先月令和6年7月19日に、管理会社が加盟している団体でもある一般社団法人マンション管理業協会が、「マンション管理トレンド調査2024」結果概要についてというリリースを出しています。
その中で、管理組合に関係する内容をピックアップして、管理会社から見るマンション管理組合の傾向を紹介します。
修繕積立金値上げに至らないケースも!?マンション管理トレンド調査
今回紹介する内容は以下の通りです。
・「マンション管理適正評価制度(協会)」の取組み状況は?
・マンション標準管理委託契約書改定版の管理組合への反映状況は?
・長期修繕計画における修繕積立金不足の対応状況は?
・管理会社における複合用途型・タワー型マンションへの対応状況は?
また、調査概要、調査項目等は次の通りです。
(1)調査期間:2024/4/1~2022/5/17
(2)調査対象:全会員社 348社(調査時)
(3)回答社数:333社(95.6%)※ 前回:331社(93.5%)
2.調査項目
・IT活用の取組み状況について
・「管理計画認定制度(適正化法)」の取組みについて
・「管理適正評価制度(協会)」の取組みについて
・マンション標準管理委託契約書の反映状況について
・マンション標準管理規約の反映状況について
・長期修繕計画における修繕積立金不足の対応について
・働き方改革等の実施状況について(新型コロナウイルス対応を含む)
・複合用途型・タワー型マンションへの対応について
・災害等対策の実施状況について
発表された調査資料から、特にマンション管理組合に関係が深い内容をピックアップし、筆者の見解も踏まえながら具体的に紹介します。
「管理計画認定制度(適正化法)」の取組み状況は?
管理会社における、管理計画認定制度の取り組み方針は次の通りでした。
・54%の会員社(187社)が、対応中(管理物件所在の地方公共団体の施行に合わせて提案予定含む)
・25%の会員社(86社)が、特に検討していない
全体の4分の1が特に検討しておらず、管理組合からの要請があれば対応する形でしょうか。
また、検討していない理由は以下の通りでした。
・管理計画認定が取れそうにないため 28
・長期修繕計画の作成が困難なため 18
・修繕積立金の基準が高いため 17
・管理組合(理事会等)へ提案も否決されたため 16
・その他 22
認定が取得できそうにないためというのは、長期修繕計画や修繕積立金に起因する所も大きいのでしょう。
また、規約変更を伴う場合は手間がかかることや、管理会社にノウハウがないことも考えられそうです。
さらに、その他と回答した管理会社においては
・管理組合に具体的なメリットが感じられにくい
とのことで、制度が始まって手探りの状況であるといえそうです。
「マンション管理適正評価制度(協会)」の取組み状況は?
同様に、管理業協会が手掛ける、マンション管理適正評価制度の取り組み方針については、
・50%の会員社(173社)が、対応中(管理物件に提案中や説明中を含む)
・28%の会員社(96社)が、特に提案予定はない
とのことで、認定制度以上に提案予定が無いとの回答でした。
具体的に提案予定がないと回答した管理会社の傾向としては、
・インセンティブが不明のため 26
・高経年のため(長期修繕計画の作成が困難等) 24
・管理計画認定制度(適正化法)の動向がわからないため 32
・管理組合(理事会等)へ提案も否決されたため 18
・その他 16
という回答でした。
管理組合側としてもメリットが見いだせないことや、長期修繕計画の作成が難しい、今後の管理計画認定制度の動向が分からない等がありそうです。
また、中には1年更新であるマンション管理適正評価制度に対して更新をしなかったマンションもでてきているようです。
その傾向としては、
・管理組合が更新不要と判断したため 9
・インセンティブが不明なため 9
・その他 10
として、適正評価を受けたものの、その後のメリット等を見いだせなかったため、次年度以降は断念したという傾向も少なからずあるようです。
マンション標準管理委託契約書改定版の管理組合への反映状況は?
続いて、令和5年9月、マンション標準管理委託契約書(以下、「標準契約書」という。)改訂版が公表されました。
管理組合への提案状況についての調査回答状況です。
・現在、提案中(未改訂) 104
・改訂しない 23
・検討中 99
また、「積極的に提案」「現在、提案中」と回答した管理会社の、標準契約書への反映は以下の通りです。
・カスタマーハラスメント対応(標準契約書第8条、第12条) 164
・働き方改革に関する対応 130
・書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応(標準契約書第25条他) 137
・居住者の高齢化・感染症まん延等への対応(標準契約書第9条、第13条) 119
・現金収納業務の追加 99
・その他 9
管理会社にとって重要な項目である、業務範囲やカスタマーハラスメント(カスハラ)が多くなっており、これらを中心に契約内容を改定しています。
また、その他の意見からは
・管理会社と管理組合はパートナーである事を周知できるようなメディアの活用をご検討いただけたらありがたく思う
といった意見があるとおり、管理会社にとっては管理組合からの要請が厳しくなっていると感じているようです。
長期修繕計画における修繕積立金不足の対応状況は?
