マンション管理組合で実施すべき防災対策は?【備えあれば憂いなし】

マンション管理

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うちの管理組合には防災対策が実施されていないように思うけど他の管理組合はどうなのだろうか?

また、

防災マニュアルを見たことがないけど、作る必要があるのだろうか?

このような疑問を持つマンション管理組合や区分所有者、住民も非常に多いようです。

南海トラフ地震、台風、さらにはそれらに起因する二次災害等、懸念される所ではあります。

それもあり、マンション管理組合としては、ますますこれらに対する対応を意識しなければならない時かもしれません。

今回はおもな防災対策として、管理組合が実施すべき業務について、詳しく解説します。

マンション管理組合で実施すべき防災対策は?【備えあれば憂いなし】

今回紹介する内容は以下の通りです。

・マンション管理組合における大規模災害への対応状況は?
・マンション管理組合で実施すべきおもな防災対策業務は?
・必ず確認したいマンション管理組合におけるおもな防災Q&A

平日は現役世代にとっては業務があり、週末は家庭の事情や家族サービス、休暇、さらには1人世帯も増えてきており、管理組合への帰属意識も低下傾向です。

また、リタイヤ世代にとっては管理組合業務への負担があることなど、区分所有者の生活様式による価値観がますます多様化しています。

そのため、管理組合にはなかなか旗振り役がおらず、避難訓練や防災対策が進んでいない現状も多いようです。

今回は、そのような管理組合の環境の中でも、手を打っておきたい防災対策について紹介します。

マンション管理組合における大規模災害への対応状況は?

まずはじめに、マンション管理組合における、大規模災害に備えた対応状況はどのようになっているのか、令和5年度マンション総合調査の結果より確認してみます。

大規模災害への対応状況は?

マンション管理組合における、大規模災害への対応状況はどのようになっているのかを、管理組合向けに調査しています。

そこで多い傾向として、上位5つを挙げると、

・「消防設備等の点検を実施している」69.5%
・「定期的に防災訓練を実施している」39.8%
・「災害時の避難場所を周知している」30.3%
・「ハザードマップ等、防災・災害対応策に関する情報を収集・周知している」23.7%
・「防災用品や医療品・医薬品を備蓄している」21.6%

となっています。


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)より

また、

「災害時のマニュアルを作成している」19.1%

と、マンション管理組合で共有化されたドキュメントは2割弱と比較的進んでいないうえ、

さらには、

「特に何もしていない」11.6%

という回答も1割強あり、マンション管理組合における大規模災害対策がまだまだ道半ばであるとも受け取れます。

時系列で見てみると?

時系列で見てみると、

・災害時の対応マニュアルの作成は平成25年~令和5年迄ほぼ20%弱の水準
・防災訓練の実施は4割前後水準
・防災用品や医療品、医薬品の備蓄は2割強
・非常食や飲料水の備蓄は年々増加するものの2割弱
・災害時の避難場所の通知は年々増加し令和5年は3割超
・防災・災害対応策の関する情報の収集・周知は年々増加
・「特に何もしていない」は、平成20年度は4割近い水準だったものの、令和5年度は1割強まで低下

という傾向です。


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)より

情報を入手しつつなんらかの対応は行っているものの、具体的な動きとしてのマニュアルの整備や備蓄、防災訓練などは、一定の水準で頭打ちにも見えます。

防災に関する専門委員会の設置状況は?

管理組合における、理事会の諮問機関としての委員会の設置状況や種類については、以下の通りでした。

・委員会を設置していない 52.5%
・大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会 34.8%
防災に関する委員会 7.9%
・規約・細則の制定や見直しに関する委員会 6.0%
・その他 4.4%

となっています。


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)より

また、防災に特化したマンション管理組合の委員会はまだ非常に少なく、結果的に先に紹介した防災対策における、一定水準の高止まりがみられるとも考えられます。

そして、大規模修繕同様に防災対策は、理事会だけでは負担が大きく、委員会形式の準備等が望まれますが、区分所有者の事情も考えるとなかなか進んでいない現状もありそうです。

防災関連の課題事項は?

マンションの管理に関して取り組むべき課題として、防災対策が取り上げられています。

上位5つを挙げると

・「修繕積立金の積立金額の見直し」36.2%
・「長期修繕計画の作成又は見直し」33.0%
・「共用部分の利用に関するルールの徹底」26.3%
「防災対策」25.9%
・「防犯対策」20.8%

となっています。


引用:国土交通省 令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)より

また、4分の1の管理組合が防災対策を課題として挙げていますが、それ以上に「修繕積立金」「長期修繕計画」と、必ず将来のマンション管理に必要となる事項に優先されているともいえます。

マンション管理組合で実施すべきおもな防災対策業務は?

令和5年度のマンション総合調査から、大規模災害への対応状況について確認したところで、具体的にマンション管理組合として対策しておきたい防災対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

具体的に紹介します。

標準管理規約から見るマンション管理組合における防災対策業務は?

