住民の2人に1人以上が65歳以上で、最初の入居開始からまもなく半世紀を迎える巨大団地。数字だけを見れば、「高齢化が進んだオールドニュータウン」「いずれ街を維持できなくなるのではないか」と考える方もいるでしょう。
しかし、横浜市旭区の若葉台団地を実際に歩くと、そのような言葉だけでは説明できない力を感じます。広い空、豊かな緑、車を気にせず歩ける遊歩道、街の中心に集まる商業・医療・公共施設、そして管理組合、自治会、NPO、住宅供給公社などが連携して街を支える仕組みがあります。
若葉台は、単に古い建物が残っている住宅地ではありません。高齢化と建物の高経年化を正面から受け止めながら、建替えだけに頼らず、既存の建物と街を長く使い続ける道を探ってきた団地です。
マンション管理とは、建物を修繕することだけなのでしょうか。それとも、住民が暮らし続けられる環境をつくり、次の世代へ引き継ぐ仕組みまで含むのでしょうか。
今回は、横浜若葉台団地を通じて、「100年続くマンション」と街づくりの未来を考えます。
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若葉台団地は「住宅」ではなく一つの街だった
横浜若葉台団地は、横浜市旭区の北西部に位置する大規模住宅団地です。神奈川県住宅供給公社によって計画・開発され、1979年から入居が始まりました。
開発面積は約90ヘクタールで、東京ドーム約19個分に相当します。公社賃貸住宅7棟790戸、分譲住宅66棟5,186戸、そのほかを含めて計6,302戸という規模で、神奈川県住宅供給公社が開発した団地の中でも最大級です。
▼画像クリックで拡大します(以下も同様です。写真は全て筆者撮影)

高層住宅が並んでも圧迫感が少ない
若葉台には、中層住宅、高層の板状住宅、塔状住宅など、形状の異なる住棟が配置されています。多くの高層住宅が建っているにもかかわらず、現地で感じるのは建物の圧迫感よりも、建物と建物の間に設けられた広い空間です。
住棟間には緑地や遊歩道、公園が広がり、視線の先には常に木々が入ります。最近の都市型マンションでは、限られた敷地にできるだけ多くの住戸を配置することが求められますが、若葉台が計画された時代には、丘陵地の自然を残しながら、住宅、教育、商業、医療、スポーツ、文化施設を一体的に配置するという思想がありました。
若葉台まちづくりセンターも、丘陵地の緑や生態系を保全しながら歩車道を分離し、高層住宅やレクリエーション施設を計画的に配置した郊外住宅地として若葉台を紹介しています。ここは住宅棟の集合体というより、昭和の時代に一から設計された独立性の高い計画都市なのです。
街の中心に生活機能が集まっている
若葉台の中央には「ショッピングタウンわかば」があります。大型スーパー、飲食店、ドラッグストア、金融機関などが集まり、その周辺にはバスターミナル、病院、地区センター、地域ケアプラザなどが配置されています。
若葉台中央からは、JR横浜線の十日市場駅や長津田駅、東急田園都市線の青葉台駅、相鉄本線の三ツ境駅などへ向かうバスが運行されています。鉄道駅から離れていることは若葉台の弱点ですが、複数の鉄道路線へ接続できるバスネットワークが補っています。
団地内だけですべての生活が完結するわけではありません。それでも、日常生活に必要な機能が中心地区へ集約され、住宅地と一体で計画されていることは、大規模団地ならではの強みです。

歩車分離が高齢社会で新しい価値を持ち始めた
若葉台を歩いて特に印象に残るのが、歩行者と自動車の動線が分けられていることです。住宅から商業施設、学校、公園などへ向かう歩行者用通路が設けられ、自動車が通る道路とは立体的、平面的に分離されています。
車道を何度も横断せずに街の中心部へ移動できるため、子どもや高齢者も比較的安心して歩くことができます。若葉台には10か所の公園が整備され、遊歩道と緑地が街の各所をつないでいます。
