【規約解説】管理組合役員の任期はどれぐらいで定めればよいのか?

管理規約解説

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管理組合役員の任期ってどれぐらいが適切なのだろうか…?

また、

輪番制で2年間役員をやらなければならなくなったのですが、結構負担が大きい…

さらには、

役員に欠員が出た場合の補充はどうすればよいのだろうか…?

このような区分所有者の悩みも尽きないと思います。

管理組合で役員になることは、多くの区分所有者にとって負担が大きいと考えられます。

しかも、2年も役員となって、区分所有者から色々と言われるとなると、辛いですよね。

今回はこのような役員に関する任期について、標準管理規約第36条よりその条文と、この条項に対して国土交通省が出しているコメントを紹介します。

【規約解説】管理組合役員の任期はどれぐらいで定めればよいのか?

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第36条「役員の任期」の紹介
・第36条「役員の任期」についての規定に対する補足・注意事項は?
・「役員の任期」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず初めに、標準管理規約第36条の条文より、役員の任期に関する内容を紹介します。

続いて、第36条には他の条項同様に、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項があります。

その点について細かく紹介されていますので、全て抽出して細かく確認します。

さらに、規約の条文や補足事項等を踏まえて、それ以外で管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項があります。

それらについて、筆者独自の観点から、具体的に紹介します。

標準管理規約第36条「役員の任期」の紹介

まず初めに、標準管理規約第36条「役員の任期」の条文を紹介します。

第36条「役員の任期」の条文は?(役員の任期)

第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

第1項の〇のところは、1~3年等の管理組合で決めた任意の数字が入ります。

また、第2項の補欠役員の任期は、前任者の残任期間とあります。

仮に全員者は来年3月迄の任期であったところ、やむを得ない事情によって12月末に退任した場合は、補欠役員の任期は1月~3月となります。

そして、次項でも詳しく説明しますが、第4項の

役員が組合員でなくなった場合

という文言は、

役員=組合員の立場

であるという際に採用されることとなります。

すなわち、役員が引越ししたり、不幸な話として亡くなってしまった場合等は組合員で無くなることから、役員の立場ではなくなるということになります。

外部専門家を役員として選任できることとする場合

次に、外部専門家を役員として選任できる場合は、第4項が少し違います。

その条文を紹介します。

選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

この解釈については、次項で少し補足説明します。

外部専門家を役員として選任できる点の補足

外部の専門家は、「外部」であることから、区分所有者ではなく、マンション外に住む専門家であると想定されます。

この専門家が役員にいる場合は、前項の

「役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。」

ということには当てはめることはできません。

そのため、

「選任(再任を除く。)の時に組合員であった」

を付け加えることによって、

役員選任時点では組合員(区分所有者)であった役員

であることに限定しています。

これによって、仮に外部の専門家が役員として選ばれていた場合であっても、「役員選任時点では組合員(区分所有者)であった役員」ではないため、第4項は対象外となります。

外部の専門家が役員の地位を失うこととして考えられるのは、

・管理組合の中で外部の専門家がいなくても良く、役員としての役目を終えた
・役員としての力が発揮できずにクビになった

などがおもな要因となるでしょう。

次章の補足事項でも追加で説明しますが、

外部の専門家は組合員云々ではなく、持っている専門性を評価して役員として採用している

ということから来ています。

第36条「役員の任期」についての規定に対する補足・注意事項は?

標準管理規約第36条にも、国土交通省が指摘する補足や注意事項があります。

具体的にどのような内容となっているのか、具体的に紹介します。

役員の任期は?

役員の任期については、組合の実情に応じて1~2年で設定することと紹介されています。

また、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする必要があるとのことです。

確かに、期限が決まっていない役員というのは、区分所有者にとっても一定の負担が掛かる可能性があります。

役員改選のタイミングは?

さらに、役員の改選タイミングについても補足があります。

業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよいということです。

多くの管理組合で取っている手法でしょう。

この場合には、役員の任期は2年とするとしています。

外部専門家を採用する場合の規定の考え方は?

そして、前章でも少し細かく触れましたが、外部専門家を役員に採用する際の考え方が紹介されています。

第4項の解釈は?

第4項は、組合員から選任された役員が組合員でなくなった場合の役員の地位についての規定となります。

また、第35条第2項

2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。

において組合員のうちから選任するという要件を外した場合には、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」のような規定とする必要があるとのことです。

役員に外部専門家が入る場合の解釈は?

外部の専門家として選任された役員は、専門家としての地位に着目して役員に選任されたものです。

そのため、当該役員が役員に選任された後に組合員となった場合にまで、組合員でなくなれば当然に役員としての地位も失うとするのは相当でないとのことです。

これは何を言っているかというと、ほぼレアケースでないかと思いますが、以下のように解釈できます。

外部の専門家の役員候補→専門的ノウハウをかわれて管理組合役員になる→その方が何故か管理組合に入る(移転してくるので内部専門家)→その後また移転して管理組合員ではなくなる(何故かまた引っ越す)→管理組合員でなくなったあとの外部専門家は?

管理組合員で無くなったあとであっても、役員の退任は不要ではないか?ということのようです。

この点は、筆者が昔マンション管理士試験の勉強をしている時に、講師が同様の例をお話されていたので、非常に記憶に残っています。

このような外部専門家役員はそもそも中々いないレアケースだと思います。

欠員の場合の役員の補充方法は?

