タワマン再開発は誰のためか|投資マネーと管理組合が背負う30年後の現実

マンショントピックス

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近年、駅前再開発や都心部の再開発では、タワーマンションを中心とした大規模開発が各地で進んでいます。

古くなった商店街や木造住宅密集地を整理し、防災性を高め、駅前に新しい公共施設や商業施設を整備する。そう聞くと、再開発は地域にとって良いことのように見えます。

一方で、その再開発によって生まれる街は、本当にそこに住む人のためのものなのか。あるいは、投資マネーを回収するための商品として作られているのか。

この点について、あらためて考えさせられる対談がありました。プリツカー賞を受賞した建築家・山本理顕氏と、不動産市場に詳しい牧野知弘氏による対談です。

動画では、タワーマンションや駅前再開発、不動産証券化、J-REIT、投資マネー、そして「200年住宅」という考え方まで、かなり広い論点が語られていました。

刺激的な表現も多く含まれていましたが、マンション管理の視点から見ると、重要なのは単に「タワマンが良いか悪いか」という話ではありません。

むしろ本質は、マンションが「住むための住宅」から「金融商品」に近づきすぎたとき、最後にその負担を誰が背負うのか、という点にあるように思います。

タワマン批判の本質は「高さ」そのものではない

タワーマンションへの批判は、しばしば「高い建物が嫌い」「景観を壊す」「金持ち向けの住宅だ」といった感情論に見えがちです。

しかし、今回の対談で語られていた問題は、単なる高さへの批判ではありません。

問題にされていたのは、容積率緩和、空中権の移転、市街地再開発事業、不動産証券化といった制度や金融の仕組みが組み合わさることで、都市が投資回収のために高層化してきたという構造です。

本来、都市計画や建築規制は、周辺環境や日照、景観、交通、コミュニティとの調和を考えるために存在します。ところが、容積率が「使い切るもの」「移転できるもの」「ボーナスとして上乗せされるもの」になっていくと、街の文脈よりも、どれだけ床を積み上げられるかが重視されます。

その結果、全国各地の駅前に、どこか似たような再開発ビルとタワーマンションが建っていく。

これは、地方都市でも起きている現象です。駅前再開発と聞くと、地域の再生のように聞こえますが、実際には、採算を合わせるために高層マンションを組み込まなければ成立しにくい構造があります。

つまり、タワマンが問題なのではなく、タワマンにしなければ回らない再開発の仕組み自体をどう考えるのか、という論点です。

駅前再開発はなぜタワマンになりやすいのか

市街地再開発事業では、もともと土地や建物を持っていた権利者の権利を、新しくできる建物の床に置き換える仕組みが使われます。

古い建物を解体し、新しい建物を建てるには多額の費用がかかります。さらに、権利者への補償、公共施設の整備、駅前広場や歩行者空間の整備なども必要になります。

その費用をどこで回収するのか。

多くの場合、再開発で増えた床、いわゆる保留床をデベロッパーが取得し、それを分譲マンションや商業施設、オフィスとして販売・運用することで資金を回収します。

しかし、建築費が高騰している現在、低層の建物や商業施設だけでは採算が合いにくい。そこで、単価の高い分譲マンション、特に都心部や駅前のタワーマンションが重要な資金回収手段になります。

ここに、再開発のジレンマがあります。

防災上も、老朽化した建物の更新という意味でも、再開発が必要な地域はあります。しかし、その再開発を成立させるために、結果として高額マンションを建てるしかない。すると、元の地域住民や商店街のための再開発だったはずが、いつの間にか外部の購入者や投資家向けの商品になっていく可能性があります。

この点は、マンション管理を考えるうえでも非常に重要です。

建物が完成し、分譲が終わった後、デベロッパーは原則としてそのマンションの日常管理の主体ではありません。最終的に建物を維持する責任を負うのは、区分所有者で構成される管理組合です。

投資マネーの時間軸とマンション管理の時間軸は違う

今回の対談で特に印象的だったのは、投資マネーの時間軸についての話です。

投資家は、3年、5年といった比較的短い期間でリターンを求める。一方で、建築や都市、マンション管理は、30年、50年、場合によっては100年単位で考えなければならない。

この時間軸の違いは、非常に大きな問題です。

分譲マンションは、販売時には新しく、見た目も美しく、広告も華やかです。駅直結、大規模再開発、商業施設一体、共用施設充実といった言葉が並びます。

しかし、マンションの本当の負担は、建てた後に始まります。

エレベーター、給排水管、消防設備、機械式駐車場、外壁、防水、電気設備、インターホン、オートロック、自動ドア、ポンプ類。これらは必ず劣化し、更新時期を迎えます。

特にタワーマンションは、設備が複雑で、共用部分も多く、維持管理コストが大きくなりやすい建物です。外壁調査や大規模修繕の方法も、一般的な中低層マンションより難しくなることがあります。

販売時点では、管理費や修繕積立金が低く見えることもあります。しかし、それが長期的に十分な水準なのかは別問題です。

購入者が「資産価値が上がるかどうか」だけを見てマンションを買い、長期的な維持管理費を十分に見ていなければ、その負担は将来の管理組合に残ります。

管理組合は金融商品化の最後の受け皿になる

ここが、マンション管理の視点から最も重要なところです。

マンションが金融商品化していくと、購入者の中には、実際に住む人だけでなく、投資目的の所有者、賃貸運用する所有者、海外居住の所有者、法人所有者などが増えていきます。

