【規約解説】管理組合が対策を講じたい駐車場利用ルールの考え方とは

管理規約解説

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マンション内の駐車場の利用ルールがどうなっているのか確認したい。

また、

空き駐車場が増えてきている対策は管理組合としてどう考えればよいのだろうか…?

さらには、

電気自動車の設置対策も考えたいのだが、規約から参考になるのだろうか…?

このような駐車場に関する悩み事は管理組合でも非常に多いようです。

確かに、駐車場は使用面のルールだけではなく、機械式駐車場がある場合は修繕においても非常に頭を悩ます課題が多いですよね。

今回は、このような課題を含めて、設置されている管理組合も多い駐車場をテーマに、標準管理規約の第15条の内容を細かく確認していきます。

【規約解説】管理組合が対策を講じたい駐車場利用ルールの考え方とは

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第15条「駐車場の使用」の紹介
・第15条の補足・注意事項は?
・駐車場のルールに対して管理組合で想定される検討事項は?

まずはじめに、国土交通省が定めている標準管理規約第15条について、紹介します。

続いて、第15条には、条文の量に対して補足事項が比較的多く紹介されています。

特に管理組合として注意すべき事項も指摘されているので、その内容をかいつまんで紹介します。

さらに、これらの注意事項を踏まえて、管理組合における駐車場ルールから、使用上において想定される事項を具体的に紹介します。

冒頭でも紹介しましたが、駐車場は管理組合にとって悩み事となることも多い設備です。

また、修繕には多額の修繕費用が掛かるため、将来的な修繕計画も適切に立案する必要があります。

さらには、最近では電気自動車の普及も多くなってきており、その取扱いについても検討する管理組合が増えてきているのも現状です。

これらの課題も考えながら、管理組合としての対応しておきたい事項について考えたいと思います。

標準管理規約第15条「駐車場の使用」の紹介

まずはじめに、標準管理規約第15条「駐車場の使用」について紹介します。

第15条の条文は?

(駐車場の使用)
第15条 管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。
2 前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。
3 区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。

第15条の具体的な条項について

駐車場の使用に関する第15条には、第1項~3項まであります。

まず、第1項で、図を用いて駐車場を使用させることを定めています。

この中では、「特定の区分所有者」とあり、駐車場使用契約を締結した者であると考えられます。

第2項では、駐車場使用については、使用料を納入することが定められています。

駐車場はメンテナンス費用が比較的掛かってしまうため、使用者からの徴収が必要になってきます。

さらに、第3項では、区分所有者が住戸を売却や賃貸として貸した場合は、駐車場使用をできなくなる旨が定められています。

もちろん、管理組合によっては、区分所有者でない場合の駐車場使用も考えられます。

その場合は、第1項や第3項が「マンション居住者でも可」「区分所有者や居住者以外でも可」などへ変更の対象となるでしょう。

第15条「駐車場の使用」の補足・注意事項は?

続いて、第15条の補足や注意事項について紹介します。

国土交通省としては、この駐車場の条項については比較的手厚くコメントをしています。

第15条にはありませんが、管理組合として確認しておく必要があることから、全ての内容において紹介します。

駐車場に空きがある場合

この第15条は、国土交通省としては駐車場が不足しており、空き待ちが多い場合を想定して設定されています。

しかしながら、最近では駐車場需要が減少し、空き区画が生じているマンションもあります。

駐車場の収入は駐車場の管理に要する費用に充てられるほか、修繕積立金として積み立てられます(標準管理規約第29条「使用料」より)。

管理組合としては、駐車場収入が入らないことによる、修繕積立金不足を避ける必要があります。

そのため、空き区画を埋めるために組合員以外の者に使用料を徴収して使用させることも考えられます。

その場合は、区分所有者が支払う使用料は非課税となるものの、外部貸しのみが課税対象となることに注意が必要です。

倉庫やトランクルームがある場合

管理組合内に区分所有者や居住者に貸与する倉庫やトランクルームがある場合も考えられます。

その場合も、駐車場の使用料と同様に扱う必要があるとして、指摘されています。

駐車場使用細則の制定について

駐車場における使用者の選定方法や手続き、使用者の遵守すべき事項等駐車場の使用に関する事項の詳細については、「駐車場使用細則」を別途定める必要があると補足されています。

また、駐車場使用契約の内容(契約書の様式)についても、駐車場使用細則に位置付け、あらかじめ総会で合意を得ておくことが望ましいとのことです。

充電設備の取り扱いについて

電気自動車等用充電設備(以下「充電設備」という。)を設置する際には、充電設備の使用上のルールや使用料についても、併せて駐車場使用細則等に定めることが望ましいとされています。

