マンション管理を効率化するDX施策9選!管理組合向けのメリットも解説

マンション管理

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「マンション管理をもっと簡単にできないか?」「紙の手続きが面倒すぎる」「オンラインで済ませる方法はないの?」

こんな悩みを抱える区分所有者や居住者は少なくありません。管理会社や管理組合が見落としがちなこうした声に応えるのが、ITを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

この記事では、IT業界での経験を持つ筆者が、マンション管理を効率化し、暮らしを便利にするDX施策を9つ厳選。管理組合員にもわかりやすく、導入のメリットとともに解説します。

マンション管理を効率化するDX施策9選

今回紹介する内容は以下の通りです。

・管理会社や管理組合におけるIT化やDX化の対応状況は?
・管理組合として検討・導入したいおもなIT化、DX化施策9選
・IT化、DX化することへの管理組合側のメリットは?

各章で確認していきますが、不動産業界全体やマンション管理業界においては、対面や紙で行うやり取りがまだまだ多いのが実情です。

AIやIoT(物のインターネット化/Internet Of Things)など、デジタルで行うように変更するいわゆるDX化(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)が遅れていると言われています。

そのような中でも、若い世代を中心として、若いころからデジタル機器に触れて生活しているデジタルネイティブが増えてきています。

そのため、マンションの管理においても「もっと便利であるべきでは?」と考えている方も多いでしょう。

今回はこのようなIT化や、さらに進んだDX化事例を9個紹介するとともに、DX化することによるメリットも合わせて紹介します。

管理会社と管理組合のIT化・DX化の現状とは?

実際にマンション管理組合におけるIT化やDX化の対応状況はどのようになっているのでしょうか。

マンション管理業協会が2024年7月19日に発表した「マンション管理トレンド調査2024」の結果から、IT化の取組み状況について確認します。

また、各データは当該データから参照しています。

管理会社のIT化取り組み状況をデータで確認

まず、こちらの質問についてですが、主な傾向としては以下の通りです。

・80%の会員(268社)がWEB会議システムを導入または検討中
・64%の会員(214社)がテレワークを導入または検討中
・61%の会員(203社)が管理組合収納口座の出納にネットバンキングを導入または検討中

とのことです。

IT化の具体的な導入・検討事例

具体的な回答は以下の通りでした。

項目 導入済(社) 検討中(社)
WEB会議システムの導入 233 33
テレワーク(情報通信技術を活用した働き方) 180 34
ITを活用した理事会 141 64
管理組合収納口座の出納にネットバンキング活用 138 65
現場現金の一部キャッシュレス化(現金との併用) 69 51
重要事項調査報告書のオンライン化 65 82
電子契約サービス(BtoBまたはBtoC) 61 75
5項書面(月次報告書)の電磁的交付 52 104
デジタルサイネージ(掲示板) 49 65
管理組合ホームページの設置・提供 45 77
OCR(画像・手書き文字認識)・RPA(ロボットによる業務自動化) 45 55
現場現金の完全キャッシュレス化 44 98
支払い承認システム(理事長用) 37 78
管理組合口座の通帳レス 35 84
水道検針等のIoT化(自動読込アプリ等) 13 71
清掃ロボット(共用部分) 9 64
AIによるお客様対応(コールセンター) 9 57
遠隔管理(AI・IoTを活用したバーチャル管理員) 8 62
音声認識による議事録自動作成 8 105
点検用ドローン 7 62
その他 5 9

以下、その傾向を確認します。

IT化の傾向と今後の注目ポイント

WEB会議、テレワーク、IT理事会、ネットバンキングなど、手軽に始められる施策が上位にランクインしています。

今後注目は、議事録の自動作成(音声認識)、月次報告の電子化、現金の完全キャッシュレス化、通帳レス口座などです。

とりわけ、「音声認識による議事録自動作成」はフロント担当者にとって比較的負担になるものと想定されますが、音声認識技術の充実が追い付いていない、または使いづらい点がある所がありそうです。