昭和の設計思想が高齢者の外出を支える
若葉台が開発された当時、歩車分離は、主として子どもの交通安全や快適な住環境を実現するための先進的な都市設計でした。しかし、住民の高齢化が進んだ現在、この仕組みは別の意味を持ち始めています。
自動車を避けながら緑の中を歩ける環境は、高齢者の日常的な外出やウォーキングを促します。目的地までの道が単なる移動経路ではなく、公園や緑地と連続した散策空間になっているからです。
高齢者の健康を支えるためには、運動教室や介護予防事業だけでなく、日常生活の中で自然に体を動かせる環境が欠かせません。若葉台では、約50年前に整備された都市インフラそのものが、現在の健康づくりを支える仕組みとして機能していると考えられます。

ハードと住民活動が健康を支える
若葉台で過去に行われた「健康とくらしの調査」では、横浜市内の138地域を比較した結果、スポーツの会への参加割合が1位、趣味の会への参加割合が2位とされました。また、高齢化が全国より早く進む一方で、要介護認定率は全国より低く、健康な街、健康な団地として紹介されています。
ただし、この結果を「歩車分離道路があるから健康になった」と単純に結論付けることはできません。若葉台には、スポーツ施設や文化活動の場があり、自治会やNPOなどによる住民活動も数多く行われています。
歩きやすい街というハード面と、外出する目的や人とのつながりを生み出すソフト面が組み合わさることで、住民の社会参加が支えられていると見るべきでしょう。建物や道路だけを整備しても、人が外へ出る理由がなければ街の活力は生まれません。
高齢化率55%超という厳しい現実
若葉台の環境や地域活動が優れているからといって、将来への不安がないわけではありません。横浜市の第5期旭区地域福祉保健計画では、2025年10月1日時点の若葉台団地について、住民数約1万3,000人、高齢化率55.4%と示されています。
65歳以上の住民が半数を超える状況は、全国的に見ても突出しています。しかも、高齢化と同時に建物や設備も年齢を重ねており、人と建物の高齢化が同時進行していることが若葉台の大きな課題です。
同じ時期に入居した世代が一斉に高齢化する
大規模団地では、完成時に同年代の子育て世帯が一斉に入居する傾向があります。入居当初は子どもが多く、学校、保育園、商店街、公園がにぎわいますが、数十年後には親世代が同時に高齢期へ入り、子ども世代の多くは進学や就職を機に団地外へ転出します。
これは若葉台だけの問題ではありません。野庭団地、左近山団地、汐見台団地、河原町団地など、高度経済成長期以降に計画された多くの大規模団地が、程度の差こそあれ同じ課題に直面しています。
当研究室では、横浜市港南区の野庭団地について、人口減少、高齢化、建物の老朽化、管理主体の複雑さが重なる現実を、「野庭団地は再生できるのか」で詳しく検証しています。
鉄道駅から離れた立地と坂道の問題
若葉台は複数の鉄道駅へバスで接続していますが、団地自体は駅から離れています。若い頃には問題にならなかった距離や坂道も、年齢を重ねると買い物や通院を妨げる大きな負担になります。
若葉台の交通問題は、団地外へ出るための路線バスだけではありません。約90ヘクタールの広い団地内をどのように移動し、住棟からバス停や中心地区までたどり着くかという問題もあります。
そのため、団地内ではコミュニティバス「わかば号」が運行されてきました。交通手段が弱くなれば高齢者の外出が減り、商業施設の利用も減るため、移動、買い物、健康、街の経済は切り離して考えられません。
若葉台を支える「オール若葉台」の仕組み
若葉台で最も注目すべき点は、立派な建物や豊かな緑だけではありません。街の維持を一つの管理組合や行政へ丸投げせず、多数の組織が役割を分担し、必要に応じて連携する基盤があることです。
