【規約解説】修繕積立金の使い方5選!マンションの管理組合必見です

管理規約解説

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毎月修繕積立金が引かれるけど、どのような用途で使われるのだろうか…?

または、

管理費と修繕積立金とそれぞれあるけど、どういう区分けになっているのかな…?

さらには、

管理費と修繕積立金は分けて計上するってことだけど、どうしてかな…?

などなど、修繕積立金に関する話題や疑問点は事欠かないほどあるでしょう。

最近では日々修繕積立金に関するニュースが報じられる中で、管理組合や区分所有者にとっても、

うちのマンションの修繕積立金は大丈夫なのかな…?

ということで、非常に高い関心事として位置づけられているのではないでしょうか??

マンションの修繕積立金は、毎月支払っているけれど、一体何に使われているのか疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

実は、修繕積立金の使途は、標準管理規約第28条で厳しく定められており、計画的な修繕や不測の事態への対応など、5つの主な用途に限定されています。

そのような修繕積立金は、マンション管理組合として最も重要な資金と言えます。

この記事では、修繕積立金について、初心者にも分かりやすく解説していきます。管理規約の内容はもちろん、建替えやマンション敷地売却といった特殊なケースでの扱い方についても、マンション管理士の筆者が詳しく解説します。

  1. 【規約解説】修繕積立金の使い方5選!マンションの管理組合必見
  2. 標準管理規約第28条「修繕積立金」を徹底解説!
    1. 第1項 修繕積立金でできること 計画的な修繕から緊急時の対応まで
    2. 第2項 建替え時の修繕積立金取り崩し
    3. 第3項 マンション敷地売却時の修繕積立金取り崩し
    4. 第4項 借入の返済
    5. 第5項 管理費との区分経理
  3. 第28条「修繕積立金」の規定に対する補足・注意事項は?
    1. マンション価値維持のための計画的修繕の必要性
    2. 修繕積立基金と一時負担金の取り扱い
    3. マンション建替事業における建替えまでのプロセスの概要
      1. A.建替え決議までのプロセス
      2. B.建替え決議後のプロセス
    4. 建替えプロセスで調査が必要な段階は?
    5. 建替え決議後のプロセスで修繕積立金を取り崩す段階は?
    6. 建替えの推進には修繕積立金を取り崩すことができる
    7. マンション敷地売却事業のプロセスの概要
    8. 建替え等調査に必要な経費を管理費から支出できる
  4. 「修繕積立金」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
    1. 修繕積立金の使途は主に5つの用途に限られる
    2. 本来は修繕積立金の用途であるが管理費で使用しても良いのか?
    3. そもそも修繕積立金は十分であるか?
    4. 足らない!修繕積立金はどのように上げていくのか?
  5. 管理組合として最重要事項である修繕積立金

【規約解説】修繕積立金の使い方5選!マンションの管理組合必見

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第28条「修繕積立金」を徹底解説!
・第28条「修繕積立金」の規定に対する補足・注意事項は?
・「修繕積立金」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第28条の条文から、「修繕積立金」についてそのままの文面を紹介します。

第28条の条文も比較的長くなっていることから、各項目細かく区切りながら紹介したいと思います。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

第28条については、国土交通省が比較的ケアしている建替え関連について注意すべき箇所が多いことから、比較的細かい説明となっています。

それらについて、全て抜き出して紹介します。

そして、最後の章では第28条「修繕積立金」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

特に、第2項、第3項は、建て替え予定のないマンションには現時点では無縁の条文となりますので、読み飛ばして頂ければと思います。

標準管理規約第28条「修繕積立金」を徹底解説!

最初の章では、第28条「修繕積立金」の条文を紹介します。

各内容について、細かく定義されていますので、各項目に分けて紹介します。

青いPOINTマークがついているところが条文となります。

第1項 修繕積立金でできること 計画的な修繕から緊急時の対応まで

第1項については、修繕積立金がどのような用途で使用することができるのか、具体的に示されています。

(修繕積立金)
第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 敷地及び共用部分等の変更
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

簡単にまとめると、上記より、修繕積立金の使用が可能なのは

・一定年数の計画的修繕
・不測の事故や特別の事由での修繕
・敷地及び共用部分等の変更(大規模修繕工事は変更ではなく保存に当たる)
・建替え、マンション敷地売却の調査費用
・区分所有者全体の利益になる特別な管理

となります。

第2項 建替え時の修繕積立金取り崩し

次に、第2項は建替え検討時における計画や設計等で修繕積立金を取り崩すことができるという条文です。

2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
ただし、建替え不参加者に帰属する修繕積立金を除く額を限度として、取り崩す修繕積立金をカウントする必要があります。

第3項 マンション敷地売却時の修繕積立金取り崩し

マンションを壊して敷地を売却する場合も、第2項と同様に、計画立案で必要な場合は修繕積立金を取り崩すことができるとしています。

3 第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。

同様に、マンション敷地売却不参加者に帰属する修繕積立金を除く額を限度として、取り崩す修繕積立金をカウントする必要があります。

第4項 借入の返済

借入の返済原資として、修繕積立金を充てることができるという条文です。

4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。

くれぐれも管理費から充当しないように注意する必要があります。

第5項 管理費との区分経理

多くの管理組合では通常の経理処理となっていますが、区分所有者から徴収した管理費と修繕積立金は、別々の会計で区分して経理する必要があります。

5 修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。

もし、管理会社に委託していない自主管理等の管理組合で、管理費と修繕積立金が一緒になっている場合は、急ぎ区分経理を検討することが望まれます。

第28条「修繕積立金」の規定に対する補足・注意事項は?