「5項書面(月次報告書)の電磁的交付」は、管理会社の送付方法とともに、管理組合側で受け取りが整っていないことも想定されそうです。

AI・IoT導入における管理組合の課題

続いて、AIやIoT等の先進技術に関する導入についての課題感の状況です。

項目 回答数(社)
導入コストが高い 234
組合のインフラ整備 196
IT導入の旗振り役を担う人材がいない 122
従業員がITを使いこなせない 115
技術動向を見極めている 106
導入効果が見えない 92
業務内容に合ったIT技術や製品がない 60
その他 18
課題は特にない 31

こちらは、管理会社、管理組合双方における課題がありそうです。

特に管理組合としてコストを掛けられないために、便利であってもなかなか導入が進まない事情も考えられます。

その他の中での具体的な回答としては、

✅コスト増や個人情報漏洩の懸念
✅導入費用の承認が得にくい
✅高齢者のIT抵抗感

などもあるようです。

マンション担当者が使うITツールの実態

さらに、マンション担当者がどのようなIT機器をもって対応しているかの状況です。

項目 回答数(社)
スマートフォン 275
モバイルパソコン 160
携帯電話(ガラケー) 54
タブレット(iPad等) 54
特になし 23
その他 6

担当者の9割がスマホを使用し、ノートPCも普及が進んでいます。

また、ガラケーが入っていますが、通話のみなら端末コストも安く、保有していると考えられます。

書面電子化やIT活用の進捗状況

そして、書面の電子化状況等についての状況です。

項目 導入済(社) 検討中(社)
ITを活用した管理事務報告 46 80
ITを活用した重要事項説明 48 79
ITを活用した総会の開催 39 77
契約成立書面の電磁的交付 33 98
管理事務報告書の電磁的交付 13 118
重要事項説明書の電磁的交付 13 117
総会議案書の電磁的交付 6 91

管理事務報告や重要事項説明書、契約成立書面等、管理会社が必ず書面にて実施しなければならない事項については、電子化を検討している割合が高くなっています。

しかしながら、こちらもまだまだ導入が進んでいないのが実態です。

IT化・電子化を進める上でのハードルとは?

最後に、前項で導入が進んでいない状況もありましたが、その課題についても確認しておきます。

項目 回答数(社)
管理組合・本人の同意(承諾) 206
導入コスト 198
従業員への教育・研修 177
社内業務フロー(決裁)の整備 149
IT導入の旗振り役人材不足 127
書類(メール)チェックの負担増 84
導入効果が見えない 53
その他 17
課題は特にない 4

「管理組合・本人の同意(承諾)」「導入コスト」「従業員への教育・研修」等、管理組合と管理会社双方の課題が考えられそうです。

また、IT化・DX化に向けて、双方のITリテラシー向上も欠かせないでしょう。

管理組合が導入すべきIT化・DX化施策9選

マンション管理業協会によるアンケート結果からあるとおり、まだまだIT化、DX化は道半ばであると捉えることができます。

しかしながら、管理会社による人材不足による影響や、管理組合の利便性等、将来を見据えて今後考えていかなければならない課題もあります。

そのような中で、管理会社の業務効率化や管理組合の利便性において、導入していない場合に考えておきたい施策を9個紹介します。

また、★が多いほど必須事項としてとらえていきたい施策です。
(筆者的視点から、★あったら便利~★★★将来的には必須)

最近竣工したタワーマンションや新築マンションは比較的デジタル化に対応していますが、それ以外の高経年マンションはまだまだ非対応な所が多いと考えられます。

おもにそのような非対応マンション向けの施策として紹介します。

理事会・総会のWEB会議化(必須度:★★★)

