【規約解説】マンション購入・売却後も安心!書類届出義務を徹底紹介

管理規約解説

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そういえば、505号室の方最近引っ越してきたようだけど、管理組合への届出は出ているのだろうか…?

また、

最近マンションに引っ越してきたけれど、管理組合に対する提出物はあるのだろうか…?

さらには、

今度転勤で一時的に今のマンションを離れることになったけど、売る訳ではないので特に届け出は不要だろうか…?

このような疑問を持つ、管理組合役員や区分所有者も非常に多いと思います。

管理組合の運営において、区分所有者からの届出は欠かせません。

しかし、届出義務に関する規定や手続きについて、明確な手続きがあるのかどうか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか…?

今回は、管理組合における【届出義務】について知りたい方においては必見の内容です。

管理規約第31条を、マンション管理士である筆者が徹底解説します。

また、区分所有権の取得・喪失、住所変更など、様々なケースにおける届出の手続きや書式案、さらには注意点まで詳しくご紹介します。

【規約解説】マンション購入・売却後も安心!書類届出義務を徹底紹介

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第31条「届出義務」を徹底解説!
・第31条「届出義務」の規定に対する補足・注意事項は?
・「届出義務」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第31条の条文から、「届出義務」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

第31条については、国土交通省が届出書の書式について紹介していますので、その文面を具体的に紹介します。

そして、最後の章では第31条「届出義務」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

標準管理規約第31条「届出義務」を徹底解説!

まず、最初の章では、標準管理規約第31条の条文をそのまま紹介します。

同条は2項からなるシンプルな条文です。

電磁的方法が利用可能ではない場合と、利用可能な場合双方の文面を、違いを含めて紹介します。

電磁的方法が利用可能ではない場合

最初は、電磁的方法が利用可能ではない場合です。

(届出義務)
第31条 新たに組合員の資格を取得し、又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない。
2 組合員は、前項で届け出た内容に変更がある場合には、直ちにその旨を書面により届け出なければならない。

マンションを購入した場合や売却した場合には、すぐに書面で管理組合に提出する必要があるという決まりです。

そして、届出した内容に変更があった場合にも、管理組合に届け出るというルールです。

このように、第31条は比較的シンプルな条文となっています。

電磁的方法が利用可能な場合

次に、電磁的方法が利用可能な場合です。

(届出義務)
第31条 新たに組合員の資格を取得し、又は喪失した者は、直ちにその旨を書面又は電磁的方法により管理組合に届け出なければならない。
2 組合員は、前項で届け出た内容に変更がある場合には、直ちにその旨を書面又は電磁的方法により届け出なければならない。

電磁的方法が可能な場合は、太線で示したとおり「又は電磁的方法」という文言が入っています。

これは、他の条文も同様の傾向にあります。

次章では、国土交通省が挙げている、第32条の規定に対する補足・注意事項について紹介します。

第31条「届出義務」の規定に対する補足・注意事項は?

この章では、第31条「届出義務」についての補足事項として、国土交通省が記載している内容を紹介します。

とりわけ、届出書類の内容について、紹介しています。

第1項「区分所有権取得・喪失届出書」の書式

第1項の届出書の書式は、以下の通りとして紹介されています。


※国土交通省の記載例をもとに筆者独自で作成

ちなみに、緊急連絡先は、氏名、届出者との関係及び電話番号等が考えられるとのことです。

第1項の届出書が必要な方は?

そして、どういう方が上記の届出書が必要であるか紹介されています。

具体的には、

・専有部分を第三者に譲渡等した場合
・相続によって区分所有権を取得した場合

に必要とされています。

また、遺産分割協議に時間を要する場合など、やむを得ない事情により直ちに届出を提出することができない場合も考えられます。

その場合は、管理組合の事務の円滑化の観点から、届出が行われるまでの当面の連絡先として、包括承継人(物件の相続をした被相続人を指す)の代表者等の連絡先を把握しておくことも考えられるとのことです。

