検討・導入したいマンション管理DX化施策9選【メリットも紹介】

マンション管理

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パソコンやスマホを使って、もう少しマンション管理について便利にならないか?

または、

紙でのやり取りが煩雑過ぎて手間がかかり面倒だ

さらには、

わざわざ現地に行かなくても、オンラインで対応できる手段があるのではないか??

このように考えている区分所有者も多いと思います。

これらは、管理会社や管理組合はなかなか気づかない視点もありますが、区分所有者や賃貸で住んでいる居住者は、もっと便利に自宅マンションのことができればよいと考えています。

今回はこのようなマンション管理が便利になる、ITを活用したDXの観点を、IT業界にも在籍した経験がある筆者が紹介します。

具体的に、導入すれば区分所有者や居住者が満足するような施策を9個挙げてみます。

  1. 検討・導入したいマンション管理DX化施策9選【メリットも紹介】
  2. 管理会社や管理組合におけるIT化やDX化の対応状況は?
    1. マンション管理業協会会員の管理会社におけるIT化の取組状況は?
    2. IT化の取組状況の具体的な回答は?
    3. IT化取組のおもな傾向は?
    4. AI・IoT等先進技術における課題と思っているものは?
    5. マンション担当者のIT環境は?
    6. ITの活用、書面の電子化等についての導入状況は?
    7. IT重説や書面の電子化等を導入、または検討する上での課題と感じることは?
  3. 管理組合として検討・導入したいおもなIT化、DX化施策9選
    1. 理事会や総会のWEB会議化 ★★★
    2. 各種書面の電子化 ★★★
    3. 管理組合専用ホームページの活用 ★★~★★★
    4. 管理組合で小口現金を持たないキャッシュレス化 ★★
    5. 管理組合総会の電子投票 ★~★★
    6. システムを使った遠隔管理員 ★~★★
    7. IoTによるスマートロックシステム ★~★★
    8. 清掃システムの自動化 ★
    9. ドローンによる調査診断 ★
  4. IT化、DX化することへの管理組合側のメリットは?
    1. 区分所有者が慣れれば便利である
    2. マンション管理に対する人材不足に管理組合側としても対応できる
    3. 役員のなり手不足に寄与する
    4. 長い目で見るとコスト減につながる可能性がある
  5. IT化・DX化はマンション管理の将来を見据えた重要施策

検討・導入したいマンション管理DX化施策9選【メリットも紹介】

今回紹介する内容は以下の通りです。

・管理会社や管理組合におけるIT化やDX化の対応状況は?
・管理組合として検討・導入したいおもなIT化、DX化施策9選
・IT化、DX化することへの管理組合側のメリットは?

各章で確認していきますが、不動産業界全体やマンション管理業界においては、対面や紙で行うやり取りがまだまだ多いのが実情です。

AIやIoT(物のインターネット化/Internet Of Things)など、デジタルで行うように変更するいわゆるDX化(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)が遅れていると言われています。

そのような中でも、若い世代を中心として、若いころからデジタル機器に触れて生活しているデジタルネイティブが増えてきています。

そのため、マンションの管理においても「もっと便利であるべきでは?」と考えている方も多いでしょう。

今回はこのようなIT化や、さらに進んだDX化事例を9個紹介するとともに、DX化することによるメリットも合わせて紹介します。

管理会社や管理組合におけるIT化やDX化の対応状況は?

実際にマンション管理組合におけるIT化やDX化の対応状況はどのようになっているのでしょうか。

マンション管理業協会が2024年7月19日に発表した「マンション管理トレンド調査2024」の結果から、IT化の取組み状況について確認します。

また、各データは当該データから参照しています。

マンション管理業協会会員の管理会社におけるIT化の取組状況は?

まず、こちらの質問についてですが、主な傾向としては以下の通りです。

・80%の会員(268社)がWEB会議システムを導入または検討中
・64%の会員(214社)がテレワークを導入または検討中
・61%の会員(203社)が管理組合収納口座の出納にネットバンキングを導入または検討中

とのことです。

IT化の取組状況の具体的な回答は?

