【徹底解説】タワーマンションのマンション管理:一般マンションとの違い、費用、大規模修繕のポイント

マンション管理

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近年、都市部を中心に増加しているタワーマンション。その眺望や充実した設備は魅力的ですが、マンション管理においては一般的なマンションとは異なる特有の事情が存在します。

本稿では、タワーマンションのマンション管理について、管理費や修繕積立金、大規模修繕工事の特徴を、一般的なマンションと比較しながらマンション管理士が詳しく解説します。

引用:
神戸市におけるタワーマンションのあり方に関する課題と対応策(報告書)
第三者管理・修繕積立金増額・タワーマンションの合意形成について(マンション管理業協会)
タワーマンション等大規模集合住宅を含む地域コミュニティの醸成(特別区長会調査研究機構)
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)

タワーマンションのマンション管理における特有の事情

タワーマンションは、その高さや規模、居住者の属性の多様性などから、一般的なマンションとは異なる様々な管理上の課題を抱えています。

区分所有者の多様性と合意形成の難しさ

タワーマンションでは、低層階、中層階、高層階で物件価格が大きく異なることが一般的です。そのため、購入者の属性やライフスタイル、管理に対する意識にも違いが生じやすく、管理規約の改正や修繕計画の決定など、区分所有者間の合意形成が難航する傾向があります。

具体的には、以下のような点が合意形成を困難にする要因となります。

  • 投資目的やセカンドハウスとしての所有者が比較的多いため、日常的なマンション管理への関心が薄い場合があります。
  • 外国人所有者の存在も、連絡の取りにくさや文化・価値観の違いから、意思疎通や合意形成をより複雑にする可能性があります。特に、海外在住の区分所有者の場合、出欠票や委任状の提出が滞り、特別決議に必要な議決権数を確保することが困難になる事例も報告されています。また、管理費等の滞納が発生した場合、回収手続きが長期化する傾向もあります。
  • 区分所有者が実際に居住していない場合、マンション管理に対する意識の差が顕著になり、修繕積立金の引き上げなどの重要な議題において、意見の対立が生じやすくなります。

コミュニティ形成の課題

タワーマンションは、セキュリティ意識の高さから、周辺地域との関わりが希薄になりがちです。また、居住者同士においても、階層間の移動が少ないことや、ライフスタイルの違いなどから、コミュニティ形成が難しい側面があります。

  • 自治会への未加入は、地域との連携不足を招き、災害時などの相互扶助体制の構築を妨げる可能性があります。一部地域では、集合住宅一棟として町会に加入すると、会費が住戸全体で掛かったり補助金支給が無くなるなどの面でデメリットが生じる場合もあるため、注意が必要です。
  • 高層階の居住者、特に子育て層や高齢者の外出行動が減少する傾向も、マンション内の交流不足に拍車をかける可能性があります。
  • 賃貸居住者の比率が高い場合、賃貸居住者は管理組合に加入していないため、マンション全体のコミュニティ活動への参加を促すための工夫が必要です。

災害対策の重要性と困難性

高層のタワーマンションにおいては、地震などの災害発生時のリスクが増大します。居住者が多いため、備蓄品の確保や避難場所の確保などが重要な課題となります。

  • 災害時の停電によりエレベーターが停止した場合、高層階の住民、特に高齢者の生活に甚大な影響を及ぼします。非常用電源の確保や、高層階住民への情報伝達手段の確保などが不可欠です。
  • 各階層で十分な備蓄スペースを確保することが困難な場合もあります。

