マンションの管理規約には、敷地や建物、共用部分の範囲を明確にするための規定があります。
その中でも「対象物件の範囲」を定めた第4条は、管理組合の権限や責任を明確にする重要な条項です。
本記事では、マンション標準管理規約第4条「対象物件の範囲」の条文を解説するとともに、管理組合や区分所有者が知っておくべき注意点を詳しく紹介します。
特に、共用部分と専有部分の区別や、提供公園の管理責任についても、マンション管理士の視点から触れています。
マンション管理の基本を押さえたい区分所有者や、第4条を確認しておきたい管理組合の方は、ぜひ最後までご覧ください。
【規約解説】マンション管理規約の「対象物件の範囲」とは?管理組合が確認すべき重要事項
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・別表第1「対象物件の表示」をわかりやすく解説
・「対象物件の範囲」で管理組合や区分所有者が注意すべき重要ポイント
まず、最初の章では標準管理規約第4条の条文から「対象物件の範囲」についてそのままの文面を紹介します。
一方で、今回の第4条は補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されていません。
そのかわり、巻末に別表第1として、「対象物件の表示」というひな形が紹介されています。
その内容を筆者の方で解説します。
さらに、最後の章では第4条「対象物件の表示」の条文や一般事例を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第4条「対象物件の範囲」のポイントと管理組合が知るべきこと
マンション標準管理規約第4条は、規約内での対象となる物件の範囲を定めています。
条文は以下の通りです。
第4条 この規約の対象となる物件の範囲は、別表第1に記載された敷地、建物及び附属施設(以下「対象物件」という。)とする。
また、条文に対する筆者の解説を紹介します。
対象物件の範囲を明確に定める意義
マンションはご承知の通り、専有部分(各区分所有者の所有する住戸)だけでなく、共用部分(エントランス、廊下、エレベーター、駐車場など)や敷地、附属施設(ゴミ置き場、自転車置き場、集会室など)を含む複合的な建築物です。
そのため、管理規約の適用範囲を明確にしておかないと、管理組合がどこまでの範囲を管理・運営できるのかが不明確になってしまいます。
「別表第1」による具体的な範囲の明示
本条文では、「別表第1」に具体的な対象物件を列挙する形をとっています。
これは、マンションごとに対象物件の範囲が異なるため、規約本文に直接記載せず、別表という形で詳細を明示する仕組みになっています。
例えば、次のような施設が対象物件として定められることがあります。
建物:住戸部分、共用部分を含む建物全体
附属施設:駐車場、駐輪場、集会室、管理事務室、ゴミ置き場 など
別表第1については、ひな型があるので、具体的に次章で紹介します。
別表第1「対象物件の表示」をわかりやすく解説
次に、別表第1の対象物件の表示について、国土交通省が挙げるひな形を紹介しながら解説します。
別表第1 ひな形の紹介
マンション標準管理規約の巻末には、以下の資料が添付されています。
別表第1の具体的な内容を解説
別表第1は、以下のように、マンションの管理対象となる物件の情報を整理する形になっています。
物件名
マンションの正式名称を記入します。
省略等で記載しないよう、正式名称を正しく入れることが求められます。
敷地(所在地・面積・権利関係)
面積:敷地全体の面積(㎡)を記載
権利関係:敷地の権利形態(所有権、借地権など)を明記
特に「権利関係」は重要なポイントです。
管理組合が敷地全体の所有権を持つのか、借地契約になっているのかを明示することで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
建物(構造・階数・延べ面積)
階数:地上・地下の階数
延べ面積・建築面積:建物全体の延べ床面積や建築面積
この情報は、大規模修繕工事や長期修繕計画の立案、また建て替え計画を立てる際にも重要になります。
専有部分(住戸数・延べ面積)
専有部分の延べ面積:各住戸の専有部分における合計面積
区分所有者が所有する専有部分と、管理組合が管理する共用部分を明確に区別するための情報となります。
また、専有部分の合計面積は、共有部分の持分割合を算出する際の分母(共有部分の持分割合=自らが持つ専有部分の床面積÷専有部分の延べ面積)で必要となります。
附属施設
マンションに付属する施設をリストアップします。具体例として、以下のような施設が含まれます。
・通路・ごみ集積所
・植栽・掲示板
・専用庭・プレイロット(遊び場)
・外灯・排水溝・フェンス など
附属施設は、管理費や修繕積立金の配分にも関係するため、マンションごとに詳細にリストアップすることが推奨されます。
「対象物件の範囲」で管理組合や区分所有者が注意すべき重要ポイント
この章では、条文や別表第1を踏まえながら、マンション管理士である筆者が、管理組合や区分所有者が注意すべき点を紹介します。
規約の適用範囲を曖昧にしないこと
管理組合の権限が及ぶ範囲を明確にしないと、住民や外部業者との間でトラブルになることがあります。
例えば、
・敷地内にある商業施設も規約の適用範囲か?
