【規約解説】マンション管理組合の総会で決めるべきこととは?国土交通省見解も解説

管理規約解説

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管理組合の総会でどのような内容の議案が出てくるのか、確認しておきたい…

また、

修繕積立金の値上げについては総会でどのように上げていく必要があるのか知りたい…

さらには、

管理組合にとっての重要なことも総会の決議が必要であるということだが、どういうことが重要に当たるのか知りたい…

などなど、総会の決議事項における疑問点も、管理組合や役員、さらには区分所有者などが多々お持ちの事と考えられます。

今回は、このような疑問点を解消すべく、マンション標準管理規約第48条「議決事項」について取り上げます。

その中で、補足・注意事項として国土交通省が挙げている点があります。

マンション管理士である筆者が条文の内容や補足・注意事項を解説するとともに、独自の視点から管理組合や区分所有者としても気を付けておいた方が良い点も紹介します。

  1. 【規約解説】マンション管理組合の総会で決めるべきこととは?国土交通省見解も解説
  2. マンション標準管理規約第48条「議決事項」とは?管理組合や区分所有者が知っておくべきこと
    1. マンション標準管理規約第48条「議決事項」の条文内容
    2. 第二号 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
    3. 第三号 収支決算及び事業報告
    4. 第四号 収支予算及び事業計画
    5. 第五号 長期修繕計画の作成又は変更
    6. 第六号 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
    7. 第七号 修繕積立金の保管及び運用方法
    8. 第八号 管理計画認定制度の申請
    9. 第九号 第21条第2項に定める管理の実施
    10. 第十号 修繕積立金を使う工事等の実施とそれに充てるための資金の借入れ、修繕積立金の取崩し
    11. 第十一号 管理組合としての訴えの提起と訴えを提起すべき者の選任
    12. 第十六号 管理委託契約の締結
    13. 第十七号 その他管理組合の業務に関する重要事項
  3. 第48条「議決事項」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
    1. 国土交通省による第48条補足コメント全文
    2. 筆者による第48条補足コメント解説
      1. 収支状況の把握と修繕積立金の確保
      2. 長期修繕計画と現状の乖離額の確認
      3. 段階増額方式における今後の予定
  4. 「議決事項」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
    1. 管理組合の決議事項が総会決議かどうか丁寧に確認する
    2. 管理組合の重要事項を理事会や役員間でも精査する
    3. 修繕積立金が長期修繕計画と乖離していないかチェックを怠らない
    4. 長期修繕計画の定期的な見直しとともに修繕積立金計画も見直す
  5. 何を総会に諮るか、また諮るべきか管理組合で十分確認する

【規約解説】マンション管理組合の総会で決めるべきこととは?国土交通省見解も解説

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・マンション標準管理規約第48条「議決事項」とは?管理組合や区分所有者が知っておくべきこと
・第48条「議決事項」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
・「議決事項」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第48条の条文から「議決事項」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。

その後、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第48条「議決事項」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第48条「議決事項」とは?管理組合や区分所有者が知っておくべきこと

早速、マンション標準管理規約第48条「議決事項」について紹介します。

この条文は、第1項のみですが、第17号まであります。

マンション標準管理規約第48条「議決事項」の条文内容

(議決事項)
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
一 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
二 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
三 収支決算及び事業報告
四 収支予算及び事業計画
五 長期修繕計画の作成又は変更
六 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
七 修繕積立金の保管及び運用方法
八 適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請、同法第5条の6第1項に基づく管理計画の認定の更新の申請及び同法第5条の7第1項に基づく管理計画の変更の認定の申請
九 第21条第2項に定める管理の実施
十 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
十一 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
十二 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
十三 円滑化法第102条第1項に基づく除却の必要性に係る認定の申請
十四 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
十五 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
十六 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
十七 その他管理組合の業務に関する重要事項

