宅配ボックスOK?置き配NG?マンション管理組合の最新事情と対策

マンション管理

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最近置き配が多くなっているけど、マンションで実施していいのかな?

さらには、

置き配は不安なので、宅配ボックスに入れて欲しいんだけど…

そして、

宅配ボックスは常にいっぱいで追加できないのかな…?

このような悩みを持つ管理組合も多いと思います。

今回はこのような置き配や宅配ボックスについて、実際に筆者も活用しています。

経験や最新の情報を踏まえながら解説します。

宅配ボックスOK?置き配NG?マンション管理組合の最新事情と対策

今回紹介する内容は以下の通りです。

・前提:物流機能はひっ迫している状況に
・置き配、宅配ボックスの現状
・置き配のメリットとデメリット
・宅配ボックスのメリットとデメリット
・置き配、宅配ボックス設置のために管理組合として取るべき対策

最近では置き配、宅配ボックスが当たり前になってきています。

特に最近の新築マンションにおいては、宅配は標準装備されていることから、新たに設置するということに対する課題はないかもしれません。

一方で、経年マンションにおいては、竣工当初は宅配ボックスや置き配という概念もなかったことから、これらへの備えがまだ不十分の所もあるでしょう。

今回は置き配、宅配ボックスに対して十分、不十分問わず、現状の課題と今後の対策について紹介します。

前提:物流機能はひっ迫している状況に

置き配、宅配ボックスの現状を確認する前に、そもそも自宅まで物が運ばれる物流の状況はひっ迫しています。

具体的にどのような問題が起きているのか、国土交通省の資料「物流を取り巻く現状と課題」より、確認しておきます。
※具体的な図表も含めて、事実をそのまま紹介するためオリジナルの資料を引用します

これを確認したらマンション管理組合として、置き配や宅配ボックスの有効性もうなずけるのではないでしょうか。

日時指定の高まり

物を配達してもらうにあたって、自宅にいる際に配達してもらえるほど便利なものはありません。

そのため、法人、個人問わず、配達日時が指定される比率が以前より高まっています。

このグラフを見ていただくと分かりやすいですが、個人の時間指定の伸びが顕著です。

指定なしの割合がかなり低く、自宅にいるときに配達して欲しいニーズが高いことがわかります。

トラックドライバーの担い手不足

トラックドライバーを全産業と比較すると、年間労働時間は約2割長く、年間所得額は約1割低く、有効求人倍率は約2倍となっています。

また、半数以上の企業がドライバー不足を感じており、かつ平均年齢が高く、担い手の急速な減少が予測されています。

このような物流の労働力不足の中、労働時間規制等により輸送能力が不足する「2024年問題」をはじめ、構造的な物流危機が懸念されている状況です。

結果的に、これまで運べていた荷物のうち、2024年度には約14%、2030年度には約34%が運べなくなる可能性があるとの試算をしています。

物流コストの増大

トラック運送事業の営業費用の約4割は運送に係る人件費であり、さらに約2割が燃料費及び車両に係る経費となっています。

道路貨物輸送のサービス価格は、2010年代後半にバブル期の水準を超え、過去最高(物流コストインフレ)となっている模様です。

また、とりわけ宅配便の価格の急騰が顕著とのことです。

以上見てきた通り、物流機能は大きな課題を抱えていることになります。

それに対して、顧客である管理組合も対策する必要があるでしょう。

そこで考えられるのが、置き配や宅配ボックスの充実です。

国土交通省が置き配施策に動いた!

24年7月25日の速報記事で出ていましたが、物流業界でトラックドライバーの残業規制による人手不足が深刻になっている、いわゆる「2024年問題」の解消策のひとつとして、「置き配」などを利用した場合にポイントを還元する実証事業を行うとのことです。

ポイントを活用した施策を国が実施することにより、利用者、物流業者双方にメリットがある形で着地できる可能性が出てきています。

置き配、宅配ボックスの現状

物流機能の諸課題を確認したところで、置き配、宅配ボックスの設置状況等、現状を確認します。

令和6年6月21日に公表された5年に1度のマンション管理組合に対する大々的調査である「令和5年度マンション総合調査」に置き配や宅配ボックスの調査状況があります。

そちらも参考にしながら状況を確認します。

置き配の現状は?