具体的な回答は以下の通りでした。

項目 導入済 検討中
WEB会議システムの導入 233 33
テレワーク(情報通信技術を活用した働き方) 180 34
ITを活用した理事会 141 64
管理組合収納口座の出納にネットバンキング活用 138 65
現場現金の一部キャッシュレス化(現金との併用) 69 51
重要事項調査報告書のオンライン化 65 82
電子契約サービス(BtoBまたはBtoC) 61 75
5項書面(月次報告書)の電磁的交付 52 104
デジタルサイネージ(掲示板) 49 65
管理組合ホームページの設置・提供 45 77
OCR(画像・手書き文字認識)・RPA(ロボットによる業務自動化) 45 55
現場現金の完全キャッシュレス化 44 98
支払い承認システム(理事長用) 37 78
管理組合口座の通帳レス 35 84
水道検針等のIoT化(自動読込アプリ等) 13 71
清掃ロボット(共用部分) 9 64
AIによるお客様対応(コールセンター) 9 57
遠隔管理(AI・IoTを活用したバーチャル管理員) 8 62
音声認識による議事録自動作成 8 105
点検用ドローン 7 62
その他 5 9

以下、その傾向を確認します。

IT化取組のおもな傾向は?

「WEB会議システムの導入」「(フロント担当の)テレワーク」「ITを活用した理事会」「管理組合収納口座の出納にネットバンキング活用」と導入がしやすいものは上位に並んでいる形です。

一方で、これから導入をしたい、検討中のものとして「音声認識による議事録自動作成」「5項書面(月次報告書)の電磁的交付」「現場現金の完全キャッシュレス化」「管理組合口座の通帳レス」などが挙がっています。

とりわけ、「音声認識による議事録自動作成」はフロント担当者にとって比較的負担になるものと想定されますが、音声認識技術の充実が追い付いていない、または使いづらい点がある所がありそうです。

「5項書面(月次報告書)の電磁的交付」は、管理会社の送付方法とともに、管理組合側で受け取りが整っていないことも想定されそうです。

AI・IoT等先進技術における課題と思っているものは?

続いて、AIやIoT等の先進技術に関する導入についての課題感の状況です。

項目 回答数
導入コストが高い 234
組合のインフラ整備 196
IT導入の旗振り役を担う人材がいない 122
従業員がITを使いこなせない 115
技術動向を見極めている 106
導入効果が見えない 92
業務内容に合ったIT技術や製品がない 60
その他 18
課題は特にない 31

こちらは、管理会社、管理組合双方における課題がありそうです。

特に管理組合としてコストを掛けられないために、便利であってもなかなか導入が進まない事情も考えられます。

その他の中での具体的な回答としては、

・管理組合のコスト増、個人情報漏洩の恐れ
・導入コストの負担について管理組合の承認が取りづらい
・高齢者が多く、導入に前向きでない

などもあるようです。

マンション担当者のIT環境は?

さらに、マンション担当者がどのようなIT機器をもって対応しているかの状況です。

項目 回答数
スマートフォン 275
モバイルパソコン 160
携帯電話(ガラケー) 54
タブレット(iPad等) 54
特になし 23
その他 6

スマホ対応がほとんどですが、モバイルパソコン(ノートPC)も比較的進んでいる状況です。

また、ガラケーが入っていますが、通話のみなら端末コストも安く、保有していると考えられます。

ITの活用、書面の電子化等についての導入状況は?

そして、書面の電子化状況等についての状況です。

項目 導入済 検討中
ITを活用した管理事務報告 46 80
ITを活用した重要事項説明 48 79
ITを活用した総会の開催 39 77
契約成立書面の電磁的交付 33 98
管理事務報告書の電磁的交付 13 118
重要事項説明書の電磁的交付 13 117
総会議案書の電磁的交付 6 91

管理事務報告や重要事項説明書、契約成立書面等、管理会社が必ず書面にて実施しなければならない事項については、電子化を検討している割合が高くなっています。

しかしながら、こちらもまだまだ導入が進んでいないのが実態です。

IT重説や書面の電子化等を導入、または検討する上での課題と感じることは?

最後に、前項で導入が進んでいない状況もありましたが、その課題についても確認しておきます。

項目 回答数
管理組合・本人の同意(承諾) 206
導入コスト 198
従業員への教育・研修 177
社内業務フロー(決裁)の整備 149
IT導入の旗振り役人材不足 127
書類(メール)チェックの負担増 84
導入効果が見えない 53
その他 17
課題は特にない 4

「管理組合・本人の同意(承諾)」「導入コスト」「従業員への教育・研修」等、管理組合と管理会社双方の課題が考えられそうです。

また、IT化・DX化に向けて、双方のITリテラシー向上も欠かせないでしょう。

管理組合として検討・導入したいおもなIT化、DX化施策9選

マンション管理業協会によるアンケート結果からあるとおり、まだまだIT化、DX化は道半ばであると捉えることができます。

しかしながら、管理会社による人材不足による影響や、管理組合の利便性等、将来を見据えて今後考えていかなければならない課題もあります。

そのような中で、管理会社の業務効率化や管理組合の利便性において、導入していない場合に考えておきたい施策を9個紹介します。

また、★が多いほど必須事項としてとらえていきたい施策です。
(筆者的視点から、★あったら便利~★★★将来的には必須)