管理費と修繕積立金の特徴

タワーマンションの管理費と修繕積立金は、その特殊な構造や設備、サービス内容などから、一般的なマンションと比較していくつかの特徴が見られます。

管理費の特徴

タワーマンションの管理費は、一般的に高額になる傾向があります。その主な要因としては、以下の点が挙げられます。

  • 高層建築物であるための維持管理コスト: エレベーターの維持・点検費用、高層階への給排水設備の維持管理費用などが高額になります。
  • 充実した共用施設の維持費: ラウンジ、ジム、ゲストルームなど、多様な共用施設を備えている場合が多く、これらの維持管理には相応の費用がかかります。
  • 高度なセキュリティ体制の維持費: 24時間有人管理システムや監視カメラなどの運用には人件費や設備費がかかります。
  • コンシェルジュサービスなどの人件費: ホテルライクなサービスを提供している場合、その人件費が管理費に上乗せされます。
  • 防災対策にかかる費用: 非常用発電設備や防災備蓄倉庫の維持管理費用などが含まれます。

修繕積立金の特徴

タワーマンションの修繕積立金も、一般的に高額になる傾向があります。その背景には、以下のような要因があります。

  • 高層建築物の大規模修繕の特殊性: 外壁の補修や塗装、屋上の防水工事など、高所作業を伴う大規模修繕には特殊な技術や設備が必要となり、費用が高額になります。また、長周期振動対策など、タワーマンション特有の修繕項目が発生する場合もあります。
  • 設備の高度化と複雑化: 高性能な設備が多く採用されているため、修繕や更新にも専門的な知識と技術が必要となり、費用がかさみます。
  • 将来的な修繕費用の増大: 竣工後、年数の経過とともに修繕箇所が増加し、修繕費用も増大していくことが予想されます。
  • 多くのマンションでは、段階増額積立方式が採用されており、築年数の経過とともに修繕積立金が段階的に引き上げられる仕組みになっています。しかし、当初の積立金が低く設定されている場合や、過去に積立金の値上げが適切に行われてこなかった場合、将来的に修繕積立金が不足するリスクが高まります。
  • 区分所有者の属性が多様であるため、修繕積立金の値上げに対する合意形成が難しい場合があります。特に、投資物件として購入している非居住の所有者が多い場合、修繕積立金の必要性に対する理解が得にくいことがあります。
  • 機械式駐車場を備えているタワーマンションの場合、その維持・修繕費用が別途加算されることがあります。

管理組合としては、長期修繕計画を定期的に見直し、将来の修繕費用を正確に予測した上で、適切な修繕積立金の積み立てを行うことが非常に重要です。必要に応じて、修繕積立金の値上げを検討する必要がありますが、その際には、区分所有者に対して十分な説明を行い、理解と協力を得る努力が求められます。

国土交通省のガイドラインによるタワーマンションの修繕積立金の水準は?

以下の記事

でも詳しく説明していますが、国土交通省によるマンションの修繕積立金に関するガイドラインでは、タワーマンション(地上20階建て以上)の修繕積立金の目安額を提示しています。

具体的には、以下の通りです。

修繕積立金の平均目安額は?

引用:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドラインより

このデータによると、タワーマンションは地上20階建て以上を指しますので、このデータによると、修繕積立金単価は

✅240円~410円/専有面積㎡当たり・月

が望ましいと考えられます。

410円は上限という訳ではなく、「(マンション)事例の3分の2が含まれる上限」であり、それ以上のマンションもあるということです。

一方の240円は、現時点で見ておくべき最低単価として捉えられ、今後の物価高騰や人件費高騰等、工事代金のインフレ化も考えられることから、長期修繕計画や修繕積立金は5年程度毎に見直すことが望まれます。

機械式駐車場がある場合に検討すべき追加工事費は?

また、タワーマンションに機械式駐車場を併設している場合、その駐車場のメンテナンスにも修繕積立金が充てられることとなります。

具体的に、機械式駐車場がある場合の追加単価は以下の通りです。

引用:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドラインより

例えば、タワーマンションに併設する駐車場が、エレベーター方式・垂直循環方式のものであり、100台分あるとすれば、

✅4,645円×100台=464,500円/月

を修繕工事費として加味して修繕積立金を設定する必要があります。

具体的に設定しておくべき修繕積立金単価は?