管理組合として置き配がどのような状況にあるのか、今回の調査から実施されました。

以下の記事

で細かく紹介していますが、

・管理組合で「置き配ルールを決めていない」が86.0%
・「ルールで許容されており、利用している」が30.6%
・「利用していない」「利用したくない」を合わせると6割弱

という結果です。

コロナ禍で一気に広がった置き配需要ですが、まだまだ管理組合では一般的になり切っていない現状がわかります。

宅配ボックスの現状は??

一方の、宅配ボックスはどうでしょうか。

同じく、マンション総合調査の資料

では、

・竣工当初から設置が49.2%、あとから設置が8.2%
・今後設置したいが15.5%
・管理組合当たりの設置台数は10~16戸に1台

という傾向にあります。

調査回答では、約6割弱の管理組合に設置されている状況です。

また、十数戸に対して1台の宅配ボックスが割り当てられるということで、留守宅が多い管理組合はもしかしたら不足気味という所もありそうです。

置き配のメリットとデメリット

現状を確認したところで、まずは置き配を行うことのメリットとデメリットを確認します。

置き配のメリットは?

置き配のメリットとして、つぎのようなものが考えられます。

・不在時でも再配達なく受け取れる利便性
・時間的制約の解消
・在宅であっても配達員と顔を合わせなくてもよい
・配達物によっては郵便ボックスとの併用も可能

ドアの前に荷物が置いておくことができるので、自宅にいる、いないに関わらず荷物を受け取ることができます。

分譲マンションの共用部分には物を置けないため少ないですが、戸建ての場合はドアの前に宅配ボックス兼置き配としても使える箱が置いてある家も最近非常に多くなっています。

デメリットは??

一方のデメリットは、次のようなものが考えられます。

・自分がいない間でもマンションオートロック内に入室する可能性がある
・荷物が置いてあるので在宅時にいつ来たのか気付かない
・自宅住戸のドアの前に置いてあるので紛失の懸念もある
・天候が悪い場合は荷物が痛む可能性がある
・高価なものは置き配ができない

筆者も廊下に荷物が置いてある状況をよく見かけることがあります。

先ほどの86%の管理組合がルールを決めていないとのことだったので、大半が共用部分の廊下であっても物が置かれている状況にあるのでしょう。

すぐに受領することからルール上は認める形になっている所が多いと考えられます。

また、約半数強が利用していない、さらには利用したくないとのことなので、荷物の紛失や痛むことを懸念していると考えられます。

宅配ボックスのメリットとデメリット

続いて、宅配ボックスを活用することのメリットやデメリットを確認しましょう。

宅配ボックスのメリットは?

まずは、メリットについて確認します。

・置き配のメリットを享受できる
・置き配のデメリットやリスクを軽減できる
・ロック機能がありセキュリティが高い
・やや高価なものでも収納可能
・コインロッカーのようなサイズ別ボックスがあれば大小荷物が収納可能

宅配ボックスのメリットは、なんといっても置き配のメリットを享受しながら、そのデメリットが解消されることです。

セキュリティ面、到着時間、荷物劣化や紛失の可能性がなくなるなど、メリットも多くなります。

また、やや高価な電化製品や大き目の荷物なども収納可能なため、仕事を持つ現役世代にとって不在であっても安心して荷物を自宅に運んでもらうことが可能でしょう。

デメリットは??