また、設置時において充電設備の設置にかかる費用や、充電設備の運用及び維持費を誰がどの程度負担するかについて、あらかじめ総会で決議をしておくことも望まれるとのことです。

さらに、充電設備に関する使用細則例や費用負担の考え方等については、「既存の分譲マンションへの電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)充電設備導入マニュアル」(一般社団法人マンション計画修繕施工協会作成)を参照し、設定するのが良いようです。

駐車場使用契約について

駐車場使用契約は、以下のようなひな型を参考して欲しいとのことです。

※標準管理規約第15条関係⑤より

こちらのサンプルはかなりシンプルな内容ですが、管理組合の現状に合わせて、加筆修正をすることが必要です。

家主同居型の住宅宿泊事業を実施する場合

数少ないと考えられますが、民泊を可としている管理組合も中にはあるでしょう。

その場合、第3項(区分所有者が専有部分を貸与したら駐車場の使用契約を失う)は家主同居型の住宅宿泊事業を実施する場合の対象としていないとのことです。

実際に宿泊者が駐車場を利用することもあるためと考えられます。

車両の保管責任は?

駐車場に止まっている車両の保管責任についてです。

車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約又は駐車場使用細則に規定することが望ましいとあります。

もちろん、車両の所有者は区分所有者であることから、区分所有者の責任のもとで保管することが望まれます。

管理費、修繕積立金の滞納等がある場合は?

駐車場を借りている区分所有者が、管理費や修繕積立金の滞納がある場合のペナルティを定めておくことについて、補足があります。

その場合は、駐車場使用細則や駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めてもよいとの考え方です。

確かに、管理費や修繕積立金を滞納した区分所有者は、駐車場使用料も滞納するリスクがあります。

そのため、最低限管理費と修繕積立金を納められない場合は、駐車場使用について契約解除をすることも選択肢の一つでしょう。

駐車場使用者の選定方法は?

駐車場使用者の選定は、公平性が求められます。

そのため、最初に使用者を選定する場合には抽選、2回目以降の場合には抽選又は申込順にする等がよいとされています。

また、マンションの状況等によっては、契約期間終了時に入れ替えるという方法又は契約の更新を認めるという方法等について定めることも可能です。

例えば、駐車場使用契約に使用期間を設け、期間終了時に公平な方法により入替えを行うこと(定期的な入替え制)が考えられるとのことです。

なお、駐車場が全戸分ある場合であっても、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等により利便性・機能性に差異があるような場合もあるでしょう。

その場合は、マンションの事情によって上述の方法による入替えを行うことも考えられます。

そして、駐車場の入替えの実施に当たっては、実施の日時に、各区分所有者が都合を合わせることが必要となるでしょう。

しかしながら、それが困難な場合については、外部の駐車場に車を移動させておく等の対策が考えられるとのことです。

駐車場使用料の料金の決め方は?

駐車場が全戸分ない場合には、駐車場使用料を近隣の同種の駐車場料金と均衡を取りながら設定することにより、区分所有者間の公平を確保することが必要です。

なお、近隣の同種の駐車場料金との均衡については、利便性の差異も加味して考えることも必要であるとしています。

また、平置きか機械式か、さらには屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等による利便性・機能性の差異も出てくるでしょう。

その点においては、使用料が高額になっても特定の位置の駐車場区画を希望する者がいる状況に応じて、柔軟な料金設定を行うことも考えられます。

駐車場のルールに対して管理組合で想定される検討事項は?

注意事項として、第15条は非常に多く10項目について紹介しました。

国土交通省としても多くの補足事項に振れていることから、駐車場については、管理組合としても課題が多い設備であると位置づけています。

その点も踏まえながら、管理組合として想定される検討事項について確認してみます。

駐車場使用細則の制定と充実

ほとんどの管理組合においては、第15条のみでルールが定まらないところが多いでしょう。

そのため、駐車場使用細則を制定して、内容を充実させる必要があります。

具体的には、駐車場の使用上のルールとして、使用できる者、徴収した使用料の用途、使用者に課せられる義務、機械式駐車場がある場合の使用上の注意や遵守事項等、細かく定めておく必要があります。

駐車場使用細則は、状況に応じて都度加筆修正が求められると言えるでしょう。

駐車場の空き対策

大規模な駐車場台数が多いマンションでは、利用者の減少によって、駐車場の空き区画が出てくることも考えられます。

長い間空き区画ができると、管理組合の収益にも影響を与えることとなります。

また、空いていても機械式駐車場のメンテナンスも必要となります。

そのため、

・区分所有者以外の居住者にも開放する
・居住者以外の外部への貸し出しも検討する
・電気自動車の充電施設に転用する
・空き区画を別の施設に転用する
・機械式駐車場で空き区画が余りにも多い場合は埋め戻しなども検討する