管理組合として是非取り入れたいのは、理事会や総会のWEB会議システムでしょう。

自宅からでも理事会や総会に参加でき、忙しい人にも便利です。

現役の方であれば、普段の会社の業務でWEB会議はごく普通の取組となっているため、スムーズに理解できる仕組みであるといえます。

また、WEB会議を通じて、遠隔から参加であっても、会議参加と認められることとなります。

さらにチャットシステムと併用して使えば、発言しにくい場合にも意見をいうことができます。

一方で、会議における議決権は予め行使しておき、当日は発言や内容を見るだけに限られるなど、賛否を問う場合のルールをどのようにするのか、予め適切に決めておく必要があるでしょう。

また、管理組合としてPCやカメラ等、機材の準備も必要になってきます。

書類の電子化で効率アップ(必須度:★★★)

管理会社、管理組合双方にとって便利なのが、各種書類の電子化です。

契約書面や議事録書面の電子化と電子署名は、準備さえできれば便利で簡単に整うものと言えます。

とりわけ、普段は業務を持っている現役の理事は、仕事で電子稟議や電子契約に触れることも多いといえます。

そのため、管理組合でそれらが導入されたとしても違和感はないと考えられます。

紙の回覧や捺印より、電子化なら手間と保管コストが大幅に減ります。

クラウドサインなどの既存の契約締結システムを用いれば、回覧の順番や押印、サインの簡素化、保管まで一貫して扱うことができ、管理組合役員にとっても非常に便利です。

管理組合専用HPの活用術(必須度:★★~★★★)

区分所有者のみのアクセスが可能な、専用ホームページを配置することも考えられます。

その中に掲示板を設置して、閲覧をしてもらう形です。

新情報はメールで自動通知すれば、区分所有者にすぐ届きます。

これによって、掲示板への掲示の手間や、紙書類の準備等も省くことができます。

また、過去どのような掲示を行なったか、履歴も残ります。

そのため、管理会社や管理組合役員が提示する情報の掲載漏れも期待できます。

さらに、共有情報として重要な管理規約や使用細則等を掲載することで、区分所有者はいつでもルールを確認することができます。

サイト内の検索機能や、PDF掲示の場合は文字認識が可能なOCR機能を備えたデータを掲載するとより便利です。

ただし、住民構成によっては、高齢者等のITリテラシーが備わっていない方に対して案内漏れが無いように、掲示も並行して行う必要が発生するかもしれません。

キャッシュレス化で現金管理をゼロに(必須度:★★)

理事長や会計担当理事が管理組合の現金を扱うことは、役員とはいえリスクを伴います。

また、現預金の出し入れや入出金履歴としての記帳も手間がかかるでしょう。

そのような課題への対応策として、管理組合において小口現金を持たないことです。

立て替えが発生しても、後日振込や管理費相殺で簡単に処理できます。

IT化、DX化という観点とは少し違うかもしれませんが、リスクと管理の煩雑さを解消する手段であるといえます。

電子投票で総会参加を簡単に(必須度:★~★★)

上場企業の株主総会における議決権行使では、QRコードを読み取って議決権行使ができるシステムが一般的です。

同様のシステムを管理組合に導入するという視点で、既にシステムは存在します。

紙や対面が主流ですが、電子投票なら参加できない人でも議決権を行使でき、今後期待のシステムです。

遠隔管理員システムの可能性(必須度:★~★★)

将来的には、管理員さんの不足によって見つからない可能性があります。

今でも小規模マンションにおいては、常駐の管理員さんはおらず、複数のマンションを巡回している所もあります。

将来の中規模マンションやそれ以上のマンションも同様の対応を取る必要があるかもしれません。

ただ、小規模マンションと比べて区分所有者や住民からの要請も多いと考えられます。

その場合は、巡回時にお願いすることでは遅くなってしまう可能性があります。

そのような場合に考えられるのが、システムを使った管理員対応です。

導入は少数ですが、管理員不足が進む中、今後の解決策として注目です。

スマートロックで鍵管理をスマートに(必須度:★~★★)

