【規約解説】奥が深い話!管理組合の役員に関する検討事項とは?

管理規約解説

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今回、管理組合の役員になることになったんだけど、どのような役職があるのだろうか…?

また、

理事長というのは良く聞くけど、それ以外に役職はあるのかな?

さらには、

役員って何人ぐらい就任するのかな…?

このような疑問を持つマンション管理組合の方も多いと思います。

確かに、理事長は良く聞く名称ですが、その他の役職もあるのでしょうか?

今回は基本的な内容として、管理組合における役員構成について、標準管理規約第35条を用いて紹介します。

各役員の役割については、また別の機会に紹介します。

【規約解説】奥が深い話!管理組合の役員に関する検討事項とは?

今回紹介する内容は以下の通りです。

・標準管理規約第35条「役員」の紹介
・第35条「役員」の補足・注意事項は?
・役員体制の考え方は?

まず、標準管理規約第35条の原文から、そのまま役員に関する文面を紹介します。

さらに、第35条についても、規約を解釈するうえでの補足や注意事項が標準管理規約のコメントとしてありますので、具体的に紹介します。

そして、第35条の役員についての詳細を、標準管理規約の補足・注意事項を踏まえながら紹介します。

なかでも、役員の体制をどう考えるのか、現状の管理組合の状況や、近い将来どうなっていくのか、さらには、大規模マンションの場合などでも違ってきます。

そのための考え方の工夫なども含めて紹介します。

標準管理規約第35条「役員」の紹介

まずはじめに、第35条の条文の紹介です。

通常の条文は?

(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

〇の部分は各管理組合で独自で決めることとなります。

また、区分所有者によっては、必ずしも各役職を決める必要はなく、こちらは一般的な案として確認する形です。

外部専門家を役員として選任できる場合は?

上記の通常の内容に対して、マンション管理士等の外部専門家を役員として迎え入れることも可能となっています。

その場合の内容は以下の通りです。黒い部分は通常の条文との違いの箇所です。

2 理事及び監事は、総会の決議によって、選任し、又は解任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

外部専門家は組合員ではないとの位置づけから、「組合員のうちから」という内容がありません。

それ以外は全く同様の内容となっています。

第35条「役員」の補足・注意事項は?

標準管理規約第35条においては、補足や注意事項がかなり細かく紹介されています。

役員への就任は、「なり手不足」に代表されるように、最近の管理組合においては大きな課題となっています。

具体的にどのような内容となっているのか、確認してみましょう。

役員への就任の考え方は?

外部の専門家が就任する場合の想定

前章で紹介した通り、必要に応じて、マンション管理に係る専門知識を有する外部の専門家の選任も可能とするように、「組合員」要件を外すことが考えられます。

この場合は、第4項のように、選任方法について細則で定める旨の規定を置くことが考えられます。

また、具体的な専門家としては、マンション管理士のほか弁護士、建築士などが該当するでしょう。

一定の専門的知見を有する者が想定され、当該マンションの管理上の課題等に応じて適切な専門家を選任することが重要であると、国土交通省としても捉えているようです。

居住する組合員に限定することを考える場合

平成23年改正前の標準管理規約における役員の資格要件には、「居住する組合員」が管理規約の考え方の標準でした。

しかしながら、ご承知の通り多くの管理組合で「役員のなり手不足」が発生しており、居住する区分所有者だけでは賄えない状況も発生しています。

そのため、標準管理規約からは外された形ですが、もちろん役員としてのやる気や管理組合の帰属意識という観点では、居住している区分所有者の方が望ましいと考えられます。

理事の適正人数の考え方は?

補足として、理事の員数について以下の説明があります。

1 おおむね10~15戸につき1名選出するものとする
2 員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○~○名という枠により定めることもできる

1については、輪番制によって10~15年に1度は回ってくるのと同義となります。

ちなみに、一部の役員対象を除外する区分所有者がいることを想定すると、さらに短くなる可能性はあります。

2については、「多すぎず、少なすぎず」ということで、議論可能な適正人数を考えているということになります。

あまりに多いと収拾がつかなくなり、また、3名を切ると多数決議案が理事会が成立しないためです。

大規模マンションにおける役員体制は?

前項の例になると、200戸以上では、20名以上の役員数になります。

その場合は、理事会のみでの検討が難しくなることから、理事会の中に部会を設け、理事会の業務を分担することも検討する必要があります。

また、理事会の方針決めには、理事長、副理事長による幹部会を設けることも考えられます。

この場合は、各部会と幹部会出席者が兼務することによって、意思疎通が滞らないように連携をする必要があります。

このように複雑化する場合は、理事会運営細則を別途定めることが有効です。

そして、部会を設けることを規定するとともに、理事会の決議事項を決定するのは、部会ではなく理事全員による理事会で有効になることも合わせて規定することが求められます。

法人が区分所有者である場合の注意点は?

