【知りたい】マンション修繕積立金はどれぐらい必要?市場調査結果も

マンション管理

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将来を考えるにあたって、うちのマンションの修繕積立金は十分なのか?

または、

将来的にどれぐらい修繕積立金が必要なのか知りたい

このような疑問を持っている管理組合や区分所有者が非常に多いようです。

確かに、普段マンション住まいの方が徴収されている修繕積立金ですが、どのように使われているのか、また積立額はどれぐらい必要なのか、知りたいですよね。

管理費は、普段のマンション管理に必要な費用として、管理員さんや管理会社に払う費用、共用部分の清掃代ということで、概念的には分かりやすいかと思います。

一方で、修繕積立金は、どんどん積み立てているけど、どれぐらい貯まると良いのか、またどれぐらいの金額が適正なのか、分かりづらい概念ではあります。

今回は特に修繕積立金の必要額として、どれぐらい必要なのかを市場調査結果も踏まえて紹介します。

【知りたい】マンション修繕積立金はどれぐらい必要?市場調査結果も

今回紹介する内容は以下のとおりです。

・市場結果や国が示す修繕積立金の適正額はどれぐらいなのか?
・現時点での修繕積立金の計算方法は?
・修繕積立金を適正に確保する対策は?
・修繕積立金確保のための注意点は?

マンション管理組合として、修繕積立金は長期的なマンションの維持、保全を図るためにも非常に重要な資金です。

また、考え方次第で、将来的な修繕積立金の額がかなり変わってくることとなり、マンション管理組合としては早期的に対策を打つことが望まれます。

とりわけ、

・管理会社の指示が有った通り積み立てる
・これまでの修繕積立金の額を見直していない
・長期修繕計画を作成していない、または暫く更新していない

などの状況にあることは必ずしもマンション管理組合として望ましいとは言えないかもしれません。

今回はこのような修繕積立金全般を含め、市場調査結果や国が示している金額から、マンションとして望ましい必要額や、修繕積立金確保のための対策、さらには注意点を紹介します。

市場結果や国が示す修繕積立金の適正額はどれぐらいなのか?

まずはじめに、修繕積立金の額を見ていくにあたって、市場調査の結果や、国が定めている修繕積立金の額の適正額はどれぐらいなのか、確認してみます。

令和5年度マンション総合調査より

国土交通省が実施した、令和5年度マンション総合調査では、次のような結果が出ています。

・駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり修繕積立金の総額の平均は13,378 円
・形態別では、平均は、単棟型が13,300 円、団地型13,535 円


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より

また、長期修繕計画等でも修繕積立金の徴収額の一つの指標となる、月間の専有面積㎡単位当たりの修繕積立金単価は次の通りです。

・駐車場使用料等からの充当額を含む月/平米当たり修繕積立金の平均は186.5 円
・形態別では、平均は、単棟型が183.3円、団地型199.8円


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査より

マンション管理新聞による管理費等初期設定調査より

続いて、マンション管理業界の専門誌「マンション管理新聞」が半年に1度出しているデータで、管理費等初期設定調査というデータがあります。

これは、最近半年間で新たに分譲したマンションの、修繕積立金や管理費の金額や駐車場の充足率、ペット飼育可否の状況等を調べた内容です。

対象期間は2023年12月~24年5月まで全国で新築分譲されたマンション、578件、7,792戸のデータからなります。

具体的にそのデータは、75㎡の住戸を購入した場合の平均モデルは、

・分譲価格:7,073万円
・管理費:15,525円/月
・修繕積立金:8,250/月
・修繕基金:680,700円

だそうです。

また、専有部分1㎡当たりの修繕積立金月額単価は

・全体平均:110円
・北海道:108円
・東北:100円
・関東:125円
・東海:119円
・北陸・甲信越:82円
・関西:104円
・中国:74円
・四国:71円
・九州:98円

とのことでした。

新規分譲はかなり安く、次の国土交通省が望ましいと考える基準に当てはめると、将来的な増額・値上げを検討せざるを得ない金額でしょう。

国土交通省が望ましいと考える金額は?

国土交通省が望ましいと考える金額は、修繕積立金ガイドラインによると以下の通りです。


引用:国土交通省 修繕積立金ガイドラインより

こちらは、機械式駐車場がないマンションを想定していますが、ある場合は以下を加味しなければなりません。


引用:国土交通省 修繕積立金ガイドラインより

機械式駐車場がある場合には、

機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費(下表)×台数 ÷マンションの総専有床面積(㎡)

を、無い場合に対して加算する必要があります。

よって、国土交通省が定める修繕積立金単価は、

機械式駐車場がない場合の赤い部分の単価(上限~下限)+機械式駐車場がある場合のマンション独自加算額

で算出されることとなり、そのレンジに自分たちのマンションが入っているか、確認することとなります。

現時点での修繕積立金の計算方法は?

