住戸にある窓サッシにカビが多くなってしまったので、良いものに変えることができるのだろうか…?
また、
窓ガラスが割れてしまったため、変更しなければならなくなったけど、どうすればいいのだろうか…
さらには、
管理組合として、窓サッシの改修を考えているのだけれど、どのような対策を講じればよいのだろうか…
このような疑問を持っている区分所有者や管理組合も多いと思います。
確かに、一定の年数が経過したマンションでは、窓サッシの改修が検討される所かもしれません。
また、なんらかの事故によって、窓ガラスが割れてしまったり、ひびが入ってしまって交換が必要になってしまった区分所有者も多いでしょう。
今回は、このような窓ガラスや窓サッシの記載がある、標準管理規約第21条について紹介します。
【規約解説】管理組合、区分所有者共に確認したい窓ガラス改修ルール
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第22条「窓ガラス等の改良」の補足・注意事項は?
・「窓ガラス等の改良」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず初めに、標準管理規約第22条の条文を参考にしながら、窓ガラス等の改良に関する内容を紹介します。
続いて、第22条には、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項があります。
国土交通省が考えるそれらのコメントを紹介します。
さらに、窓ガラス等の改良には、区分所有者がルールを守って実施する必要があります。
また、窓ガラスや窓サッシは、区分所有者個別の持ち物(専有部分)ではなく、管理組合の持ち物である共用部分に該当します。
そのため、管理組合として気を付けておかなければならない点についても紹介します。
標準管理規約第22条「窓ガラス等の改良」の紹介
最初に、標準管理規約第22条「窓ガラス等の改良」の条文について紹介します。
電磁的方法が利用可能ではない場合
電磁的方法が利用可能でない場合の第22条の内容です。
第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
2 区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。
3 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「第22条第2項の工事」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事」とあるのは「第22条第2項の承認を受けた工事」と読み替えるものとする。
電磁的方法が利用可能な場合
メールでの連絡等、電磁的方法で可能な場合は、第2項で以下の強調箇所が加えられています。
第1項と第3項については、電磁的方法が利用可能ではない場合の文面と同じとなっています。
第22条「窓ガラス等の改良」各項の紹介
前項のとおり、第22条には3項あります。
それぞれの文面を確認してみましょう。
第1項 管理組合における計画修繕
まず、窓ガラス等の改良は、管理組合における計画修繕が必要であるという点です。
窓ガラス等の改良における、防犯、防音、断熱等の性能向上においては、管理組合の責任と負担で、計画的に実施することとなります。
第2項 区分所有者による工事の実施
管理組合における窓ガラス等の計画修繕はいつになるか分からない場合があります。
そのため、急遽起こってしまった窓ガラスの破損等、区分所有者によって対応すべき事項も考えられます。
それが第2項に定められています。
この場合は、区分所有者の責任と費用負担において実施することとなります。
第3項 第22条の補足事項
第22条の補足事項が第3項に挙がっています。
区分所有者の責任と負担で改良する場合は、専有部分のリフォームと同様に、第17条の該当項
2項:設計図、仕様書等の提出
3項:理事会の決議
5項:修繕箇所への立入り
6項:区分所有者の責任
が準用されることとなります。
また、条項番号においても、第22条に該当する工事と読み替える必要があります。
第22条「窓ガラス等の改良」の補足・注意事項は?
第22条においても、補足・注意事項が8項目紹介されています。
国土交通省が注意点として挙げる事項などを含めて、確認していきます。
窓枠、窓ガラス及び玄関扉は共用部分
改めて、第7条(専有部分の範囲)第2項や第8条(共用部分の範囲)から、窓枠、窓ガラス及び玄関扉の開口部(以下、同様)と言われる所について、共用部分としての確認があります。
それぞれの条項においても、共用部分であることが確認でき、開口部が共用部分であることが念押しされています。
専有部分の中にあるため、混同しやすい形もあるのかと考えられます。
共用部分の変更における決議の確認
「その形状又は効用の…」については、以下の記事
の中で、「特別決議の議案とその事例」という項目で詳細を紹介していますので、合わせてご参照ください。
開口部の改良工事の計画性
管理組合が実施する、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上のため行われる開口部の改良工事については、原則として、他の共用部分と同様に計画修繕の対象とすべき旨を規定しています。
「他の共用部分と同様に計画修繕」
という点では、計画的に実施される大規模修繕工事を指しているものと考えられます。
第2項による区分所有者が独自で実施する場合の確認
開口部の改良工事については、
・結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上
等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ます。
しかしながら、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合も考えられます。
よって、第17条「専有部分の修繕等」における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう規定しています。
また、第17条同様に、承認の申請先等は理事長ですが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものとなります。
第17条「専有部分の修繕等」と同様の手続きを踏む理由
区分所有者が独自に開口部の修繕を行う場合の手続きの補足です。
マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられません。
すなわち、同一の仕様による窓ガラスや窓サッシ、玄関ドアが採用されています。
また、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等に問題のないものは、施工の都度総会の決議を求めるまでもないというのが国土交通省の見解です。
そのため、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とするとしています。
さらに、承認申請の対象範囲、審査する内容等の考え方については、第17条「専有部分の修繕等」でも紹介した、標準管理規約別添2(標準管理規約単棟型のPDFの84枚目)に記載があります。
開口部の改良工事の具体例は?