以下、各号について特に解説が必要なものについて紹介します。

第二号 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法

まず、第二号についてです。

役員を選ぶ際には、必ず総会の決議による必要があります。

また、解任についても同様に総会で決議する必要があります。

ちなみに、

解任:強制的に終了する
辞任:自らの事情より終了する
任期満了:規約や細則の定めで終了する

と違いがあり、辞任や任期満了は当該条文にも記載がないことから、総会の決議を必要としません。

そして、役員が活動する際の予算ともいえる役員活動費の額や支払方法についても総会決議が必要となります。

役員となった場合には、管理組合のためになる活動で費用が発生する場合があります。

その場合には、具体的にいくらまでOKとするのか、明確にしておく必要があるでしょう。

さらに、支払方法についても、小口現金から手渡しで支給するのか、振り込みによるものなのか含めて、決める必要があります。

第三号 収支決算及び事業報告

次に、第三号についてです。

前年度の収支決算や、一年間どのような活動を行ったのかも、必ず総会に諮る必要があります。

収支決算については、前年度の決算を管理組合として認めるのかどうかを明確にする必要があることから、その場で承認という手続きが必要となります。

第四号 収支予算及び事業計画

さらに、第四号についても紹介します。

次年度(総会時点では当年度)の収支予算や一年間管理組合としてなにをやっていくのかの計画も管理組合として承認する必要があります。

そのため、この件も総会に諮って、区分所有者から承認を貰う必要があります。

第五号 長期修繕計画の作成又は変更

そして、第五号は長期修繕計画についてです。

長期修繕計画も新たに作成する場合または、これまでのものを変更する場合も総会に諮る必要があります。

また、第四号は単年度における事業計画ですが、30年以上等の長期的な修繕に関する計画も、管理組合内で承認を得て、大規模修繕工事等を進めていく必要があります。

長期的な計画を立案することによって、管理組合にとっての羅針盤としての機能が必要であると言えるでしょう。

第六号 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法

また、区分所有者から徴収する管理費等と使用料の額をどのようにするのかも総会で決める必要があります。

ちなみに、管理費等とはマンション標準管理規約第25条に定義されており、

・管理費
・修繕積立金

合わせて「管理費等」としています。

とりわけ、最近多い修繕積立金の値上げについては、この条文が適用されて総会で決議されることとなります。

また、「賦課徴収方法」については、例えば値上げであれば、各区分所有者からどれだけ徴収するのかを総会で具体的にする必要があります。

値上げ額等の内容についても明確にすることが求められます。

第七号 修繕積立金の保管及び運用方法

第七号は、修繕積立金についてです。

区分所有者から徴収した修繕積立金ですが、将来の大規模修繕工事等の必要なタイミングに備えて、積み立てておく必要があります。

その際に普通預金に保管しておくのか、または定期預金で保管しておくのかなど、管理組合としての方法を決めておく必要があります。

そして、場合によっては長期的に使用しないことから、積立金を眠らせておくことも勿体ないと考える管理組合もあります。

その場合に、すまい・る債など何らかの形で運用することも考えられますので、その場合の方法についても総会の決議による必要があります。

第八号 管理計画認定制度の申請

第八号は、細かな記載がありますが要約すると、自治体が行う管理計画認定制度への申請の決議となります。

この中には、

・新たに申請する
・内容を変更する
・認定期間が終了するので再申請で更新する

の3パターンの記載があります。

現時点では制度が始まってまだ間もないため、新たに申請する場合と、ケースによっては変更する場合でしょう。

また、5年ごとの更新が必要となるため、時間が経過すれば更新する管理組合も増えてきそうです。

その場合には、総会決議が必要となります。

第九号 第21条第2項に定める管理の実施

第九条は、マンション標準管理規約第21条「敷地及び共用部分等の管理」についてでです。

具体的には、第2項にある「専有部分の設備で共用部分と構造上一体となった部分の管理」についての取り決めになります。

