マンションの共用部分や敷地は、すべての住民が快適に利用できるよう、適切なルールのもとで管理される必要があります。特に、マンション標準管理規約第13条では、「敷地及び共用部分等の用法」について明確に定められており、居住者が守るべき基本ルールとなっています。
しかし、「通常の用法に従って使用」とは具体的にどのようなことを指すのか?
「どこまでが許容範囲で、何がNGなのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、 マンション標準管理規約第13条の内容や国土交通省の補足説明をもとに、管理組合や区分所有者が知っておくべきポイントを、現役マンション管理士が分かりやすく解説します。さらに、実際の運用に役立つ具体例や、 ルール違反を防ぐための管理組合の対応策 についても詳しく紹介します。
共用部分のルールを正しく理解し、トラブルを未然に防ぐために、ぜひ最後までご覧ください。
【規約解説】マンション標準管理規約第13条とは?共用部分のルールと注意点を解説
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・国土交通省の見解|マンション標準管理規約第13条の補足説明
・「敷地及び共用部分等の用法」に関する管理組合・区分所有者の注意点
まず、最初の章では標準管理規約第13条の条文から「敷地及び共用部分等の用法」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第13条「敷地及び共用部分等の用法」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第13条とは?ポイントを解説
まず、第13条の条文を紹介します。
第13条 区分所有者は、敷地及び共用部分等をそれぞれの通常の用法に従って使用しなければならない。
第13条の意味とは?
マンション標準管理規約第13条は、「マンションの敷地や共用部分は、本来の目的に沿った使い方をしましょう」という基本ルールを定めています。
つまり、
共用部分(廊下・エントランス・エレベーターなど):通行や建物の維持管理のために使用する
こうしたエリアを、ルールに反して個人的な目的で使用することはできません。
具体例:どんな行為がNG?
「通常の用法に従って使用」とはどういうことか、具体的なNG例を挙げます。
エントランスを通行する
エレベーターを移動のために使う
廊下に私物(自転車・植木鉢・荷物等)を置く(通行の妨げになる)
駐車場を無断で他人に貸す(管理規約や使用細則に反する場合がある)
共用廊下でバーベキューや喫煙をする(管理規約や使用細則に反する)
このような使い方は、マンションの快適な生活環境を損なうため、管理組合が注意や指導を行うことになります。
このルールが重要な理由
マンションは多くの人が共同で生活する空間です。
「共用部分を正しく使う」=「住みやすい環境を維持する」
ことにつながります。
また、マンションの敷地や共用部分の適切な使用は、
✅トラブル防止(不要な住民同士の対立を防ぐ)
✅資産価値の維持(管理が行き届いたマンションは評価が高くなる)
といったメリットがあります。
国土交通省の見解|第13条の補足説明と管理組合の役割
マンション標準管理規約第13条では、「敷地や共用部分を本来の目的に沿って使う」 ことが求められています。しかし、具体的にどのように使うべきかは、この条文だけでははっきりしません。
例えば、「自転車は、一階の○○に置きます。それ以外の場所に置いてはいけません。」
そこで国土交通省は、上記の通りに「通常の用法の具体的内容は、管理組合が使用細則で定めること」 を補足しています。これは、マンションごとに異なる事情を考慮し、住民が共通ルールを決めておくべきだという考え方です。
ちなみに、○○は実際に国土交通省が実際に文面の中で表示しています。
この点は管理組合で検討して任意で入れることとなります。
以下、筆者の解説付きで紹介します。
「使用細則」でルールを決める理由とは?