FP1級資格者でもある筆者の観点から、遺産分割協議について少し補足します。

遺産分割協議とは、相続人全員で亡くなった方の遺産をどのように分割するかの手続きを協議することです。

この遺産分割協議は、民法上の法定相続人全員で行う必要があることから、整うまでにある程度の時間を要することとなります。

一方で、整わない場合は、家庭裁判所も関与する遺産分割調停を行う可能性も発生します。

そのため、決着がつくまでに相応の時間がかかる可能性も考えられるでしょう。

従って、管理組合としては前述の通り、届出が行われるまでの当面の連絡先としての被相続人の代表者の連絡先は把握しておくべきであると考えられます。

第2項「住所等変更届出書」の書式

続いて、住所等変更届出書の書式についても紹介します。


※国土交通省の記載例をもとに筆者独自で作成

こちらは、例えば

・区分所有者が転勤やその他事情でマンションに住まなくなる場合
・既にマンション内に住んでいない区分所有者が、マンション外に住んでいる住所からさらに移転する場合

などが想定されます。

長期不在にする場合の届出

第31項の補足事項として、区分所有者がが長期間不在にする場合も届出の規定を設けることも有効であるとしています。

理由としては、区分所有者に連絡がつかない場合を、規定を設けることによって未然に回避する必要があるためです。

なお、第2項及び上述の定めをした場合であっても、届出をしない区分所有者に対する総会招集手続については、第43条第2項ただし書又は第3項によることとなります。

これは、専有部分の所在地又は掲示板等の掲示に代替できるというものです。

第43条の内容については、以下

の記事で詳しく解説していますので、参考にして頂ければと思います。

また、次章ではマンション管理士である筆者の独自の観点から、気を付けておくべき事項を紹介します。

「届出義務」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

第31条の条文ならびに、補足事項として国土交通省が提示する届出書面や注意点を紹介しました。

それらを踏まえて、筆者が独自の視点から管理組合や区分所有者が気を付けておいた方がよい事項を紹介します。

管理組合としても新規区分所有者を把握する必要性

新たに区分所有者となられた方から、届出書を提出して貰う必要があります。

ただ、管理組合のルールが分からず、本人が気づかずに出し忘れなども考えられます。

管理員等が対応している管理組合であれば、その方が自宅を訪問して促すこともあるでしょう。

また、購入先の宅建業者から促すことも考えられます。

いずれの方法にせよ、管理組合としては、どのような方が区分所有者として住むようになったのか、把握しておくことが重要です。

どこに誰が住んでいるのか、分からない状態だけは避けたいものです。

区分所有者名簿との連携

第1項ならびに、第2項双方の届出書が提出された段階で、区分所有者の情報を最新にしておくことが望まれます。

そのためには、区分所有者名簿の更新が必要になります。

管理組合として更新しているのか、それとも、管理会社に委託して管理員等が更新しているのか、ケースはそれぞれ考えられますが、届出書の提出と共に、名簿情報を最新とすることが望まれます。

電磁的方法に備えてメールアドレスも入れておくようにする

前章の国土交通省として提示する届出書書式は、電磁的方法に対応していないと考えられます。

すなわち、メールアドレスや、チャットツール等のIDなどの連絡先です。

最近では、紙の書面ではなく、電磁的方法としてのデータでやり取りすることも多くなっています。

特に若い区分所有者は、紙の手間を嫌がりますので、このような対応も必要になるでしょう。

各届出書は個人情報であるため取り扱いに十分注意する

上記のリンクである、名簿作成と保管のルールである標準管理規約第64条の2の解説でも紹介しましたが、個人情報の取り扱いには十分注意する必要があります。

また、マンション管理組合は、法人または、そうでない権利能力なき社団であっても、個人情報取扱事業者に該当します。

そして、各種届出書は、個人情報が満載のため、本来なら届出書の書面には以下のような内容が織り込まれていることが望まれます。

当管理組合は、収集した個人情報を、以下の目的のために使用します。
・災害発生時における安否確認や連絡、必要な支援活動の実施
・総会、理事会等の招集通知、議決権行使に関する連絡、その他組合運営に関する情報の提供
・共用部分の維持管理、修繕に関する連絡
・その他、マンションの円滑な運営に必要な範囲での利用

など、使用目的を記載する必要があります。

改めて、あるべき届出書の書式は?

前項を踏まえた、筆者が考える届出書のあるべき書式としては以下の通りです。

追加しておいた方がよい箇所を赤字で示しました。

また、前述の通り電磁的方法による提出や連絡方法も考えられることから、それらに関する情報提供も記載すると良いでしょう。

一方で、個人情報の利用目的は、規約や細則等にも定められているかもしれません。

しかしながら、区分所有者は提出時にわざわざ規約を確認する訳ではないことから、届出書類にその旨を記載しておくことが丁寧であると考えられます。

区分所有権取得・喪失届出書の書式

まず、改訂版の区分所有権取得・喪失届出書の書式案です。


※国土交通省の記載例をもとに筆者独自で加筆して作成

住所等変更届出書の書式

続いて、住所等変更届出書の書式案です。


※国土交通省の記載例をもとに筆者独自で加筆して作成

それぞれの書面に個人情報の利用目的と、電磁的方法でもやり取りしやすいような工夫をした形です。

この方が情報を提供する区分所有者にとっても、個人情報を適切に管理しているとして安心感が生まれると思いますので、参考にして頂ければと思います。

管理組合、区分所有者双方のためにも届出は必要

今回は、標準管理規約第31条の「届出義務」について解説しました。

ほとんどの区分所有者の方は、マンションを購入して、引っ越してきたあとに管理組合または、管理会社などに自らの情報を届け出ていると思います。

自分自身の所在を明らかにしておくことは、区分所有者自らにとっても、いざとなって連絡を取る管理組合にとっても非常に重要なことです。

改めて、現在の管理組合の状況を確認する意味でも、今回の第31条のコラムを参考にして頂ければ幸いです。

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