正確にはマンションの現状を確認して精緻に計算することが望ましいです。

そのため、今回は目安となる概算の計算方法を紹介します。

マンション1戸あたりの修繕積立金の計算方法

こちらは比較的把握しやすいですが、

月額あたりマンション全戸で集める修繕積立金÷対象マンションの戸数

で目安額を出すことができます。

月額あたりマンション全戸で集める修繕積立金は、管理会社から月次単位で修繕積立金の積立額の報告がされると思います。

管理組合役員でない場合は、直近の総会招集通知に収支報告書が添付されていることが多いです。

数値が年間である場合は、割る12をして、月額の目安を出してみることとなります。

専有部分1㎡当たりの修繕積立金月額単価の計算方法

続いて、こちらの単価の計算方法です。

修繕積立金の長期的な計画がない場合は、

(現時点で管理組合に積み立てている修繕積立金+月額あたりマンション全戸で集める修繕積立金×360(30年))÷360カ月÷マンション全体の専有部分面積

で概算単価が可能です。

長期修繕計画や、そのに連動した修繕積立金の計画がある場合、仮に30年の計画があるとすると

(計画当初で管理組合に積み立てている修繕積立金+30年間でマンション全戸で集める修繕積立金総額)÷360カ月÷マンション全体の専有部分面積

で概算単価が可能です。

機械式駐車場があるマンションは、上記のPOINTで表示したどちらかに対して、前章の「国土交通省が望ましいと考える金額は?」で紹介した機械式駐車場がある場合の単価を算出し足し込みます

修繕積立金を適正に確保する対策は?

マンション管理組合として、修繕積立金を適正に確保するためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

考えられる対策について、紹介します。

自分たちのマンションの修繕積立金をすぐにでも把握する

まず、そもそも自分たちのマンションの修繕積立金はいくら積み立てられていて、

また、区分所有者からどれぐらい徴収しているのか、把握する必要があります。

適正か、そうでないのかを判断するためには、まず直近の収支報告書を確認して自らのマンションの状況を洗い出すことから始める必要があります。

とりわけ、竣工後浅いマンションは、購入時の修繕積立金のままであり、かつ非常に安い額になっていることもあります。

その場合は、いち早くアラートを挙げて、管理組合で討議していくことも重要でしょう。

将来の修繕積立金を計画的に考える

次に、現状が分かれば今後どのように修繕積立金を積み立てていくのかを考える必要があります。

もし修繕積立金が足らない場合なら、増額するか、一時的に徴収するのか等の対策を立てることが必要でしょう。

一方で、余剰がある場合であれば、効率的に修繕や資金運用に活用することを考える必要があります。

ただ、筆者の経験からしても、余剰があるマンションというのはほとんどなく、カツカツの状態が一般的です。

そのため、将来的にどれだけ区分所有者から徴収をしていく必要があるのか、考えていく必要があるでしょう。

管理組合で修繕積立金に対する統一見解を出す

現状を把握し、足らない状況も確認すれば、管理組合として今後どのような対策を立てていくのか、意思決定をしていく必要があります。

すなわち、

・長期修繕計画を立てるまたは見直す
・修繕積立金を将来にわたって計画する
・必要に応じて修繕積立金単価を変更する(値上げする)

などを、総会の決議で決定することによって、管理組合として統一見解を出す必要があります。

これにより、全区分所有者が管理組合の方針を理解して、新たな修繕積立金の額を将来に渡って積み立てていくことに対して合意することとなります。

修繕積立金確保のための注意点は?

最後に、マンション管理組合として修繕積立金確保のために注意しておいた方が良い点について紹介します。

長期修繕計画と合わせて考える

修繕積立金は、将来マンションとしてどのような工事を行っていく計画なのかを落とし込んだ、長期修繕計画と合わせて考えていく必要があります。

すなわち、将来的な大規模修繕工事やエレベーターの更新工事など、高額の費用が掛かる場合に備えて、今から適切な修繕積立金を各区分所有者から徴収し、管理組合としてコツコツ積み立てるという考え方です。

仮に総会で修繕積立金の値上げを決議するとなった場合でも、将来的に長期修繕計画を組んでいるから、今から工事金額を満たすために値上げをする、ということが区分所有者に対しても理解されやすいと考えられます。

段階増額方式よりも均等積立方式が望ましい

修繕積立金の段階増額方式とは、将来に渡って徐々に段階的に修繕積立金の額を上げていく方式です。

対して、均等積立方式は、将来に渡って一定額を区分所有者から徴収し、値上げを考えない方式です。

国土交通省は、修繕積立金ガイドラインでは、

・段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要
・将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式

と言っていることから、均等積立方式が望ましいとの見解です。

しかしながら、将来に渡って均等で修繕積立金を徴収することを考えてみると、もし足りていない場合は、一度大きく値上げしてから、将来に渡ってその額を徴収していくということになります。

または、一時金としての一時的な修繕積立金として徴収することもあるかもしれません。

結果的に、「最初に苦しい思いをした方がよい」ということになる可能性はあるでしょう。

管理会社任せではなくマンション管理組合で考える

修繕積立金確保については、管理会社からの長期修繕計画や修繕積立金額の変更等があっても、マンション管理組合で必ず適正かどうか、結論を出す必要があります。

理由は、管理会社が作成するものについては、管理会社の論理で数字が入っている場合があり、必ずしも管理組合の将来において適切なものであるとは限らないためです。

管理組合において適切な修繕積立金は、これまで紹介したとおり

・将来的な工事計画に基づいて計算されている
・計算ロジックに基づいて計算されたものである
・国土交通省が示している単価に対して適正額である

など、管理組合自ら確認することも重要といえるでしょう。

修繕積立金確保は全区分所有者の協力が欠かせない

将来的な修繕工事のための修繕積立金の確保には、全区分所有者の協力のもと、適切な額を積み立てていく必要があります。

そのため早い段階で、現状をキャッチアップし、自分たちのマンションが果たして適正な状態か、足らないのか、確認することが重要です。

放置をしていると、どんどん時が経ち、マンションの劣化も進行することから、早期に手を打っていくことによって、将来的に安心・安全なマンション生活ができるように、心がけていく必要があるでしょう。

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