【規約解説】マンション管理組合必見!利益相反取引を徹底解説します

管理規約解説

※当コラムでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含むことがあります。ご了承ください。

管理組合役員をやっているけど、良く知っている取引先に発注したいのだが問題ないのだろうか…?

また、

理事長の私が知り合いに発注すると早いのだが、これはやっぱりNGだろうか?

さらには、

役員の自分自身が管理組合からの注文業務をやって報酬を得たいのだが、無理だろうか…?

などなど、管理組合役員や区分所有者においても、管理組合業務における疑問が沢山考えられます。

管理組合の役員の立場なら、自ら勤める会社や取引先、さらには自分自身でできることなど、数多くのケースが考えられます。

これらは全て今回紹介する利益相反取引に該当する可能性があります。

そして標準管理規約では、第37条の2で「利益相反取引の防止」として、利益相反取引の条文を定めています。

今回は、この利益相反取引に焦点を当て、当該取引についても数多く携わってきているマンション管理士の筆者が丁寧かつ細かく、分かりやすく紹介します。

【規約解説】マンション管理組合必見!利益相反取引を徹底解説します

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第37条の2の利益相反取引とは?管理組合が知っておくべきこと
・第37条の2「利益相反取引の防止」の規定に対する補足・注意事項は?
・「利益相反取引の防止」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第37条の2の条文から「利益相反取引の防止」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。

その後、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第37条の2「利益相反取引の防止」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

早速、次章より当該条文について紹介します。

標準管理規約第37条の2の利益相反取引とは?管理組合が知っておくべきこと

まずは、標準管理規約第37条の2「利益相反取引の防止」の条文から紹介します。

そして、そもそも利益相反取引とはどういう取引をいうのか、補足します。

さらに、この条文について、具体的に解説します。

標準管理規約第37条の2「利益相反取引の防止」条文

この第37条の2の条文は以下の通りです。

(利益相反取引の防止)
第37条の2 役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。
二 管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするとき。

第37条の2ということで、あとから追加されたものです。

具体的には、平成28年3月の標準管理規約改正時に、外部専門家役員の就任も規定されました。

それに伴ってその役員が就任した際に利益相反取引を実施する懸念も考えられます。

そこで、このような規定が制定された経緯があります。

参考:マンション管理業協会 管理組合における利益相反取引とはどのような場合が該当しますか。

利益相反取引とはどういう取引を指すのか?

そもそも、利益相反取引とはどのような取引を指すのでしょうか?

筆者の過去のコラム

でも細かく紹介していますが、端的にいうと、

管理組合の役員や関係者が自身の個人的な利益を優先し、組合の利益や公平性を損なう行為

ということができます。

具体的には、

・管理組合役員が勤めていたり経営している会社や役員個人に対して管理組合から案件を発注する
・管理組合役員とのつながりが深い会社や個人に対して管理組合から案件を発注する

などが想定されます。

「利益相反取引の防止」条文解説

利益相反の解説と前後しましたが、具体的に条文を見てみましょう。

第1項の内容

同項の第一号、ニ号の各号に該当する際には、

理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

とされています。

すなわち、利益相反取引に該当する、または該当しそうな取引がある場合は、理事会に諮って、管理組合としてその取引を行ってい良いかどうか検討の上、承認する必要があります。

取引形態としては、次の2つが該当します。

第1項第一号の内容

こちらには

一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。

とあることから、管理組合役員が自分自身または、近しい第三者と取引する場合と考えられます。

自分自身とは、前述のとおり、自分が勤めていたり経営する会社、または個人事業主の自分自身と考えることができます。

そして、近しい第三者は、役員自身と関連性が深い、例えば役員の親族がやっている会社との取引や、友人なども該当する可能性があります。

具体的に例示すると、以下の通りです。


※筆者独自作成

第1項第ニ号の内容

そして、第二号には、

二 管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするとき。

とあります。

これは、役員が関与する第三者の取引先や個人に対して、管理組合が発注するような場合が想定されいます。

第三者の取引先や個人から、バックマージン等を受け取る契約になっていたり、代理で役員が間に入る取引等の可能性もあり、間接的に管理組合から当該役員が利益を受け取っているという解釈になります。

