【規約解説】マンション標準管理規約第11条とは?「分割請求・単独処分の禁止」を徹底解説!

管理規約解説

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マンションの管理規約には、区分所有者が自由に変更できないルールがいくつかあります。

その中でも重要なのが、「分割請求及び単独処分の禁止」(標準管理規約第11条)です。

このルールにより、共用部分の分割や、専有部分と敷地の持分を別々に売却することは禁止されています。

しかし、具体的にどのようなケースが該当するのか、また国土交通省が補足説明している住戸の賃貸や倉庫・駐車場の売却 についても、区分所有者や管理組合役員はしっかり理解しておく必要があります。

本記事では、マンション標準管理規約第11条の条文をマンション管理士の筆者がわかりやすく解説 するとともに、管理組合や区分所有者が注意すべきポイント について詳しく紹介します。

「共用部分の分割はできるのか?」「専有部分と敷地を別々に売れる?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。

【規約解説】分割請求及び単独処分の禁止 標準管理規約第11条を徹底解説!

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・マンション標準管理規約第11条のポイントと適用範囲
・国土交通省の見解|マンション標準管理規約第11条の補足説明
・「分割請求・単独処分の禁止」に関する管理組合・区分所有者の注意点

まず、最初の章では標準管理規約第11条の条文から「分割請求及び単独処分の禁止」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第11条「分割請求及び単独処分の禁止」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第11条のポイントと適用範囲

マンション標準管理規約第11条では、共有部分について、分割して請求できないことと、専有部分と切り離して共有部分を扱えないことを定めています。

以下、条文とともに記載内容を解説します。

(分割請求及び単独処分の禁止)
第11条 区分所有者は、敷地又は共用部分等の分割を請求することはできない。
2 区分所有者は、専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない。

【第1項】マンションの共用部分・敷地は「分割請求できない」理由とは?

マンションの敷地や共用部分は、すべての区分所有者が共同で所有するものです。
そのため、一人の所有者が「敷地を分けて自分だけのものにしたい」「共用部分を切り離して売りたい」といった請求をすることは認められていません。
もし、こうした分割が可能になると、マンション全体の管理や維持に大きな影響が出てしまうため、このような制限が設けられています。
NGなケースの具体例としては、

「マンションの駐車場の一部を自分だけの所有にして売却したい」
「エントランスホールの一部を自分の部屋に組み込みたい」

などが該当します。

マンションの区分所有者であれば、なんとなくNGであることがイメージできるかと思います。

【第2項】専有部分と共用部分の持分は「分離できない」のが原則

マンションの区分所有者は、「専有部分(自分の住戸)」と「敷地・共用部分の持分(マンション全体の一部を持つ権利)」を分けて処分することはできません。

つまり、住戸だけを売ったり、敷地の権利だけを担保にしたりすることは認められません。

もし、これが許されると、「住戸の所有者」と「マンションの敷地の所有者」がバラバラになり、管理や修繕の意思決定が複雑になってしまうため、このような規定が設けられています。

NGなケースの具体例としては

「部屋は売らずに、敷地の持分だけ売却する」
「部屋はそのままで、敷地持分だけを担保にしてお金を借りる」
などが該当します。

国土交通省の見解|マンション標準管理規約第11条の補足説明

次に、第11条の条文に対して、国土交通省が補足している事項が2点あります。

それぞれについて、筆者の解説付きで紹介します。

【賃貸OK】住戸を他人に貸すことは問題ない

まず、1点目の補足事項は以下の点になります。

① 住戸を他の区分所有者又は第三者に貸与することは本条の禁止に当たらない。

この規定は、あくまで「マンションの敷地や共用部分をバラバラにして売ること」を禁止しているので、 「部屋を貸すこと」は問題ないということです。

例えば、賃貸に出したり、Airbnbのような短期貸しをしたりすることは、このルールには違反しません。

ただし、管理規約によっては「民泊は禁止」「短期貸しは禁止」といったルールがある場合もあるので、マンションごとのルールは確認が必要です。

✅ OKなケース:「自分の部屋を賃貸として貸し出す」
✅ OKなケース:「親族に無償で住まわせる」
❌ NGなケース:「自分の部屋の一部(1部屋だけ)を別の人に売却する」

【要注意】倉庫や駐車場の単独売却は「原則NG」!