法人が区分所有者であっても、法人自体が役員なることはできず、法人の役職員が管理組合役員としての任務にあたることとなるでしょう。

外部専門家が役員になる場合も同様であり、法人から派遣される外部専門家であっても、法人の役職員が管理組合役員として任務にあたるでしょう。

それぞれの場合も、利益相反取引にならないように注意する必要があります。

外部専門家が役員に就任する場合の注意点は?

第4項の選任方法に関する細則の内容としては、選任の対象となる外部の専門家の要件や選任の具体的な手続等を想定しています。

また、外部の専門家を役員として選任する場合には、その者が期待された能力等を発揮して管理の適正化、財産的価値の最大化を実現しているか、監視・監督する仕組みが必要となります。

そして、法人・団体から外部の専門家の派遣を受ける場合には、派遣元の法人・団体等による報告徴収や業務監査又は外部監査が行われることを選任の要件とすることが考えられます。

役員体制の考え方は?

役員の就任について、第35条は3項のみで文章も多くないにも関わらず、注意点について厚く紹介されています。

最後の章では、それらも受けて筆者も考える役員体制について考えてみます。

外部専門家を役員に登用する場合の考え方は?

標準管理規約の補足説明でも外部専門家を役員に登用する際の注意点等が紹介されていました。

外部専門家が役員にいることによって、メリットとしては

・区分所有者では考えつかないマンション管理における専門性が発揮される
・役員のなり手不足への補充手段となる
・既存役員への負担の軽減

などのメリットが考えられる反面、

・区分所有者や居住者でもないため管理組合への帰属意識が薄くなる可能性がある
・区分所有者役員よりもコストが掛かる
・総会で選解任を行うため、管理組合とマッチしなくても簡単には解任できない

などのデメリットも考えられます。

そのため、区分所有者で回せる範囲であれば、あえて外部専門家を役員に採用する必要はないかもしれません。

管理組合または理事会として、問題意識がある場合は、積極的に検討する必要があるでしょう。

役員は居住者に限るか、外部所有者も可とするか?

最新版の標準管理規約は「役員は居住者に限る」という内容にはなっていません。

そのため、居住していない区分所有者、すなわち住戸を賃借人に貸している場合や、空室であっても役員になることができます。

「居住者に限る」とした場合のメリットとしては、

・住んでいるため管理組合内の問題を的確に把握できる
・管理組合に対する帰属意識が高い
・マンションの近くで開催することから理事会に参加しやすい

などがあり、逆に外部所有者が就任した場合のデメリットと言えます。

また、外部所有者の就任を可とする場合は、

・居住している区分所有者の役員負担が減少する
・役員のなり手不足の一部解消につながる
・区分所有者に対する役員輪番制の公平性が確保できる

などが考えられます。こちらは逆に「居住者に限る」とした場合のデメリットとしても捉えられます。

したがって、こちらも将来のなり手不足への対応を考える場合、縛りを付けない考え方は有効な手段であるといえます。

大規模マンションにおける適正人数と役員組織体制は?

タワーマンションや大規模マンション等、200戸を超えるようなマンションにおける役員をどのように考えればよいのかという課題はあるでしょう。

規約の10~15戸に1人ということで考えると、500戸のタワーマンションなら、役員が33人~50人と非常に多くなります。

多過ぎとも感じる場合、20名程度までに抑えるということも考えられます。

また、役員が会社組織に近い形で編成されることが考えられます。

理事会と会社組織での取締役会との対比のような形なら、

・理事会は理事全員の多数決で決める⇔取締役会も取締役全員の多数決で決める
・理事会の部会を設置⇔取締役会の下部組織である常務会や経営会議などの設置
・理事の役割の細分化⇔取締役執行役員など、取締役と執行の兼務

のようなイメージでしょう。

管理組合における大規模な組織の中で役員が機能するかどうかは、

理事長の力量もあるものの管理組合内の役員体制や考え方

のような感じもします。

理由としては、大規模マンションであっても、理事長は輪番制により順次変わっていくことから、株式会社の代表取締役のようなリーダーシップを長期に渡って発揮できるわけではないためです。

大規模マンションであれば大手管理会社に委託をしていることがほとんどであることから、他の大規模マンションにおける管理組合の成功事例等の共有を受けながら、管理組合に合った役員体制を構築していくことが考えられます。

管理組合として近い将来を想定した役員編成の考え方が必要

今回は、標準管理規約第35条の役員について紹介しました。

説明から考えると、役員は各役職と人数のみを考えればよいという訳ではありませんでした。

今後の区分所有者構成を考えて、果たしてこのままでよいのかも検討していく必要があります。

また、大規模なマンションであれば、通常の小~中規模マンションと違った工夫も必要となります。

今回のコラムが管理組合の役員体制における検討の材料になれば幸いです。

※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版

を確認されることをお勧めします。

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