【YouTube解説付き】米国ニューヨークの分譲マンション(コンドミニアム)事情:歴史・法律・管理組合制度を徹底解説

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ニューヨーク市の高層マンション群。近年、米国の大都市圏では分譲マンション(コンドミニアム)が急増しており、その歴史や法制度、管理組合のあり方は日本でも関心が高まっています。

本記事では、米国(特にニューヨーク州)のコンドミニアム成立の経緯、関連法(Condominium Act)の概要、管理規約・管理組合の仕組み、さらに日本・他国との比較をわかりやすく解説します。

ちなみに、当コラムの横長のヘッダー写真(最上部の写真)はニューヨーク・マンハッタンのイースト・ヴィレッジにあるSt. Mark’s Place(セント・マークス・プレイス)96番地と98番地の間の建物で、Led Zeppelinのアルバム”Physical Graffiti”のジャケットにもなっています。

コンドミニアムの起源と米国での発展

コンドミニアム(区分所有形態、日本でいう分譲マンション)の考え方はまず米自治領プエルトリコで1958年に法制化され、これが米国本土にも波及しました。

1960年にはユタ州で本土初のコンドミニアム建築が誕生し、1961年の住宅法改正(FHA Section 234)で連邦住宅融資庁が分譲マンション向けローンを保証できるようになったことから、以降各州でコンドミニアム法の制定が進みました。

ニューヨーク州では1964年に州法(不動産法Article 9-B)がコンドミニアム制度を導入し、翌1965年にはマンハッタンに初の分譲マンション「St. Tropez」が完成しました。

その後、ニューヨーク市内(マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスなど)では1970年代以降に分譲マンションが急増し、都市住宅の重要な選択肢となっていきました。

ちなみに、ニューヨーク市における最初の近代的なアパートメントハウスは、1869年に完成したという記録があります。当初は「French flats」と呼ばれ、1880年代以降に“apartment”という呼称に変わっていきました。

その後、1880〜85年には中〜上流階級向けアパートの急増が急増します。例えば「The Dakota」や「The Apthorp」など、高級感ある賃貸マンションが続々と建設され、1880年代には90件以上の賃貸アパートが開発されました(米国で文化財登録されているニューヨークのコンドミニアムThe Apthorpの歴史より)。

その後、1960年代に分譲マンションという考え方が登場するまでは、賃貸マンションが一般的だったようです。

ニューヨーク州のコンドミニアム法(Condominium Act)と管理規約

ニューヨーク州の分譲マンションは、州法Article 9-B(Condominium Act)で統率されます。この法律は「ユニット」(専有部分)と「共用部分」を定義し、マンションを成立させるための要件(例えばマスターディードの登記など)を定めています。

マンションは開発業者が作成したマスターディード(Declaration of Condominium)を所在郡に提出・登記することで成立し、その時点で買主はマンション管理組合の構成員となります。

法律の内容

Condominium Actには、ユニットの定義や共用部分の扱い、管理組合運営の基本ルールなどが詳細に規定されています。

例えば、ユニットと共用部分の境界、買主の取得権利と義務、予算・会計処理、総会の招集・議決方法などが含まれます。

これらは日本の区分所有法における規定に相当し、コンドミニアム運営の法的枠組みを提供します。

宣言書・管理規約

マスターディード(登記された宣言書)には、ユニットごとの専有面積比率や共用部分に関する制限事項が記載され、管理組合の権限(理事会設置の有無やその権限)が明示されます。

併せて、組合の「管理規約(Bylaws)」が定められ、総会や理事会の開催手続き、役員の任期・選出方法、管理費の徴収方法など、日常的な運営ルールが規定されます。

Condominium Act自身も、宣言書に最低限記載すべき事項(ユニットの範囲、共用部分の共有持分、管理組合の組織など)を定めており、管理規約はこれを踏まえて作られます。

一般に、管理規約は法的拘束力を持つ文書として登記され、日本の管理規約同様に、組合の構成員(区分所有者)全員が遵守します。

管理組合の組織と役割

アメリカのコンドミニアムでは、全てのユニット所有者が自動的に管理組合(Homeowners Association)の構成員となります。これは日本の区分所有法第三条にある

(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

と同様の考え方であり、分譲マンションに所属すると強制的に管理組合員となります。

管理組合は協会や非営利法人として組織されることが多く、所有者の共同意思決定機関となります。これも日本でいう「権利能力なき社団」または、法人化された管理組合と同様の位置づけです。

組合運営は所有者による理事会(Board of Directors)に委ねられ、実務は理事会の役員が行います。理事会の主要な役職例は以下の通りで、一般的に選挙で選出されたり理事同士で互選されたりします:

  • 理事長 (President): 組合を代表し、会議を主宰して組合活動全般を統括します。
  • 副理事長 (Vice President): 理事長を補佐し、不在時にはその職務を代行します。
  • 会計 (Treasurer): 組合の予算管理・会計処理を担当し、管理費や修繕積立金の徴収・支払を管理します。
  • 書記 (Secretary): 会議の議事録作成や文書管理、総会案内の送付などを担当します。
  • その他理事: 理事会の一員として意思決定に参加し、各種委員会(修繕、コミュニティ活動など)の支援を行います。

これらもほぼ日本の管理組合と同様の形態と言えるでしょう。

例えば、ある専門家は「HOAの理事会は通常、理事長、副理事長、会計、書記などの役員で構成される」と説明しています。実務上、多くのマンション管理組合では、これらの役員のほかに外部の管理会社(プロパティマネジメント会社)を委託し、日常管理や会計処理、集金業務などを任せるケースも一般的です。

米国法では「監事」に相当する役職は法的に定められておらず、会計監査は理事会自らまたは外部会計士によって行われることが多い点も、日本と異なる特徴です。内部だけで完結させずに、外部の客観的な立場からのチェック機能が聞いているのは、経営組織でも良くある通りの米国ならではと言えるのではないでしょうか。

日本・米国・ドイツにおける管理組合の比較

改めて、日本と米国、ドイツの例を見てみましょう。

日本の管理組合

前章のとおり、日本の区分所有法(建物区分所有法)でも、複数所有者は全員で管理組合を構成し得ると規定されています。規約の設定や理事の選任、管理会社の活用なども可能で、アメリカと基本的な仕組みは似ています。

ただし日本では、理事会役員(理事長・理事)に加えて監事を置くことが法で想定されています。また、実務として多くのマンション管理組合では理事の就任を輪番制(くじや順番で交代)で決める慣行があり、理事長など役職も交代で担当します。

これに対し米国では役員は所有者の投票で選出され、任期を定めて継続する方式が一般的です。

米国の管理組合

先述の通り、米国では全所有者が協会のメンバーとなり、理事会において物件の維持管理や会計運営を行います。

理事長や会計担当などの役員が選ばれ、管理規約に基づいて総会・理事会を開催して議案を決定します。会計監査の法的規定はないものの、州法や規約で監査制度を定めたり、専門業者に委託して会計の透明性を確保する例もあります。

ドイツの管理組合

たとえばドイツの住宅所有法(WEG)でも、”Wohnungseigentümergemeinschaft (WEG)”と呼ばれる所有者協会が設けられます。ここでも全所有者が協会を構成し、少なくとも年1回は所有者総会(Ordinary Owners’ Meeting)を開いて管理計画や予算を承認します。

このように、多くの国では「所有者協会+理事会」という枠組みで分譲マンションを管理しています。

3つの国の管理組合のまとめ

上記を含めた、3つの国の管理組合組織は、以下のように整理することができます。

項目 米国(ニューヨーク) 日本 ドイツ
法律 不動産法Article 9-B(コンドミニアム法) 建物の区分所有等に関する法律 Wohnungseigentumsgesetz (WEG)
管理組合の構成 全所有者がHOAメンバー、理事会で運営 全所有者が管理組合メンバー、理事会で運営 全所有者が所有者協会メンバー、総会で運営
総会開催頻度 必要に応じて、年1回以上が一般的 年1回以上義務付け 年1回以上義務付け
投票権 1ユニット1票(場合によっては面積比例) 所有者と専有面積の50%以上の同意が必要 アパート面積に応じた投票権
監事の存在 法的に定められていない 法で想定されている 法的に規定なし
管理会社の利用 一般的(日常管理や会計処理) 一般的(日常管理委託) 管理者(Verwalter)が日常管理を担当

※筆者独自調べ

まとめ~米国も日本と似た管理組合を持っている

米国(特にニューヨーク州)では、1960年代以降に法制化されたコンドミニアム制度によって分譲マンションが急速に普及しました。所有者はすべて管理組合のメンバーとなり、宣言書と管理規約に基づいて組合を運営します。

理事会には理事長をはじめとする役員が置かれ、総会で重要事項を決定します。この仕組みは日本のマンション管理組合と類似しており、多くの点で共通点があります。

法的要件や慣行の違いはありますが、基本的には所有者が協力して共用部分を管理・維持する仕組みである点は共通です。今回の解説が、日本のマンション所有者や管理者の方々に、米国のコンドミニアム制度を理解する一助となれば幸いです。

参考資料: 米国・ニューヨーク州のコンドミニアムに関する法律文献および関連解説記事、日本法(区分所有法)、ドイツ法(WEG)などから筆者独自に調査。
※ファクトチェックも実施済

【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
yokohama-mankan

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。
また、上場企業やベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。

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