理事会として、総会の招集手続についてどのような方法で準備をすればよいのか確認しておきたい…
また、
住んでいない組合員がいるのだが、どのような対応をすればよいのか知りたい…
さらには、
WEB会議システムを使って総会を考えているのだが、招集通知にはどのように情報を織り込めば良いのか知りたい…
などなど、総会のための招集手続きに対する確認したい事項や疑問が、理事会や管理組合役員として考える所もあるでしょう。
確かに、議案によっては予め一定の手続きを取っておかなければならない事項もありますね。
今回はこのような総会手続について、標準管理規約第43条から、条文とともに国土交通省が補足・注意事項を挙げている点を紹介します。
さらに、それらを踏まえてマンション管理士である筆者の視点から、管理組合や区分所有者として気を付けておいたほうがよい事項を最後の章で合わせて紹介します。
途中の条文の内容が非常に細かくなっているため、その点は読み飛ばして進めて頂ければ幸いです。
【規約解説】総会の招集手続で確認すべき事項を紹介(是非参考に)
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第43条「招集手続」についての規定に対する補足・注意事項は?
・「招集手続」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まずは、総会の招集手続について記載されている、標準管理規約第43条の条文について紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や注意しておくべき事項が国土交通省より提示されています。
非常に細かく紹介されていますが、全内容について、確認したいと思います。
そして最後の章で、第43条の条文や国土交通省の補足コメントを確認しながら、筆者が考える招集通知において気を付けておいた方が良い事項を具体的に紹介します。
早速、次章より招集手続の条文から確認したいと思います。
標準管理規約第43条「招集手続」の紹介
早速、標準管理規約第43条招集手続について、確認していきます。
第43条の条文は全9項からなっており、取り決めがかなり細かくなっています。
そのため、各条項分割してそれぞれ紹介するとともに、補足コメントも記載します。
第1項 招集通知の記載内容と組合員への通知
まず初めに、第1項の条文について紹介します。
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
総会の招集通知は、2週間前までに、会議の日時や場所、目的を記載して組合員に案内する必要があります。
そして、建替え決議やマンション敷地売却決議では、さらに前の2か月前に招集通知を案内する必要があります。
また、WEB会議で実施する場合は、その開催方法として、
・アクセス用のURLやQRコード
等を記載する必要があり、どこから入ればよいのか明確にする必要があります。
第2項 招集通知の案内先
2つ目は、招集通知は組合員に対してどこに案内するのかという条文です。
居住している組合員に対しては、対象物件の専有部分の所在地宛、すなわち各戸のポストへ投函する形となります。
また、外部に住んでいる組合員の場合は、事前に届出があればその住所に送ることとなります。
対して、届出がない場合は、居住している組合員同様に、ポストに投函すればよいということになっています。
第3項 掲示への代替
3つ目は、ポストに投函する対象者については、掲示に代替できるとも定められています。
すなわち、各戸個別に配布しなくても、掲示場所に掲示すればよいという定めです。
第4項 議案の要領を通知する必要性
そして、具体的に要領を通知する必要性がある議案もあります。
ここで、第47条第3項第一号、第二号、第四号は以下のような内容です。
第二号:敷地及び共用部分等の変更
第四号:建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
また、第47条については追って紹介したいと思います。
今回はこのような議案については具体的な説明としての要領が求められるということに留めて頂ければと考えています。
第5項 建替え決議を行う場合の通知
加えて、建て替え決議については、さらに細かな通知が必要となります。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持及び回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
二号については、建替え決議が否決となった場合には、建物を維持していく必要がでてきます。
そのため、その際に必要な費用や内訳も具体的に出す必要が出てきます。
また、修繕に関する計画として、長期修繕計画がある場合はその計画内容も提示することとなります。
将来建替えを行う場合であれば、計画通りに実際に実行しないこともあるでしょう。