続いて、第28条の「修繕積立金」については、とりわけ建替え関連について、国土交通省が細かな補足を行っています。

また、多くの管理組合は該当しないと考えられますが、第28条の補足・注意事項として紹介します。

マンション価値維持のための計画的修繕の必要性

まず、修繕積立金をなぜ積み立てるのか?の解説があります。具体的には、

対象マンションにおいて、経済的価値を適正に維持するためには、一定期間ごとに行う計画的な維持修繕工事が重要であると位置づけています。

そのため、工事に必要な修繕積立金を必ず積み立てることとして、第28条は構成されています。

修繕積立基金と一時負担金の取り扱い

次に、本来の修繕積立金ではない資金の徴収についての取り扱いについて触れています。

分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に充当するため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合があります。

また、既存の修繕積立金の額が修繕費用に不足することによって、一時負担金が区分所有者から徴収される場合もあります。

これらについては、修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべきものであるとしています。

マンション建替事業における建替えまでのプロセスの概要

修繕積立金とはやや外れますが、建替えまでのプロセスの概要を紹介しています。

具体的には、円滑化法の制定を踏まえ作成された国土交通省の「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」(令和4年3月改訂版)によれば、以下のとおりであるとしています。

A.建替え決議までのプロセス

(ア)準備段階:一部の区分所有者から建替えの発意がなされ、それに賛同する有志により、建替えを提起するための基礎的な検討が行われる段階。「管理組合として建替えの検討を行うことの合意を得ること」を目標とする。
(イ)検討段階:管理組合として、修繕・改修との比較等による建替えの必要性、建替えの構想について検討する段階。「管理組合として、建替えを必要として計画することの合意を得ること」を目標とする。
(ウ)計画段階:管理組合として、各区分所有者の合意形成を図りながら、建替えの計画を本格的に検討する段階。「建替え計画を策定するともに、それを前提とした建替え決議を得ること」を目標とする。

B.建替え決議後のプロセス

(ア)建替組合の設立段階:定款及び事業計画を定め、都道府県知事等の認可を受けて建替組合を設立する段階。
(イ)権利変換段階:権利変換計画を策定し、同計画に関し都道府県知事等の認可を受け、権利変換を行う段階。
(ウ)工事実施段階:建替え工事を施工し、工事完了時にマンション建替事業に係る清算を行う段階。
(エ)再入居と新管理組合の設立段階:新マンションに入居し、新マンションの管理組合が発足する段階。

建替えプロセスで調査が必要な段階は?

具体的に建替えプロセスの中で費用が掛かる調査が必要な段階がどこであるか、示されています。

A(イ)「検討段階」及び(ウ)「計画段階」においては、管理組合が建替えの検討のため、調査を実施する必要があるとしています。

また、調査の主な内容は、再建マンションの設計概要、マンションの取壊し及び再建マンションの建築に要する費用の概算額やその費用分担、再建マンションの区分所有権の帰属に関する事項等が該当します。

建替え決議後のプロセスで修繕積立金を取り崩す段階は?

建替え決議後のプロセスのB(ア)の段階においても、修繕積立金を取り崩すことができるとしています。

それについて、第2項で示されています。

建替えの推進には修繕積立金を取り崩すことができる

そして、前述で紹介した建替えプロセスに寄らなくても、

・円滑化法第45条のマンション建替事業の認可に基づく建替え
・区分所有者の全員合意に基づく任意の建替えを推進する場合(いわゆる民法上の建替え)

であっても、第1項及び第2項、又は第2項と同様の方法によって、修繕積立金を取り崩すことは可能であるとしています。

ただし、建替事業として組成される建替組合ではない任意の組織で実施する場合、その設立時期について管理組合内で共通認識を得ておくことが必要であると補足しています。

マンション敷地売却事業のプロセスの概要

さらに、マンション敷地売却におけるプロセスでも補足があります。

具体的には、円滑化法に基づくマンション敷地売却組合によるマンション敷地売却事業のプロセスの概要は、平成26年の円滑化法の改正を踏まえ作成された国土交通省の「耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン」を参考として実施すべきとしています。

