タワマンはまだ増える|全国319棟・10.7万戸が示す未来

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「タワーマンションの時代は終わりに近づいているのではないか」——そう感じている方もいるかもしれません。価格の高騰、金利の動向、建設コストの上昇といったニュースが続き、新しいタワーマンションの供給が落ち着いてきたのではないかという印象を持つのは、ある意味自然なことです。

ところが、最新のデータはまったく異なる現実を示しています。

不動産経済研究所が2026年6月に発表した「超高層マンション動向2026」によると、2026年以降に全国で完成を予定している超高層マンション(20階建て以上)は319棟・10万7,408戸にのぼります。前回調査(2025年3月末時点)との比較では、103棟・2万6,107戸もの大幅な増加です。

この数字は単なる住宅供給のニュースではありません。マンション管理士の立場からこの数字を読み解くと、見えてくるのは「これから供給される超高層マンションが、数十年後にどのような管理課題に直面するか」という問いです。

建てる側の話は、世の中にたくさんあります。本稿では、「建てた後、誰が、どのように維持していくのか」という管理の視点からこのデータを考えます。

本記事では2026年版データをもとに「供給が続くことで将来の管理課題が拡大する可能性」を考察しています。

一方、前回の2025年版記事では、修繕積立金や管理費の上昇、いわゆる「タワマン30年後問題」を中心に解説しています。あわせて読むことで、供給動向と将来の管理課題の両方を理解しやすくなるでしょう。

タワマン供給は減っていない|全国319棟・10.7万戸の衝撃

前回調査から大幅増となった供給計画

今回の調査結果をあらためて整理すると、その規模感がよくわかります。2026年以降に完成見込みの超高層マンションは全国で319棟・10万7,408戸。これは前回調査から103棟・2万6,107戸の増加です。約1年間の調査更新でこれほどの増加が生じたという事実は、計画段階にあるプロジェクトが依然として多数存在していることを示しています。

エリア別に見ると、首都圏が177棟・7万3,713戸(全国シェア68.6%)、近畿圏が51棟・1万6,630戸(同15.5%)、その他地区が91棟・1万7,065戸(同15.9%)という内訳です。

ここで注目したいのが、前回調査からの変化です。首都圏のシェアは前回の76.2%から68.6%へと低下し、近畿圏は12.0%から15.5%へ拡大しています。首都圏への一極集中という構造が変化しつつあり、供給の地理的分散が進んでいることが読み取れます。

マンション管理士の視点でこの変化を捉えると、「超高層マンション特有の管理課題が全国へ広がりつつある」と感じます。これまで首都圏で蓄積されてきた超高層マンション管理の経験やノウハウが、全国各地の管理組合でも必要とされる時代が来ているのです。

首都圏だけでなく全国へ広がる超高層マンション

「超高層マンション=東京・大阪」という認識は、もはや過去のものになりつつあります。今回の調査では、その他地区の計画が91棟・1万7,065戸にのぼっており、前回からの増加幅は特に顕著です。

完成予定の時系列を見ると、2026年に55棟・1万8,150戸、2027年に62棟・1万4,341戸、2028年に48棟・1万4,018戸と、当面は高水準の供給が続く見込みです。2030年以降にも111棟・4万8,038戸が計画されており、供給の勢いはまだ続きそうです。

こうした数字が積み上がるということは、将来的に修繕積立金の見直しや設備更新、大規模修繕の合意形成といった課題に向き合う管理組合の「母数そのもの」が増え続けていることを意味します。

東京一極集中ではない|地方中核都市にも広がる超高層マンション

福岡・広島・岡山など地方都市で進む再開発

その他地区の91棟・1万7,065戸という数字を、都道府県別に見ていきましょう。

福岡県が15棟・2,170戸でトップとなっており、前回調査時のシェア1.1%から今回は2.0%へと拡大しています。愛知県13棟・1,948戸、広島県9棟・1,873戸、岡山県3棟・1,204戸、北海道5棟・1,191戸、宮城県5棟・1,051戸、静岡県5棟・990戸、鹿児島県5棟・965戸と続きます。

さらに細かく見ると、栃木県3棟・760戸、茨城県3棟・644戸、新潟県1棟・350戸、青森県2棟・299戸、岩手県1棟・80戸、山形県1棟・149戸、秋田県1棟・129戸、宮崎県1棟・93戸、高知県1棟・54戸など、地方の中小都市にまで計画が及んでいることがわかります。