若葉台には15の単位住宅管理組合があり、そのうち14組合が若葉台住宅管理組合協議会へ加入しています。また、10の単位自治会をまとめる若葉台連合自治会、スポーツ・文化活動や福祉を担うNPO、地区社会福祉協議会、地域ケアプラザ、商業事業者、神奈川県住宅供給公社、若葉台まちづくりセンターなどが活動しています。
管理組合と自治会がそれぞれの役割を持つ
管理組合は、区分所有者によって構成され、建物、敷地、附属施設などの共有財産を管理します。一方、自治会は、住民の交流、防災、防犯、行事、生活支援などを担う任意の住民組織です。
管理組合は建物を管理できますが、地域全体の交通、医療、福祉、子育て支援、商業機能まで単独で維持することは困難です。自治会も、大規模修繕や修繕積立金、設備更新について決定する権限を持ちません。
若葉台では、住宅管理組合協議会が各管理組合に共通する建物管理上の課題を扱い、連合自治会が住民生活や地域活動を支えています。さらに、若葉台まちづくりセンターが住宅管理、不動産流通、リフォーム、施設管理、地域団体との調整などを担っています。
一つの管理組合では解決できない問題を「面」で扱う
一般的なマンション管理は、一つの敷地、一つの建物、あるいは一つの団地管理組合の範囲で完結しがちです。しかし、住民の生活は敷地の境界線で終わるわけではありません。
最寄り駅へ向かう交通、近隣の医療機関、商店、学校、公園などが失われれば、建物が適切に修繕されていても住み続けることは難しくなります。若葉台が実践してきたのは、マンションを「点」で管理するだけでなく、地域を「面」で維持する発想です。
もちろん、関係者が増えれば調整や合意形成は難しくなります。それでも、課題ごとに関係者が集まり、情報、人材、専門性を持ち寄れる場があることは大きな強みであり、個々の組織が孤立しない仕組みそのものが地域資産となっています。
建替えだけに頼らない「100年マンション」の発想
若葉台住宅管理組合協議会は、2007年度に「100年マンション憲章」を制定しました。その背景には、住民の高齢化と建物の高経年化に対し、従来の管理を続けるだけでは街を維持できないという問題意識がありました。
憲章では、マンションの長寿命化・再生、「守る管理」から「攻める管理」への転換、広域的な協調、世代循環型団地の創出、オール若葉台による100年タウンの実現という五つの方向性が掲げられています。
若葉台が目指す100年マンションは、古い建物を何も変えずに100年間残すという意味ではありません。建替えずに建物を維持しながら、設備や性能、ルールを時代に合わせて改善し、長く価値ある住宅として使い続ける考え方です。
「守る管理」と「攻める管理」
清掃を行い、法定点検を実施し、不具合が発生したら修理することは、マンション管理の基本です。しかし、現在の状態を維持するだけでは、住民構成や生活様式の変化に対応できない場合があります。
若葉台がいう「攻める管理」は、時代の居住ニーズに管理規約や使用細則、設備が合わなくなった場合に、それらを必要に応じて更新し、計画的な改良へ進む管理です。むやみに高額な工事を実施するのではなく、建物の状態、住民の需要、資金状況、将来像を踏まえて必要な投資を選択します。
今ある建物を将来も使い続けるには、壊れた箇所を元へ戻す修繕だけでなく、現在の生活水準へ近づける改良が必要です。100年マンションとは、100年間同じ状態であり続けるマンションではなく、100年間変わり続けられるマンションだといえるでしょう。
大規模修繕周期を18年へ延ばす検討
100年マンションを実現するには、理念だけでなく、技術と資金計画が必要です。若葉台の100年マンションプロジェクトでは、躯体補修、外壁仕上げ、シーリング、防水について高耐久仕様の材料や工法を選び、大規模修繕の周期を延ばせないか検討しました。
当時、13年または15年だった改修周期を18年へ延ばすことを目標に、高層板状棟、塔状棟、中層棟をモデルとして工事費が試算されています。その結果、高耐久仕様による工事費の増加率を1.2倍以内に収められる可能性が示されました。