もちろん、投資目的の所有がすべて悪いわけではありません。賃貸住宅として供給されることで、その地域に住める人が増える面もあります。

しかし、管理組合の運営という点では、所有者の関心が分散しやすくなります。

自分で住んでいない所有者は、日常の管理やコミュニティに関心を持ちにくい場合があります。総会への出席率が下がり、役員のなり手が不足し、修繕積立金の値上げにも反対が出やすくなる。

日経調査で見えた「所有者と居住者の分離」

この懸念を裏付けるような調査結果が、2026年7月27日付の日本経済新聞で報じられました。

日本経済新聞が、東京都心6区と大阪市都心3区にある20階以上のタワーマンション303棟を調べたところ、最上階1,867戸のうち895戸、48%で、登記上の所有者住所がマンション所在地と一致していませんでした。

さらに、東京23区のタワーマンション188棟について、2020年以降の新築分譲時と中古売買時における所有者住所を調べた別の分析でも、51%がマンション所在地と一致していなかったとされています。

ただし、この数字は「タワーマンションの約5割が空き家」という意味ではありません。所有者が第三者に貸し出し、賃借人が実際に暮らしている住戸も考えられます。また、今回の調査対象は、資産性が高く、投資対象にもなりやすい最上階の住戸です。一般階を含むタワーマンション全体の非居住率を示したものでもありません。

「外国人所有者が5割」という調査でもありません。海外住所だったのは東京都心6区で88戸、大阪都心3区で21戸の合計109戸です。一方、東京都内の別住所を登記していた住戸は352戸、大阪府内の別住所を登記していた住戸は226戸あり、住所不一致の中心は国内の別住所でした。

重要なのは、所有者の国籍や住所そのものではありません。

所有者と実際の居住者が分かれ、管理組合がマンション内に住んでいない所有者とも連絡を取り、長期的な修繕や費用負担について意思決定に参加してもらう必要があるマンションが増えていることです。

再開発によって生み出された住戸が、居住の場であると同時に、投資、賃貸運用、セカンドハウス、資産保有の対象となれば、販売時点では表面化しなかった所有構造の問題が、その後の管理組合運営に現れます。

日経調査の48%という数字は、投資マネーの時間軸とマンション管理の時間軸の違いが、タワーマンションの所有者構成にも表れている可能性を示すものといえるでしょう。

一方で、建物は待ってくれません。

築20年、30年、40年と進むにつれて、修繕や更新の必要性は確実に高まります。どれだけ販売時に華やかだったマンションでも、管理組合が機能しなければ、建物の価値は維持できません。

つまり、再開発の採算や投資マネーのリターンを優先して作られたマンションであっても、その後の長期管理を担うのは管理組合です。

ここに大きなズレがあります。

作る側、売る側、投資する側の時間軸と、住み続ける側、管理する側の時間軸が違うのです。

「200年住宅」は管理組合なしには成立しない

対談では、「200年住宅」や「メンテナンスフリー200年」という趣旨の発言もありました。ただし、マンション管理の実務から見ると、この表現は理念として受け止めつつも、慎重に整理する必要があります。

建物を短期で売買する商品としてではなく、長く使い続ける社会資産として考える。この発想自体は、非常に重要だと思います。

どれだけ建築技術が進んでも、建物には必ず維持管理が必要です。構造体を長持ちさせることはできても、設備機器や配管、防水、電気設備、エレベーターなどは更新が必要になります。

したがって、現実的に目指すべきなのは、メンテナンスが不要な建物ではありません。

むしろ、点検しやすい、修繕しやすい、更新しやすい、費用を予測しやすい建物です。

そして、それを支えるのが管理組合です。

長期修繕計画を定期的に見直す。修繕積立金を適切に確保する。管理規約を整備する。外部所有者や賃貸化にも対応する。役員のなり手不足に備える。必要に応じて専門家を活用する。

これらがなければ、どれほど立派な建物でも長寿命化はできません。

「200年住宅」という理想を現実に近づけるには、建築だけでは足りません。管理組合のガバナンスが不可欠です。

これからのマンション選びは「建物の後ろ側」を見る時代へ

タワーマンションや駅前再開発を一律に否定する必要はないと思います。

再開発によって、防災性が高まり、駅前が使いやすくなり、地域に新しい機能が加わることもあります。投資マネーも、使い方によっては都市更新に必要な資金を呼び込む役割を果たします。

問題は、その開発が誰のためのものなのか。そして、建てた後の維持管理を誰がどのように担うのかです。

マンションを買う側も、管理する側も、これからは販売時の華やかさだけで判断してはいけません。

見るべきなのは、建物の後ろ側です。

管理費は適正か。修繕積立金は将来足りるのか。長期修繕計画は現実的か。設備更新の負担はどの程度か。外部所有者が増えたときに管理組合は機能するのか。管理規約は時代に合っているのか。

これらを見ないまま、「駅前だから」「タワマンだから」「資産価値が上がりそうだから」という理由だけで購入すると、将来の負担を見落とすことになります。

マンションは、買った瞬間がゴールではありません。

むしろ、そこから管理が始まります。

投資マネーが街を変え、再開発がマンションを生み、販売時には高い評価を受けたとしても、その建物を30年後、50年後に支えるのは管理組合です。

だからこそ、これからのマンション選びとマンション管理では、資産価値だけでなく、維持管理価値を見る視点が必要です。

タワマン再開発の議論は、都市計画や不動産投資だけの話ではありません。

それは、これからの管理組合が何を背負うのかという問題でもあります。

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