これだけ多くの都道府県にわたって超高層マンションの計画が広がっているという事実は、「タワマンの管理課題はどこか遠い大都市の話」という認識を根底から覆しています。

地方都市がタワマンを必要とする理由

では、なぜ地方都市でも超高層マンションの計画が増えているのでしょうか。

背景にあるのは、都市の集約化という流れです。人口が減少する地方都市では、郊外に広がった市街地を維持し続けることが財政的に難しくなっています。その解決策のひとつとして、駅前や市街地の中心部に人口を集める「コンパクトシティ」政策が各地で進められており、再開発の担い手として超高層マンションが選ばれることが増えています。

また、地方の大学病院や官庁街の跡地、鉄道の高架化による沿線整備など、まとまった土地が生まれる場面でも、タワーマンションを含む複合開発が採用されるケースが目立っています。

ただし、マンション管理士の立場からは、ここにひとつの懸念があります。大都市圏であれば、管理組合の支援に当たれる専門家(マンション管理士、マンション管理業者)も比較的多く存在します。しかし地方都市では、将来的には、マンション管理士や建築士だけでなく、超高層マンションの管理実務に精通した管理会社や修繕コンサルタントの確保も課題になる可能性があります。建物は建てられても、それを長期的に維持していくための人的資源が地域に備わっているかどうか、あわせて考えておく必要があります。

横浜・東高島2500戸計画が示す再開発の新局面

東高島地区開発の概要

横浜市神奈川区の東高島地区では、52階・47階・42階の3棟構成で計2,500戸という大規模タワーマンション計画が進んでいます。今回の調査データでも、50階以上の「超超高層計画」として名前が挙がっている注目プロジェクトのひとつです。

東高島地区は、かつての貨物駅機能を持つエリアを再編し、住宅・商業・業務機能を組み合わせた大規模再開発として整備が進められています。複数棟が段階的に完成する予定であり、管理組合の設立や長期修繕計画の策定についても、複数棟それぞれで丁寧な対応が求められます。

2,500戸という戸数規模は、ひとつのマンションとして見ると非常に大きなコミュニティです。区分所有者の属性も多様になりやすく、将来的な合意形成には相応の手間と時間がかかることが予想されます。

横浜駅周辺エリアへの影響

横浜駅周辺は近年、大規模開発の集中するエリアとなっています。東高島地区の開発が進めば、周辺の交通インフラ、教育施設、医療機関などへの影響も避けられないでしょう。

管理の観点では、周辺に複数のタワーマンションが集積するという状況は、将来の大規模修繕における工事業者の確保にも影響を与える可能性があります。複数の大規模マンションが同時期に修繕工事を発注する事態になれば、工事業者の取り合いや工事費の高騰につながることも考えられます。

横浜エリアのマンション管理組合は、こうした地域全体の動向も視野に入れながら、長期修繕計画の見直しを行っていくことが重要になってきます。

なぜこれほどタワマン供給が続くのか

駅前再開発と都市集約化

超高層マンションの供給が続く背景には、いくつかの構造的な要因があります。

まず大きいのが、駅前再開発の継続です。老朽化した駅前ビルや商業施設、工場跡地など、都市の「建て替え需要」は今後もしばらく続くことが見込まれます。容積率の緩和措置を活用した高層化が、再開発の経済的合理性を高めており、デベロッパーにとってもタワーマンションを組み込んだ複合開発は収益性の高い選択肢となっています。

加えて、国土交通省の「立地適正化計画」のもとで進む居住誘導区域の設定も、駅周辺への人口集約を後押ししています。行政としても駅前に人口を誘導したいという政策的な動機があり、タワーマンションの建設はその目的と合致しやすい面があります。

限られた土地で人口を受け入れる仕組み

もうひとつの背景として、都市部の土地不足があります。特に東京23区では、まとまった平地を確保することが難しく、既存建物の建て替えや立体的な土地利用が求められます。20階・30階・50階と積み上げることで、狭い敷地に多くの住戸を生み出せるタワーマンションは、こうした都市の土地制約への合理的な解答のひとつです。

ただし、ここで立ち止まって考えておきたいのは、「建てることへの合理性」と「維持することへの合理性」は必ずしも一致しないということです。デベロッパーにとって合理的な判断であっても、30年後・50年後にその建物に住み続ける区分所有者にとって、維持コストが合理的かどうかは別の話です。

この「建てる側の論理」と「住み続ける側の現実」のギャップを埋める役割を担うのが、管理組合であり、長期修繕計画であり、修繕積立金の設計です。

タワマン30年後問題はこれからが本番

修繕積立金だけでは解決できない課題

タワーマンションの「30年後問題」は、修繕積立金が足りるかどうかという話だけではありません。もちろん、修繕積立金の積み立て不足は深刻な問題のひとつですが、問題の構造はもっと複雑です。

