【規約解説】マンション管理士等専門家の賢い活用方法(国交省推奨)

管理規約解説

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管理組合の課題が多いために誰かマンション管理について良く知っている方はいないかな…?

また、

理事会や総会にて、適切に意見を言ってくれるマンション管理士がいれば上手く回るかもしれない。

さらには、

設備修繕において常にアドバイスをしてくれる建築士が身近にいれば助かるのだけれど…

このような悩みを抱えている管理組合や役員の方も多くいるようです。

タワーマンションをはじめとした高層マンションが多くなると、それだけ設備が高度化します。

区分所有者の中でも、外国人、高齢者、さらには忙しい現役ファミリー世代など、マンション内に多様な価値観を持つ方も増えてきています。

すなわち、これらによってマンション管理がどんどん複雑化してくることが考えられます。

これらの事情を配慮して、国土交通省はマンション管理に対する専門家の活用を推奨しており、標準管理規約内でもあえて条項を設けています。

今回は、標準管理規約第31条「専門的知識を有する者の活用」の条文ならびに補足・注意事項を紹介します。

専門家の立場であるマンション管理士の筆者からの紹介となりますが、忖度なく管理組合にとって客観的な判断ができるような内容としてコラムを記載しています。

【規約解説】マンション管理士等専門家の賢い活用方法(国交省推奨)

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第34条「専門的知識を有する者の活用」を徹底解説!
・第34条「専門的知識を有する者の活用」の規定に対する補足・注意事項は?
・「専門的知識を有する者の活用」に対して管理組合が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第34条の条文から、「専門的知識を有する者の活用」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

こちらは、前項の第33条「業務の委託等」と共通するコメントとなっています。

追って第33条については紹介しますが、さしあたり同様の指摘事項について、紹介します。

そして、最後の章では第34条「専門的知識を有する者の活用」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

標準管理規約第34条「専門的知識を有する者の活用」を徹底解説!

まずはじめに、標準管理規約第34条「専門的知識を有する者の活用」について、紹介します。

第34条の条文は?

条文は、1項のみからなるシンプルな内容となっています。

(専門的知識を有する者の活用)
第34条 管理組合は、マンション管理士(適正化法第2条第五号の「マンション管理士」をいう。)その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。

内容の詳細は、次項にて紹介します。

適正化法第2条第五号の「マンション管理士」

マンション管理適正化法第2条(定義)における第5号には、

マンション管理士
(同法)第三十条第一項の登録を受け、マンション管理士の名称を用いて、専門的知識をもって、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されているものを除く。)とする者をいう。

という条文があります。

このマンション管理の専門家を「マンション管理士」として法的にも位置づけています。

そのため、お馴染みですがマンション管理士は同法律に定める国家資格者でもあります。

相談、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる

条文の内容は、「相談、助言、指導その他の援助を求めることができる」としています。

すなわち、規約に定めておくことで、マンション管理士をはじめとした、専門家を起用することが、総会決議等で可能になるという点です。

「求めたりすることができる」であり「求めなければならない」ではないので、国土交通省としても、必要に応じて活用してくださいというニュアンスになります。

また、管理組合としては、難解な問題が多く発生したり、役員のリソースやノウハウだけでは解決できないような課題が発生した場合に、必要に応じて専門家を起用することになるでしょう。

次章では、国土交通省が第34条に対する補足・注意事項をマンション管理士等の専門家を含めた資格者についても紹介します。

第34条「専門的知識を有する者の活用」の規定に対する補足・注意事項は?

この章では、第34条「専門的知識を有する者の活用」について国土交通省が補足・注意事項として挙げている点を具体的に紹介します。

マンション管理における専門性の必要性

まず、国土交通省としては、複雑なマンション管理において、マンション管理における専門性を高める必要があるとしています。

そのためには、ノウハウがない管理組合において専門家の活用が求められるとしています。

具体的な方向性は?

国土交通省としては、以下について指摘しています。

・マンションは一つの建物を多くの人が区分して所有するという形態ゆえ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなどがある
・そのような中で建物を維持していく上で区分所有者間の合意形成を進めることが必要

専門家の必要性

そして、前述のような方向性の中で、マンションを適切に維持、管理していくためには、管理組合として法律や建築技術等の専門的知識が必要とななります。

そのためには、管理組合は、マンション管理業者等第三者に管理事務を委託したり、マンション管理士その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者との関りが必要となります。

具体的に、管理組合としては運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりするなどがあるでしょう。

また、管理組合として相談、助言等を受けながらも、専門的分野にも適切に対応しつつ、マンション管理を適正に進めることが求められるとしています。

なお、外部の専門家が直接管理組合の運営に携わる場合の考え方については、規約全般における注意事項がありますので、また別の機会に紹介します。

具体的な専門家は?

続いて、国土交通省が示す具体的な専門家について紹介します。

具体的に、管理組合が支援を受けることが有用な専門的知識を有する者としては、マンション管理全般やマンションの権利・利用関係や建築技術に関する専門家である、

・マンション管理士
・弁護士
・司法書士
・建築士
・行政書士
・公認会計士
・税理士
・区分所有管理士
・マンションリフォームマネジャー

等が考えられるとしています。

ちなみに、区分所有管理士、マンションリフォームマネージャーは民間資格取得者ですが、その他士業は国家資格者でもあります。

管理組合における専門家の活かし方は?

さらに管理組合として、前項で紹介した専門知識を有する者を上手く活用する必要があります。

そして活用の具体例としては、

・管理規約改正原案の作成
・管理組合における合意形成の調整に対する援助
・建物や設備の劣化診断
・安全性診断の実施の必要性についての助言、診断項目、内容の整理

等を依頼することが考えられると紹介されています。

また、最後の章では、「専門的知識を有する者の活用」において気を付けておきたい点を、費用面や費用を抑える考え方などを含めて、筆者独自の視点から紹介します。

「専門的知識を有する者の活用」に対して管理組合が気を付けておくべき事項は?

