当マンションはペットの飼育は禁止されています
または、
小鳥や魚類以外の動物の飼育は禁止されています
などの張り紙をしているマンションは、基本的にはペットを飼うことが禁止されているマンションでしょう。
仮に、ペット禁止のマンションでペットを飼うとどうなるのでしょうか?
また、ペット可であっても、不可にすることは可能なのでしょうか??
今回は管理組合にとっても重要な課題である、ペットに関する内容を紹介します。
ペット飼育禁止のマンションでペットを飼っている場合の対応は?
今回紹介するのは、以下のような内容です。
・ペット飼育禁止マンションでペットを飼っていることが判明した際の対応方法
・規約にペット飼育禁止が入っていない場合から入れることになった場合
マンションにおいて、ペット禁止のマンションもあれば、ペット飼育可であったり、小動物であれば可能であるなどの取り決めがあるマンションなど、管理組合が定める規約によってさまざま存在します。
どのような動物を飼ってよいのか、またはNGなのかなど、ペット飼育細則等でペットの名称一覧になっている管理組合もあります。
マンションを購入する時にペット愛好家であれば、ペットの飼育の可否について、必ず確認して購入することとなります。
筆者もかつてペット可のマンションに住んでいたことがあり、実際に犬を飼っていたことがありました。
家を買う時に、隣人が犬を飼っていたうえ、重要事項説明書にもペット可であることが記載されていたため、知っていて購入しその後暫く経って犬を飼いました。
ペット愛好家にとっては、ペットも家族同様の扱いで一緒に住む反面、そうでない方にとっては、小動物でさえ近寄れない方もいらっしゃいます。
それほどペットについては人によって差があるので、管理組合としても、仮にペット可であっても、その取扱いに注意する必要があると言えるでしょう。
ペット飼育禁止マンションでペットを飼っていた事例・判例
まずはじめに、ペットを飼育していた際の、マンションにおける裁判事例(判例)を紹介します。
マンション内で動物の飼育を一律に禁止する管理規約の規定の効力
マンションにおいて、動物の飼育を禁止する管理規約を定めることが、ペットを飼う一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすものかどうかについて争われた、平成6年8月4日の判例です。
裁判では、
・その者の犬の飼育がペットとしてであり、自閉症の家族の治療上必要であるなど、犬が家族にとって必要不可欠であるなど特段の事情がない
ことから、ペット禁止の管理規約の制定が一律に禁止されるものではないとの判決に至ったものです。
規約で禁止されている犬を専有部分で飼っていた事例
小鳥および魚類以外の動物を飼育することが禁止されているマンションにおいて、ペットとして犬を飼っていたため、その禁止と訴訟提起についての、弁護士費用相当の損害賠償請求をした、平成6年3月31日の事例です。
被告の主張は、
・ペット飼育の重要性が社会的に認知されつつあり、同時にマンションでのペット飼育を許容する条件が整いつつある
とのことでしたが、
裁判では
・規約を公平に適用するなら、実害が発生していなくても、小動物以外の飼育を一律禁止することも合理性がある
・犬の飼育に対して共同の利益に反する反する行為として禁止することは区分所有法上の許容するところ
とのことで、犬の飼育禁止の判決でした。
ペット飼育禁止マンションでペットを飼っていることが判明した際の対応方法
簡単に、ペット禁止に関する2つの判例を確認しました。
ペットを飼いたい人にとっては、ペットを家族の近くに置いておきたいでしょう。
しかしながら、管理組合として共同生活を行う必要があるマンションにおいて、必ずしも認められる訳ではないこともあります。
もし管理組合として、管理規約や細則で禁止のペットを飼っている人を見かけたら、どのような対応をすればよいのか、具体的に紹介します。
改めて管理規約や細則でペット飼育は禁止されている旨を通知する
判例でもあったとおり、ペット禁止のマンションにおいては、その対象ペットを飼うことは難しいということは分かりました。
しかしながら、ペットを飼っている側としてもしかしたら、管理規約や細則に記載の内容を知らないかもしれません。
そのような場合も想定されるので、改めてマンション内に掲示や、本人への個別の通知が必要でしょう。
原則的には、規約を守らないことによって、「区分所有者の共同の利益に反する行為」として、区分所有法違反に該当する可能性があります。
それでもペット飼育がなくならない場合は?