これは、専有部分と共用部分で構造上が一体化しているところにおける、工事等実施する場合は総会の決議が必要ということになっています。

給排水管工事など、専有部分と共有部分で繋がっている個所を同時に行う場合などが該当するでしょう。

ちなみに、第21条については、以下

で詳しく解説しています。

第十号 修繕積立金を使う工事等の実施とそれに充てるための資金の借入れ、修繕積立金の取崩し

修繕積立金を使用する場合には総会決議が必要です。

一方の管理費については、少額かつ細かくなることから、毎度総会決議にすると煩雑になります。

修繕積立金の使用は、多額となることが一般的なため、総会決議で実施する必要がある旨、このように定められています。

また、使用以外にも、修繕積立金では足りない場合の借入れや、工事等を行う場合に費用を支払う際に修繕積立金から支払う場合(修繕積立金の取崩し)には、決議が必要です。

この第28条第1項を含めた、修繕積立金の取り決め詳細については、以下

に非常に細かく紹介していますので、必要箇所につき確認頂ければイメージがより沸いてくると考えられます。

第十一号 管理組合としての訴えの提起と訴えを提起すべき者の選任

こちらは、

・管理組合の利益に反する行為を行う場合の停止
・区分所有者対して著しい悪影響を与える場合の専有部分の使用の禁止
・専有部分の競売請求
・賃借人等占有者に対する専有部分の引き渡し請求

など、守るべき義務への違反者に対して訴えを提起する場合には総会決議が必要となります。

また、訴えを提起する者として、管理組合側の原告を立てる必要があります。

おもに理事長になると考えられますが、その人についても総会で承認する必要があります。

第十六号 管理委託契約の締結

管理会社と締結する管理委託契約も総会決議である必要があります。

その前に、区分所有者全員または理事長に対して、管理会社からの重要事項説明を受けることとなります。

管理委託契約ならびに、重要事項説明の詳細はこちら

で紹介しています。

第十七号 その他管理組合の業務に関する重要事項

最後に、第十七条は、管理組合として重要事項と考えられるものは総会で決議するというものです。

ここは、各管理組合で個別の事情があるため、各管理組合独自の判断になるでしょう。

 

以上、総会に決議すべき事項の中で、とりわけ確認しておきたい内容を紹介しました。

次の章では、国土交通省が修繕積立金や長期修繕計画について補足をしていますので、その点を含めて紹介します。

第48条「議決事項」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?

この章では、第48条「議決事項」の規定に対して国土交通省が補足している点があります。

具体的にはどのような内容なのか、全文を紹介します。

国土交通省による第48条補足コメント全文

以下のとおり、補足説明があります。

第48条関係
マンションを適切に維持管理していくためには、各区分所有者が管理組合会計の収支状況を把握していることが重要であり、特に、適切な修繕積立金の確保の観点から、修繕積立金の額を変更する必要性を認識することは極めて重要である。毎年の総会において、長期修繕計画上の積立予定額と現時点における積立額の差を明示するためにこれらの情報を記載した資料を提示したり、長期修繕計画を総会資料に添付したりするとともに、段階増額積立方式を採用している場合は今後の変更予定時期及び変更予定額を説明することも、合意形成に有効と考えられる。

筆者による第48条補足コメント解説

国土交通省としては、管理組合に対して危惧している修繕積立金について触れています。

収支状況の把握と修繕積立金の確保

まず、各年度の決算等において、区分所有者が管理組合の収支状況を把握していることが重要であるとしています。

そして、

・適切な修繕積立金の確保
・(適切でない場合の)修繕積立金の額を変更する必要性を認識すること
・これらは極めて重要

としています。

「極めて重要」という指摘は、国土交通省としてこの修繕積立金の確保と、第60条の「滞納された管理費等の回収」で触れている2か所のみとなります。

それだけ、管理組合に対して重要視していることと考えられます。

長期修繕計画と現状の乖離額の確認

そして、長期修繕計画の計画上の修繕積立金額と、現状の金額の乖離を把握する必要があるとしています。

企業における予算実績管理のような概念と考えられます。

管理組合の羅針盤ともいえる長期修繕計画と、現状の修繕積立金の確保の状況を確認することによって、今後適切な管理運営ができるかどうか、非常に重要な論点とも言えそうです。