超高層マンションが抱える維持上の課題は、資金・技術・合意形成の3つに整理できます。

まず「資金の問題」。修繕積立金の単価が低く設定されがちな新築時の計画と、実際の工事費との乖離は、すでに多くのマンションで顕在化しています。特に近年の建設・工事コストの上昇を考慮すると、10年前・15年前に策定された長期修繕計画が現実と大きくかけ離れているケースも少なくないでしょう。

次に「技術の問題」。50階を超えるような超高層建築の大規模修繕は、施工実績のある業者が限られており、工事費の見積もりも相場が形成されにくい状況にあります。外壁修繕ひとつをとっても、通常の足場工法が使えない場合にはゴンドラ等の特殊な工法が必要となり、コストが大幅に増加します。

そして「合意の問題」。これがもっとも難しい課題かもしれません。

修繕積立金の問題は、将来のタワーマンションだけの話ではありません。首都圏の中古マンション市場でも、修繕積立金はすでに上昇傾向が見え始めています。実際のデータから見える「静かな値上げ」の現実については、以下の記事でも詳しく解説しています。

合意形成が難しくなる理由

マンションの修繕積立金の値上げや、大規模修繕の実施を決定するためには、管理組合での合意形成が欠かせません。しかし、戸数が多く、居住者の属性が多様なタワーマンションでは、この合意形成が特に難しくなりやすい側面があります。

何百戸ものマンションで、区分所有者全員に総会への参加や議決権行使を呼びかけることは、想像以上に大変な作業です。日常的に総会に出席する区分所有者は多くなく、委任状や議決権行使書の回収に奔走するのが多くの管理組合理事の実情です。

さらに、築年数が進むにつれて、所有者の「売却済み」「相続で引き継いだばかり」「投資目的で遠方在住」といった事情が増えていきます。管理への関心がそれぞれ異なる何百人もの区分所有者の間で、修繕積立金の大幅値上げや、数億円規模の借入を伴う大規模修繕の実施について合意を取り付けることは、理事会にとって大きな負担です。

こうした合意形成の難しさは、タワーマンションに固有の問題ではありませんが、戸数が多いほど、所有者の多様性が高いほど、難易度が上がる傾向があります。

設備更新コストは今後さらに重くなる可能性

超高層マンションには、一般のマンションとは比較にならない規模・複雑さの設備が備わっています。高速エレベーター(場合によっては10基以上)、非常用発電設備、機械式駐車場、中水道設備、消防・防災設備などがその代表例です。

これらの設備は、建物の寿命よりも早く更新時期を迎えます。エレベーターであれば25〜30年、機械式駐車場は20〜25年程度が更新目安とされています。しかもタワーマンションでは設備数そのものが多く、更新費用も中低層マンションとは比較にならない規模になるケースがあります。今後、2000年代初頭〜2010年代に完成したタワーマンションが一斉にこうした設備更新の時期に差し掛かってくることになります。

設備更新のコストを適切に長期修繕計画に組み込んでいる管理組合がどれほどあるか、正直なところ心配な面があります。エレベーターや機械式駐車場の更新は、何千万円・場合によっては1億円を超えることもある大きな支出です。こうした費用が修繕積立金の計画に含まれていなければ、将来的に一時金の徴収や借入が必要になる可能性があります。

全国319棟・10.7万戸が示す2050年代の管理課題

高齢化・賃貸化・相続問題との関係

2026年以降に完成するタワーマンションの居住者が高齢化し始めるのは、2050年代から2060年代にかけてのことです。日本全体の高齢化がさらに進んでいる時期と重なります。

マンション管理において高齢化が問題となるのは、単に住民の年齢が上がるというだけではありません。高齢になるほど、管理組合の役員のなり手が少なくなり、総会への出席率が下がり、修繕積立金の値上げに対する反発が強まりやすいという傾向があります。「あと何年住むかわからないのに、なぜ今値上げしなければならないのか」という心理は、理解できなくもありませんが、管理組合全体にとっては課題となります。

また、高齢化に伴う転出・死亡により、相続未登記の状態で放置される住戸が増えていく可能性があります。相続人が複数いる場合、区分所有権の帰属が明確にならないまま管理費・修繕積立金の支払いが滞るケースも出てきます。

さらに、投資目的の購入者が賃貸に出す比率が高いマンションでは、居住者(賃借人)と区分所有者が異なるため、管理組合への参加意識が希薄になりがちです。戸数が多いタワーマンションほど、こうした賃貸化・相続問題の影響が広がりやすいと言えます。

所有者不明化と管理組合運営リスク

近年、全国的に「所有者不明土地」の問題が社会問題化していますが、マンションも例外ではありません。相続登記がなされないまま時間が経過し、区分所有者の連絡先が不明になるケースは、すでに各地の管理組合で起きています。