一方のデメリットです。

・管理組合当たりの設置が少ないと持ち帰られてしまう
・中々荷物を取り出さない場合は空きが少なくなり滞留する
・設置場所の確保やコストがかかる
・自らの部屋まで運ばなければならない
・サイズが大き過ぎるものは入らない可能性がある

マンション総合調査からは、管理組合当たり平均して十数戸に対して1台の宅配ボックスの傾向がありますが、現役世代が多い管理組合は不足する可能性があるかもしれません。

また、新たに設置するマンションはコスト増や場所の確保が必要になります。

そして、大きくて重い荷物であっても、自分で自宅住戸まで運ばなければなりません。

置き配、宅配ボックス設置のために管理組合として取るべき対策

置き配や宅配ボックスのメリット、デメリットを考えても、なおこれらを望む区分所有者も多いことが想定されます。

とりわけ、現役世代の方にとっては、受け取ることがそもそもできないこともあるため、なおさらでしょう。

それぞれ、考えられる対策を紹介します。

管理規約や使用細則で利用方法を明確に

まずは、置き配、宅配ボックスともに、利用に関するルールを明確化する必要があります。

管理規約や使用細則でその使用方法を定めるとともに、区分所有者や賃貸の住民にも徹底してもらう必要があります。

経済産業省と国土交通省が連名で、令和2年3月に「置き配の現状と実施に向けたポイント」という資料を作成しています。

また、規約のひな型である標準管理規約にも、使用細則に置き配を規定する際の注意事項コメントがあります。

その内容も含め具体的には、

・使用細則において置き配のルールを定める
・具体的には、置き配の実施場所、一定期間放置されたものの扱い、オートロックマンションに運送人が入るためのオートロック解錠システムの活用等
・宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意
・使用細則等を定め、総会普通決議を行うことが望ましい

という対策が必要になるでしょう。

各種補助金の活用も検討

宅配ボックスの設置を検討している管理組合にとって、補助金の活用も考えられます。

具体的に国土交通省より、共同住宅に対する宅配ボックス設置で使える4つの補助金

・子育てエコホーム支援事業
・防災・省エネまちづくり緊急促進事業
・子育て支援型共同住宅推進事業(社会資本整備総合交付金・スマートウェルネス住宅等推進事業等)
・長期優良住宅化リフォーム推進事業

が紹介されています。

住宅:国土交通省における宅配ボックス設置に関する支援策等一覧 - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

宅配ボックス単独で使えるものは少なく、マンションのバリューアップ工事や省エネ改修等とセットになります。

また、一定の子育て世帯が居住していることなども条件となっています。

そのため、大規模修繕工事などと合わせて活用することが望まれます。

マンション管理組合における物流機能に対する配慮も必要

再三になりますが、物流機能を取り巻く環境は厳しさを増しています。

さらに、暑い夏や寒い冬は、配達員さんもマンションの上下を行き来するのは一苦労です。

配達するのはマンションだけではなく、近隣の戸建てや企業、商店へ回ることもあります。

そのため、管理組合としても、置き配や宅配ボックスの設置に加えて、以下のような対応

・時間指定した場合は不在にせず必ず在宅する
・自宅で受け取れない場合は近くのコンビニで受領するサービスを活用
・配達員さんの階上へ上がる手間から、管理組合で一括受け取り可能とする仕組み
・頻繁に訪問する地域の宅配員さん限定でオートロック解除可能とする

などを今後考えるべきかもしれません。

近い将来、配達員さんが減少した場合には、配達時間指定の難しさや再配達がすぐに来てくれないこと、さらには物が届くまで時間がかかることが出てくるかもしれません。

そのためにも、管理組合として物流機能に対する配慮をますますしていく未来がすぐそこまで来ているといえそうです。

まとめ:置き配・宅配ボックスを賢く活用し、快適な環境を実現

管理組合として、置き配や宅配ボックスを活用することの重要性についても触れました。

物流機能がひっ迫している今、管理組合側や区分所有者側もある程度配慮する必要があります。

結果的に物流側の配達員さんや、管理組合双方にメリットがあることにつながることとなるでしょう。

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