といった疑問が生じる可能性があります。
そのため、対象物件の範囲はできるだけ明確に定めていることが望ましいです。
とはいっても、この辺りは分譲当初の規約(原始規約)にすでに取り決めがなされていることが一般的です。
自分たちのマンションがどうなっているか、改めて確認することとなり、変更することは難しいかもしれません。
専有部分と共用部分を正しく理解する
マンションは「専有部分(区分所有者が個別に所有する部分)」と「共用部分(管理組合が管理する部分)」に分かれています。
共用部分の修繕や維持管理の責任は管理組合が負い、専有部分の修繕は基本的に各所有者が負担します。
どこが共用部分なのかを明確にしないと、修繕費の負担や管理責任のトラブルにつながります。
附属施設の管理負担の明確化
例えば、駐車場や駐輪場などを管理規約の対象とする場合、管理組合がどのように管理するのかを明確にしておく必要があります。
特に、外部の第三者に貸し出す場合や、専用使用権がある施設(例:特定住戸の専用庭)については、管理組合と区分所有者の責任分担を明確にする必要があります。
おもに、専用使用権がある施設は、第21条第1項において、区分所有者の費用負担のもと管理を行うことが明文化されています。
敷地の権利関係を正確に把握する
マンションの敷地が「所有権」なのか「借地権」なのかによって、管理組合の運営や将来的な建て替え計画が大きく変わります。
借地権の場合は契約の更新や地代の支払いが必要になるため、契約条件を管理組合が正しく把握しておく必要があります。
当然ですが、建替えの場合はマンションを更地にする必要があることから、区分所有者は出ていく必要があります。
管理組合ならびに区分所有者としても、地主との契約条件も的確に把握しておく必要があるでしょう。
建物の一部が商業施設や他用途に使われている場合の取り扱いを確認する
マンションの1階部分が商業施設になっている場合や、一部がオフィスとして利用されている場合、その部分の管理責任や、管理費・修繕積立金等の費用分担がどうなっているのかを確認する必要があります。
商業施設と住宅部分で管理費や修繕積立金の負担割合を異なる設定にしている場合もあり、規約や管理組合の合意内容をしっかり把握することが大切です。
これらは、大規模修繕工事の際の費用負担にも影響することから、住宅、商業施設それぞれの管理費・修繕積立金が明確に区分経理されていることが重要であると言えます。
大規模修繕時の共用部分の範囲を確認する
マンションの大規模修繕工事では、共用部分に該当する範囲の修繕費用は管理組合が負担します。
しかしながら、バルコニーや窓サッシなど、専用使用権のある部分の修繕責任が、管理組合負担なのか、区分所有者負担なのか、不明確なケースも場合によっては考えられます。
突然の修繕の負担割合をめぐるトラブルを防ぐために、事前に規約で明確にしておくことが重要です。
提供公園の管理責任を把握しておく
完成時にマンションの敷地の一部を自治体に提供し、公園として開放する「提供公園」は、居住者だけでなく地域住民にも開かれたスペースとして利用されます。
基本的には公園内の草木の剪定や維持管理に関する負担は自治体になりますが、隣接するマンションとしても、どのような管理になっているのか、把握しておくことが重要です。
対象物件の表示はマンションの基本情報
今回はマンション標準管理規約第4条「対象物件の範囲」について紹介しました。
第4条という前半ということもあり、マンション全体の紹介に関する条項が中心となります。
基本的な情報ですが、後に続く条項に関連する情報であるため、物件の概要として確認しておく必要があると言えます。
コメント