マンションの共用部分の位置づけはおおむね分かっているのだけれど、具体的にはどういう箇所があるのだろうか…?
また、
専有部分以外は共有部分ということを理解したのだけれど、注意点等確認しておきたい
さらには、
一部の区分所有者のみに影響する一部共用部分という概念があると聞いたが、詳細を知りたい…
など、疑問に思う点があるでしょう。
今回は、標準管理規約第8条を取り上げ、共有部分とはどういう所を指すのか、確認しておきます。
単に共有部分を紹介するだけではなく、共用部分としてどのような
ちなみに、今回はXのAI画像生成機能であるGrokを使ってみました。
【規約解説】法定・規約、全体・一部と種類がある共用部分を紹介
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第8条「共用部分の範囲」の補足・注意事項は?
・「共用部分の範囲」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず初めに、標準管理規約第8条の条文ならびに、別表を参考にしながら、共用部分の範囲に関する内容を紹介します。
続いて、第8条には、他の条項同様に、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項があります。
その点について確認します。
そして、共用部分の範囲から、管理組合や区分所有者が確認しておきたい事項を、筆者が経験上気になっている点も交えながら、具体的に紹介します。
標準管理規約第8条「共用部分の範囲」の紹介
「共用部分の範囲」として定められている、標準管理規約第8条の条文と、共用部分が一覧化されている「別表第2」を確認しておきましょう。
標準管理規約第8条の条文
まず、第8条「共用部分の範囲」を見てみます。
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。
この内容から分かる通り、標準管理規約では後半に別表を準備して、そちらで確認頂くような形を劣っています。
別表第2に記載の共用部分の範囲
標準管理規約後半に掲載されている、別表第2については、以下のような内容となっています。
1 エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」
2 エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
3 管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫及びそれらの附属物
表というよりも、項目の洗い出しという感じです。
別表第2の各項の区分は?
別表第2の各項は、良く確認してみるとそれぞれ
2は建物の附属物(建物に付随する設備や機器など)
3は管理事務室等(共用部分の維持管理や住民サービスのための施設)
として区分できます。
各機能の役割について紹介すると、非常に分量が多くなり、かつ今回の目的から外れるうえ非常に長くなってしまうため、具体的には割愛します。
第8条「共用部分の範囲」の補足・注意事項は?
続いて、他の規約の条項同様に、第8条にも補足事項があります。
その補足事項については、別表第2についての紹介になりますが、具体的に記載します。
規約共用部分と法定共用部分について
共用部分については、マンション個別の管理規約で定める「規約共用部分」と、法律で定められた「法定共用部分」の双方が含まれるとのことで紹介があります。
それぞれについては、
法定共用部分:区分所有法によって共用部分とされているもの。具体的には、廊下や階段、エレベーターなど建物の部分や附属物の大半のもの
がそれぞれ該当します。
とりわけ、規約共用部分では、集会室が専有部分を改良したものになっている場合や別棟で建てられている場合は、規約で「集会室は共用部分である」と定めるような形です。
駐車場についても、区分所有者が購入する形ではなく、規約で定めたうえで管理組合が区分所有者等に貸与する形であれば、共用部分扱いになります。
管理事務室等の取り扱いについて
上記の集会室と同様に、管理事務室等についても補足があります。
管理事務室等は、区分所有法上は専有部分の対象となるものです。
しかしながら、区分所有者の共通の利益のために設置されるものであるから、これを規約により共用部分とすることとしたものであると解説があります。
一部の区分所有者のみの共有とする共用部分の取り扱いについて
そして、マンションの設備によっては、一部の区分所有者のみの共有とする共用部分の取り扱いというのも考えられます。
具体的には、
・上記の場合の1階~3階のテナントのためのエントランスや施設
などが該当します。
上記の例であれば、1~3階のテナントの区分所有者と、4階以上に居住している区分所有者は明らかに区分することが可能です。
そのため、一部共有部分というくくりも可能となります。
一方で、一部共有部分であっても、全体に影響すると考えられる場合は、規約によって管理組合全体で管理する全体共用部分として定めることも考えられます。
「共用部分の範囲」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
ここでは、共有部分の範囲に関して、管理組合や区分所有者が気を付けておかなければならない事項を紹介します。
規約で定めることができる「規約共用部分」について
倉庫やトランクルーム、さらには駐車場については、多くの管理組合においては共用部分として扱われることが多いでしょう。
しかしながら、これらも専有部分として位置づけられている管理組合も珍しいですが、筆者が関与している管理組合でもあります。
一方で、専有部分としての住戸を共有部分として扱われる場合も考えられます。
先ほど紹介したような、集会室や管理事務室等がその例です。
仮に、専有部分を規約では共用部分として定める、規約共用部分とするためには
が必要となります。
共用部分から専有部分にするためには全員の合意が必要
仮に、上記の管理事務室がマンションの1住戸を使用しているケースを考えてみます。
その際に、管理事務室が不要となる場合等があった場合はどうでしょうか。
管理組合としては逆になんらかの形で流用したいと考えるケースもあるかもしれません。
もしくは、使うことを都度考えるよりも、売却してその収益を修繕積立金に積み立てる等も場合によってはあるでしょう。
この共用部分を専有部分にするというケースは管理規約には載っていません。
共有の持ち分である共用部分が減るということは、区分所有者の財産が減るということにあたります。
そのような条項は、区分所有法にはないということで、民法の共有の概念で考える必要があります。
具体的には、民法第251条
民法第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。(以下省略)
が適用されるため、他の共有者である区分所有者からの(全員の)同意を得る必要があります。
一部共用部分か全体共用部分かで管理費等の徴収も変わってくる可能性
前章で紹介した通り、一部の区分所有者の管理下に置かれる一部共用部分と、全区分所有者の管理下に置かれる全体共用部分があります。
一部にするか、全体にするかで、どのように規約に明記するかは管理組合内で十分検討する必要があります。
・一部共用部分で一部の区分所有者に場合にはそこに利害が及ぶ人だけの管理や管理費等の徴収でよいのか
などで、公平、不公平感も変わってくると考えられるためです。
区分するとかなり多岐に渡るマンションの共用部分
建物の一部や附属物である共用部分にはどのようなものがあるのか、標準管理規約第8条を取り上げて紹介しました。
この中には、前回紹介した窓サッシ等は含まれていませんでしたが、標準管理規約では別建てで紹介されています。
それらも含んで共用部分という、区分所有者にとっての財産になります。
普段生活していて関与しない設備も多いですが、共用部分の理解のための参考にして頂ければ幸いです。
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