比較的新しいマンションでは、スマートフォン連動やカード式、番号入力で解錠するスマートロックが進んでいます。

一方で、高経年マンションではほとんどの住戸が実物の鍵で開け閉めを行っているのが実態でしょう。

鍵の紛失や忘れによるトラブルを、スマートロックで解消できます。

清掃の自動化で人手不足解消(必須度:★)

清掃担当のなり手不足により、将来的には考えられる施策です。

マンション管理トレンド調査2024でも清掃ロボットを導入済である会社が9件に対して、検討中と回答した会社が64件あり、清掃業務の効率化の視点から近い将来には進む可能性もあります。

実際に管理会社の大和ライフネクストはこのような施策を手掛けていることで有名です。

実験段階ですが、将来の人手不足対策として有望な手段です。

また、マンション設備内に大きな段差があったり、隙間があったりする場合は、うまく清掃できない場合も考えられます。

ドローン調査で修繕を効率化(必須度:★)

マンションの壁面等を足場を組まずに調査診断をするには、目視による方法がありますが、高層階であればなかなか正確に確認できないことも考えられます。

また、屋上からロープでぶら下がって空中で調査診断をするブランコ工法がありますが、足場を組むよりもかなり費用軽減できるものの、手間や時間が掛かったり、安全性の問題も考えられます。

そのような手法を解決するための手段として、ドローンによる調査診断が考えられます。

足場が主流ですが、ドローンなら修繕間の劣化チェックに有効で、手軽な方法として今後期待されます。

ただし、足場を組んだりブランコ工法のように、調査員による壁面の打診が出来ないため、目視をより具体的に細かく見る手法になる可能性があります。

管理組合がIT化・DX化で得られる4つのメリット

マンション管理業務をIT化、DX化するには管理組合側も費用が掛かります。

一方で、将来を見据えるにあたって、IT化、DX化は非常にメリットが多いのも事実です。

具体的にどのようなメリットが考えられるのか、最後の章で紹介します。

慣れれば区分所有者の生活が便利に

直接区分所有者に影響する「理事会や総会のWEB会議化」「各種書面の電子化」「管理組合専用ホームページの活用」などに柔軟に対応できるようになれば便利になります。

ITリテラシーの課題もありますが、覚えることができればうまく使いこなすことも可能でしょう。

人材不足に強い管理組合へ

今後、マンション管理に関する人材がますます不足していく可能性があります。

現在も高齢化しているマンション管理員や、不足気味である管理会社のフロント担当者など、労働力が少なくなった場合には、さらになり手不足が深刻化する可能性もあります。

そうなった場合には、マンションによっては適切な管理を受けられないリスクがあります。

IT化が進むと、管理会社の人手不足時でも、管理組合が柔軟に対応可能です。

役員不足の解消に貢献

管理会社側の人材不足に加え、区分所有者の高齢化や外部所有者の増加が進めば、役員のなり手がいなくなる可能性があります。

WEB会議があれば、遠くに住む所有者でも理事会や総会に参加でき、役員不足を軽減します。

さらに、総会の電子投票システムがあれば、遠隔地であっても参加することができ、特別決議のような区分所有者の参加が必要となる議決においても、票を投じることも可能になります。

長期的なコスト削減の可能性

システム導入のための初期コストや、管理組合側のIT化・DX化に馴染むまでの対応の手間など、コストや手間が当初は掛かるでしょう。

IT・DX化で、印刷代、会議室代、交通費などが減り、コスト削減につながります。

また、管理組合として、将来を見据えた費用対効果をどのように捉えるか、また初期投資として許容できるものなのかは、十分に検討する必要があるといえます。

マンション管理の未来を切り開くIT化・DX化

マンション管理トレンド調査2024」のデータをもとに、管理組合に役立つDX施策9つをご紹介しました。

新築やタワーマンションでは進んでいるIT化ですが、多くの管理組合ではまだまだこれから。設備や課題に合わせて選べる施策を取り入れれば、人材不足にも備えつつ、効率的な管理が実現できます。

将来を見据えた一歩を、今こそ踏み出してみませんか?

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