平成26年以降、改訂がなされていないことから、以降、当該事例がさほどないのかとも考えられます。

また、この場合にも、建替えの場合と同様に、第1項及び第3項に基づき、必要に応じて修繕積立金を取り崩すことは可能であるとしています。

建替え等調査に必要な経費を管理費から支出できる

補足事項の最後として、建替え等に係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨を管理規約に規定することもできるとしています。

「修繕積立金」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

とりわけ前章では、建替えやマンション敷地売却に対する、補足や注意点が非常に多く示されていました。

また、国土交通省としても、これらが今後多数発生することを想定して、修繕積立金の取り崩し方法を細かく説明しているものと考えられます。

一方で、分譲マンションにおいて、建替えや敷地売却をしている所はまだまだ少数であり、大半の管理組合は、修繕積立金を劣化のための修繕に当てています。

今後は建替えや敷地売却が出てくることも想定されるものの、現状では修繕にフォーカスして修繕積立金の取り崩しで気を付けておきたいことを紹介します。

修繕積立金の使途は主に5つの用途に限られる

管理組合にとっては、ここがすべてのような気もします。

また、冒頭の条文第1項で紹介しましたが、修繕積立金の使途は具体的に

・一定年数の計画的修繕
・不測の事故や特別の事由での修繕
・敷地及び共用部分等の変更(大規模修繕工事は変更ではなく保存に当たる)
・建替え、マンション敷地売却の調査費用
・区分所有者全体の利益になる特別な管理

に限られます。

すなわち、マンションの価値向上のための修繕や、建替え、マンション敷地売却等の特別な事由によるものである必要があります。

過去「積立金」として保険料を充当できるとしていたものもあったようです。

参考:マンション管理業協会Q&A 複数年契約の火災保険加入のため、修繕積立金から支出したいのですが可能ですか。

繰り返しになりますが、上記5項目以外に修繕積立金を充てるのは、望ましくないと考えられます。

さらに、国の法律に従って各自治体が実施している管理計画認定制度では、上記以外の資金使途がある場合は、認定が下りません。

改めて、管理組合で管理規約を変更し、費用計上を適切に行い、事業年度の進捗を見ることとなります。

そして、費用が5項目に該当するかどうかは、管理組合内でも良く確認することが望まれます。

本来は修繕積立金の用途であるが管理費で使用しても良いのか?

本来管理費で支出すべきもの→修繕積立金から支出

は厳禁ですが、逆の

修繕積立金で支出すべきもの→管理費から支出

は果たしてよいのかという点です。

管理組合によっては、余剰の管理費は修繕積立金に振り替えて、修繕積立金を充実させることが多いでしょう。

このようなことから、「余剰があれば」問題ないと考えられます。

具体的に考えられる事項としては、

・長期修繕計画の作成費用
・管理員室や集会室等の共用部分のリフォームやエアコンの取替
・非常階段の劣化による塗装

などは、管理費から充当されることもあります。

一方で、これらは長期修繕計画に含まれているとして計画的修繕の扱いから、修繕積立金からの支出の場合もあるでしょう。

また、この件は、管理費から支出してよいかどうか、日々のマンション管理に関する費用の支払いと共に、運転資金とも照らし合わせながら検討する必要があります。

詳しくは、前回紹介した第27条「管理費」

にも細かく記載していますので、合わせてご参照ください。

そもそも修繕積立金は十分であるか?

標準管理規約はマンションのルールを決める内容であるため、補足事項含めて修繕積立金が不足する場合の対策は提示されていません。

しかしながら、管理組合としては、様々な工夫によって、修繕積立金を十分なものにすべく、対応していく必要があります。

また、修繕積立金の使途としては、

・マンションを計画的に修繕することによって長く持たせていく
・将来建替えて新しいマンションにする
・将来マンションを壊して敷地を売却する

というケースがあることを紹介しました。

どの場合であっても工事費用がかかることから、修繕積立金を十分準備しておくことが必須となります。

そのため、現状の修繕積立金が十分かどうか、改めて確認をする必要があります。

足らない!修繕積立金はどのように上げていくのか?

前項のリンクでは、修繕積立金がどれぐらいの水準であれば望ましいか紹介しています。

対して、管理組合として修繕積立金が足らない場合は様々な対策を講じる必要があります。

また、具体的に打つべき対策は早ければ早いほど良いと考えられます。

そのためには、管理組合の事情を考えながら、合意形成を行っていくことが非常に重要になってきます。

具体策は各管理組合の事情によりますので、考え方の切り口を紹介します。

管理組合として最重要事項である修繕積立金

今回は、管理組合として最も重要な位置づけとなる修繕積立金について、標準管理規約第28条の条文を紹介しました。

また筆者も、管理組合のコンサルティングを実施する場合、各マンションの規約の中でも、必ずこの第28条を細かく確認します。

原則、最新版の標準管理規約の文面と同様、またはそのニュアンスになっているかどうかが非常に重要と言えます。

修繕積立金について他の用途に使用できる文面が入っていないか、管理組合としても改めて十分確認されることが望まれます。

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