マンションの共用部分の使い方は、建物の構造や住民のライフスタイルによって異なります。例えば、
✅ 駐輪スペースが限られているマンション → 「1世帯につき自転車1台まで」などの制限を設ける
このように、マンションごとにルールを細かく設定しなければ、トラブルの原因になります。
使用細則の具体例
たとえば、次のようなルールを「使用細則」として定めることができます。
駐輪場のルール
🚲 「自転車は1階の○○に置く。それ以外の場所に置いてはいけません。」
🔹 駐輪スペースが決まっていれば、廊下やエントランスに無秩序に自転車が置かれるのを防げます。
ゴミ置き場のルール
🗑️ 「ゴミは○曜日の朝8時までに、○○のゴミ置き場に出してください。」
🔹 これを明確にしておくことで、ゴミ出しのルールが守られ、清潔な環境を維持できます。
エントランス・共用廊下の利用ルール
🚪 「共用廊下に私物を置くことは禁止する。」
🔹 物を放置すると、避難経路の確保ができず、災害時に危険が生じるため。
「使用細則」の重要性と管理組合の役割
✅ 細かいルールがあることで、トラブルを未然に防げる
✅ 管理規約に沿ったルールなので、強制力があり、守らない場合の対応がしやすい
マンションの管理組合は、住民の意見を聞きながら使用細則を作り、必要に応じて見直すことが重要です。
「敷地及び共用部分等の用法」管理組合・区分所有者の注意点
最後の章では、マンション管理士である筆者独自の視点から、「敷地及び共用部分等の用法」において、管理組合や区分所有者において注意しておいた方が良い点を紹介します。
未然にトラブルを防ぐための対策を検討する
住民同士のトラブルを防ぐために、管理組合として以下の対応が考えられます。
✅定期的な注意喚起(掲示板や回覧で共有部分の使用ルールを周知)
✅ルール違反があった場合の対応を決める(注意→指導→最終的には罰則の検討)
これらの対応を講じ、住民に周知することによって、守るべきルールを徹底させることが重要です。
ルール変更は総会承認で行う
管理組合のルール変更は、総会承認事項で周知徹底することが望まれます。
また、
✅使用細則の変更は普通決議事項
となっている管理組合が多いと考えられます。
とりわけ、特別決議事項は、区分所有者数及び議決権の4分の3以上の合意が必要であるため、多くの区分所有者の賛同が必要となります。
ルール違反が発生したときの対応を明確にする
13条に違反する行為(共用部分の私物放置、無断駐輪など)があった場合、どのように対応するのかを事前に決めておくことが重要です。
✅ 改善されない場合は、管理組合として対応を協議する
✅ 最終的に、悪質な場合は法的措置を検討
「ルール違反に対してどう対応するか」が不明確だと、住民同士のトラブルが深刻化し、管理組合が混乱する原因になります。
ルールを厳しくしすぎない(柔軟な対応も考慮)
厳格すぎるルールは、住民の反発を招くことがあります。例えば、駐輪場のルールを「1世帯1台」と決めても、実際には2台必要な家庭もあるかもしれません。
✅ 住民の意見を適宜ヒアリングし、柔軟に対応する
✅ 緩和が可能な場合は、管理組合で議論して改善を検討する
「管理が厳しすぎて住みづらい」と感じると、居住者の満足度が下がり、結果的にマンションの評価や資産価値にも影響を与える可能性があります。
今では、SNSやインターネットでもマンションの評判が広がりやすいことから、ルール作りについては気を遣う必要があるかもしれません。
トラブルが多発する場合は管理会社と協力する
もし、繰り返しルール違反が発生し、管理組合だけでは対応が難しい場合は、管理員の協力や、管理会社と連携するのも一つの方法です。
✅ 定期巡回時にルール違反のチェックをしてもらう
✅ ルール変更の際、管理会社のアドバイスをもらう
管理会社をうまく活用することで、管理組合の負担を減らしながら、マンション全体のルール運営をスムーズにできます。
トラブル防止とルール変更のポイント|管理組合の柔軟な運用が鍵
今回はマンション標準管理規約第13条から、「敷地及び共用部分等の用法」について」紹介しました。
国土交通省の補足にもあったとおり、「通常の用法」の具体的な内容を管理組合が使用細則で決めるべきとされています。これは、マンションごとに異なる事情に応じて、明確なルールを設けることで、快適で安全な住環境を守るためです。
管理組合としては、共用部分の使い方に関するトラブルを防ぐために、使用細則を作成・運用することが重要です。住民にとっても、明確なルールがあれば安心して生活できるため、管理組合は積極的に周知し、ルールの遵守を促す必要があるでしょう。
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