周期延長と工事の先送りは違う
大規模修繕の周期を延ばせれば、長期的な工事回数を減らし、足場費用や居住者の負担を抑えられる可能性があります。一方で、資金不足を理由に必要な工事を先送りすることとは全く異なります。
若葉台の検討は、高耐久仕様に必要な追加費用と、周期を延ばした期間に積み立てられる資金を比較し、技術面と経済面の両方から成立可能性を検証したものです。全棟が一律に18年周期へ変更したという意味ではなく、建物の劣化状況や工事履歴を踏まえて個別に判断するための材料といえます。
一般のマンションが参考にする場合も、劣化診断、工事仕様、保証期間、立地条件、過去の修繕履歴、長期修繕計画を確認する必要があります。「18年」という数字だけを取り入れるのではなく、なぜ延ばせるのかを技術的に説明できなければなりません。
大規模修繕の周期や将来の設備更新を資金計画へ反映する方法については、「長期修繕計画の重要性とは?」でも詳しく解説しています。
高齢化した団地で避けられない「階段」の問題
若葉台には、エレベーターがない中層住宅や、エレベーターがすべての階に止まらないスキップアクセス型の高層住宅があります。100年マンションプロジェクト当時の資料では、分譲高層棟59棟5,074戸のうち、スキップアクセス型は47棟4,049戸、そのうちエレベーター非停止階の住戸は約2,700戸とされました。

若い頃には問題なく上れた一階分の階段も、高齢になると大きな障壁になります。買い物袋を持っている場合や、足腰が弱っている場合、車いすを利用する場合には、わずかな階段でも住み続けられるかどうかを左右します。
約480万円はエレベーター新設費ではない
プロジェクトでは、中層住宅やスキップアクセス型住宅に、いす式階段昇降機を設置する検討が行われました。5階建て中層住宅の1階から5階までを結ぶ試算では、2013年12月時点の一次見積価格が約480万円とされています。
この約480万円は、一般的なエレベーターの新設費ではありません。階段に沿ってレールを設置し、いすに座って昇降する設備の当時の試算です。
スキップアクセス型高層住宅で、エレベーター停止階から直上階まで設置する場合は、2015年1月時点で約190万~240万円と試算されました。さらに、固定式設備は費用や合意形成のハードルが高いため、車いす利用者などを対象とする可搬型階段昇降機も検討され、当時の資料では車いす付きで約142万円とされています。
設置費だけでは判断できない
現在導入を検討する場合には、最新価格、保守費用、更新費用、操作する介助者、保管場所、利用ルール、安全性などを改めて確認しなければなりません。共用部分に設置する設備である以上、避難経路や階段幅、法令、総会決議、費用負担の考え方も整理する必要があります。
利用する住民が限られる設備に管理組合全体の資金を使うことへの反対も考えられます。一方で、階段を上れないことによって転居を余儀なくされれば、空き住戸の増加や住宅流通、資産価値にも影響します。
若葉台の重要な点は、設備を実際に設置したかどうかだけではありません。難しい課題から目を背けず、構造、費用、法令、助成、利用方法まで具体的な数字を出して検討のテーブルへ載せたことにあります。
建物を100年残しても住民が循環しなければ街は続かない
建物を長寿命化できても、それだけで団地が100年間続くわけではありません。住民の高齢化が一方向に進み、若い世代が入ってこなければ、管理組合、自治会、商店街、学校、交通、医療を支える人が減っていきます。
そのため、若葉台の100年マンション構想では、建物の長寿命化と「世代循環」が一体として扱われています。高齢者が暮らし続けられることと、子育て世代や若い世代が新しく入居できることの両方が必要です。
住宅流通も街の維持につながる
