【規約解説】マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」とは? 管理組合の注意点

管理規約解説

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マンション管理の現場では、管理費滞納や専有部分の使用を巡るトラブルなど、理事会レベルでは解決できず、最終的に訴訟を検討せざるを得ない場面に直面することがあります。

筆者自身、管理規約の改正や管理組合運営に関する助言を行う中で、「万が一トラブルが裁判に発展した場合、どこの裁判所が管轄になるのか」「管理組合として不利な扱いを受けることはないのか」といった疑問が、理事や区分所有者の間で生じやすいことを実感してきました。

こうした疑問に対する基本的な考え方を示しているのが、マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」です。

本記事では、同条文の内容をそのまま解説するだけでなく、管理組合実務の視点から、なぜこの規定が重要なのか、どのような点に注意して運用すべきかを、マンション管理士の立場で整理します。

【規約解説】マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」とは? 管理組合の注意点

本記事では、

✅マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」の条文の意味
✅管理組合が訴訟対応を行う際に実務上注意すべきポイント

の2点を軸に解説します。

まず、最初の章では標準管理規約第68条の条文から「合意管轄裁判所」についてそのままの文面を紹介します。

第68条の条文には、国土交通省が補足する事項はありません。

そのため、第68条「合意管轄裁判所」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意すべき点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に解説します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」とは?

マンション管理をめぐるトラブルが裁判に発展した場合、どこの裁判所で審理されるのか? これを定めたのが 「合意管轄裁判所」 に関する マンション標準管理規約第68条です。

まずは、条文を紹介します。

(合意管轄裁判所)
第68条 この規約に関する管理組合と組合員間の訴訟については、対象物件所在地を管轄する○○地方(簡易)裁判所をもって、第一審管轄裁判所とする。
2 第48条第十一号に関する訴訟についても、前項と同様とする。

以下では、条文の文言を踏まえつつ、管理組合の立場から見た実務上の意味と注意点を整理していきます。

第68条のポイントと基本ルール

この条文を一言で説明すると、

マンション管理に関する裁判は、そのマンションの所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所で行う

というルールを定めています。

なぜ「合意管轄裁判所」が必要なのか?

トラブルが発生した際に「どこの裁判所で争うのか」が決まっていないと、管理組合も組合員も困ります。たとえば、組合員が遠方に引っ越していた場合、その人の新しい居住地の裁判所で審理することになったら、管理組合側の負担が大きくなりますよね。

この規定をあらかじめ設けておくことで、管理組合・区分所有者の双方にとって、訴訟対応の予測可能性が高まります。

とりわけ管理組合側にとっては、

✅理事や管理会社が遠方の裁判所へ出向く必要がなくなる
✅管轄を巡る無用な争いを避けられる
✅弁護士選任や対応方針を立てやすくなる

といった点で、実務上のメリットが大きい規定だといえます。

管理組合と区分所有者の間で実際に起こりうる裁判例

実務上、管理組合と区分所有者の間で訴訟に発展しやすいのは、次のような場面です。

  • 管理費や修繕積立金を長期間滞納している組合員に対する督促訴訟
  • 専有部分の違法改造や共用部分の不正使用をめぐる訴訟
  • 管理組合の決定に組合員が異議を申し立てるケース

こうした訴訟が起こった場合、

そのマンションがある地域の裁判所(地方裁判所または簡易裁判所)

が審理を担当します。

例えば、

横浜市にあるマンション → 「横浜地方裁判所」または「横浜簡易裁判所」
大阪市にあるマンション → 「大阪地方裁判所」または「大阪簡易裁判所」
福岡市にあるマンション → 「福岡地方裁判所」または「福岡簡易裁判所」

のように、マンション所在地の裁判所が担当することになります。

「第48条第十一号に関する訴訟」とは?

ここで出てくる 「第48条第十一号」 とは何でしょうか?

第48条(議決事項) に関する規定です。

特に 「第十一号」 では、

区分所有法第57条第2項および前条第3項第3号の訴えの提起、並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任

を定めています。

つまり、 ✅ 管理組合が訴訟を起こす場合のルールを定めたものです。

裁判が発生した場合でも、第68条のルールに従い、マンション所在地の裁判所が管轄します。

裁判に関して管理組合が知っておくべき注意点

次に、第68条の条文を踏まえて、管理組合が注意すべき事項を筆者独自の視点から紹介します。

裁判を起こす前に話し合いや調停を検討する

第68条は、あくまで「裁判に発展した場合に、どの裁判所が管轄となるか」を定めた条文です。しかし実務上は、そもそも訴訟に至らせない運営をいかに構築するかが、管理組合にとって最も重要な視点となります。

裁判は、時間や費用がかかるだけでなく、理事や管理会社の対応負担、組合内の対立激化など、管理組合運営全体に少なからぬ影響を及ぼします。たとえ勝訴したとしても、関係性の悪化や長期的な運営リスクが残るケースは少なくありません。

そのため、管理組合としては、訴訟を前提に考えるのではなく、事前の話し合いや調停、裁判外紛争解決手続(ADR)などを含め、段階的に解決を図る運用体制を整えておくことが現実的な対応といえるでしょう。

訴訟時に管理規約や議事録を整理しておく

それでも訴訟になる場合、管理組合が規約に基づいて適切に運営していたことを示す必要があります。そのため、管理規約・総会や理事会の議事録・過去の通知文書などの記録を適切に保存し、証拠として提出できるようにしておくことが重要です。

裁判費用や弁護士費用の準備は万全か?

訴訟には弁護士費用や裁判費用がかかるため、管理組合の予算計画の中で「訴訟リスク」も考慮することが求められます。特に大規模なマンションでは、訴訟費用を計上するための予備費を設けるか、顧問弁護士契約の検討をすることも有効です。

標準管理規約第60条や67条、さらに67条の2には、

✅違約金としての弁護士費用

の請求も可能との記載になっていますが、訴訟においては、必ず勝訴できるという訳ではないことから、予めこれらの費用を見込んでおく必要があるでしょう。

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管理規約の改正や適正な運用を意識する

第48条第十一号に関連する訴訟(区分所有法第57条第2項の訴えなど)は、管理組合の決定や運営方針が問われるケースが多いため、規約が現状に即しているか定期的に見直し、必要なら改正することが重要です。また、総会での意思決定が適切に行われているかもチェックする必要があります。

とりわけ、管理費等の滞納には迅速に対応する必要があることから、総会開催まで待つことは現実的ではなく、現状の標準管理規約に則って、理事会の決議で訴訟が行えるようにしておくことも重要です。

このように、管理組合は訴訟リスクを減らしつつ、万が一に備えて柔軟に対応することが求められます。

まとめ|管理組合は裁判リスクをどう管理すべきか?

管理組合の運営において、万が一トラブルが裁判に発展した場合に備えて、マンション標準管理規約第68条「合意管轄裁判所」のルールを正しく理解しておくことが重要です。

本記事で解説したように、管理組合としては以下のポイントを意識することで、スムーズな対応が可能になります。

✅ 裁判になる前に話し合いや調停を検討する
✅ 訴訟時に備え、管理規約や議事録を整理・保存しておく
✅ 弁護士費用や裁判費用を事前に計画し、予算確保を考える
✅ 管理規約を定期的に見直し、現状に即した運用をする

訴訟は管理組合にとって最後の手段であり、できる限り回避すべきものです。その一方で、万が一に備えて、標準管理規約第68条の意味と運用を正しく理解しておくことは、理事会・管理組合双方にとって重要なリスク管理といえるでしょう。

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