管理物件に提案した修繕積立金不足に対する施策
管理会社が直近1年間に、管理物件に提案した修繕積立金不足に対する施策についての回答状況です。
・長期修繕計画の見直し(修繕周期を長期化等) 235
・修繕工事の見送り、仕様ダウン等 163
・管理費支出削減(電子ブレーカ、LED等)分を修繕積立金口に振り替え 151
・共用部分リフォームローンの活用 122
・駐車場の外部貸し等(収益事業) 119
・管理費支出削減(管理仕様ダウン)分を修繕積立金口に振り替え 62
・管理費支出削減(管理委託費の値下げ)分を修繕積立金口に振り替え 37
・特になし 10
・その他 9
また、修繕積立金の増額(値上げ)で増額に至らなかったケースもあるようです。
修繕積立金の増額(値上げ)に至らなかったケースは?
具体的には、以下のような回答でした。
・総会で否決されたため 83
・総会で議案審議を実施したが、反対者等の発言で議案審議を保留したため 67
・委任状・議決権行使書の提出が集まらなかったため 19
・その他 23
そして、その他の意見としては、
・高経年化や電気代・保険料の高騰等により管理費会計も逼迫しているケースが多く、管理仕様ダウンを行った場合でも修繕積立金口に振替ができるケースは少ない(管理費会計の不足分への補填で精一杯)
・保険料はじめ、物価上昇の影響が著しく、管理費支出を削減して修繕積立金に充てられる状況にない
など、マンションの高齢化と高経年化の2つの老い問題に加え、物価上昇が追い打ちをかけることによって、マンション管理組合の財政状態がひっ迫している現状が読み取れます。
管理会社における複合用途型・タワー型マンションへの対応状況は?
最後に、通常の単棟型マンションではなく、管理がより複雑になる複合用途型やタワー型マンションへの対応状況について確認します。
複合用途型、タワー型マンションの管理受託について
・複合用途型マンションの管理を受託している 201
・タワー型マンションの管理を受託している 101
・いずれも管理受託していない 101
また、複合用途型、タワー型マンションの管理を受託した管理会社に対して、問題、課題と感じている点は次の通りでした。
・高度な要求に対応できる営業担当(フロント)の配置 135
・高度な要求に対応できる管理員・コンシェルジュの配置 98
・複数の専門委員会等への対応 68
・高度な要求に対応できる警備員の配置 36
・住まい方や専有部分に関する対応 70
・クリスマス等居住者イベントへの対応 26
・特殊な設備の点検・修理 99
・長期修繕計画の作成 78
・理事等役員のなり手不足 81
・総会での合意形成(出席・委任状・議決権行使書の未提出) 83
・海外居住区分所有者の管理費等未収金 26
・その他 8
とりわけ、高度な要求に対応できるフロントやコンシェルジュが必要となってきている状況です。
また、大規模になりがちなことから、複数の専門委員会や特殊設備があったり等、管理会社にとってもスキルが求められることとなります。
その他の回答
自由回答として、以下のような回答がありました。
・複合タワーマンションで商業と住宅では求める管理レベルが異なり、利害関係が一致しないことが多々ある。今後外壁補修の時期等でも協議が整わない可能性が高い
・多様な価値観を有する区分所有者、オーナーの合意形成
・複合用途における店舗・事務所の修繕、PM業務のノウハウ
これらのことから、単棟型マンションにはない管理の複雑さ、難易度、多様な価値観等が入り混じる環境であることが見て取れます。
マンション管理組合において認識が一致しているか確認が必要
今回は、管理会社側のアンケート結果として公表された内容を紹介しました。
マンション管理組合において、これらの課題感が共通のものであれば、現管理会社とも連携して進めて行けることと考えられます。
もし認識が違う場合は、管理組合としても改めて現状を確認するとともに、管理会社とも連携しながら、新たな対策を検討していく必要もあるかもしれません。
コメント