管理組合役員が、途中で移転するまたは、なんらかの事情で役員が継続できない等があります。

その補充方法について補足しています。

・役員が任期途中で欠けた場合、(臨時)総会の決議により新たな役員を選任することは可能
・ただし、外部の専門家の役員就任の可能性や災害時等緊急時の迅速な対応の必要性を踏まえると、規約であらかじめ補欠を定めておくことができる旨規定しておくことが望ましい。
・組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任できると規約に規定することもできる。
・理事や監事の員数を、○~○名という枠により定めている場合、下限の員数を満たさなくなったとき、補欠を選任することが必要となる。

ということです。

高経年マンション、新築マンション限らず、病気や引っ越し等でやむを得ずに役員ができなくなることも多々想定されます。

そのため、補充のための対応は、わざわざ臨時総会を開催せずとも手当てできるような規約や細則で定めておくことも重要でしょう。

「役員の任期」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

一定期間役員を務めた後、任期満了において退任することとなります。

一方で、役員の任期を定める場合や、任期を過ぎても延長して再任される場合は、一定の注意事項も必要となってきます。

このような、管理組合内で気を付けておきたい事項について紹介します。

組合員役員の任期は2年が一般的

国土交通省の見解でも、役員の任期は2年が望ましいとの紹介がありました。

確かに、2年という期間は、長すぎず、短過ぎず、また後述する役員の交代時においても柔軟に対応できる期間かもしれません。

そのため、やむを得ない場合を除き、2年をベースに役員の任期を定めつつ、残り1年の間に新たな役員候補を考えていくことが大切です。

1年間は重複していると引継ぎ漏れも軽減できる

仮に、役員の任期が2年であり、1年ごとに半数が改選されることとなると、半分の方は2年目で残ることとなります。

そのため、2年目の役員は1年目の新任役員にこれまでの経緯や、今後の課題等、1年間かけて引き継いていくことができるとともに、理事会活動のインストールも可能となります。

また、役員が退任したとしても、区分所有者が引き続き組合員である場合は、前職の時はどうだったかなど、管理組合として柔軟に聞ける連携体制を構築しておくことも一つです。

やむを得ず退任が出来ない場合は?

余り望ましくはないですが、任期の2年の中でやりきれなかった役員業務があった場合もあるでしょう。

それが、理事長等のある一定の役職者の業務である場合は、他の役員への引継ぎが難しいことやその役員がいることで管理組合運営が円滑に進むことも考えられます。

その場合は、役員や理事会の了承のもと、総会で決議し1年間の任期で再任することも考えられます。

もっとも、第1項には「ただし、再任を妨げない」とあるので、この考え方を取っている管理組合も多いでしょう。

ただし、後述する「役員固定化」には弊害もあるため、任務を全うしたら任期満了によって退任することが望まれます。

管理組合員役員の継続就任は役員固定化の可能性も?

前章でも記載しましたが、外部専門家は、そのスキルやノウハウをかって役員に就任して貰っていることと考えられます。

従って、2年の任期後、再任されることも考えられます。

一方で、管理規約や細則で任期が定められているにも関わらず、その任期を超えて継続的に就任している役員がいる場合は、注意が必要かもしれません。

すなわち、その役員に権限が集中してしまい、周りの区分所有者が意見が言えなかったり、区分所有者の分からない所でなにかをやっている可能性も考えられます。

いわゆる、役員や社員がオーナー経営者に口出しできないようなイメージです。

そのため、各区分所有者がノウハウを身に着ける観点からも、輪番制等によって、一定期間が過ぎると役員を退任するという流れを取ることが望まれます。

今の理事長に退任されると新たな適任者がいない…

任期満了であっても継続して再任され続けることは、役員の固定化につながり、更には管理組合組織の硬直化につながる可能性もあります。

企業組織等の一般的な話ですが、同じ人が就任することは弊害を伴う場合も出てきます。

ただ、そうはいっても、理事長に退任されるとほかにリーダーシップを張れる役員がいない…といったような課題が管理組合内から出てくるのも事実です。

その場合は、任期の問題とは別に役員のなり手不足への対応策として考えていくことが望まれます。

外部専門家役員採用の前に顧問として採用

前項の役員のなり手不足がますます進むことを考えると、将来的には外部専門家の活用を検討する管理組合も非常に多くなりそうです。

しかしながら、いきなり外部専門家を役員に置くのではなく、まずは顧問として1~2年管理組合の状況を見て貰うことが望まれます。

理由としては、

・管理組合側としては外部専門家の実力を見る
・外部専門家側からは顧問として入ることで実力を発揮できるかを確認する

という双方の事情も考えられます。

基本的には管理組合と顧問は顧問契約や業務委託契約として契約締結することから、役員への就任ほど縛りがある訳ではありません。

そのため、双方の都合によって解除も可能であるため、お互いにとってまずは検討したい手法であるとも言えます。

役員の任期は2年が一般的だがそこに縛られない運用も重要

今回は、標準管理規約第36条の「役員の任期」について紹介しました。

役員の任期は、国土交通省の補足コメントにもある通り、多くの管理組合では2年で設定されている所も多いでしょう。

しかしながら、外部専門家を役員とする場合はそれ以上の期間も考えられます。

さらには、引越等のやむを得ない役員退任や、役員業務継続のため再任もあるでしょう。

このように、管理組合としては2年をベースとしながらも、柔軟な対応が求められます。

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