マンション管理規約のひな型である標準管理規約の第32条の十二には、次のように記載されています。

標準管理規約 第32条
管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
(中略)
十二 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
また、「防災は管理組合の業務である」という定めのみで、具体的にはどのような対応を行うのかは、管理組合独自で考える必要があります。

平成17年 国土交通省公表の「マンション管理標準指針」では?

こちらは平成17年とやや古いですが、国土交通省より公表された「マンション管理標準指針」には、次のような記載があります。

また、マンション管理組合における「標準的な対応」として

・防火管理者の選任
・消防計画の作成及び周知
・消防用設備等の点検
・災害時の避難場所の周知
・災害対応マニュアル等の作成・配布
・ハザードマップ等防災・災害対策に関する情報の収集・周知
・年1回程度定期的な防災訓練の実施

が挙げられています。

さらに、「望ましい対応」としては、

・災害時に必要となる道具・備品・非常食類の備蓄
・高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿の作成
・災害発生時における居住者の安否確認体制の整備
・災害発生時における被害状況・復旧見通しに関する情報の収集・提供体制の整備

が挙げられています。

具体的に、「標準的な対応」で挙げられている項目について、さらに詳細を紹介します。

防火管理者の選任

消防法により、居住者数が50名以上、店舗などが含まれる複合用途は30名以上の場合は防火管理者の選任が必要となります。

また、この基準に達しない小規模マンションであっても、防火管理体制を構築することが望まれます。

消防計画の作成および周知

災害時の避難場所や災害発生時の避難等の対応手順、さらにはマンション管理組合としての実施体制等を定めておく必要があります。

また、これらは管理組合内で協議のうえ、理事会や総会で決定する必要があります。

さらに、マンション住民全員に確実に周知し、生命・身体・財産を守るために欠かせない手段であるといえます。

消防用設備等の点検

消防設備士または消防設備点検資格者によって、外観の確認などの軽微な機器点検は6か月に1回必要となります。

また、総合的な点検は1年に1回以上行うことが必要です。

これらはマンション管理組合の義務である法定点検として、実施する必要があります。

具体的には、消火器、火災報知器、避難器具、避難経路などを点検し、消防用設備の配置や状態、動作、使用などに問題ないかを確認します。

防災訓練の実施

防災訓練の実施は、年1回を目安に行うことが必要と考えられています。

さらに、店舗等が入っている複合用途における防火対象マンションについては、年2回以上の実施が義務付けられています。

そして、防火対象マンションとは、消防法第8条第1項及び消防法施行令第1条の2に定められている防火対象物です。

具体的には、学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店等、多数が出入りしたり勤務したりする、又は居住する防火対象物が該当します。

マンション管理適正評価制度の防災審査項目は?

管理会社の団体である、マンション管理業協会がマンションを評価するマンション管理適正評価制度においても防災に関する審査基準があります。

また、評価制度の具体的な審査項目として、おもに、耐震診断関係と生活関連において防災に関する審査項目があるので紹介します。

耐震診断関係

具体的には、以下のような項目となります。

耐震性(耐震診断の実施):耐震診断及び耐震改修の実施状況 最大10ポイント付与

新耐震基準が適用されていない(昭和56年5月31日以前に着工した)マンションは、耐震性が必ずしも十分でないことがあります。

さらに、地震が発生した際に、被害を最小限にとどめるためにも、耐震化は急務の課題です。

具体的に耐震診断の実施、実施後の結果が「問題無し」の場合や、耐震改修工事を実施したといった建物の安全性のチェック状況を評価します。

生活関連

生活に密着した点では、

災害への対策が講じられているか。(全8項目) 最大10ポイント付与

という項目があります。

また、マンション管理組合におけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要となります。

そのため、消防訓練の実施状況や、昨今の度重なる自然災害に対し、防災マニュアルの作成、防災訓練の実施、居住者名簿の作成や災害時における安否確認体制など、基本的な対策や備え具合をチェックされることとなります。

必ず確認したいマンション管理組合におけるおもな防災Q&A

最後の章として、これまで紹介した調査データや必要な防災対策業務から、具体的に想定されることについて、Q&A形式として紹介します。

防災マニュアルはどのように作成すればよいか?

2割弱の作成にとどまっている防災マニュアルですが、どのように作成すればよいのでしょうか?

実は自治体において、管理組合でも使える防災マニュアルがある程度準備されています。

具体的に東京都の例ですが、

・簡易版としての「マンション防災リーフレット
・チェックリストを含めて非常に詳細に紹介されている「東京くらし防災
(マンション防災含む)

もあり、ぜひ参考にしたい一冊です。

また、横浜市では、マンション独自のマニュアルは見当たりませんでしたが、動画説明版があります。

さらに、管理会社ライフポート西洋からは、共助ガイドとして分かりやすい災害対策マニュアルが紹介されています。

防災組織はどのように作ればよいか?