どのような工事が「専有部分の修繕等」に該当するか例示されています。
具体的には、
・既設のサッシへの内窓又は外窓の増設
が考えられるとのことです。
細則に定めることの必要性
開口部の具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、管理規約以外にも、細則に別途定めることが求められています。
その際、上述の別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましいとされています。
「窓ガラス等の改良」に関する申請書や承認書の様式
区分所有者が独自で「窓ガラス等の改良」を行う場合には、前述のとおり、第17条「専有部分の修繕等」に従って実施する必要があります。
その際には、工事のための申請書と、理事長からの承認書を書面で発行して貰う必要があります。
書面の様式については、専有部分の修繕に関する様式に準じて定めるものとすることから、第17条の補足コメントで確認する必要があります。
以下
の「申請書及び承認書の様式例」で紹介していますので、合わせてご参照ください。
「窓ガラス等の改良」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
第22条の「窓ガラス等の改良」の内容ならびにその補足・注意事項を踏まえて、そこに掲載されている内容に付加する形でまとめます。
また、筆者が窓サッシ等の改良に携わった例も含めて、管理組合や区分所有者が気を付けておきたい事項を紹介します。
こちら
にも詳しく紹介していますので、合わせてご参照ください。
区分所有者独自で修繕し、将来的に管理組合でも計画修繕を行う場合
区分所有者が独自で窓ガラス等の開口部を修繕したり、中古物件で購入時に不動産会社が事前に修繕していた場合もあるかもしれません。
一方で、近い将来、管理組合で計画修繕を予定していることも考えられます。
以下の通り、国土交通省が長期修繕計画ガイドラインで示している修繕時期のイメージは34年~38年で窓サッシや玄関ドア等を修繕する必要があるとしています。
特に経年マンションにおいては、「自分で交換するか、管理組合が交換するか」の検討もすることとなると考えられます。
区分所有者にとってはかなりの負担になることから、やむを得ない事情がない限りは実施しないことが多いですが、筆者の経験上も実施を検討している区分所有者は、管理組合と整合を取りながら検討する必要があるでしょう。
専有部分のリフォーム時に窓ガラス等の改良を既に実施してしまった
前項のとおり、区分所有者が独自で窓ガラス等の開口部を修繕したり、中古物件で購入時に不動産会社が事前に修繕していた場合についてです。
管理組合が全戸で窓ガラス等を改良することを検討する場合に、すでに交換している住戸もあるかもしれません。
窓ガラス等は管理組合の持ち物であることから、管理組合が窓サッシの取替工事を実施するとしても、区分所有者が持ち出しすることはありません。
しかしながら、区分所有者としてはやむを得ない事情で自費において直近で交換したにも関わらず、再度変更するとなると、管理組合や社会的なコストや資源が無駄になる可能性があります。
そのため、このようなイレギュラーが発生する場合は、管理組合としてもその住戸の現状を把握しつつ、改良の可否を検討する必要があるでしょう。
区分所有者独自で改良を行っても「共用部分」である
自費で窓サッシを交換したので、これは自分のものだ
と考えがちです。
自費で交換したとしても、管理規約でマンションの共用部分として定められている場合は、管理組合の共用部分となります。
共用部分であっても区分所有者に使用が限定されている、「専用使用部分」は、区分所有者の管理のもとで使用する必要があります。
管理には、「使用上の修繕」も含まれており、自費で修繕したとしても管理組合から補填されるというのも管理組合の事情によるでしょう。
窓サッシ等の仕様を合わせる
窓サッシや玄関ドアは、マンションの外観を配慮するために全戸で統一する必要があります。
メーカーや仕様も同様のものに合わせていく必要がありますが、管理組合に先んじて変更をする場合は、管理組合とどのような仕様のものにすることが望ましいのか、整合を取っておく必要があります。
また、管理組合としても、新たに改良する窓サッシ等について技術的に問題がないかどうか、専門家への確認を要する所も出てくるでしょう。
このように、区分所有者が独自で変更を考えている場合であっても、管理組合の関与が必要となる可能性があります。
窓ガラス等の開口部は区分所有者と管理組合での整合が必要
普段何気なく使っている窓やドアは、一般的には共有部分として管理組合の持ち物になります。
一方で、時間が経つと劣化するため、計画的に修繕する必要がある性質のものです。
そのため、区分所有者が変えたいと言っても、管理組合として変えるタイミングにあるかどうかは整合が付けづらい点もあります。
したがって、変更を検討する区分所有者としても、管理組合と確認・整合を取りながら考えていくことが非常に重要であると言えます。
※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版
を確認されることをお勧めします。
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