最近竣工したタワーマンションや新築マンションは比較的デジタル化に対応していますが、それ以外の高経年マンションはまだまだ非対応な所が多いと考えられます。

おもにそのような非対応マンション向けの施策として紹介します。

理事会や総会のWEB会議化 ★★★

管理組合として是非取り入れたいのは、理事会や総会のWEB会議システムでしょう。

自宅マンションにいなくても、理事会や総会に参加できると非常に便利です。

現役の方であれば、普段の会社の業務でWEB会議はごく普通の取組となっているため、スムーズに理解できる仕組みであるといえます。

また、WEB会議を通じて、遠隔から参加であっても、会議参加と認められることとなります。

さらにチャットシステムと併用して使えば、発言しにくい場合にも意見をいうことができます。

一方で、会議における議決権は予め行使しておき、当日は発言や内容を見るだけに限られるなど、賛否を問う場合のルールをどのようにするのか、予め適切に決めておく必要があるでしょう。

また、管理組合としてPCやカメラ等、機材の準備も必要になってきます。

各種書面の電子化 ★★★

管理会社、管理組合双方にとって便利なのが、各種書類の電子化です。

契約書面や議事録書面の電子化と電子署名は、準備さえできれば便利で簡単に整うものと言えます。

とりわけ、普段は業務を持っている現役の理事は、仕事で電子稟議や電子契約に触れることも多いといえます。

そのため、管理組合でそれらが導入されたとしても違和感はないと考えられます。

書面を回覧して捺印を押したりすることに比べ、電子で扱うことは手間や保管の面でも格段に効率化が可能です。

クラウドサインなどの既存の契約締結システムを用いれば、回覧の順番や押印、サインの簡素化、保管まで一貫して扱うことができ、管理組合役員にとっても非常に便利です。

管理組合専用ホームページの活用 ★★~★★★

区分所有者のみのアクセスが可能な、専用ホームページを配置することも考えられます。

その中に掲示板を設置して、閲覧をしてもらう形です。

新たな情報が掲載される場合は、区分所有者が登録したメールアドレス宛に更新情報として配信するのが良いでしょう。

これによって、掲示板への掲示の手間や、紙書類の準備等も省くことができます。

また、過去どのような掲示を行なったか、履歴も残ります。

そのため、管理会社や管理組合役員が提示する情報の掲載漏れも期待できます。

さらに、共有情報として重要な管理規約や使用細則等を掲載することで、区分所有者はいつでもルールを確認することができます。

サイト内の検索機能や、PDF掲示の場合は文字認識が可能なOCR機能を備えたデータを掲載するとより便利です。

ただし、住民構成によっては、高齢者等のITリテラシーが備わっていない方に対して案内漏れが無いように、掲示も並行して行う必要が発生するかもしれません。

管理組合で小口現金を持たないキャッシュレス化 ★★

理事長や会計担当理事が管理組合の現金を扱うことは、役員とはいえリスクを伴います。

また、現預金の出し入れや入出金履歴としての記帳も手間がかかるでしょう。

そのような課題への対応策として、管理組合において小口現金を持たないことです。

やむを得ず役員や区分所有者が管理組合経費を立て替える場合は、必要分をその区分所有者宛に後日振り込むことや、引き落とし管理費からの相殺等で対応することもできるでしょう。

IT化、DX化という観点とは少し違うかもしれませんが、リスクと管理の煩雑さを解消する手段であるといえます。

管理組合総会の電子投票 ★~★★

上場企業の株主総会における議決権行使では、QRコードを読み取って議決権行使ができるシステムが一般的です。

同様のシステムを管理組合に導入するという視点で、既にシステムは存在します。

まだまだ紙やリアル参加による議決権行使が多いですが、リアルに出席できない議決権行使による総会参加も含めて、今後はこのようなシステムも有効と考えられます。

システムを使った遠隔管理員 ★~★★

将来的には、管理員さんの不足によって見つからない可能性があります。

今でも小規模マンションにおいては、常駐の管理員さんはおらず、複数のマンションを巡回している所もあります。

将来の中規模マンションやそれ以上のマンションも同様の対応を取る必要があるかもしれません。

ただ、小規模マンションと比べて区分所有者や住民からの要請も多いと考えられます。

その場合は、巡回時にお願いすることでは遅くなってしまう可能性があります。

そのような場合に考えられるのが、システムを使った管理員対応です。

まだまだ導入は少ないですが、今後管理員の不足に合わせて増えてくる可能性もあるでしょう。

IoTによるスマートロックシステム ★~★★

比較的新しいマンションでは、スマートフォン連動やカード式、番号入力で解錠するスマートロックが進んでいます。

一方で、高経年マンションではほとんどの住戸が実物の鍵で開け閉めを行っているのが実態でしょう。

住民にとっては鍵の紛失リスクがあったり、忘れたときに入れないなどが考えられます。

そのようなリスクを回避するためにスマートロックという手段も考えられます。

清掃システムの自動化 ★

清掃担当のなり手不足により、将来的には考えられる施策です。

マンション管理トレンド調査2024でも清掃ロボットを導入済である会社が9件に対して、検討中と回答した会社が64件あり、清掃業務の効率化の視点から近い将来には進む可能性もあります。