具体的に例示すると、以下の通りです。

取引例1は、受発注は取引先と実施しているものの、管理組合の分からない所で金銭的な授受が考えられる場合です。


※筆者独自作成

取引例2は、役員が取引先の間に入って発注や支払代行を行う場合です。

実際の業務は、発注先が対応するイメージ図です。


※筆者独自作成

ちなみに、参考としてですが、この点は会社における取締役の利益相反行為とも同じです。

会社法により細かく規定されています。

管理組合⇔株式会社、理事会⇔取締役会が相互に似たような関係性にあります。

次章では、国土交通省が当該条項に対して補足・注意すべき事項として、外部専門家役員が行う発注などについて紹介します。

第37条の2「利益相反取引の防止」の規定に対する補足・注意事項は?

この章では、標準管理規約第37条の2の補足・注意事項として、国土交通省として細かく紹介があります。

その文面内容をそのまま紹介するとともに、筆者の補足を入れながら解説します。

国土交通省による「利益相反取引の防止」における補足・注意事項の内容

まず、国土交通省が紹介している内容をそのまま紹介します。

重要な箇所を強調しています。

役員は、マンションの資産価値の保全に努めなければならず、管理組合の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることがあってはならない。とりわけ、外部の専門家の役員就任を可能とする選択肢を設けたことに伴い、このようなおそれのある取引に対する規制の必要性が高くなっている。
そこで、役員が、利益相反取引(直接取引又は間接取引)を行おうとする場合には、理事会で当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならないことを定めるものである。
なお、同様の趣旨により、理事会の決議に特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることができない旨を規定する(第53条第3項)とともに、管理組合と理事長との利益が相反する事項については、監事又は当該理事以外の理事が管理組合を代表する旨を規定する(第38条第6項)こととしている。

マンション管理士の筆者から見た要点解説

上記の国土交通省が掲げる補足・注意点について、重要な点を筆者がさらに補足して解説します。

利益相反取引に対する管理組合役員の誠実性

当該条項の前は第37条の「役員の誠実義務等」という内容でした。

役員は管理組合活動に対して、誠実に対応する義務があるというものです。

そこでも、役員は管理組合財産の毀損の防止について、対応していくことが求められます。

この第37条の2についても、役員が自ら管理組合にとってマイナスになるような行為によって、役員自身や、役員とのつながりが深い第三者の利益を優先すべきではないことが強調されています。

外部専門家役員の就任が可能となったことによってより利益相反に注意する必要がある

管理組合役員の中に、外部の専門家を起用することができるようになり、より注意が必要であるとしています。

具体的には、

・管理組合はどこに発注したらよいか分からない
・一方で外部専門家役員は、管理組合の発注を受けてくれる取引先を知っている
・それが自分自身が関与する会社かもしれないし、深いつながりがある会社かもしれない

ということが実施しやすくなります。

とりわけ、どこに発注してよいか分からない管理組合であれば、

外部専門家役員に「どこか良い発注先はないか?」

と聞くのが普通考えられます。

例えば、

「外部専門家役員の私は取引先を紹介しない」

ということもできるでしょう。

しかしながら、管理組合としては、逆に専門家の知見・ノウハウをかって役員に起用していると考えられます。

そのため、このような否定をすることもあまりないでしょう。

したがって、悪気は無くても管理組合のためを思い「利益相反取引」という形態も自然に発生しやすいものであると言えます。

利益相反取引に該当する可能性がある役員は理事会決議に参加できない

条文第ニ号にもそのままありましたが、利益相反取引に該当する可能性がある場合は、理事会の承認を得る必要があります。

また、この理事会決議には、その取引に関わる理事は決議に参加できないこととなります。

当然、この理事が参加すると、賛成票に1票投じられることとなり、合理性、客観性に欠ける決議事項となるためです。

利益相反取引の場合の決議については、会社法における取締役会でも同様に、取締役が決議に参加できないこととなっています。

そして、標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」の第3項に

特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

というものがあります。

この点については、別途ご紹介いたします。

理事長の利益相反行為

理事会の議長である理事長が利益相反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?