段階増額方式における今後の予定

国土交通省としては、段階増額方式を採用している場合は、注意する必要があるとしてこのコメントを記載していると考えられます。

段階増額方式は、区分所有者が知らない間に徴収される修繕積立金が増えていくという難点があります。

これは、区分所有者としても生活費にも支障をきたすことから、あまり望ましくないということもあります。

そのため、国土交通省としては、段階増額方式よりも一定額を毎月・毎年徴収する均等積立方式の方が望ましいとしています。

また、段階増額方式や均等積立方式についてはこちら

の資料に詳細を記載しています。

 

この章では、マンション標準管理規約第48条「議決事項」について、国土交通省が補足・注意点として挙げている点を紹介しました。

そして、最後の章ではマンション管理士である筆者独自の観点から、管理組合や区分所有者が気を付けておきたい点を、総会決議事項における17項目の切り口の観点から紹介します。

「議決事項」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

最後の章では、マンション標準管理規約第48条「議決事項」の条文や国土交通省が補足・注意すべき事項を踏まえて、筆者独自の観点から管理組合にとって気を付けておくべき事項を紹介します。

管理組合の決議事項が総会決議かどうか丁寧に確認する

管理組合における管理規約が標準管理規約準拠している場合は、とりわけ、第一号から第十六号までの内容があった場合は、必ず総会に諮る必要があります。

また、考える切り口によってはそれぞれに該当するかどうかの検討も必要です。

そのため、16項目における内容を丁寧に確認することが求められます。

管理組合の重要事項を理事会や役員間でも精査する

一方の、第十七号にある「管理組合の業務に関する重要事項」とは何なのかという点についてです。

管理規約において、総会で決議する内容に記載されていない場合、管理組合、とりわけ理事会としては

・特に決議の必要はなく予算通り費用消化すれば良い
・これは理事会で決議したほうが良い
・重要であるため理事会ではなく総会で決議すべき

などの見解があると考えられます。

理事会で決めるか、または総会に諮って区分所有者に委ねるか、方法論は考えられます。

切り口としては、理事会で決めきれないことは総会に諮ることは一つの考え方かもしれません。

そして、管理会社に委託している管理組合であれば、他の管理組合の決議事例をヒアリングすることで、自身の管理組合における決議の参考にすることも考えられます。

修繕積立金が長期修繕計画と乖離していないかチェックを怠らない

前章の国土交通省のコメントでも、修繕積立金については非常に危惧していることが分かります。

また、いつ大規模修繕工事や、周期の関係でそこに含まれないエレベーター改修工事を行うかなど、高額の支出が見込まれるものには、長期修繕計画に適切に反映する必要があります。

その工事費用に必要な資金はいくら必要となるのか、セットで修繕積立金計画を立てることとなりますが、修繕積立金が計画通り積みあがっていくことが重要です。

例えば、

・滞納金が多く発生して計画通りに行っていない
・修繕積立金増額の手続きが遅れており、積立も遅れている

などがある場合は、適切に積み立てられない場合も想定されます。

そのため、計画通り進捗しているか総会で毎期確認することが望まれます。

長期修繕計画の定期的な見直しとともに修繕積立金計画も見直す

長期修繕計画の見直しならびに、修繕積立金計画の見直しによる徴収する修繕積立金の変更がある場合も、総会決議となります。

また、国土交通省によれば、長期修繕計画は定期的に5年程度ごとに計画的に見直すことが推奨されています。

こちらも見直したうえで、毎回総会に諮っていくことが求められます。

何を総会に諮るか、また諮るべきか管理組合で十分確認する

今回は、マンション標準管理規約第48条「議決事項」について、その条文とともに国土交通省が補足・注意すべき事項、さらにはそれらを踏まえて筆者独自の視点で気を付けておくべき事項を紹介しました。

基本的にはマンション標準管理規約の当該条文に定めている16項目については、諮る必要があります。

一方で、17番目の項目は管理組合独自の考え方があり、重要という基準も異なってくるでしょう。

そのため、過去の決議事項や他の管理組合の事例などを役員間で検討することが求められます。

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