【規約解説】理事長はマンション内の必要箇所への立入りが許される?

管理規約解説

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理事長の権限として、マンション内における必要箇所への立入りが許される…?

または、

必要箇所というのは、バルコニー等の専用使用部分だけではなく、専有部分も含まれるのか?

さらには、

立入りが許されるのはどういったケースか?

このような疑問を持っている理事長を含めた理事会のメンバーも多いかと思います。

確かに、規約には定められていますが、どういったことなのでしょうか…?

今回から、国土交通省が提示する、標準管理規約の単棟型ひな形にも書かれている条項を1条ずつ取り上げてみます。

条項を第1条から順番に取り上げるという訳ではなく、話題性が高い条項をピックアップしながら取り上げていきます。

その第一回目は、標準管理規約第23条の「必要箇所への立入り」という項目です。

そして、普段から標準管理規約を読み込んでいるマンション管理士の筆者がその解釈の方法などを含め、具体的に解説します。

【規約解説】理事長はマンション内の必要箇所への立入りが許される?

今回紹介する内容は以下の通りです。

・標準管理規約第23条の解説
・想定される立入り事例は?
・合鍵を作ってよいものか?

まず、標準管理規約第23条の内容を取り上げ、詳細を解説します。

さらに、その条項に当てはまる、管理組合における具体的な事例を含めて紹介します。

当該標準管理規約の解説コラムは、量もあるため比較的コンパクトにまとめて解説したいと考えています。

そのため、章立ても2~3章程度で分かりやすく解説することを心がけていきたいと思います。

標準管理規約第23条の解説

まずはじめに、標準管理規約第23条の内容を見ていきましょう。

(必要箇所への立入り)
第23条 前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
5 立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。

上記の内容から、解釈できることを紹介します。

居住者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入り請求ができる?

条文第1項にある「前2条により管理を行う者」は、第21条(敷地及び共用部分等の管理)を指しており、その中の6項には

理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

とあります。

理事長の権限で、災害等の緊急時においては、保存行為(現状維持を目的とした行為)を行うことができるというものです。

正当な理由がなければ拒否できない…!

第2項には、拒否するための正当な理由がなければ認めなければならないという条文です。

災害時においては、緊急を要する救助などが想定され、そのためには理事長が室内に入ってでも、対応することができる権限があるということとなります。

仮に拒否した場合で、対応が手遅れになって損害が発生したら、管理組合の責任ではなく、拒否した居住者等の責任で損害賠償をする必要があります。

拒否したとしても災害、事故で緊急に入らなければならない時は理事長や委任した者が入ることができる!

第3項で拒否したにも関わらず、緊急時で重大な影響を及ぼすこととなる場合には、理事長または理事長が委任した方が強制的に立ち入ることができるという内容です。

後述の事例でも説明しますが、管理組合において人命にかかわる事態に遭遇した場合に、理事長やは

「専有部分や専用使用部分は、他人のプライバシーがあるから入れない」

といったようなことは抜きにしてでも、入って助ける必要があります。

また、管理組合が管理会社と締結する管理委託契約書にも「専有部分等への立入り」として、管理会社の管理員さんや、フロント担当者が入ることができるように定められていることが一般的です。

想定される立入り事例は?

前章から、大体察しは付くかと思いますが、この条項では具体的にどのようなことが想定されるのか、考えてみます。

火災等の事故が起きた

火災の場合は、理事長以前に消防署による緊急対応となることも多いでしょう。

理事長が無理に入ると二次被害も想定されるためです。

その際は誰が見ても、人命救助を最優先しなければならないため、規約への定めがなくても普通に入室する必要があります。

高齢者が急に体調が悪くなった、または暫く音沙汰がない

マンションの居住者の中には、高齢者の一人暮らしも増えてきています。

そのため、室内で体調が悪く動けなくなった時や暫くは反応がない場合は、理事長または、管理員さんや管理会社の担当フロントなど、委任した人が入って様子を見なければならない時もあるでしょう。

そのようなケースでも、「専有部分だから入れない」と言っていられない状況にあると言えます。

なんらかの要因で室内から出れなくなった

鍵が故障して開かなくなってしまったなど、住戸から外に出てないケースもあるかもしれません。

その場合は、外から無理やり開けて中に入らないと、出られないままになってしまう可能性があります。

大事故ではないものの、居住者にとってはちょっとした事故といえるため、理事長または委任した方が入っていくことは想定されます。

専有部分や専用使用部分から漏水が発生している

留守の間に、上の階の住戸から、急に水が階下に漏れてしまっている場合はどう対応すればよいでしょうか?

漏水している居住者が帰宅するまで待っていると、下の階の居住者はますます被害が広がる可能性が考えられます。

ベランダからの漏水だとまだ入りやすいですが、室内であっても、このような事態によって大きな影響を及ぼすことになる場合は、理事長または委任した方が入って行き、業者対応を含め止水することが必要となるでしょう。

合鍵を作ってよいものか?

この点は標準管理規約の説明では、

第4項の規定の実効性を高めるため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることも考えられるが、プライバシーの問題等があることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要がある。

と記載されています。

そのため、個別の事情として例えば

・1人暮らしまたは、誰かの助けが必要な高齢者世帯
・長期不在となる居住者
・物件売却のため居住者が不在な状態

などの場合は、管理員さんや管理会社など、信頼できる人に合鍵を預けることは考えられます。

ただし、不在の場合は、事前届出のうえ、居住者の貴重品等の管理を徹底するなどのルールを取り決めておくことが重要でしょう。

緊急事態が発生した際には立入りが認められる

今回は第23条の「必要箇所への立入り」について紹介しました。

当該条項は、管理計画認定制度においても、審査の際に必ず織り込まれていなければならない重要な条項です。

緊急事態が起こった場合、管理組合として対策を講じることができる仕組みになっていることが確認されます。

そのためもあって、今回取り上げましたが、今後の規約改正時の参考にして頂ければと思っています。

※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版

を確認されることをお勧めします。

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