次に、2点目の補足として、倉庫や車庫も専有部分として所有者がいる場合の補足があります。

② 倉庫又は車庫も専有部分となっているときは、倉庫(車庫)のみを他の区分所有者に譲渡する場合を除き、住戸と倉庫(車庫)とを分離し、又は専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない旨を規定する。

マンションの 「倉庫」や「車庫(駐車場)」も専有部分とされている場合、原則として「住戸」と「倉庫・車庫」は セットで扱う 必要があります。

つまり、「住戸は持ったまま、倉庫(車庫)だけ売る」ということは認められません。

ただし、マンションの規約で「倉庫や車庫だけを他の区分所有者に譲渡できる」と定めている場合は、その範囲であればOKです。

✅ OKなケース:「自分の駐車場を、同じマンションの別の住人に売る(規約で認められている場合)」
❌ NGなケース:「住戸はそのまま持ち、駐車場を第三者に売る」
❌ NGなケース:「住戸と倉庫を別々に売る」

以上、国土交通省が補足する注意点について、解説しました。

最後の章ではこれまで紹介した内容に関連する事項で、管理組合や区分所有者が注意すべき事項を、独自の視点から紹介します。

「分割請求・単独処分の禁止」に関する管理組合・区分所有者の注意点

最後の章では、管理規約の原本等に関する条文や国土交通省の見解を踏まえて、筆者の独自の視点から、マンション管理組合や区分所有者がにおける注意事項を、いくつか紹介します。

【売買時の盲点】駐車場・倉庫を売る前に「管理規約+使用細則」を必ず確認

マンションによっては、駐車場や倉庫が賃貸ではなく専有部分として区分所有者本人のものになっている所もあります。

その場合は、管理規約に加えて、使用細則が設定されている所も多いでしょう。

その中に、駐車場や倉庫の売買に関する条文も定められていると考えられます。

例えば、筆者が関与しているマンションの中にも、トランクルームが所有権となっている所があります。

その場合は、当然区分所有者以外に対して売却できないものとなっているうえ、空きが出た場合の区分所有者に対する売り出しもありました。

トランクルーム所有者が部屋を売却する場合には、一緒にトランクルームも手放す必要があります。

購入者がトランクルームは不要で部屋のみで良いとなる場合は、このような空きが出た場合の対応も想定されます。

確認ポイント

・駐車場や倉庫の「専有部分」が管理規約でどう扱われているか?
・売却時に「区分所有者間での譲渡のみ可」などの制限がないか?
・使用細則に「区分所有者が手放す場合のルール」が明記されているか?

住戸を貸すなら「住居利用限定」をチェック!オフィス利用NGの可能性も

また、他人へ住戸を貸与する場合も、注意が必要です。

国土交通省の補足説明にもあった通り、多くの管理組合では貸与が認められています。

この貸与は、「住居として使用する」場合に限定されている場合もあります。

すなわち、マンションの一室をオフィスとして借りて、頻繁に従業員が出入りすることとなると、他の住民への影響も出てきます。

そのため、区分所有者が貸与する場合、または賃借人が借りる場合双方においても、マンションの管理規約や使用細則を十分注意する必要があります。

確認ポイント

・「住居としてのみ使用可」などの規約がないか?
・オフィスや事業用としての賃貸が認められているかどうか?
・賃貸借契約を結ぶ際に「管理組合への届出」が必要か?

【民泊禁止が主流】短期貸し・Airbnb運用を考えている人は要注意

空き住戸については、賃貸よりもさらに回転率のよいAirBnBなどの民泊として使用したいと考える区分所有者も多いようです。

しかしながら、

・セキュリティの低下(知らない人が頻繁に出入りする)
・共用部分の利用マナーの問題(ゴミ出しや騒音トラブル)
・マンション全体の資産価値の低下

などの影響も懸念されます。

そのため、管理規約で民泊を禁止しているマンションが大半となっています。

住まずに所有しているマンションについては、十分に規約を確認することで、使用上の注意を守っていくことが必要です。

確認ポイント

・管理規約に「民泊禁止」と明記されているか?
・短期貸し(ウィークリーマンション・マンスリーマンション・AirBnBなど)は許可されているか?
・管理組合の承認が必要なケースがあるか?

【共有持分の落とし穴】「敷地持分だけを売る」は不可!建て替え時に影響大

ほとんどの管理組合では設定されていることと考えられますが、基本的な点を最後に紹介します。

マンションの敷地や共用部分の「持分」は、 専有部分(住戸)とセットで所有するものです。

そのため、「住戸はそのまま所有し、敷地の持分だけを売却する」ことはできません。

これは、 マンション全体の資産価値や管理の安定性を守るためです。

例えば、一部の住戸が敷地の持分を手放してしまうことを想定した場合、

・建て替えや修繕の決議が困難になる
・マンション全体の意思決定がスムーズに進まなくなる

といったリスクが生じます。

確認ポイント

・敷地持分の売買が禁止されていることを把握する
・将来的にマンションを建て替え・売却する場合、区分所有者の合意形成が重要

【結論】区分所有者は共用部分を分割できない!

今回は、マンション標準管理規約第11条の概要とともに、国土交通省が補足すべき事項、さらには筆者が独自の観点から注意すべき事項について紹介しました。

今回のマンションの部屋以外の倉庫や駐車場の専有部分、ならびに共有部分について、分割請求及び単独処分の禁止は頻繁に出てくることではないかもしれません。

しかしながら、一部の倉庫や駐車場が専有部分になっているマンションや、将来の建替えを想定した場合には、非常に重要な論点になる可能性があります。

また、普段住んでいる区分所有者なら「共有部分が分割できない」ことは簡単にイメージできることでしょう。

今回はその裏付けとなる理由なども踏まえて紹介しました。

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