仮に、専有床面積20,000㎡タワーマンションの場合で、100台のエレベーター方式・垂直循環方式の機械式駐車場を併設するマンションであれば、

✅タワーマンションで必要な修繕積立金単価 240円~410円/専有面積㎡当たり・月
✅駐車場の工事代金464,500円/月÷専有床面積20,000㎡=23.23円/専有面積㎡当たり・月

となることから、

✅必要な修繕積立金単価(専有面積㎡当たり・月)=23.23円+240円(下限)~410円(上限)

が必要になるということになります。

大規模修繕工事における特有の事情

タワーマンションにおける大規模修繕工事は、一般的なマンションと比較して、工期や費用、工事の進め方など、複雑化・高度化を伴うことから特有の事情を考慮する必要があります。

高層階特有の工事の難しさとコスト

タワーマンションの大規模修繕工事では、高層階での作業が避けられません。

  • 外壁の補修や塗装工事では、特殊な足場(ゴンドラなど)の設置や、高所作業の専門技術が必要となり、一般的なマンションよりも工期が長期化し、費用も高額になる傾向があります。
  • 高所での作業は安全管理もより一層重要となり、追加の安全対策費用が発生する場合があります。
  • 資材の搬入や職人の移動にも時間を要するため、工事全体の効率が低下する可能性もあります。

長周期振動対策の必要性

タワーマンションは、風などによる長周期振動の影響を受けやすい構造となっています。大規模修繕工事においては、必要に応じて制振装置の点検やメンテナンス、改修など、長周期振動対策を講じる必要があります。

大規模修繕の事例蓄積の不足と継続的な情報収集の重要性

タワーマンションは比較的新しい建築物であるため、タワーではない低層マンションと比べても大規模修繕工事の事例がまだ十分に蓄積されていません。そのため、管理組合は、専門家や他のタワーマンションの管理組合から情報を収集し、最新の技術や工法を検討する必要があります。

合意形成のさらなる困難性

大規模修繕工事は、多額の費用を伴うため、修繕計画の内容や費用の分担について、区分所有者間の合意形成がより一層困難になることが予想されます。長期修繕計画の内容を丁寧に説明し、区分所有者の理解と協力を得るための丁寧なプロセスが求められます。

タワーマンション管理におけるおもな取り組み

タワーマンションの管理組合の中には、特有の課題に対応するために、先進的な取り組みを行っている事例も見られます。特にタワーではないマンションと比べて、マンション管理・大規模修繕工事の複雑化・高度化が想定されることから、以下のような対応策を講じながら進めて行くことが求められます。

  • 専門委員会の設置: 修繕積立金の運用に関する委員会や、防災に関する委員会など、専門的な知識を持つ区分所有者を中心に委員会を設置し、効率的な管理運営を目指す。
  • 外部専門家の活用: 弁護士やマンション管理士、税理士などの外部専門家を活用し、専門的なアドバイスを得ながら管理運営を行う。
  • 管理状況の届出制度: 一部の自治体(神戸市など)では、マンションの管理状況に関する届出制度を導入し、管理組合への助言や支援を行っています。
  • WEBアプリを活用した意見収集: 区分所有者からの意見をオンラインで収集し、合意形成を円滑に進めるためのツールを有効活用する。

まとめ

タワーマンションのマンション管理は、一般的な低層マンションと比較して、区分所有者の多様性、コミュニティ形成、災害対策、管理費・修繕積立金、大規模修繕工事など、多くの側面で特有の課題を抱えています。

これらの課題を克服し、快適な住環境を維持するためには、管理組合、区分所有者、管理会社がそれぞれの役割を理解し、連携しながら適切な管理運営を行うことが不可欠です。

先進的な取り組み事例を参考にしながら、それぞれのタワーマンションの実情に合わせた管理体制を構築していくことが重要となるでしょう。

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