前章までに、標準管理規約第31条「専門的知識を有する者の活用」ならびに、国土交通省が挙げる補足・注意事項について確認しました。

最後の章では、これらの内容を踏まえて、筆者が特に管理組合が気を付けておいた方が良い点を紹介します。

専門家に依頼しないメリットもある

これまで紹介してきた第31条の規約は、専門的知識を活用してくださいという条項です。

それには一定のメリットがあると国土交通省も考えてわざわざ条文に落としています。

もっとも、管理組合として、専門家を立てずに自立で問題が解決できればそれでよいと思います。

筆者もマンション管理士の立場から、その点を管理組合にお話することもあります。

実際に自主管理マンションや団地等高経年マンションには、役員の中にマンション管理ノウハウをお持ちの方も多数いらっしゃいます。

また、既に区分所有者の中に専門家がいる場合もあります。

そういう意味では、専門家に依頼しない事にもメリットがあります。

具体的には、

・専門家に対する費用が掛からない
・管理組合内にマンション管理における専門的なノウハウが蓄積できる
・役員に対するマンション管理の問題解決能力が上がる
・結果的に区分所有者全体のマンション管理意識の向上する

などの効果も考えられます。

逆に、依頼しない事のデメリット

・管理組合としての最適解を出すまでに時間がかかる可能性がある
・専門的な視点ではないことから、対応策が適切かどうかは分からない
・結果的に時間とコストを要してしまう

という可能性もあるでしょう。

それでも

依頼しないメリットよりもデメリットの方が大きい

ということであれば、国土交通省が推奨する通り、是非前向きに検討するのがよいでしょう。

専門家費用に対する効果の検討

管理組合としては、マンション管理士や建築士等の専門家を活用する際には、別途費用がかかってくることとなります。

そのため、専門家のスキルやノウハウを見極めながら、採用するかどうかを検討する必要があります。

具体的には、

・限定の問題解決のための一時的な採用
・顧問としての年間契約としての採用
・外部専門家役員としての本格的な採用

など、段階が考えられるでしょう。

管理組合の各課題に向き合いつつ、適切な専門家を採用することが求められます。

管理組合における専門家の活用目的の検討

具体的に専門家を活用するということにした場合、どのような目的で専門家を活用するかで、タイプも大きく変わってくると考えられます。

例えば、

マンション管理全般を相談したい:マンション管理士
設備についての修繕や将来の大規模修繕工事、長期修繕計画を相談したい:建築士
訴訟を考えたいので、マンション法務にも強い専門家に相談したい:弁護士
管理組合会計を良くしたい:税理士

などです。

管理組合としては、課題を明確にして、どのような課題をいつまでに解消したいか、ゴール地点を明確にするなども重要になってくるでしょう。

管理組合内にはいない専門性を発揮するため一定の費用は掛かる

筆者自身もマンション管理士兼1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)という専門的な資格者である立場から、管理組合や管理会社、その他関連各所に対して専門性を発揮しなければなりません。

また、弁護士や会計士等、さらに資格的に専門性がある資格であれば、より一層の専門性や権威性があるかもしれません。

対して、専門家の方針にもよりますが、専門家に依頼するということは、その希少性や専門性があればあるほど、専門家も責任があることからそれなりの費用が掛かることが一般的です。

さらに、難易度の高い資格者ほどコストが高いのは感覚的にもわかるかと思います。

専門家に確認しつつではありますが、管理組合としても、その点を踏まえて検討することが望まれます。

ちなみに、以下に紹介する第27条「管理費」では、

第九号に

九 専門的知識を有する者の活用に要する費用

として、管理費の使途として明確化されています。

すなわち、専門家の活用は一定の予算として踏まえておいても問題ないものとなっています。

管理組合として費用を掛けられない場合は、自治体の専門家派遣等を有効活用する

コンサルティングを考える際に、専門家に依頼するとそれなりに費用が掛かってくる点は紹介しました。

しかしながら、そこまでの費用を掛けるのは、管理組合として難しい…という所もあるでしょう。

専門家に対する管理費を掛けるぐらいなら、修繕積立金に充てて将来の修繕等に活かしたい…そのように考える管理組合もあるかと思います。

そのような場合は、自治体が主催している無料相談会や、格安で専門家を派遣してくれる制度を活用することも一つです。

横浜市の例ですが、以下のような自治体施策

がありますので、紹介します。

専門家と管理会社の関係

とりわけ、管理会社に委託している管理組合において、専門家は独自で探す必要があるといえます。

というのも、往々にして、専門家は管理組合の側、または双方に対して中立的な立場であるからです。

すなわち、

管理組合・外部専門家⇔管理会社
管理組合⇔外部専門家⇔管理会社

のように、管理会社とは立場上、違った立ち位置になります。

ただし、滞納に対する回収のための訴訟や登記に関する手続き等であれば、三方の利害が一致するということも考えられます。

管理組合として上手く専門家活用ができる方法もある

今回は標準管理規約第31条「専門的知識を有する者の活用」について、条文ならびに国土交通省が補足する内容、さらには筆者独自の視点から気を付けておいた方が良い点などを紹介しました。

国土交通省としては、マンション管理士をはじめとした専門家の活用を推奨しています。

また、専門家の活用には一定の費用が掛かることが一般的ですが、自治体の制度を活用することにより、管理組合としての負担を抑えることも可能です。

今回の記事を参考に、課題がある管理組合においては早い段階で手を付け解消すべく、専門家活用について検討されることをお勧めします。

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