その分、修繕積立金が支出しないこととなります。
一方で、建替えを行わないと決議した場合であれば、当該長期修繕計画に沿って工事を計画する必要も出てきます。
さらには、定期的な見直しも図っていくことも求められてくるでしょう。
第6項 マンション敷地売却決議を行う場合の通知
条項の紹介が続きますが、第6項についてです。
この第6項の構成としては、一号、ニ号とあり、二号にはイ、ロ、ハとそれぞれ分かれています。
一 売却を必要とする理由
二 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める事項
イ マンションが円滑化法第102条第2項第一号に該当するとして同条第1項の認定(以下「特定要除却認定」という。)を受けている場合次に掲げる事項
(1) 建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条第2項に規定する耐震改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の耐震改修に要する費用の概算額
ロ マンションが円滑化法第102条第2項第二号に該当するとして特定要除却認定を受けている場合 次に掲げる事項
(1) 火災に対する安全性の向上を目的とした改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の改修に要する費用の概算額
ハ マンションが円滑化法第102条第2項第三号に該当するとして特定要除却認定を受けている場合 次に掲げる事項
(1) 外壁等の剝離及び落下の防止を目的とした改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の改修に要する費用の概算額
建替え決議以上に細かくなっているので、それぞれ確認していきます。
イのケース:耐震基準を満たしていないとして特定要除却認定を受けている場合
円滑化法第102条第2項第一号は、マンションが耐震性を満たしていないとして、特定要除却認定という認定を受けている場合となります。
その場合には、
・耐震改修の場合の費用
を明確化する必要があります。
耐震改修や建替えして再生することをせずに、壊して敷地を売却するのはなぜか?ということを説明する必要があります。
また、マンション敷地売却決議が否決された場合は、第5項同様にマンションを延命させる必要があります。
その際には、耐震性がないということで特定要除却認定を受けている中でも延命する必要があることから、耐震改修が必須となります。
したがって、それを行うには費用がどれぐらいかかるのか、具体的な明記が求められています。
ロのケース:火災に対する安全性が不足しているして特定要除却認定を受けている場合
イの耐震性に対して、火災に対して防火性能等が充実していないとして、安全性不足による場合です。
この場合も、
・安全性向上対策を講じる場合の費用
を明確化する必要があります。
費用については、マンションを延命させる場合には対策を講じる必要も出てくるので、その目安額の提示が必要になると考えられます。
ハのケース:マンション周囲の安全性に欠けるとして特定要除却認定を受けている場合
このケースは、外壁、外装材等の建物の部分が剥離し、落下することによって周辺に危害が生じるか可能性がある場合です。
この場合も、イ、ロのケースと同様に、
・改修を行う場合の費用
を明確化する必要が出てきます。
第7項 建替え決議または、マンション敷地売却決議説明会の開催
続いて、建替え決議または、マンション敷地売却決議を目的とする総会招集の場合についてです。
当然ですが、建替えまたは、マンション敷地売却の決議を行うにあたり、今後の住まいを左右する大変重要な出来事であることから、組合員の意思決定も非常に重要となります。
意思決定の前の1か月前までには、建替えやマンション敷地売却のための説明会を開く必要があります。
第8項 占有者の総会出席
さらに、専有部分を専有(使用)する方の出席を可能とする場合についてです。
とあります。
また、第45条2項とは
という条文です。
専有部分を専有する者は、組合員から賃貸をしている賃借人や、借りて住んでいる親族なども当てはまるでしょう。
その方が総会議案内容において利害関係を有する場合は、総会出席を可能とするものです。
そのような場合には、管理組合掲示板にその旨を掲示してくださいという内容になります。
第9項 緊急を要する場合の通知期間の短縮
最後に、緊急を要する場合の通知期間の短縮についてです。
招集通知は本来は2週間前に組合員に通知すべきものですが、これを5日を下回らない範囲で短縮できます。
ただし、理事会の承認が必要となります。
もっとも、決議として非常に重要な建替え決議又はマンション敷地売却決議は含まれません。
第43条「招集手続」についての規定に対する補足・注意事項は?
