なぜ地方でタワーマンションが増えている?億ション増加の背景と今後の展望

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近年、地方都市においても高層マンション、いわゆるタワーマンションの建設が進み、中には億ションと呼ばれる高価格帯の物件も増加傾向にあると言われています。一体なぜこのような現象が起きているのでしょうか?本稿では、地方におけるタワーマンション増加の現状、その背景にある理由、そして今後の動向について、以下の日経の記事も踏まえながら、複数の視点からマンション管理士が独自視点も踏まえて解説していきます。

地方都市におけるタワーマンション建設の現状

かつては都市部中心に見られたタワーマンションですが、近年では地方の主要都市の駅周辺や再開発エリアなどでその姿を見かけることが増えました。地方経済の活性化策の一環として、集客力や都市景観の向上を目的としたタワーマンション建設が進められているケースもあります。また、富裕層のセカンドハウス需要や、都心からの移住者の新たな住居選択肢としても注目されています。

日経の記事にもあるように、億ションの増加は、地方においても高額な不動産に対する一定の需要が存在することを示唆しています。これは、地方における富裕層の増加や、都心との価格差が縮小する中で、質の高い住環境を求める層のニーズが高まっていることなどが考えられます。

地方にタワーマンションが増える理由

地方でタワーマンション建設が進む背景には、複合的な要因が存在します。

相続税対策としてのニーズ

都市部と同様に、地方においても相続税対策は重要な関心事の一つです。タワーマンション(特に高層階)は、相続発生前の購入によって不動産の評価額を大幅に下げることが可能であり、相続税の節税効果が期待できると言われてます。

  • 現金で相続する場合、1億円の財産はそのまま1億円として評価されますが、不動産の場合は路線価方式や固定資産税評価額に基づいて評価されるため、一般的に時価よりも低く評価されます。
  • 特に建物の評価額は、材料費と施工方法のみで査定されるため、立地や眺望といった要素は考慮されにくく、実勢価格との乖離が大きくなる傾向があります。
  • タワーマンションの場合、土地を多くの住人で共有するため、一戸当たりの敷地持分が小さくなり、評価額がさらに抑えられることがあります。

しかし、行き過ぎた相続対策に対しては税務署が否認する判例も存在するため注意が必要です。政府も相続税対策としてのタワーマンション利用を問題視しており、課税方法の見直し(より販売価格に近づける)を検討しています。

都市再開発と住環境の変化

冒頭に紹介した日経の記事にもあるとおり、地方都市においても、駅周辺の再活性化や老朽化した市街地の再開発プロジェクトが進行しており、その一環としてタワーマンションが建設されるケースが増えています。

  • 集約型都市構造への転換を目指し、商業施設や公共施設と一体になった高機能な住宅が求められています。
  • 戸建て住宅の維持管理の負担を感じる高齢者層や、利便性の高い都心に近い生活を求める層にとって、駅近のタワーマンションは魅力的な選択肢となります。
  • 地方においても、眺望の良さや共用施設の充実など、質の高い住環境を求めるニーズが高まっています。

地方の富裕層の増加とニーズの多様化

地方経済の活性化や企業誘致などにより、地方においても富裕層が増加しており、そのニーズも多様化しています。

  • 都心のような高価格帯の物件は少ないものの、地方においても億ションに対する需要が存在します。
  • これらの層は、単に住むだけでなく、資産価値の維持や向上セキュリティの高さ充実したコンシェルジュサービスなどを求めていると考えられます。
  • 地方ならではの自然環境を享受しつつ、都市部の利便性も兼ね備えたタワーマンションは、これらのニーズに応える可能性があります。

タワーマンション建設における注意点と課題

地方におけるタワーマンション建設は、新たな都市の活性化や居住ニーズへの対応といった側面がある一方で、いくつかの注意点や課題も存在します。

  • 相続税対策の法改正:今後、タワーマンションの相続税評価方法が見直される可能性があり、節税効果が低下する可能性があります。
  • 高層階と低層階の評価バランス:政府は、高層階と低層階の評価の不均衡を是正する目的で法改正を行っており、今後はより実勢価格に近い評価となる可能性があります。
  • 地域コミュニティとの連携:東京23区によって組織される特別区長会調査研究機構の調査「タワーマンション等大規模集合住宅を含む地域コミュニティの醸成 令和4年度調査研究報告書」によると、タワーマンションのような大規模集合住宅では、マンション内の自治会で完結してしまう傾向があり、地域コミュニティとの連携が課題となる場合があります。
  • 管理・維持コスト:タワーマンションは一般的なマンションに比べて、管理費や修繕積立金が高額になる傾向があります。
  • 災害リスク:地震などの災害発生時には、高層階ならではのリスク(エレベーターの停止、ライフラインの寸断など)も考慮する必要があります。

地域コミュニティとの連携という面では、2025年1月にタワーマンションが多く立ち並ぶ武蔵小杉の町内会が解散するという話がありました。

タワーマンションでは、管理組合内で自治組織が完結できる強さがあります。また、住民も現役世代であり比較的若いことから、まとまった組織として完結することが考えられます。

今後の展望

地方におけるタワーマンション建設は、今後も一定のペースで進むと予想されますが、その動向は以下の要素によって左右される可能性があります。

  • 相続税制の改正:政府による評価方法の見直しが進めば、相続税対策としてのタワーマンションの魅力は低下する可能性があります。
  • 地方経済の動向:地方経済の活性化が進み、富裕層が増加すれば、高価格帯のタワーマンションへの需要は維持されるでしょう。
  • ライフスタイルの変化:都心回帰の流れや、地方での新たな生活様式の確立など、人々のライフスタイルの変化が、住居選択に影響を与える可能性があります。
  • 中古市場の形成:今後、地方で建設されたタワーマンションの中古物件が増加することで、価格動向や取引事例が蓄積され、市場が成熟していくと考えられます。

将来的には、単に高層であるだけでなく、地域の特性やニーズに合わせた、より多様なコンセプトのタワーマンションが登場する可能性もあるでしょう。例えば、高齢者向けのサービスが充実した物件や、地域住民との交流を促進するような共用スペースを備えた物件などが考えられます。

まとめ:地方タワーマンションの増加は新たな潮流、賢い選択を

地方におけるタワーマンションの増加は、相続税対策、都市再開発、そして地方の富裕層のニーズの高まりといった複数の要因が絡み合った、現代社会における新たな潮流と言えるでしょう。億ションの増加はその象徴的な現象です。

しかし、億ションの代表例であるタワーマンションの購入は、将来的な法改正のリスク管理・維持コスト地域との関わり方など、慎重に検討すべき点も多く存在します。購入を検討する際には、短期的な節税効果だけでなく、長期的な視点で自身のライフプランや資産形成戦略に合致するかどうかを見極めることが重要です。

今後の地方都市の発展とともに、タワーマンションがどのような役割を果たしていくのか、その動向に注目していく必要があるでしょう。

【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
yokohama-mankan

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。
また、上場企業やベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。

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