日経の新聞記事
を見て、気になったのでこの点について簡単にまとめてみました。
近年、マンションの欠陥に起因するトラブルが発生しています。外壁のタイル剥落、雨漏り、さらには耐震性不足など、居住者の安全や資産価値に直結する問題が浮き彫りとなるなか、国はこれまでの制度の“壁”を見直すための法改正と規約改定に動きました。
この記事では、2026年4月に施行予定の「区分所有法」の改正と、国土交通省が改定する「マンション標準管理規約」の内容について、マンション管理士の視点から分かりやすく解説します。
背景:管理組合の請求権に立ちはだかる壁
マンションに構造的な欠陥が見つかった場合、引き渡しから10年間は売主が責任を負う「瑕疵担保責任」が適用されます。しかし、実務では管理組合が先行して修繕費用を負担し、その後に売主に損害賠償を請求する形が一般的です。
ところが現行法では、管理組合がその建物の全区分所有者(現所有者・過去の所有者を含む)を代表して賠償請求する法的根拠が不明確であり、裁判では不利に扱われるケースがありました。特に問題となったのが、2016年の東京地裁判決。中古で購入した所有者が含まれている場合、「原告適格」がないとして管理組合による請求が棄却されたのです。
改正ポイント1:管理組合の代表権を明文化
このような状況を踏まえ、2025年5月の参議院本会議で「区分所有法」の改正案が可決されました。改正により、管理組合が中古購入者を含むすべての区分所有者を代表し、共用部分に関する損害賠償を請求できることが明確になります。これにより、過去の所有者を探し出して同意書を取り付ける必要がなくなり、管理組合の負担とリスクが大幅に軽減されます。
施行は2026年4月を予定しており、今後の瑕疵対応がより円滑になると期待されています。
改正ポイント2:標準管理規約も見直しへ
法律改正と併せて、国交省は「標準管理規約」の改定も進めています。これは全国の9割以上の管理組合が準拠している実務的なルールであり、法的拘束力はないものの、実態に大きな影響を与えます。
今回の改定では、以下のような内容が盛り込まれる予定です。
✅過去の区分所有者は損害賠償請求に関する意思表示ができないことを明記
✅管理組合が取得した賠償金の使途について、過去の所有者が干渉できないようにする
このようにして、仮に訴訟で賠償金が得られた場合も「持ち逃げ」や分配トラブルを防ぎ、現在の所有者全体の利益として適切に使えるよう制度設計が進められています。
実務への影響と管理組合が取るべき対応
制度の変更により、管理組合の責任と権限がより明確になった一方で、それを有効に機能させるためには現場での対応も不可欠です。以下は管理組合として今から検討しておきたいポイントです:
✅管理規約の自主改正:2026年を待たず、先行して改定内容を反映させることで、トラブル防止に役立つ。
✅専門家の活用:法的手続きや規約改定については、弁護士やマンション管理士に相談し、整合性を持たせる。
✅組合員への説明:特に瑕疵対応では、修繕積立金の使い道などに対する理解が重要。
まとめ:欠陥対応の第一歩は「制度理解」から
今回の法改正と標準規約の改定は、マンションの欠陥問題に対する制度的な備えを強化するものであり、特に築年数が進んだ物件や中古流通の多い物件にとっては実効性のある改革といえるでしょう。
管理組合としては、この制度改正を単なる法改正としてではなく、「住まいの価値を守るツール」として捉え、積極的に制度対応を進めることが求められます。トラブルが起こってからでは遅いため、今こそ備えを強化する好機と言えるでしょう。
今回のコラムと日経記事の音声解説
今回もナレーターが非常に分かりやすく解説しています。
今回は動画調にしてみました。将来的にはナレーション+プレゼン資料などの動画に進化する可能性もあります。
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