防災関連組織として、さきほどの令和5年度のマンション管理総合調査によると、委員会形式では7.9%と非常に低い割合でした。

一方で、理事会では負担が掛かるため、なんらかの自主的な組織として組成することが望まれます。

管理組合か自治会・町内会組織か

どちらという判断はマンションや管理組合、地域とのつながりなど固有の事情があるため一概には言えないでしょう。

また、マンション内に管理組合とは別に自治会組織があれば、その組織が地域の町内会や自治会と連携して機能することも考えられます。

一方で、管理組合同様に自治会の役割において防災は大きな要素ではあるものの、他の役割も果たすことから、管理組合で実施するか自治会で実施するかなど、折り合いをつけていくことも必要でしょう。

ただ少なくとも、戸建てや商店を含めた地域の町内会や自治会とのつながりは持っておくことは重要であり、共同で地域の避難訓練や防災訓練に参加するなどは重要です。

管理組合内で防災組織を組成する場合

各自治体で、自主防災組織としてのマニュアルがでてきます。

共通して挙げられている例として、防災委員会や防災会を組成するとともに、以下のような役割が考えられます。

・本部機能:防災計画の作成、防災訓練の実施、防災予算案作成、全体活動統括
・情報連絡係:防災マップ等防災情報入手、過去の災害情報や専門家情報収集、居住者への広報活動、災害時の安否確認や被害情報の収集と伝達等
・避難誘導係:避難場所、避難所や避難経路の確認と災害時の誘導
・消化係:消火器等の保管・整備等、災害時の出火防止や初期消火活動の実施。防災管理者が兼務する場合もあり
・防災用品係:防災用品の保管・管理とともに災害発生時の配布
・給食給水係:炊き出し用機材の保管・整備、井戸の点検等、食材や飲料水の調達や備蓄、災害発生時の炊き出し、食料や飲料水の配布
・救出救護係:担架やジャッキ等の機材の保管・整備、災害発生時の被災者の救出や負傷者の応急手当
・建物・設備係:建物や設備が損傷したときの対応の検討とともに、災害発生時の損傷の程度に応じた対応

また、これらが有機的に機能するように、お互いにカバーできるように重複して割り当てることが重要です。

防災関連情報の周知徹底方法はどのようにすればよいか?

マンションの住民に対して防災情報を周知徹底するためには、

・管理会社、管理員との協力体制
・防災組織の情報連絡係に情報が集まる体制の構築
・区分所有者、居住者双方の名簿の充実

が考えられます。

また、体制構築にはメールやLINEグループ等の情報ツールを使った情報の受発信とともに、名簿の充実も不可欠でしょう。

管理組合として備蓄品を持っているがこれが無駄になるけど、購入を継続すべきか?

令和5年度マンション総合調査で大規模災害への対応状況は

・防災用品や医療品、医薬品の備蓄は2割強
・非常食や飲料水の備蓄は年々増加するものの2割弱

とのデータの通り、災害用品、医療品、水や食料等の備蓄品については、2割前後でした。

マンション管理組合としては、管理費からの負担となることから、区分所有者からの徴収は共用部分等の修繕に充てることが優先され、これらの備蓄については住民自ら準備して欲しいというところが大半でしょう。

場合によっては、自治会費、町内会費として集めている場合もあります。

一方で、管理費で集めて備蓄している場合は、継続することも望まれます。

その理由としては、いつ発生するか分からない災害に対して、命をつなぐ手段としての備蓄品を無駄と考えるのかどうかという点があるためです。

使用期限や賞味期限が近づいてる備蓄品については、処分するのではなく管理組合内で配布することによって、自宅の備蓄品とすることが効果的でしょう。

まずは防災の話題をから…マンション管理組合として意識を高めることが重要

ちょうど台風や南海トラフ地震の話題が事欠かないこともあり、防災対策について紹介しました。

また、マンション管理組合それぞれの方針がありますが、管理組合として防災対策を講じておくことが今後において非常に有効であると考えられます。

どこから手掛けるかどうかというのもありますが、マンションの防災対策については、住民のあらゆる方においても関心事であるトピックスです。

防災対策が十分でない場合は、まずは理事会で検討してみることから始めるのが有効的だと考えます。

コメント

  1. 近藤則男 より:

    『マンション管理組合で実施すべき防災対策』を読ませていただきました。 昨今、政府をはじめ、大都市では、マンションなどの大規模集合住宅を『在宅避難場所』として運用するように要請が出始めていますが、市や、これを受けた『地区防災委員会』などとの連携があまり明確に示されておらず、長期での『自主避難』などとなると、『マンション避難者』も『公的支援』を受ける必要が出てくる可能性もあり、『避難所』などとの、整合性や共助なども持たせていく必要があるのではと感じています。このあたり、市の『防災関連部署』などへ問い合わせを行っていますが、なかなか明確な回答が得られず、『地域共助』でお願いしますとの事などが返ってきます。どうもこれらは、政府と同じように『縦割行政』での課題の様にも思え、例えば、『高経年マンション』を予防するための『マンション評価制度』などとの連動で、マンション規模や、そこでの『管理組合・運営状況』などを『評価』する事なども含めれば、もっと本質的な『防災対策』となるのではないでしょうか。

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