ペットは生き物ですから、飼い主にとっては、一度育て始めたペットは途中で見捨てる訳にはいかないでしょう。
そのため、「継続的に飼育している」状況も考えられます。
逆に、ペットを飼いたいけど、規約や細則で禁止されているから、飼うことができないと我慢している組合員もいるかもしれません。
そもそも決まりであることから、理事会としても一代限りを認めるか、それとも、あくまでも他の組合員に対する配慮をすることから、禁止を貫く必要があります。
例えば親戚の家や知人のペット愛好家に預けることや、ペット育成のために一時的に住み替えて貰う等の提案が必要でしょう。
逆にペット不可からペット可に変えることは出来るのか?
このような事例は筆者も聞いたことはないですが、そもそもペット不可の物件については、ペットが苦手で、ペットを飼う人がいない環境のため購入したことも考えられます。
また、日々のマンションでの生活において、ペットがいない生活が普通であり、上下階でペットが吠えたり走ったり、さらには共用部分でペット特有の臭いがしない、快適な環境が保たれているといえます。
このように、ペットがいない環境からペットが飼える環境となると、多くの区分所有者にとって問題となる事が想定されます。
加えて、管理規約でペット不可を定めている場合は、規約の変更は特別決議として、議決権と区分所有者数の各4分の3以上の賛成というハードルがあります。
そのため、このような考え方は現実的ではないと言えるかもしれません。
ただし、専有部分で飼育する、他の区分所有者に対する影響が極端に少ない小動物については、合意形成次第ではペット可としての可能性があるかもしれません。
規約にペット飼育禁止が入っていない場合から入れることになった場合
前章の最後の項目に、ペット不可を可に変えることができるのかについて考察しました。
逆に、ペット可もしくは、ペットの記載がない管理規約において、ペットの飼育を不可にすることは可能なのでしょうか?
この章では、ペット不可を入れることとなった場合に確認すべき事項を紹介します。
我慢の限界を超えているか
ペット可のマンションにとっては、ペットを飼育している人たちが複数いるでしょう。
一方で、ペットを飼っていない方も多数いるかもしれませんし、その中にはペットが苦手な方がいるかもしれません。
その人達にとって、ペットの鳴き声などの騒音や異臭、生理的嫌悪等の程度が
受忍限度(我慢の限界)
を超えるものであるのか、ないのかが検討されることとなります。
この我慢の限界が影響すると、何度も出てきていますが、
「区分所有者の共同の利益に反する行為」
に該当する可能性が出てくるかもしれません。
そのような場合においては、
管理組合として「ペット飼育不可」である
という検討を行う可能性も考えられます。
ペットの飼育が特別の影響を及ぼすものであるか
管理規約を変更する場合は、ペットを飼っている区分所有者にとって、
「特別の影響を及ぼすものであるか」
を考える必要がありそうです。
この特別の影響を及ぼすものの例としては、盲導犬を必要としている区分所有者は、生活するうえで盲導犬を禁止されると、生活に支障をきたすことから、規約変更において一定の影響があるものと捉えられそうです。
一方で…ペットは家族の一員という考え方も
動物愛護法によって、動物の虐待や不適切な飼育の防止などが定められ、違反した場合には罰則等もあることから、飼い主にとっての責務も重くなっています。
それもあり、ペットを飼う人にとっては、家族の一員として位置づけている方も非常に多いと考えられます。
そのため、ペット可となっていたマンションにおけるペットの飼育を
「共同の利益に反する行為」
と位置づけることに対する議論も、管理組合として十分行っていく必要があるといえそうです。
また、管理規約の変更要件は、前述したとおり、
総会における区分所有者数と議決権の各4分の3以上の特別決議
を得る必要があります。
従って、ペット容認派が多数のマンションであれば、規約改定にもっていくためには相応のハードルがあるといえるかもしれません。
管理組合としてもペットの飼育は注目すべき課題
今回はペットに関する課題について確認しました。
管理規約におけるペット飼育の可否に関わらず、ペットの飼育は管理組合にとって重要な課題と言えます。
また、双方の場合においてもルールは厳守する必要があります。
ペット不可の物件であれば、ペットを飼っている区分所有者がいた場合は、対策に苦労することも多いでしょう。
一方で、ペット可の物件であっても、各区分所有者は廊下やエレベーター等の共用部分は、他の区分所有者も利用することから、ペットの鳴き声や異臭への対応等、節度を持ちながら、ペットが苦手な方にも十分に配慮する必要があるでしょう。
※今回は判例をもとに一般的な内容を紹介しましたが、管理組合の個別で具体的な内容は弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします
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