など、軽いものから抜本的なものまで、管理組合として今後どのようにしていくのか、将来を見据えて検討することが望まれます。

逆に駐車場が足らない場合の対策

今回の標準管理規約第15条は、駐車場が埋まっており空き待ちが多い場合を想定しているとのことでした。

また、前章のとおり、駐車場代は近隣との駐車場代金との相場を想定しながら金額設定することが望まれます。

そして、空き待ちをしている区分所有者は、その間近隣の駐車場を借りていることが一般的です。

車を所有して生活している人は、車無しの生活になるにはすぐには難しいことや、駐車場を利用している区分所有者の移転も早々ないのが現状です。

管理組合としては、新たに入居した車所有の区分所有者に対しては、駐車場の確保も必要となることから、近隣の不動産屋と連携し空き情報をキャッチしておく等の対策が考えられます。

来客者専用駐車場を利用する際の注意点

管理組合によっては、来客者専用の駐車場がある所も多いでしょう。

マンションによっては、住民の高齢化に伴って、デイサービス車両が往来することも非常に多くなってきています。

このように、必ず専用車が停車しなければならない場合は、駐車スペースの確保が欠かせません。

したがって、来客専用駐車場の使用については、一定のルールのもと運用する必要があります。

一例として、「来客者専用駐車場使用細則」などを充実させることによって、管理組合内でルールを遵守することが求められます。

この細則に従って、来客者も駐車する必要があることから、この細則のルールを守ってもらうことが求められます。

電気自動車の充電設備

最近では、電気自動車も徐々に増加してきており、充電設備を求める区分所有者も多くなってきています。

充電設備を設置する場合、充電するための場所の確保も必要になってきます。

また、利用した区分所有者から使用料を徴収する必要もあります。

さらに、前章の「充電設備の取り扱いについて」でも紹介しましたが、国としても対応策を考えていることから、マニュアルを確認して、管理組合に合うような考え方を細則等の作成を通じて実施すべきです。

そして、充電設備を検討しているマンションにおいては、マンション計画修繕施工協会による「既存の分譲マンションへの電気自動車充電設備導入マニュアル(急速充電器特別措置改正版)」は、必読されることをお勧めします。

ルール違反や違法駐車の取り締まり

今回の第15条「駐車場の使用」には触れられていませんでしたが、ルールを守らない駐車や違法駐車も考えられるでしょう。

具体的には、顧客専用の駐車場への駐車、さらには敷地内で駐車が定められていない所への駐車、さらには、居住者でない近隣の方がマンション敷地内への駐車している、駐車違反等も想定されます。

とりわけ、敷地が大きい郊外型のマンションや団地は、車の利用が多くなるでしょう。

そのため、スペースがない街中のマンションと比較して、このような取り締まりを行う必要が多いと考えられます。

使用細則等において管理組合としての適切なルールを定めるとともに、定期的な見直しも望まれます。

また、違法駐車や駐車違反については、防犯対策とともに、地域の警察署との連携も欠かせません。

駐車場内のセキュリティの確保

もし、空き駐車場が多く、区画を管理組合関係者以外の外部の方にも貸与する場合は、セキュリティの問題も発生します。

関係者以外の出入りが頻繁に発生するためです。

その場合は、セキュリティ面の強化もさらに必要になってくる可能性があります。

定期的な見回りによって、不審者がいないなのチェックや契約外の車両が駐車されていないかなどの、確認も必要となるでしょう。

使用上のルールだけでも話題に事欠かない第15条の「駐車場の使用」

今回は、標準管理規約第15条「駐車場の使用」について取り上げました。

たった3項のみの規約ですが、非常に検討事項が多い条項でもあります。

また、これまで紹介したとおり駐車場については、使用上のルールや懸念事項等が広範囲に及びます。

そのため、管理組合としても、検討すべき課題も非常に多いでしょう。

これ以外にも、駐車場メンテナンスや改修のための修繕積立金の充実も大きな課題としている管理組合も非常に多いです。

都市部ではレンタカーやカーシェア等の充実により、自動車を持たない区分所有者も増えてきています。

一方、ライフスタイル上保有する必要があったり、駅から比較的離れた場所にあるマンションでは、自動車の保有は生活上欠かせません。

管理組合によっては、空き区画多いまたは、駐車場が足らないといった双方考えられますが、駐車場に関する話し合いを継続しながら、最善な対応策を検討することが望まれます。

※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版

を確認されることをお勧めします。

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