持することが重要です。また、滞納問題を未然に防ぐためのルール設定や予防策も、合わせて検討することが望まれます。

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