続いて、補足・注意事項について紹介します。
こちらは、これまで紹介した各条項に比較的詳しく記載されていることから、補足・注意事項はさほど多くなっていません。
国土交通省からは3点指摘がありますので、それぞれ紹介します。
第1項のWEB会議システムを用いる場合の開催方法
前章第1章の第1項の条文解説でも少し触れましたが、以下のコメントがあります。
WEB会議システム等を用いて会議を開催する場合における通知事項のうち、「開催方法」については、当該WEB会議システム等にアクセスするためのURLが考えられます。
また、これに合わせて、なりすまし防止のため、WEB会議システム等を用いて出席を予定する組合員に対しては、個別にID及びパスワードを送付することが考えられるとの補足があります。
他の方が入室しないように、ID、パスワードは組合員に対して本人への手渡しや個別メール等で通知することが求められます。
第3項、第8項の掲示方法について
そして、第3項と8項に共通する掲示についての補足事項です。
所定の掲示場所は、建物内の見やすい場所に設けるものとするとしています。
また、書面での掲示のほか、ディスプレイに情報を投影する掲示方法も想定されるとのことです。
第7項の建替え決議または、マンション敷地売却決議説明会の開催方法
説明会の開催方法についても補足があります。
総会と同様に、WEB会議システム等を用いて説明会を開催することも可能であるとのことです。
実際に遠方に行っており当日現場に出席することが難しい方や、組合員自体はマンションに住んでいない外部所有者に対しても重要な対応策と考えられます。
また、当該説明会は必ず聞いておく必要がある重要なものであることから、会議室での開催とともに、現場に来れない人のためにWEB会議室システムを併用することも必要かもしれません。
「招集手続」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
第43条ならびに、その補足・注意点を確認しました。
条文は非常に細かく紹介されていることから、補足・注意点も少なめの印象でした。
その条文に筆者の考えも少し補足させて頂きました。
また、その中では建替え、マンション敷地売却決議に関する総会について、厚く紹介されていました。
しかしながら、現状は非常に対象として少ないため、この章では対象外として、通常のマンション管理を行う想定で紹介します。
規約の定めにある通り遅れないように招集通知を送る
このあたりは基本的な事項であり、管理組合・理事会としても意識している内容かと考えられますが、規約の定めにあるとおり、招集通知を送る必要があります。
例えば、「少なくとも会議を開く日の2週間前」とある場合は、細かなお話ですが、
ということになります。
詳しくは、以下
の「招集通知の案内が遅かった」という項目で紹介しています。
ただ、外部に住んでいる組合員に配慮し議決権行使率を向上させる観点を考えれば、この規定よりも前に送ることなどの配慮をしても良いかもしれません。
組合員構成によってはWEB会議システムのみの総会は難しい
総会においては、WEB会議システムを活用する方法は非常に有効であると考えられます。
前述のとおり、出張や旅行、外部の組合員で遠方にいる方や、当日やむを得ず会場出席出来ない方に対しても、参加が可能となるためです。
対して、WEB会議システムで参加出来ない方からの不満や不公平感も出てくる可能性があることから、管理組合内のITリテラシーを配慮しながら実施することが求められます。
そのため、会場開催とWEB会議システムの併用が求められるところです。
しかしながら、これはこれで管理組合や理事会、管理会社の準備スキルも必要となります。
具体的には、機器類の準備や機器類を扱う対応能力が求められることとなり、加えてリハーサル等の手間もかかる可能性も考えられます。
招集通知については掲示と各組合員への配布が望まれる
ほとんどの管理組合はこの形態で実施されているところが多いと感じますが、総会の招集通知については
・掲示板への掲示
の双方が望まれるところです。
理由としては、
・掲示を確認し、配布された招集通知や議案書の内容を具体的に確認する
ためです。
組合員からのより多くの議決権行使や総会参加のためにも、双方実施するのがよいでしょう。
総会議案が占有者に影響する場合における招集通知内容掲示の配慮
組合員ではない、組合員の親族や賃借人が居住している場合も多いでしょう。
また、規約の変更や細則の追加によって、
・これまで楽器演奏が可であったが、音が出る不可の楽器を決める
・民泊の条項が入っていなかったため、民泊不可とする条項を追加する
・事務所可であったが、不特定多数の出入りに配慮して今後はリモートワークを除き不可にする
など、管理組合内での変更も想定されるところです。
この場合においては、親族や賃借人も上記のような条件に当てはまる場合も想定されます。
そのため、占有者は総会に参加して、意見を言うことができるという第45条第2項が適用される可能性があります。
一方で、管理組合や理事会としては組合員も占有者も当てはまるかどうかも分からないでしょう。
したがって、制約を受けてしまう方にも情報が届くように、適切に掲示によって通知することが求められます。
総会のための招集手続は細かく定められている
今回は標準管理規約第43条の招集手続について紹介しました。
大半のマンションでは、建替え決議とともにマンション敷地売却決議は縁がないかもしれませんが、国土交通省の標準管理規約では細かく定められていることが確認できました。
将来的にはこのような決議も増えてくることが想定されます。
一方で、普段の総会における招集手続についても配慮する必要があり、その点を中心に紹介しました。
記事を参考に、標準管理規約の条文をご参考頂くとともに、改めて現状の管理組合における招集手続の確認をして頂ければ幸いです。
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