また、前項によって、利益相反行為に当たる理事は、「理事会の決議に参加できない」とあるので、そもそも理事長は議長から外れる必要があります。

そのため、監事又は当該理事以外の理事が管理組合を代表する旨を規定する必要があります。

具体的には、標準管理規約第38条「理事長」の第6項に

管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。

とあり、理事長が参加できない規定があります。

この点についても、別途紹介したいと思います。

これまでの章では、条文の紹介とともに、国土交通省が注意しておいた良い点等を紹介しました。

次章では、想定される利益相反取引について筆者独自の視点から具体的に紹介します。

「利益相反取引の防止」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

最後の章では、これまでの内容を踏まえて、筆者が独自の視点から管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を紹介します。

利益相反行為はNGではない

これまで紹介した条文や国土交通省の補足コメントの中でも、

利益相反行為はNGである

ということについて一言も触れられていません。

すなわち、管理組合としては利益相反行為をやってはいけないということではなく、発注例も該当すると考えられます。

「利益相反行為に当たる場合は注意して発注してください」

ということであり、管理組合内や理事会、そして利益相反行為に当たる役員とともに、話し合って決めて頂ければ問題ないと考えられます。

外部専門家役員の利益相反行為があることを受け入れて判断する

前章でも紹介した通り、外部専門家役員は、管理組合にとってはその実力やノウハウをかって採用していると考えられます。

したがって、管理組合に有利に機能する取引先も比較的知っていることも多いでしょう。

外部専門家役員が、自らが良く知る最善策を提案してくれることも考えられます。

また、管理組合が修繕や物を買うとき、または他の専門家への依頼を行う場合等は、自らが知る取引先でよい所がないかと考えるのは自然な流れです。

それを受け入れるかどうかは、管理組合の判断になります。

そして、判断する場合は、当該外部専門家役員を除いて、果たして問題ない取引先かどうかを理事会決議すればよいということになります。

利益相反取引は完全に排除することも一つの考え方です。

一方で、改めて取引先を当たるとなると、時間と手間もかかってしまい、管理組合として後手に回ってしまう可能性もあります。

したがって、外部専門家役員のアドバイスを取り入れるか、排除するか、十分検討することも管理組合として必要なことと言えます。

ちなみに筆者の場合は、

これは利益相反取引に当たりますが、管理組合として問題ありませんか?

と必ず確認するようにしています。

それでも容認するか、否認するかは提案内容次第であると考えられます。

管理組合のメリット>利益相反取引

であれば、受け入れることもあるでしょう。

利益相反取引に当たるかどうか分からない可能性もある

例えば、取引例1で紹介した、取引先から役員がバックマージンを受け取っている例は、果たしてそれが事実なのかは分かりません。

そのため、利益相反行為になっているかは、表からでは分からないでしょう。

実際に裏側で、取引先から役員に金銭の支払いが行われているかもしれないし、行われていないかもしれません。

それもあり、第37条の「役員の誠実義務等」が機能してくると考えられます。

管理組合として利益相反取引と上手く向き合う

今回は、第37条の2「利益相反取引の防止」について紹介しました。

役員の利益と、管理組合の不利益、相反するものが発生する場合があります。

当然管理組合の不利益にならないように、外部専門家役員だけでなく、区分所有者役員も活動する必要があります。

最後の章でも紹介した、利益相反取引がにより管理組合に費用負担があるものの、それに余りあるメリットがあれば、取引を容認することも一つの考え方としてもありえるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました