今回マンションを取得することとなって、購入後すぐにリフォームを考えたいのだが、管理組合にはどのようなルールがあるのか確認したい…
また、
今住んでいる部屋の一部をリフォームする予定だけれど、確認したいことがある。
さらには、
区分所有者からリフォームをしたいと言われたのだけれど、理事長として対応すべき事項にはどういうことがあるのかな…?
などなど、分譲マンションにおけるリフォームに関する疑問や確認事項も非常に多くなっているでしょう。
特に高経年マンションは、部屋をリフォームする必要性が出てくる可能性がありますよね。
リフォームすることによって、良い感じのビンテージマンションに仕上がることから、高経年マンションでのリフォームも人気のようです。
今回は標準管理規約第17条の「専有部分の修繕等」をテーマに、専有部分のリフォームをする際のルールや注意点を紹介します。
- 【規約解説】対応マニュアル並に詳細…専有部分リフォーム時の注意点
- 標準管理規約第17条「専有部分の修繕等」の紹介
- 【対応マニュアル並み】「専有部分の修繕等」の補足・注意事項は?
- 専有部分の増築と主要構造部への影響を及ぼす行為の禁止
- 理事長の承認を必要とするリフォーム工事の種類
- 配管や枝管の取付けや取替え工事
- 専有部分のリフォームは区分所有法に従って標準管理規約で定めたものである
- 区分所有者が行うリフォームを承認する際の注意事項
- 承認のための調査費用は区分所有者負担
- リフォーム承認のための判断基準は?
- 申請は理事長であり、正式承認は理事会
- 近い将来建替え又はマンション敷地売却を検討している場合の注意点
- 理事長等の立入り
- リフォーム工事終了後の区分所有者の責任
- 承認を得る必要がないものの管理組合内の影響が出る場合の届出の詳細
- 承認を得ずに実施したリフォーム工事があった場合は?
- 「専有部分の修繕等に関する細則」等への工事ルールの規定
- 申請書及び承認書の様式例
- 「専有部分の修繕等」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
- 専有部分のリフォームには区分所有者、管理組合双方において注意すべき点が沢山ある
【規約解説】対応マニュアル並に詳細…専有部分リフォーム時の注意点
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・【対応マニュアル並み】第17条「専有部分の修繕等」の補足・注意事項は?
・「専有部分の修繕等」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず初めに、標準管理規約第17条の条文を参照しながら、専有部分の修繕等に関する内容を紹介します。
続いて、第17条には、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項が非常に細かく紹介されています。
題名にある通り、マニュアル並みに細かい説明が掲載されています。
細かいですが、そのコメントを全てピックアップして、紹介します。
それにしても細かすぎるので、場合によっては飛ばして次の章を確認頂ければと思います。
さらに、専有部分の修繕等には、修繕(以下、リフォーム)を実施する区分所有者が管理組合内のルールを遵守する必要があります。
そのルールについて、標準管理規約のコメントや、筆者が業務上確認した事項、さらには考えられる注意点等をまとめて紹介します。
標準管理規約第17条「専有部分の修繕等」の紹介
最初に、標準管理規約第17条「専有部分の修繕等」の条文を紹介します。
電磁的方法が利用可能ではない場合
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。
3 理事長は、第1項の規定による申請について、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議により、その承認又は不承認を決定しなければならない。
4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
6 第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない。
7 区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。
電磁的方法が利用可能な場合
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面又は電磁的方法による承認を受けなければならない。
この場合は、強調箇所のみであり、メールやチャットツール等で承認を得ることも可能となります。
第17条「専有部分の修繕等」各項の紹介
前述で紹介した通り、第17条には第1項から第7項まであります。
各項がどのような内容になっているのか、具体的に確認してみます。
第1項 リフォーム時の理事長への申請と承認
まず、第1項については、理事長に対してリフォームを行う際には申請を行う必要があります。
具体的な内容としては、専有部分のリフォームであるものの、
・他の専有部分(居住者)への影響
がそれぞれ及ぶ様な工事を行う際には、管理組合の理事長にその旨を申請する必要があります。
申請は第2項に記載がありますが、申請書とあるのでこちらも書面による提出になります。
また、理事長からも書面による承認を受ける必要があります。
第2項 設計図、仕様書等の提出
申請において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を、理事長宛に提出する必要があります。
第1項であったとおり、「共用部分と専有部分に影響を与える」ことから、いつまで影響が及ぶのか、またどこに及ぶのかなどを明らかにする必要があります。
そのため、設計図や仕様書、工程表のような、専有部分の工事がどのように行われるか、理事長としても確認しておく必要が出てきます。
第3項 理事会の決議
区分所有者が申請があった後、理事長はこのリフォームについて理事会に諮る必要があります。
そして、理事会の決議により、その承認又は不承認を決定する必要があります。
後述の補足、注意事項でも紹介しますが、理事長は仮承認で、理事会が本承認のようなイメージとなるでしょう。
第4項 理事長承認以降の工事
理事長承認を受けて、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことが可能となります。
すなわち、承認以前には専有部分であっても工事をすることが出来ないこととなります。
第5項 修繕箇所への立入り
理事長やその指定を受けた者は、必要な範囲内で修繕等の箇所に立入り、必要な調査を行うことができることとなっています。
この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならないことが定められています。
「その指定を受けた者」は、副理事長等の他の理事や、管理員さんや管理会社のフロント担当者などが想定されます。
第6項 区分所有者の責任
理事長の承認を受けて行ったリフォーム後に、共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置を取る必要があります。
すなわち、リフォームの影響で専有部分や共有部分の劣化や破損、また階下への漏水等が起きた場合などが考えられます。
第7項 承認を得る必要がないものの管理組合内の影響が出る場合の届出
リフォームではない、例えば便座の取替や大型家具の設置等も専有部分の工事として考えられます。
その際には、工事業者の立入りや工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等も想定されます。
このように、工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響については、管理組合が事前に把握する必要があるでしょう。
その際には、あらかじめ、理事長にそのような工事を実施するということを届け出る必要があります。
【対応マニュアル並み】「専有部分の修繕等」の補足・注意事項は?
第17条の各条項の内容も比較的細かくなっていましたが、次に、さらに細かい第17条「専有部分の修繕等」の補足、注意事項を確認します。
マニュアル並みになりますが、各項目に分けて国土交通省が指摘している全15項目について、詳しく紹介します。
専有部分の増築と主要構造部への影響を及ぼす行為の禁止
まず、注意事項の1つ目として、区分所有者による専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を及ぼす行為が実施できない旨、紹介されています。
こちらは、区分所有法第6条第1項
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
の規定に沿ったものです。
専有部分のリフォームとはいえ、戸建てのような増築や、建物の躯体等の主要構造部に影響を及ぼす工事をしてはいけないということです。
主要構造部に影響を与えることとなると、建物全体への影響にまで及び、構造上の問題にもなってしまう可能性があるからです。
理事長の承認を必要とするリフォーム工事の種類
第1項の承認を必要とする「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」ものとして、具体的に
・ユニットバスの設置
・主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置
・配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え
・間取りの変更
が紹介されています。
その範囲、承認を必要とする理由及び審査すべき点については、標準管理規約の別添2に「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」として紹介されています。
この考え方を紹介するとさらに細分化・複雑化されてしまうため、別添2は割愛します。
国土交通省がデータとして提供している、標準管理規約(単棟型)PDF書類の84枚目に詳しく記載があります。
以下
のように非常に詳細が記載されていますので、詳しくは上記のURLから84枚目をご確認頂ければと思います。
配管や枝管の取付けや取替え工事
第17条は、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たり、共用部分内に係る工事についても、理事長の承認を得れば、区分所有者が行うことができることも想定されています。
「共用部分に係る」ということで、共用部分である継手から専有部分側の、専有部分として扱われる配管や枝管の工事となります。
区分所有者が共用部分を工事するということではない点に注意が必要です。
専有部分については、以下
の記事に、共用部分との区分を含めて細かく紹介しています。
専有部分のリフォームは区分所有法に従って標準管理規約で定めたものである
専有部分のリフォームは、共用部分に関係してくる場合も考えられます。
そのため、区分所有法第18条第1項の共用部分の管理に関する事項として、同条第2項の規定により、規約で別の方法を定めたものとなっています。
区分所有法第18条の1項、2項は
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
となっており、2項によって、規約に定めているという流れです。
なお、場合によっては、区分所有法第17条第1項の共用部分の変更に該当し、総会の決議を経ることが必要となる場合もあることに留意する必要があるとのことです。
区分所有者が行うリフォームを承認する際の注意事項
理事長、または理事会が承認をする際には、専門的な判断が必要となる場合も考えられます。
そのため、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する必要があると記載されています。
特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要とのことです。
承認のための調査費用は区分所有者負担
承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合も想定されます。
その場合は、申請者である区分所有者にに負担させることが適当であるとのことです。
リフォーム承認のための判断基準は?
理事長または、理事会が、リフォームを承認するための判断基準としては以下の考え方が重要です。
・防火、防音等の影響
・耐力計算上の問題
・他の住戸への影響 など
また、考え方については別添2(標準管理規約(単棟型)PDF書類の84枚目)を参照する必要があります。
なお、承認の判断に当たっては、マンションの高経年化に伴い専有部分の修繕等の必要性が増加することも踏まえ、過度な規制とならないようにすることが必要とされています。
さらに、修繕技術の向上により、新たな工事手法に関する承認申請がされた場合にも、別添2に示された考え方を参考にすればよいことに留意する必要があるとのことです。
そして、工事内容が上下左右の区分所有者に対して著しい影響を与えるおそれがあると判断される場合には、当該区分所有者の同意を必要とすることも必要とのことです。
申請は理事長であり、正式承認は理事会
補足説明では、少々ややこしいですが、
・承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである
と紹介されています。
「理事長の承認をもって工事開始」とのことなので、理事長が仮承認または、理事会の代わりに一次承認するという位置づけになるということです。
次章で紹介しますが、理事会の日が申請後2か月ほどあると、工事着工や終了までに時間が掛かってしまいます。
そのため、このような「理事長の一次承認」というスタイルが考えられます。
近い将来建替え又はマンション敷地売却を検討している場合の注意点
マンションの建替えや建替えずに敷地を売却することについては、多くの管理組合にとってあまり現実的ではない課題かもしれません。
しかしながら、建替えを考えている管理組合を想定して、国土交通省は次のような内容を補足しています。
・この可能性がある場合、理事長の承認を求めてくる区分所有者に対し、近い将来建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましい
・注意喚起があった上で、実際に修繕等を行うか否かはあくまで当該区分所有者の判断となる
ということです。
理事長等の立入り
施工状況を確認する必要があるものについて、工事中の現場で管理組合の理事等(又は組合から依頼を受けた技術者)が立ち会って確認することが考えられます。
人手や工期などにより実際に立ち会うことが難しい場合には、抜き打ちで検査することをアナウンスしたり、工事業者に写真等の記録を取らせ報告させたりすることも考えられます。
さらに、施工状況を確認する場合、図面の読み方や工事の進め方を知っている外部の専門家の協力が必要になります。
具体的に確認が必要なものとしては、例えば、次のようなものが考えられるとのことです。
・ 躯体コンクリートにスリーブをあける際やアンカーを打ち込む際に、鉄筋を探査してから穴をあけているか、手順を確認する
立入りの目的としては、共用部分への影響がないかどうかという点が大きくなります。
リフォーム時に躯体等への影響が出ないように、時には専門家のチェック等も必要になると考えられます。
実際に筆者が関与したビンテージマンションのフルリフォーム案件の際に、管理員さんと一級建築士の区分所有者がチェックに来ました。
このようにフルリフォームの際には、技術的なチェックが入ることも多いでしょう。
リフォーム工事終了後の区分所有者の責任
第6項の区分所有者の責任については、理事長の承認が、修繕等の工事の結果、共用部分又は他の専有部分に生じた事後的な影響について、リフォーム工事の発注した区分所有者の責任や負担を免責するものではないことを確認する趣旨があります。
なお、工事を発注する際に工事業者と協議した上で、契約書に事後的な影響が生じた場合の責任の所在と補償等についても明記することが適切と考えられています。
また、管理組合等が専有部分の修繕の記録を保管しておくため、工事業者から工事完了報告書等を提出させることも必要と考えられます。
承認を得る必要がないものの管理組合内の影響が出る場合の届出の詳細
理事長の承認を要しないリフォームであっても、工事の実施期間中において、共用部分又は他の専有部分に対し、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等の影響が想定されます。
そのため、管理組合が事前に把握する必要があることから、事前に届出を求めるものとされています。
なお、第1項のリフォーム工事と異なり、工事の過程における影響を問題とするものであり、工事の結果による事後的な影響を問題とする趣旨ではないことに留意する必要があります。
また、他の居住者等にも影響を与えることが考えられるため、上記届出に加えて工事内容等を掲示することにより、他の区分所有者等へ周知を図ることが望ましいとのことです。
承認を得ずに実施したリフォーム工事があった場合は?
理事長や理事会の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合の対処についてです。
第67条(理事長の勧告及び指示等)の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができます。
また、理事長等の立入り、調査の結果、理事長に申請又は届出を行った内容と異なる内容の工事が行われている等の事実が確認された場合も、同様の処置が取れるとのことです。
「専有部分の修繕等に関する細則」等への工事ルールの規定
これまで紹介してきた内容を確認してもお分かりかと思いますが、専有部分のリフォームについては、管理規約上だけでは到底説明できない分量があります。
そのため、第17条のほか、具体的な手続、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、使用細則に別途定める必要があります。
その際、上述した別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましいとのことです。
申請書及び承認書の様式例
リフォーム工事における、理事長への申請書及び理事長の承認書の様式サンプルは、以下の通りです。
国土交通省の第17条に関する補足事項は以上となりますが、非常に細かな内容ですが、区分所有者がリフォームする際の重要な点が紹介されています。
管理組合や役員においても確認されておくことをお勧めいたします。
「専有部分の修繕等」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
第17条の「専有部分の修繕等」の内容ならびに、その補足・注意事項を踏まえて、そこに掲載されている内容に付加する意味合いで、管理組合や区分所有者が気を付けておきたい事項を紹介します。
専有部分のリフォームの賛否は理事長の承認か、理事会の承認か?
筆者が思った点として、承認は理事長なのか、理事会なのか、補足説明はやや曖昧な、解釈が複数取れる印象を持ちました。
一次的に理事長が仮承認して、事後であるものの、理事会への承認(この形態だと事後報告に近い)が必要という意味合いに捉えられます。
それはそこに住むことや売却することを考えると、区分所有者はリフォーム工事をなるべく早く実施したいと考えていると想定されます。
工事期間が長引くほど、何らかのロスが発生するためです。
そのような中で、理事会が1~2か月先で、そこまで承認を待っていなければならない区分所有者も、納得がいかないことが考えられます。
そのため、
・理事会で正式承認をする
・場合によっては回覧等でリフォーム議案の承認を各理事から得る
・工事が複雑で共用部分への影響を与える可能性がある大きな工事の場合は、理事会決議が必要な旨を区分所有者に説明する
などの対応も考えられます。
専用使用部分や共用部分に影響を与える工事は実施できない
区分所有者は、専用使用部分や共用部分に手を加える工事はできません。
また、専用使用部分の窓ガラス等改良の場合は、標準管理規約第22条「窓ガラス等の改良」に従って対応する必要があります。
共用部分へ工事の影響が及ばないように、区分所有者または、施工業者に誓約書を記載させることや、または管理組合として注意喚起の書面を提示する等の対策も必要になってくると考えられます。
音や匂いなどの他の居住者への影響
専有部分のリフォーム時には、区分所有者はそこに住んでいないことが多いでしょう。
そのため、工事の状況が分からない場合が一般的です。
しかしながら、周囲には通常通り居住者が住んでいます。
その際に、工事の際のドリルやかなづちで叩く等の大きな音が漏れたり、近隣に塗料の匂いが充満するなども考えられます。
このようなことから、当該事象が発生する可能性がある旨の同意と工事前、工事後のお詫びなどを行うことも必要になってくるかもしれません。
近隣のトラブルを避けるためにも、丁寧な対応が求められそうです。
資材搬入時のエレベーターやマンション入り口、駐車場の使用
リフォーム工事においては、その規模によっては、資材の搬入が多くなることがあります。
その際には、エレベーターの往来や、マンション入り口の混雑、さらには専用車両の駐車場利用なども想定されます。
そのため、居住者に一定の影響を少なからず与えることになることから、予め管理組合の掲示板等により通知することが重要です。
理事長等管理組合側の調査や確認
申請時に提出された書類により、リフォームが大規模であったり、躯体に影響を与える可能性がある場合には、提出書類を専門家に見て貰うことも重要です。
管理組合顧問等の専門家に内容を確認して貰い、影響が考えられる場合は、区分所有者や工事業者に事前確認を行う必要もあります。
また、筆者が関与したマンション事例のように、区分所有者に伝えたうえで、建築士等の専門家の立ち会いのもと、工事現場の確認やヒアリング、チェック等も実施すべきでしょう。
そして、場合によっては、前章の補足説明にもあったとおり、求めた依頼の報告や工事完了報告等も提出して貰うことも考えられます。
工事責任の所在の明確化
前章の説明にもあったとおり、工事後に何らかの問題が発生することも考えられます。
そのため、区分所有者としても、リフォーム工事契約時に、事後責任については工事の瑕疵(契約不適合)について確認したほうが良いと考えられます。
また、後々発生する漏水等の事故がリフォーム工事が原因で…となった場合の対処としても、責任の所在は区分所有者なのか工事業者なのかを明確にするためにも考えておく必要がありそうです。
専有部分のリフォームには区分所有者、管理組合双方において注意すべき点が沢山ある
今回は、標準管理規約第17条をベースに、専有部分の修繕等(リフォーム)について紹介しました。
標準管理規約のコメントには、非常に細かな補足・注意事項が紹介されていることも、各項目で分かりました。
専有部分のリフォームを行う区分所有者としての責任も多くあり、確認しておくべき事項がありそうです。
一方の管理組合も、共用部分に影響する面もあることから、リフォームが適切に行われているかどうか、チェックが欠かせません。
双方の論点から詳しく紹介しましたので、事あるごとに繰り返し確認頂ければ幸いです。
※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版
を確認されることをお勧めします。
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