管理費・修繕積立金の未払いが続いても、所有者と連絡が取れなければ督促もままなりません。管理組合が法的手段に訴えることは可能ですが、費用と手間がかかり、小規模な管理組合では対応が難しいこともあります。

今後、2026年以降に完成する319棟のタワーマンションが築30年・40年を迎える頃には、こうした所有者不明問題が各地で顕在化してくることが考えられます。管理組合として、早い段階から区分所有者の連絡先を確実に把握し、更新する仕組みを整えておくことが重要です。

管理不全マンションを生まないために

管理組合の機能が低下し、修繕積立金の積み立てが進まず、大規模修繕が先延ばしにされ続けるマンションは「管理不全マンション」と呼ばれます。こうしたマンションは建物の傷みが進むだけでなく、市場での資産価値も大きく損なわれます。

残念ながら、管理不全リスクを抱えるマンションは今後増える可能性があります。高齢化、賃貸化、所有者不明化、修繕費の高騰——これらの課題が複合的に重なるマンションが各地に生まれていくことが懸念されます。

管理不全の問題は、建物の老朽化だけでなく、管理組合の意思決定や財政運営が機能しなくなることから始まります。管理組合が破綻状態に近づくと何が起きるのか、具体的なリスクと対策については以下の記事でも整理しています。

では、どうすれば管理不全を防げるのでしょうか。完全な「解決策」はありませんが、管理組合が取れる手段はあります。まず、長期修繕計画を定期的に見直し、現実の工事費水準に合わせた修繕積立金の計画を維持することです。5年ごとを目安に計画を更新し、必要であれば段階的な値上げを行うことが、長期的な安定につながります。

次に、管理組合運営の透明性を高めることです。総会への参加意識を高めるためには、管理組合の活動内容や収支状況を区分所有者にわかりやすく伝える工夫が欠かせません。理事会だよりや掲示板の活用、Web総会の導入なども有効な手段です。

管理状態を客観的に確認する方法として、マンション管理計画認定制度も重要です。
長期修繕計画、修繕積立金、総会・理事会運営など、管理状態を見るうえでの具体的な基準については、以下の記事で解説しています。

そして、専門家の活用を検討することです。マンション管理士や弁護士、建築士といった専門家を管理組合の顧問として活用する仕組みを、早い段階から整えておくことが、将来の課題への備えになります。

マンションは建てる時代から維持する時代へ

全国319棟・10万7,408戸という数字は、たしかに大きなインパクトを持つデータです。しかしこのコラムで繰り返し申し上げてきたように、この数字の意味は「これだけ多くのタワーマンションが建つ」ということだけではありません。

この数字は、「これだけ多くの管理組合が、これから数十年にわたって、維持・管理の課題と向き合うことになる」という現実を示しています。

タワーマンションが完成した後の30年間、40年間、50年間は、設計図を引いたデベロッパーでも、施工した建設会社でもなく、そこに住む区分所有者と管理組合が担うことになります。修繕積立金の値上げを決めるのも、大規模修繕の業者を選ぶのも、設備更新の資金計画を組むのも、すべて管理組合の仕事です。

「マンションは建てる時代から維持する時代へ」という言葉がよく使われるようになりましたが、319棟・10万7,408戸という供給計画を前にすると、この言葉がいよいよ現実のものとして迫ってきます。

これからタワーマンションの購入を検討されている方は、「いくらで買えるか」だけでなく、「いくらで維持し続けられるか」という視点を大切にしてください。修繕積立金の現状と計画、長期修繕計画の内容、管理組合の運営状況——こうした「管理の質」を確認することが、将来の資産価値を守ることにつながります。

すでにタワーマンションにお住まいの方、管理組合の理事を務めている方は、長期修繕計画の現状を今一度確認してみることをお勧めします。特に、修繕積立金の積立額が計画通りに推移しているか、設備更新コストが長期修繕計画に適切に反映されているか、この2点はぜひ確認していただきたいポイントです。

全国319棟・10万7,408戸という数字は、再開発の勢いを示すデータであると同時に、将来の管理責任の総量を示すデータでもあります。これからの時代は、「どれだけ建つか」だけでなく、「誰が、どのように維持していくのか」を考えることが、ますます重要になるのではないでしょうか。


参考文献

  • 株式会社不動産経済研究所「超高層マンション動向2026」(2026年6月4日発表)
  • 横浜マンション管理FP研究室「タワマン30年後問題|修繕積立金・管理費はどこまで上がる?全国270棟の供給データから考える」(参考記事)

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