実際に管理会社の大和ライフネクストはこのような施策を手掛けていることで有名です。

まだまだ実験段階という点もあるかもしれませんが、将来的には想定される手段と言えるでしょう。

また、マンション設備内に大きな段差があったり、隙間があったりする場合は、うまく清掃できない場合も考えられます。

ドローンによる調査診断 ★

マンションの壁面等を足場を組まずに調査診断をするには、目視による方法がありますが、高層階であればなかなか正確に確認できないことも考えられます。

また、屋上からロープでぶら下がって空中で調査診断をするブランコ工法がありますが、足場を組むよりもかなり費用軽減できるものの、手間や時間が掛かったり、安全性の問題も考えられます。

そのような手法を解決するための手段として、ドローンによる調査診断が考えられます。

街中のマンションでは足場を組むことが多く、まだドローンによる調査診断はなかなか見ないですが、大規模修繕工事の間の期間に劣化がどれぐらい進行しているかをチェックする手法としては、比較的有効的な手段かもしれません。

ただし、足場を組んだりブランコ工法のように、調査員による壁面の打診が出来ないため、目視をより具体的に細かく見る手法になる可能性があります。

IT化、DX化することへの管理組合側のメリットは?

マンション管理業務をIT化、DX化するには管理組合側も費用が掛かります。

一方で、将来を見据えるにあたって、IT化、DX化は非常にメリットが多いのも事実です。

具体的にどのようなメリットが考えられるのか、最後の章で紹介します。

区分所有者が慣れれば便利である

直接区分所有者に影響する「理事会や総会のWEB会議化」「各種書面の電子化」「管理組合専用ホームページの活用」などに柔軟に対応できるようになれば便利になります。

ITリテラシーの課題もありますが、覚えることができればうまく使いこなすことも可能でしょう。

マンション管理に対する人材不足に管理組合側としても対応できる

今後、マンション管理に関する人材がますます不足していく可能性があります。

現在も高齢化しているマンション管理員や、不足気味である管理会社のフロント担当者など、労働力が少なくなった場合には、さらになり手不足が深刻化する可能性もあります。

そうなった場合には、マンションによっては適切な管理を受けられないリスクがあります。

前章で紹介したようなIT化が進んでいると、仮に人材不足でこれまでのようにマンション管理に対して管理会社がフォローできなくなった場合であっても、管理組合として柔軟に対応できることとなります。

役員のなり手不足に寄与する

管理会社側の人材不足に加え、区分所有者の高齢化や外部所有者の増加が進めば、役員のなり手がいなくなる可能性があります。

WEB会議システムが導入できれば、仮に所有しているマンションに住んでいなくても、理事会や総会に参加することができます。

さらに、総会の電子投票システムがあれば、遠隔地であっても参加することができ、特別決議のような区分所有者の参加が必要となる議決においても、票を投じることも可能になります。

長い目で見るとコスト減につながる可能性がある

システム導入のための初期コストや、管理組合側のIT化・DX化に馴染むまでの対応の手間など、コストや手間が当初は掛かるでしょう。

しかしながら、IT・DX活用に従って、従来掛かていた印刷代や集まって会議をする会議室代・お茶代、さらには管理会社のフロント担当者が管理組合の現場に来る交通費などの費用が削減されます。

また、管理組合として、将来を見据えた費用対効果をどのように捉えるか、また初期投資として許容できるものなのかは、十分に検討する必要があるといえます。

IT化・DX化はマンション管理の将来を見据えた重要施策

マンション管理業協会が発表した「マンション管理トレンド調査2024」も踏まえながら、マンション管理のDX化施策として有効施策を9つ紹介しました。

新築マンションや、タワーマンションではすでに取り入れている施策も多いでしょう。

しかしながら、大多数はまだIT化・DX化が途上な管理組合も多いと考えられ、さらに紹介した以外にも施策は考えられるでしょう。

マンションの設備や管理組合の課題に合わせて、どのような施策を導入するかは、来るべき将来の人材不足も想定ながら、継続的にマンション管理効率化施策として検討すべきと考えられます。

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