若葉台では、団地内の住み替え、団地外からの転入、団地外への転出を支援する「転出入バンク」が検討されました。若葉台まちづくりセンターは現在も住宅の購入、売却、賃貸、リフォームなどを扱っています。
高齢者が広い住戸から生活しやすい住戸へ移り、その住戸へ子育て世帯が入居する。相続された住戸や空き住戸を改修し、新しい居住者へつなぐ。このような循環が機能すれば、既存住宅を使いながら世代構成を少しずつ変えることができます。
一般的な管理組合は不動産の売買や賃貸へ直接関与しません。しかし、空き住戸や相続未了住戸が増えれば、管理費・修繕積立金の滞納、役員の担い手不足、防犯、建物管理へ影響するため、住宅が次の所有者へ適切に引き継がれることはマンション管理と無関係ではありません。
子育て世代の居場所をつくる
若葉台では、子育て世帯向けの住宅改修、情報発信、親子の居場所づくりも進められています。「わかば親と子の広場そらまめ」や、多世代交流拠点「Wakka」など、住民が集まる場も設けられました。

若い世代を呼び込むために、住宅価格の安さだけを訴えても十分ではありません。保育、教育、買い物、医療、交通、安全な遊び場など、生活全体で選ばれる環境が必要です。
若葉台が目指しているのは、高齢者と若い世代を入れ替えることではありません。現在の住民が安心して暮らし続けながら、新しい世代も少しずつ加わる街であり、これが「世代交代」ではなく「世代循環」と表現される理由でしょう。
若葉台は成功した完成形ではない
若葉台は、団地再生や健康長寿の先進事例として紹介されます。しかし、問題のない理想郷として見るべきではありません。
高齢化率は55%を超え、建物や設備の高経年化も進んでいます。交通、階段、住宅流通、商業機能、組織の担い手、修繕資金など、簡単には解決できない課題が残されています。
また、多数の管理組合、自治会、NPO、行政、事業者が関係するため、すべての意思決定が円滑に進むとは限りません。100年マンション憲章も、掲げただけで建物が100年持つものではなく、長期修繕計画、資金、設備更新、規約、役員の担い手を継続的に見直して初めて現実になります。
それでも、若葉台には重要な強みがあります。問題が深刻になってから個別に対処するのではなく、早い段階から共通の将来像を掲げ、建物、資金、移動、健康、福祉、住宅流通を一体的に考えてきたことです。
若葉台は完成した成功モデルというより、課題を抱えながら改善を続ける実験都市です。その姿勢にこそ、他の高経年マンションや団地が学ぶべき点があります。
一般のマンションが若葉台から学べる四つの視点
約90ヘクタール、6,000戸を超える若葉台の仕組みを、一般的な単棟マンションへそのまま移すことはできません。しかし、考え方は規模にかかわらず応用できます。
建物の外側まで見る
管理組合が直接管理するのは、建物、敷地、附属施設などです。しかし、マンションの将来を考えるときは、最寄り駅、バス路線、商店、医療機関、学校、周辺の開発計画も確認する必要があります。
近隣の管理組合、町内会、自治体と情報を共有するだけでも、単独の管理組合では把握できなかった地域課題が見えてきます。自分のマンションという「点」だけでなく、生活圏という「面」を見る視点が必要です。
修繕だけでなく改良を計画する
外壁塗装、防水、壊れた設備の交換は、建物を元の状態へ戻す修繕です。一方、バリアフリー化、防災性能の向上、省エネルギー化、宅配設備の整備などは、建物の機能を高める改良です。
高経年マンションでは、修繕だけを繰り返しても、新しい住宅との居住水準の差が広がります。10年後、20年後にどのような建物でありたいのかを考え、改良工事も長期修繕計画と資金計画へ反映する必要があります。
築年数を重ねても選ばれるマンションと、単に古くなっていくマンションの違いについては、「普通の築古マンションとビンテージを分ける管理の差」でも紹介しています。
管理規約を将来のために使う
管理規約は、住民を縛るためだけのルールではありません。時代や住民構成の変化に対応し、共同生活と共有財産を守るための自治ルールです。
過去に作られた規約や使用細則が現在の課題に合わなければ、必要な手続きと合意形成を経て見直します。「攻める管理」とは規約を軽視することではなく、規約を将来のために使いこなすことです。
財務計画を理念と一体にする
建物の長寿命化、バリアフリー化、設備更新には資金が必要です。「100年使いたい」という思いだけでは、大規模修繕も給排水管更新も実行できません。
長期修繕計画に将来必要な工事を反映し、修繕積立金の残高、毎年の収支、工事時期を確認する必要があります。団地型では、団地全体の資産を守る団地修繕積立金と、各棟を守る各棟修繕積立金の区分も重要です。
団地全体の管理費、団地修繕積立金、各棟修繕積立金を分けて管理する財務構造については、団地型標準管理規約第28条と「三層会計™」の解説をご覧ください。
技術、組織、合意形成、財務のどれか一つが欠けても、長寿命化は実現しません。若葉台の100年マンションは、建物の話であると同時に、管理組合の経営と資金計画の話でもあります。
野庭団地や河原町団地との違い
野庭団地や河原町団地も、計画的に整備された大規模な住宅地であり、人口減少、高齢化、建物の老朽化、生活機能の維持という共通の課題を抱えています。野庭団地では複数の管理組合や賃貸住宅が広範囲に存在し、地域全体の再生主体をどのようにつくるかが大きな課題です。
河原町団地も、昭和の未来都市として生まれた独特の住宅地ですが、川崎市営、神奈川県営、住宅供給公社など複数の事業主体が関わり、街全体を一体的に維持する難しさがあります。
若葉台の特徴は、問題が表面化する前から住宅管理組合協議会や連合自治会などの連携基盤を形成し、「100年マンション」という共通の将来像を掲げてきたことです。建物の長寿命化だけでなく、交通、健康、福祉、住宅流通、世代循環まで同じ街の課題として扱っている点に、若葉台独自の強さがあります。
まとめ|若葉台が問いかける30年後のマンション管理
横浜若葉台団地は、高齢化率55%を超える高経年団地です。その数字だけを見れば、「限界団地」という言葉で片付けたくなるかもしれません。
しかし、現地にあるのは単に古くなった住宅棟ではありません。歩車分離された緑豊かな街路、生活機能が集まる中心地区、活発な住民活動、管理組合と自治会の連携、地域を支えるNPOやまちづくりセンター、そして建物を長く使い続けようとする100年マンションの思想があります。
一方で、階段、交通、建物・設備の高経年化、担い手不足、世代循環、修繕資金など、簡単には解決できない問題も残されています。若葉台が教えてくれるのは、高齢化しても問題が起きない特別な街の作り方ではなく、問題が起きることを前提に、地域全体で考え続ける仕組みの重要性です。

マンションの価値と暮らしを支えているのは、専有部分と共用部分だけではありません。周辺の道路、公園、交通、店舗、医療、学校、地域コミュニティまで含めた生活環境です。
あなたが住んでいるマンションは、30年後、誰が管理しているでしょうか。そのとき、どのような世代が住み、どのような交通や商業施設に支えられているでしょうか。
100年マンションへの第一歩は、100年後を正確に予測することではありません。現在の管理を続けた先にどのような未来が待っているのかを、管理組合と区分所有者が想像し、必要な準備を始めることです。
主な参考資料
・神奈川県住宅供給公社「横浜若葉台団地」
・若葉台住宅管理組合協議会「100年マンション憲章」
・若葉台住宅管理組合協議会「横浜若葉台100年マンション・世代循環型団地プロジェクト」
・一般財団法人若葉台まちづくりセンター「横浜若葉台について」「横浜若葉台の運営主体」
・横浜市旭区「第5期きらっとあさひプラン」






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